「世界にはいくつの言語があるのだろう?」と考えたことはありませんか。
英語や中国語のような有名な言語から、話者が数十人しか残っていない言語まで、地球上には驚くほど多様な言葉が存在します。その数はなんと約7000。さらに「世界一難しい言語」「口笛で会話する言語」「数の概念がない言語」など、知れば誰かに話したくなる雑学の宝庫でもあります。
この記事では、世界の言語の数や語族による分類、話者数ランキング、FSI(アメリカ国務省)が定めた難しい言語ランキング、そして珍しい言語の雑学までを一気に解説します。日本語が世界の中でどんな位置づけなのかも紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次
世界の言語は何種類?数をめぐる諸説
まず気になるのが「世界の言語は全部で何種類あるのか」という問いです。
世界の言語を網羅的に調査している研究機関エスノローグ(Ethnologue)によると、現在使われている言語、つまり生きている言語はおよそ7000にのぼります。最新版では7000を超える言語が記録されています。
ただし、この数字はあくまで「だいたい」の目安にすぎません。なぜなら、何を1つの言語と数えるかが、研究者によって違うからです。
なぜ正確な言語の数が決められないのか
言語の数が確定しない最大の理由は、「言語」と「方言」の線引きが難しいことにあります。
たとえば中国語は、北京語と広東語のように互いに会話が通じないほど違っていても、ふつう「1つの中国語」として扱われます。逆にヨーロッパでは、スウェーデン語とノルウェー語のようにかなり似ていて通じ合えるのに、国が違うため「別の言語」とされています。
つまり言語と方言の区別には、言葉そのものの違いだけでなく、国境や政治、民族意識といった事情が深く関わっているのです。「言語とは軍隊を持った方言である」という有名な言葉は、この事情を皮肉ったものです。
世界の言語を「語族」で分類する

7000もの言語をそのまま眺めても、全体像はつかめません。そこで言語学者は、共通の祖先(祖語)から枝分かれしたと考えられる言語のまとまりを「語族(ごぞく)」としてグループ分けしています。
世界の言語は、およそ140以上の語族に分類されます。代表的なものを見てみましょう。
| 語族 | 主な言語 | 特徴 |
|---|---|---|
| インド・ヨーロッパ語族 | 英語・スペイン語・フランス語・ロシア語・ヒンディー語 | 話者数が世界最大。人口の約半分が含まれる |
| シナ・チベット語族 | 中国語・チベット語・ビルマ語 | 中国語を含み母語話者が非常に多い |
| アフロ・アジア語族 | アラビア語・ヘブライ語・アムハラ語 | 中東・北アフリカに広がる |
| オーストロネシア語族 | インドネシア語・タガログ語・マレー語・ハワイ語 | 含まれる言語の数がとても多い |
| ニジェール・コンゴ語族 | スワヒリ語・ヨルバ語 | アフリカ最大級。言語数も世界トップクラス |
| ドラヴィダ語族 | タミル語・テルグ語 | 南インドを中心に話される |
| 日本語族(ジャポニック) | 日本語・琉球諸語 | ほかの語族とのつながりがはっきりしない |
最大の語族は「インド・ヨーロッパ語族」
話者数で最大の語族は、インド・ヨーロッパ語族です。世界人口のおよそ半分がこの語族の言語を使っています。
英語・スペイン語・フランス語・ロシア語・ヒンディー語など、一見するとまったく似ていない言語が、実は数千年前の同じ祖語にさかのぼると考えられているのは驚きですよね。たとえば英語の「mother」、ドイツ語の「Mutter」、スペイン語の「madre」がどれも似ているのは、共通の祖先を持つ証拠とされています。

