「制作」と「製作」、「対象」と「対称」と「対照」。読み方は同じなのに、いざ書こうとすると「あれ、どの漢字だっけ?」と手が止まった経験はありませんか。
このように、発音は同じで意味が異なる言葉を「同音異義語(どうおんいぎご)」といいます。日本語は世界の言語の中でもとくに同音異義語が多く、メールや書類で一文字間違えるだけで意味が変わってしまうこともあります。
この記事では、ビジネスや試験で間違えやすい定番から、思わず笑ってしまう面白いものまで、同音異義語を64組厳選しました。一つひとつに「意味の使い分け」と「例文」を添え、後半には腕試しのクイズも用意しています。読み終わるころには、言葉の選び方に自信が持てるはずです。

目次
同音異義語とは?意味と日本語に多い理由

同音異義語とは、「発音(読み)が同じで、意味が異なる二つ以上の言葉」のことです。漢字で書けば区別できますが、声に出すと同じ音になります。たとえば「きしゃ」と言っても、「記者」「汽車」「貴社」「帰社」のどれを指すかは文脈次第です。
では、なぜ日本語にはこれほど同音異義語が多いのでしょうか。最大の理由は、中国から漢語(音読みの言葉)を大量に取り入れたことにあります。
もともと中国語では、声調(音の高さの上げ下げ)によって「コウ」と読む言葉が細かく区別されていました。ところが日本語に取り入れる際に声調が失われ、たくさんの言葉が「こう」という同じ音にまとまってしまったのです。
さらに明治以降、西洋の概念を翻訳するために新しい熟語が次々と作られたことも、同音異義語が増えた一因とされています。「化学」と「科学」のように、近い分野の言葉が同じ音になってしまった例もあります。
・多い理由=漢語の輸入で声調が消え、同じ音に集中したため
・漢字で書き分けるのが日本語の知恵
間違えやすい同音異義語【書き分け頻出16組】

まずは、ビジネス文書や試験で「どっち?」と迷いやすい定番から。意味の核を押さえれば、もう間違えません。
1. ほしょう ── 保証/保障/補償
「保証」は確かだと請け合うこと(品質保証)。「保障」は地位や権利を守ること(社会保障)。「補償」は損害を金銭などで埋め合わせること(損害補償)。
例文:メーカーが品質を保証し、事故の損害は会社が補償する。
2. たいしょう ── 対象/対称/対照
「対象」は相手・目標(調査対象)。「対称」は釣り合い・シンメトリー(左右対称)。「対照」は比べること(好対照)。
例文:二人の性格は対照的で、調査の対象としても興味深い。
3. かんしん ── 関心/感心/歓心
「関心」は興味(関心が高い)。「感心」は感服すること(行いに感心する)。「歓心」は相手の喜ぶ気持ち(歓心を買う)。
例文:環境問題に関心を持つ彼の姿勢には感心させられる。
4. いし ── 意思/意志/遺志/医師
「意思」は考え・思い(本人の意思)。「意志」は意欲・やり抜く心(強い意志)。「遺志」は故人の志。「医師」はお医者さん。
例文:本人の意思を尊重し、強い意志で治療に臨む。
5. いどう ── 異動/移動/異同
「異動」は地位や職務が変わること(人事異動)。「移動」は場所を動かす・動くこと。「異同」は違い(異同を比べる)。
例文:人事異動で部署を移動することになった。
6. かいとう ── 回答/解答
「回答」は質問や要求への返事(アンケートの回答)。「解答」は問題の答え(試験の解答)。
例文:問い合わせに回答し、テストの解答を配る。
7. かてい ── 過程/課程/仮定/家庭
「過程」はプロセス(成長の過程)。「課程」は学習のカリキュラム(博士課程)。「仮定」はもし~とすること。「家庭」は家族の集まり。
例文:研究の過程で、ある仮定が正しいと分かった。
8. かくりつ ── 確率/確立
「確率」は起こりやすさの割合(成功確率)。「確立」はしっかりと定まること(地位を確立する)。
例文:成功する確率を上げ、独自の地位を確立する。
9. きてい ── 規定/規程
