はい、ウマキです。
今回は、私の好きな作家の一人である、上橋菜穂子のおすすめ作品を紹介したいと思います。 彼女の著作を知らない方でも、図書館で、『守り人シリーズ』や『獣の奏者』などを一度は見かけた事があるのではないでしょうか。
児童文学、ファンタジー小説の大家であり、様々な賞も受賞しています。
【2020/02/22 大幅追記】
今回の選定基準については以下とします。
- 著者はエッセイについても、何冊か出版していますが、今回はファンタジー小説のみ対象としています。
- シリーズ作品は1作として、カウントしています。
以下、目次となります!
目次
上橋菜穂子のおすすめ小説ランキング|6~7位
7位.精霊の木
15年以上前に出版された、著者のデビュー作となります。
地球の環境を破壊し、死の星へと変貌させた地球人が、他の惑星へ移住を行う。そして、またその星を、自分たちの都合の良いように改変し、母国と同様に、死の星へと誘う・・・。
科学を司る者を尊び、自然を愛し、大地を愛する者を嘲笑する文明人の姿は、先進国が途上国を蹂躙した、過去の歴史が垣間見えるようで、非常に考えさせられました。
初期の作品のため、文章表現が後期作品と比較し、やや稚拙で、回りくどい点がマイナスでした。しかし、その文字の間から、叫びにも似た、祈りの声が聞こえてくるような、稀有な作品です。
6位:物語ること、生きること
- 発行日:2013年10月
- 発行元:講談社
作家になりたくて、でも、甘ったれの幸せな「夢見る夢子さん」のままじゃ作家には絶対なれないと思っていた10代。
自分で自分の背中を蹴っ飛ばし、外の世界に触れ、文化人類学の道を志した20代。
そして、その先に待ち受けていた「作家として生きつづける」という新たな登り坂・・・。
壮大な物語世界を生んだ作家の道程が問いかける、「読むこと」「書くこと」「生きること」とは。
上橋菜穂子の小説家としての足跡を知ることが出来る、貴重な本です。
どのような経緯で作家になったのか、また執筆した作品が、どのように生みだされたのかを、詳細に語っています。
形式としては自叙伝に近いですが、記載された多くのエピソードは興味深く、一気に読むことが出来ました。
上橋菜穂子のおすすめ小説ランキング|5~1位
5位.月の森に、カミよ眠れ
天皇による律令政治が行き渡りながらも、人々が神や精霊と共に生きていた時代のお話です。本作品は著者の他作品のように異世界が舞台ではなく、平安時代近辺を描いています。
神と人の間に生まれた『タヤタ』と、彼が愛する娘『キシメ』の関わり合いを、丁寧な筆致で描写します。簡単なファンタジー小説では無く、読者に深く語り掛ける良書です。
かつて、神と人は深く繋がりがあったにも関わらず、文明の発達の代償として、様々なものを犠牲にしていきました。自然からあらゆるものを搾取し続け、神に対する意識も変化していく中で、私たちは何を見出したのか。
失ったもの、得たもの、そして喪失した時に生じる痛みについて、真摯に描いた作品です。小学生や中学生が、本書のテーマについて理解する事は難しいですが、非常に考えさせられる一冊となっています。
4位.鹿の王
2015年本屋大賞受賞作品です。ある出来事を契機に、特殊な能力を持ったヴァンと、若き天才医術師ホッサルの2人を主軸として、物語は進行します。
家族を失った故、生に対して希望を見出せず、死に場所を求めて彷徨ってヴァンは、幼子のユナと出会います。彼女の成長を助ける事によって、次第に彼は感情を取り戻しますが、この時の彼の決意の深さに、私は思わず涙してしまいました。
黒狼病という、国家をも滅ぼす死の病から国を救うため、ホッサルとヴァンは動き始めます。黒狼病蔓延には、悲しい背景があり、読者に非常に考えさせるほど、深い構成となっていました。
本書にて、黒狼病との戦いは終止符が打たれましたが、再びヴァンやユナ、ホッサルに出会えることを期待しています。