話者数が多い世界の言語ランキング

次に「世界でいちばん話されている言語は何か」を見てみましょう。実はこの答えは、数え方によって変わります。
母語+第二言語の話者数ランキング
母語に加えて、第二言語として使う人まで含めると、世界一の言語は英語になります。
| 順位 | 言語 | 話者数(母語+第二言語) |
|---|---|---|
| 1 | 英語 | 約15億人 |
| 2 | 中国語(北京語) | 約11億人 |
| 3 | ヒンディー語 | 約6億人 |
| 4 | スペイン語 | 約5.5億人 |
| 5 | フランス語 | 約3億人 |
| 6 | アラビア語 | 約3億人 |
| 7 | ベンガル語 | 約2.7億人 |
| 8 | ポルトガル語 | 約2.6億人 |
なお、話者数はエスノローグなどの推計で、調査年や数え方によって変わります。あくまで目安として見てください。
母語だけで数えるとランキングが変わる
一方、母語、つまり生まれて最初に身につけた言語の話者だけで数えると、順位が入れ替わります。1位は中国語、2位はスペイン語、3位が英語、4位がヒンディー語の順です。
英語が「世界共通語」と呼ばれるのは、母語話者が飛び抜けて多いからではなく、第二言語として学ぶ人が世界中に大勢いるからなのです。ビジネスやインターネットの世界で広く使われていることが、英語の存在感を支えています。
難しい言語ランキング!FSIで見る世界の言語の習得難易度
「世界一難しい言語は何か」は、語学好きなら一度は気になるテーマでしょう。
よく引用されるのが、アメリカ国務省の外交官養成機関FSI(Foreign Service Institute)による難易度分類です。FSIは、英語を母語とする人が各言語を習得するのにかかる平均時間をもとに、言語を5つのカテゴリーに分けています。
| カテゴリー | 習得時間の目安 | 主な言語 |
|---|---|---|
| カテゴリーI | 約600〜750時間 | フランス語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語 |
| カテゴリーII | 約750時間 | ドイツ語など |
| カテゴリーIII | 約900時間 | インドネシア語・スワヒリ語 |
| カテゴリーIV | 約1100時間 | ロシア語・ヒンディー語・トルコ語・タイ語・ベトナム語・フィンランド語 |
| カテゴリーV | 約2200時間 | 中国語・広東語・日本語・韓国語・アラビア語 |
最も難しいカテゴリーVは「超難関言語」とも呼ばれ、英語話者が習得するのに約2200時間(約88週間)かかるとされています。カテゴリーIの言語のおよそ3〜4倍の時間です。
英語話者にとって日本語は最高難度
ここで注目したいのが日本語です。FSIの分類では、日本語はカテゴリーVの中でもさらに難しいとしてアスタリスク付きで扱われており、英語話者にとって事実上「世界一難しい言語」とされることがあります。
理由は、ひらがな・カタカナ・漢字という3種類の文字を使い分けること、敬語の体系が複雑なこと、語順が英語と逆で主語・目的語・動詞の順になることなどです。私たちが当たり前に使っている日本語が、世界では最高難度とされているのは、なんだか誇らしい気もしますね。
中国語・アラビア語が難しい理由
- 中国語:4つの声調があり、発音の高低だけで意味が変わります。数千の漢字を覚える必要もあり、文字と発音の両面でハードルが高い言語です。
- アラビア語:右から左に書き、母音を省略することが多く、英語にも日本語にもない喉の奥で出す音があります。地域による方言差も大きく、学習者を悩ませます。