「規定」は個々の定め(規定の時間)。「規程」は規則のまとまった体系(就業規程)。
例文:服務規程に、休暇の規定が記されている。
10. せいさく ── 制作/製作
「制作」は芸術・番組などを作ること(映像制作)。「製作」は機械や道具で工業的に作ること(部品の製作)。映画は慣用的に「製作(出資)」と「制作(現場)」を使い分けます。
例文:工場で部品を製作し、PR動画を制作する。
11. しゅうしゅう ── 収集/収拾
「収集」は集めること(切手の収集)。「収拾」は混乱をおさめること(事態を収拾する)。
例文:情報を収集して、混乱した事態を収拾する。
12. たいせい ── 体制/態勢/体勢/大勢/耐性
「体制」は組織の仕組み(経営体制)。「態勢」は身構え・準備(受け入れ態勢)。「体勢」は体の姿勢(体勢を崩す)。「大勢(たいせい)」は大きな成り行き(大勢は決した)。「耐性」は耐える力。
例文:受け入れ態勢を整え、新しい体制で臨む。
13. ついきゅう ── 追求/追究/追及
「追求」は手に入れようと求めること(利益の追求)。「追究」は深く明らかにすること(真理の追究)。「追及」は責任などを問い詰めること(責任を追及する)。
例文:利益を追求しつつ、原因を追究する。
14. へいこう ── 平行/並行/平衡/閉口
「平行」は交わらない直線(平行線)。「並行」は同時に進めること(並行作業)。「平衡」はバランス(平衡感覚)。「閉口」は困り果てること。
例文:二つの議論は平行線で、進行役も閉口した。
15. しょうがい ── 障害/生涯/傷害
「障害」は妨げ(障害物)。「生涯」は一生(生涯学習)。「傷害」は人を傷つける罪(傷害事件)。
例文:生涯をかけて、社会の障害を取り除く活動を続けた。
16. せいさん ── 清算/精算/生産/成算
「清算」は貸し借りや関係を整理すること(借金の清算)。「精算」は金額を細かく計算し直すこと(運賃の精算)。「生産」は作り出すこと。「成算」は成功の見込み。
例文:交通費を精算し、過去のしがらみを清算する。
日常でよく使う同音異義語14組
続いて、ニュースや会話で毎日のように登場する身近な同音異義語です。なんとなく使っている言葉も、改めて意味を確認してみましょう。
17. かがく ── 科学/化学
「科学」は自然や社会を体系的に研究する学問全般。「化学」は物質の構造や変化を扱う一分野。区別のため化学を「ばけがく」と呼ぶこともあります。
例文:化学は科学の一分野です。
18. しりつ ── 私立/市立
「私立」は民間が運営(私立大学)。「市立」は市が運営(市立図書館)。どちらも「しりつ」なので、区別のため私立を「わたくしりつ」、市立を「いちりつ」と読み分けることがあります。
例文:市立高校から私立大学へ進学した。
19. こうえん ── 公園/講演/公演/後援
「公園」は憩いの場。「講演」は人前で話すこと。「公演」は演劇や音楽の上演。「後援」は活動を支援すること。
例文:公園のホールで、市が後援する講演会が開かれた。
20. きこう ── 気候/機構/寄稿/紀行
「気候」は気象の傾向。「機構」は組織の仕組み。「寄稿」は原稿を寄せること。「紀行」は旅の記録。
例文:温暖な気候の島を訪れ、雑誌に紀行文を寄稿した。
21. しじ ── 支持/指示/師事
「支持」は賛成して支えること(支持率)。「指示」は指図すること。「師事」は師として教えを受けること。
例文:上司の指示に従い、政策を支持する。
22. かんしょう ── 鑑賞/観賞/干渉/感傷
「鑑賞」は芸術を味わうこと(映画鑑賞)。「観賞」は見て楽しむこと(観賞用の魚)。「干渉」は立ち入って口を出すこと。「感傷」はもの悲しい気持ち。
例文:名画を鑑賞し、つい感傷にひたる。
23. かんせい ── 完成/歓声/感性/管制
「完成」は仕上がること。「歓声」は喜びの声。「感性」は感じ取る心。「管制」は管理し制限すること(管制塔)。