3位.狐笛のかなた
遠い昔、日本にもまだ多くの里山があり、隣国同士で争いが絶えず、その争いに呪いを操る呪術師が暗躍していた時代を描いた小説です。
人の心が聞こえる『聞き耳』の能力を持つために、争いに巻き込まれた主人公、小夜。そして幼少期、命を救ってくれた、小夜を慕い、長い間彼女を見守り続けた霊狐『野火』の2人を主軸として物語は進んでいきます。
非常に弱々しく、儚げな主人公ですが、霊狐を縛る鎖を解き放ち、運命に立ち向かう姿は、非常に感動的でした。
背景描写も非常に丁寧であり、読了後は、とても心地の良い、懐かしさのような不思議な感覚を抱きました。この物語は、きっと誰の心の奥底にも確かに存在している、原風景を思い起こさせる、一冊なのかも知れません。
2位.獣の奏者
上橋菜穂子の長編ファンタジー小説の開幕とも言える作品です。
この作品は、人とは決して交わらない、強く美しき、聖なる獣『王獣』と、心を通わせた主人公エリンの物語です。彼女は、掟に準じて死を選んだ母に、ずっと疑問を抱いて生きていました。その背景が、疑問や矛盾に真正面から立ち向かう、彼女の信念に繋がります。
例え、どのような困難があろうと、肉体や精神を擦り減らしながらも、それでも前に進むことを決して諦めない彼女の姿勢に、ひどく心を揺さぶられました。
著者は本作品を全2巻で完結させる想定だったようですが、ファンからの熱いラブコールがあり、次巻の制作に至った様です。続刊では、様々な疑問や伏線が、きちんと回収されており、内容的にも面白かったのですが、終わり方が、どうしても腑に落ちなかった点がややマイナスでした。
1位.精霊の守り人(守り人シリーズ)
本編10冊と外伝2冊が出版されている、著者の代表作となる、長編ファンタジーです。ドラマ化、漫画化など、メディアミックスもされている為、一度は目にしたことがある方も多いのでは無いでしょうか。
本編シリーズは以下のようなタイトル名となっています。
- 精霊の守り人
- 闇の守り人
- 夢の守り人
- 虚空の旅人
- 神の守り人(上下巻)
- 蒼路の旅人
- 天と地の守り人(1・2・3部)
また、外伝2作については以下となります。
- 流れ行く者
- 炎路を行く者
本シリーズは『精霊の守り人』で、主人公の短槍使いのバルサが、チャグム皇太子と出会うことから、物語が始まります。以下、本編シリーズについて、それぞれのコメントを簡単に記載します。
精霊の守り人
実の父である、帝から放たれた刺客や、異世界の魔物から主人公バルサは皇太子チャグムを守り、旅を続けます。バルサのキャラクターは、まさしく女傑と言えるほど、立っており、凛々しく、好感が持てました。
生きる為に、相手の懐に飛び込み、戦い抜く様は、彼女の精神の根幹を見事に描いており、その生き様は他の女性主人公には無い、太く強いものでした。王宮に無事に帰還し、チャグムを見送った後に、物語は『闇の守り人』に移行します。
闇の守り人
チャグムの護衛の後、バルサは彼女の育て親であるジグロの供養をするため、自身の故郷であるカンバルへと向かいます。
本物語は、単純な勧善懲悪がテーマではなく、主人公バルサが自身の過去と向き合い、その意味を知ることにあります。また、魂となってもバルサを待ち続けていた、ジグロの解放の物語とも言えます。
戦闘シーンも前作以上に筆が乗っており、より白熱したものになっています。溢れ出た涙を拭いもせず、大声を出してバルサが泣く場面は、非常に感動的でした。
夢の守り人
『夢の守り人』は、全編を通して重要な役割を果たす、大呪術師トロガイの過去に触れた内容です。用心棒バルサの激しい戦闘シーンなど多くはないですが、バルサの幼馴染である、タンダや、王子チャグムが再登場します。
虚空の旅人
『守り人シリーズ』の中でも、バルサが主人公では無く、皇太子として隣国を訪問した、チャグム王子を主人公として外伝的物語です。隣国のサンガル王国に渦巻く陰謀に、彼が果敢に立ち向かう姿は勇ましく、成長が感じ取れる点が好印象でした。