日本語話者にとって難しい言語・簡単な言語

FSIのランキングは英語が母語の人を基準にしているため、日本人の感覚とはズレることがあります。母語が違えば、難しい言語も簡単な言語も変わるのです。
日本人には学びやすいとされる言語
韓国語は、語順が日本語とほぼ同じ(主語・目的語・動詞)で、助詞や敬語の感覚も似ているため、日本人にとっては比較的学びやすい言語といわれます。漢字に由来する単語が多いことも、日本人にとっては追い風です。
日本人にとって難しい言語
逆に、英語話者には簡単なフランス語やスペイン語でも、日本人には発音や、名詞の性(男性名詞・女性名詞)の区別が壁になります。ロシア語の複雑な格変化、アラビア語の文字、フィンランド語の細かい格など、日本語とかけ離れた仕組みを持つ言語ほど、習得には時間がかかります。
大学でどの第二外国語を選ぶか迷っている方は、以下の記事も参考にしてください。
世界の珍しい・面白い言語の雑学
世界の言語の中には、思わず「本当に?」と言いたくなるユニークな言語があります。雑談のネタにぴったりのものを集めました。
口笛で会話する言語「シルボ・ゴメロ」
スペイン領カナリア諸島のラ・ゴメラ島には、口笛だけで会話する言語シルボ・ゴメロが伝わっています。スペイン語を口笛の高低に置き換えたもので、深い谷をはさんで数キロ先まで内容を届けられます。2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。口笛言語としては世界で初めての登録です。
舌打ち音を使う「クリック言語」
アフリカ南部のコイサン諸語やコサ語・ズールー語には、舌を鳴らすクリック子音があります。中でもタア語(!Xóõ)は、世界で最も音の種類が多い言語の一つとして知られ、100を超える子音を持つとされています。日本語の子音が十数個であることを考えると、その多さに驚かされます。
音がいちばん少ない言語「ロトカス語」
逆に、パプアニューギニアのロトカス語は、音素(意味を区別する音の最小単位)がわずか12個ほどしかなく、世界で最もシンプルな音体系を持つ言語の一つとされています。鼻にかかる音(鼻音)がないのも特徴です。
動物の鳴き声も言語によって違う
同じ犬の鳴き声でも、日本語では「ワンワン」、英語では「バウワウ」と表現が変わります。これは、各言語の音の体系がそれぞれ違うために起こる現象です。世界各国で動物の鳴き声がどう聞こえるかは、以下の記事でも紹介しています。
世界の言語と文字(書記体系)の多様性

言語の多様性は「音」だけでなく「文字」にも表れます。世界の文字は、大きく次の4つのタイプに分けられます。
- 表音文字(アルファベット):1つの文字が1つの音を表します。ラテン文字・キリル文字・ギリシャ文字・アラビア文字などが代表例です。
- アブギダ:子音字に母音記号を添えて音を表します。インドのデーヴァナーガリー文字(ヒンディー語などで使用)が代表例です。
- 音節文字:1つの文字が1つの音節を表します。日本語のひらがな・カタカナがまさにこれにあたります。
- 表語文字:1つの文字が意味と音をまとめて表します。漢字が代表例です。
日本語は、表語文字である漢字と、音節文字であるかなを混ぜて使う、世界的にも珍しい表記システムを持っています。私たちは無意識にこの複雑な仕組みを使いこなしているのです。
人工的に設計された文字「ハングル」
韓国語のハングルは、1443年に朝鮮王朝の世宗(セジョン)が制定した、意図的に設計された文字です。発音するときの口や舌の形をかたどって作られており、「世界で最も合理的な文字の一つ」と評価されることもあります。自然に生まれた文字が多い中で、ハングルは珍しい成り立ちを持っています。
言語が多い国や手話など世界の言語の豆知識
世界の言語にまつわる、知っておくと話したくなる豆知識を紹介します。
世界一言語が多い国はパプアニューギニア
1つの国の中で最も多くの言語が話されているのはパプアニューギニアで、その数はなんと約840。世界の言語の1割以上が、この1つの国に集中していることになります。険しい山や深い谷で地域が隔てられ、それぞれの土地で独自の言葉が育ったためだといわれています。
| 順位 | 国 | 言語の数 |
|---|---|---|
| 1 | パプアニューギニア | 約840 |
| 2 | インドネシア | 711 |
| 3 | ナイジェリア | 517 |
| 4 | インド | 456 |
| 5 | アメリカ | 328 |
手話も立派な「言語」
手話は身振りの寄せ集めではなく、独自の文法を持った1つの言語です。世界には300以上の手話があるとされ、それぞれが独立した言語です。日本手話とアメリカ手話はまったく別の言語で、「国際手話」もありますが、世界共通の手話があるわけではありません。音声言語と同じように、手話にも多様性があるのです。