例文:作品の完成に、観客から歓声が上がった。
24. ようけん ── 用件/要件
「用件」は伝えたい用事の中身。「要件」は必要な条件(応募要件)。
例文:採用の要件を確認し、用件を手短に伝える。
25. しょうかい ── 紹介/照会
「紹介」は引き合わせること。「照会」は問い合わせて確かめること(在庫照会)。
例文:取引先を紹介し、残高を銀行に照会する。
26. いがい ── 意外/以外
「意外」は思いがけないこと。「以外」はそれを除いたほかのもの。
例文:彼以外は全員賛成という、意外な結果になった。
27. こうせい ── 公正/構成/校正/厚生/更生
「公正」は偏りがなく正しいこと。「構成」は組み立て。「校正」は文章の誤りを直すこと。「厚生」は生活を豊かにすること(福利厚生)。「更生」は立ち直ること。
例文:原稿を校正し、公正な審査で章の構成を決める。
28. せいか ── 成果/生花/青果/聖火/製菓
「成果」は結果・実り。「生花」は生きた花・いけばな。「青果」は野菜と果物。「聖火」はオリンピックの火。「製菓」はお菓子作り。
例文:研究の成果を、製菓会社が商品化した。
29. しんちょう ── 身長/慎重/伸長/新調
「身長」は背の高さ。「慎重」は注意深いこと。「伸長」は伸びること。「新調」は新しく作ること。
例文:慎重に検討し、スーツを一着新調した。
30. じてん ── 辞典/事典/時点/自転/次点
「辞典」は言葉の意味を引く本。「事典」は事柄を解説する本(百科事典)。「時点」はその時。「自転」は自ら回ること。「次点」は次の順位。
例文:その時点では、国語辞典と百科事典を引き比べていた。

意味が全く違って面白い同音異義語12組

ここからは、同じ音なのに意味がまるで違って、思わずクスッとしてしまう同音異義語です。日本語の奥深さと遊び心が詰まっています。
31. はし ── 橋/箸/端
「橋」は川にかける橋、「箸」は食事の箸、「端」はものの端っこ。実は標準語ではアクセント(音の高低)で区別しており、「箸」は頭高、「橋」は尾高に発音されます。
例文:橋の端に立って箸を落とした。
32. あめ ── 雨/飴
空から降る「雨」と、甘い「飴」。これもアクセントで区別され、「雨」は頭を高く、「飴」は平らに発音するのが標準的です。
例文:雨の日は、子どもに飴を一つ。
33. かみ ── 神/紙/髪
「神」「紙」「髪」はすべて「かみ」。古代では神聖なものとして共通のイメージがあったとも言われますが、語源は別という説が有力です。
例文:神社で髪を整え、お札という紙を受け取る。
34. はな ── 花/鼻
咲く「花」と、顔の「鼻」。「花よりだんご」「鼻が高い」など、どちらも慣用句の主役になりやすい言葉です。
例文:花の香りを鼻いっぱいに吸い込む。
35. かき ── 柿/牡蠣
秋の果物「柿」と、海の幸「牡蠣」。同じ「かき」でも、こちらもアクセントで区別します。外国人泣かせの代表例としても有名です。
例文:柿は木に実り、牡蠣は海で育つ。
36. くも ── 雲/蜘蛛
空に浮かぶ「雲」と、巣を張る「蜘蛛」。「くもの巣」と言えば普通は蜘蛛ですが、音だけなら雲とも取れる愉快な一語です。
例文:雲ひとつない空に、蜘蛛が糸を伸ばす。
37. しお ── 塩/潮
調味料の「塩」と、海の「潮(しお)」。どちらも海に関わる言葉で、語源的にもつながりがあると考えられています。
例文:潮の満ち引きが、海の塩を運ぶ。
38. さけ ── 酒/鮭
飲む「酒」と、魚の「鮭」。北海道では鮭を「サケ」、本州では「シャケ」と呼ぶ地域差もあり、話題に事欠きません。
例文:鮭を肴に、熱燗の酒を一杯。
39. せいてん ── 青天/晴天
「青天」は青く晴れた空、「晴天」は晴れた天気。突然の出来事を表す「青天の霹靂(へきれき)」は、青空に突然雷が走る意味なので「晴天」ではなく「青天」が正解です。
例文:晴天に恵まれた朝、青天の霹靂の知らせが届いた。