チャグムの記憶の中に、バルサが確かに生きているという実感が沸き、ストーリー自体も国同士の駆け引きを上手く描いており、伏線も見事でした。
神の守り人(上下巻)
主人公バルサが、人買いから幼い兄妹を救ったことにより、始まる物語です。『タルの民』である彼らを助けたことにより、バルサは大きな運命の渦に飲み込まれていきます。
死の淵を彷徨いながらも兄妹を必死に守り抜く、彼女の姿は、母が我が子を守る姿を彷彿とさせ、読んでいて胸が熱くなりました。 上下巻という事で、非常にボリュームが大きく、読み応えのある、傑作です。
蒼路の旅人
『虚空の旅人』から、何年後を描いた作品です。再びチャグム王子が主人公となり、タルシュ帝国の野望から、祖国を守る為に奮闘します。チャグムをめぐる非情な運命と、それでも決して諦めない彼の懸命さに、胸を打たれました。
本作品は、最終章である『天と地の守り人』に続く、序章的な作品ですが、まるで壮大な歴史小説を読んでいるようにも思える良作です。きっとあなたも読めば、次巻をすぐに読みたくなるはず!
天と地の守り人
これまでの物語をすべて終結させるように、怒涛の勢いで進んでいきます。全てを失い、身体一つになっても、祖国を守る為、歩み続けるチャグム王子の姿は、読者の感情を強く揺さぶります。
同盟を締結させ、必ず祖国に帰り、民を守るという固い決心は、読み手に伝わり、私はページを捲る手を止めることが出来ませんでした。
シリーズ前作を通じて言える事ですが、ファンタジー作品特有の、ノンフィクションを盾に取った、どこか現実感の無い小説とは、一線を画しており、緻密で繊細な描写の基、全編を通してキャラクターの深い生き様を見ることが出来ます。
与えられた運命に抗い、踠き、苦しみながらも、それでも前へ進むことを諦めない姿に、きっとあなたも心を打たれるはずです。
上橋菜穂子が好きな方におすすめの他作家の本
本項では、追加で上橋菜穂子がおすすめする、他作家の作品を紹介していきます。
どれも面白い小説なので、ぜひ参考にして頂ければ幸いです。
ペテロの葬列(宮部みゆき)
- 発行日:2013年12月
- 発行元:集英社
宮部みゆきが送る、杉村三郎を扱った、大人気ミステリ小説シリーズです。
バスジャック事件に巻き込まれた主人公ですが、その事件自体は、3時間ほどで解決しました。
しかし、その後様々な真実が明らかになり、驚愕の展開へと物語は進行します。
興味がある方は、ぜひ前作の「誰か」と「名もなき毒」を読んでからトライしてみましょう!
また、以下の記事に宮部みゆきのおすすめ本についてもまとめているため、そちらも参考にして頂ければ幸いです。
指輪物語(J・R・R・トールキン)
- 発行日:1954年7月
- 著者 :J・R・R・トールキン
ファンタジー小説の元祖であり、世界的にも大変有名な作品です。
全三部作ですが、その全てが一億部以上出版されており、また、映画化や劇場化など、様々なメディアに変換されています。
上橋菜穂子だけでなく、多くのファンタジー小説作家の原点になっている作品のため、その観点からも、一読の価値は十分にあります!
まとめ
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
彼女の作品とは、小学生のころ出会い、ファンタジー好きな私は、寝る間も惜しんで読んでいたことを覚えています。
どの作品についても、テーマが非常に深遠で、多読に耐え得る良書ですが、もし彼女の作品が初めての方は、まずは、『守り人シリーズ』か『獣の奏者』を読むことをおすすめします。きっと、緻密に描かれた世界と、生き生きとした登場人物の虜になってしまう事間違いなしです!
あなたの良い小説との出会いを祈って。
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ウマキ