消滅の危機にある世界の言語
世界の言語の多様さは豊かさの証ですが、その多くが消えつつあるという現実もあります。
ユネスコによると、世界の約7000言語のうちおよそ40%が消滅の危機にあるとされています。そしておよそ2週間に1つのペースで、どこかの言語が消えているともいわれます。最後の話者が亡くなれば、その言語とともに、受け継がれてきた知恵や物語、世界の見方までもが失われてしまいます。
ユネスコは「危機言語アトラス」で約2500の危機言語をまとめ、危険度に応じて「脆弱」「危険」「重大な危険」「極めて深刻」「消滅」の5段階に分類しています。
日本にも消滅危機の言語がある
実は日本にも、ユネスコが危機言語に挙げる言葉があります。北海道のアイヌ語は「極めて深刻」な危機にあるとされ、沖縄や奄美で話される琉球諸語も危機言語に含まれています。世界の言語が消えていく問題は、決して遠い国だけの話ではないのです。
日本語は世界の言語の中でどんな位置づけ?
最後に、私たちの日本語が世界の言語の中でどんな存在なのかを見てみましょう。
日本語の母語話者は約1億2500万人で、世界でおよそ10位前後に入る、決して小さくない言語です。話者数だけ見れば、世界でも有数の「大きな言語」といえます。
系統的には、日本語は沖縄・奄美の琉球諸語とともに日本語族(ジャポニック)を形成すると考えられています。ただし、日本語族はほかのどの大きな語族ともはっきりつながらないため、「孤立した言語」に近いとされることもあります。韓国語と語順が似ていることから関連が指摘されることもありますが、決定的な証拠はまだ見つかっていません。
3種類の文字を使い分け、主語・目的語・動詞の語順を持ち、豊かな敬語体系を備えた日本語は、世界的に見てもかなり個性的な言語といえるでしょう。
世界の言語に関するよくある質問(Q&A)
Q. 世界でいちばん話されている言語は?
A. 母語と第二言語を合わせた話者数では、英語が1位で約15億人です。母語話者だけで数えると、中国語が1位になります。どちらの基準で見るかで答えが変わります。
Q. 世界でいちばん難しい言語は?
A. 英語話者を基準にしたFSIの分類では、日本語・中国語・韓国語・アラビア語などのカテゴリーVが最難関です。中でも日本語は最高難度とされることがあります。ただし「難しさ」は、自分の母語が何かによって大きく変わります。
Q. いちばん簡単な言語は?
A. これも母語によります。英語話者にはスペイン語やフランス語が学びやすく、日本人には語順や敬語の感覚が近い韓国語が、比較的入りやすい言語だといわれます。
Q. なぜ世界にはこんなに多くの言語があるの?
A. 人々が山や海で隔てられて暮らすうちに、言葉が少しずつ変化して、別々の言語に分かれていったためです。パプアニューギニアに言語が多いのも、険しい地形で地域が分断されてきたことが理由とされています。
Q. 世界の言語は今後どうなる?
A. 話者の少ない言語が急速に消えつつあり、約40%が消滅の危機にあります。その一方で、英語などごく一部の言語に話者が集中する傾向が強まっています。多様性をどう守るかが、世界的な課題になっています。
まとめ:世界の言語は多様性のかたまり
世界の言語は約7000種類あり、語族というまとまりに分類されています。
話者数では英語や中国語が世界をリードする一方で、口笛で話す言語や、音が12個しかない言語など、ユニークな言葉も数多く存在します。
そして日本語は、世界の言語の中でもかなり個性的で、しかも話者数の多い言語です。英語話者からは最高難度とされる言葉を、私たちは自在に使いこなしているのです。
言語は単なるコミュニケーションの道具ではなく、その土地の文化や歴史を映す鏡でもあります。世界の言語の奥深さを、ぜひ誰かとの雑談のネタにしてみてくださいね。