40. きしゃ ── 記者/汽車/貴社/帰社
新聞「記者」、蒸気の「汽車」、相手を敬う「貴社」、会社に戻る「帰社」。「貴社の記者が汽車で帰社した」という文は、変換ソフトの精度を試す定番ネタとして知られています。
例文:貴社の記者が汽車で帰社した。
41. たい ── 鯛/対/隊
めでたい魚「鯛」、向かい合う「対」、集団の「隊」。「めでたい」の語呂から、鯛は祝い事の定番になりました。
例文:祝いの鯛を前に、二隊が一対で並ぶ。
42. いか ── 烏賊/以下/医科
海の「烏賊(いか)」、それより下を表す「以下」、医学の「医科」。会話では文脈がないと混乱する、ちょっと面白い三つ巴です。
例文:医科大学の学食で、烏賊の天ぷらが五百円以下だった。
漢字が3つ以上ある同音異義語10組
一つの読みに、漢字がずらりと並ぶ「多義」な同音異義語を集めました。数の多さに驚くはずです。
43. しんこう ── 信仰/進行/振興/新興/親交/侵攻
「信仰」は信じ敬うこと、「進行」は進むこと、「振興」は盛んにすること、「新興」は新しく興ること、「親交」は親しい交わり、「侵攻」は攻め入ること。
例文:地域の振興策が進行し、住民との親交も深まった。
44. こうか ── 効果/硬化/降下/高価/硬貨/校歌
「効果」は効き目、「硬化」は硬くなること、「降下」は降りること、「高価」は値段が高いこと、「硬貨」はコイン、「校歌」は学校の歌。
例文:薬の効果で熱が下がり、高価な薬も無駄にならなかった。
45. しこう ── 思考/嗜好/施行/志向/指向/試行
「思考」は考えること、「嗜好」は好み、「施行」は実施すること、「志向」は目指すこと、「指向」は方向を向けること、「試行」は試すこと。
例文:健康志向の高まりを受け、新しい制度が施行された。
46. きかん ── 期間/機関/器官/気管/帰還/基幹
「期間」は一定の時間、「機関」は組織や装置、「器官」は体の部分、「気管」は呼吸の管、「帰還」は帰ってくること、「基幹」は中心となること。
例文:研究機関が、消化器官の働きを一定期間調べた。
47. かんき ── 換気/喚起/歓喜/乾季
「換気」は空気の入れ替え、「喚起」は呼び起こすこと、「歓喜」は大きな喜び、「乾季」は雨の少ない季節。
例文:注意を喚起するため、部屋を換気して掲示を貼った。
48. きょうこう ── 強行/強硬/恐慌/教皇
「強行」は無理に行うこと、「強硬」は強い態度、「恐慌」は経済の混乱・パニック、「教皇」はローマ・カトリックの最高位。
例文:強硬な姿勢を崩さず、計画を強行した。
49. じき ── 時期/時機/磁器/次期/自記
「時期」はある時、「時機」はちょうどよいタイミング、「磁器」は焼き物、「次期」は次の期間、「自記」は自動で記録すること。
例文:時機を見て、次期の計画を発表する。
50. はっこう ── 発行/発光/発酵/発効/薄幸
「発行」は本や券を出すこと、「発光」は光ること、「発酵」は微生物の働き、「発効」は効力が生じること、「薄幸」は幸せが薄いこと。
例文:味噌が発酵するころ、新しい条約が発効した。
51. たいけい ── 体系/体型/大系/隊形
「体系」はまとまった組織立て、「体型」は体つき、「大系」は書物などの大きなまとまり、「隊形」は隊の並び方。
例文:理論を体系立てて整理し、一冊の大系にまとめた。
52. せいちょう ── 成長/生長/声調/整腸
「成長」は人や物事が育つこと、「生長」は植物が伸びること、「声調」は声の調子、「整腸」は腸の調子を整えること。
例文:子どもの成長と、植物の生長を見守る。

試験で差がつく紛らわしい同音異義語12組
最後は、一文字の違いで意味が大きく変わる、上級者向けの紛らわしい同音異義語です。ここまで使い分けられれば、語彙力はかなりのものです。
53. しょうきゃく ── 償却/消却/焼却
「償却」は費用を配分すること(減価償却)、「消却」は消し去ること、「焼却」は焼いて処分すること。
例文:書類を焼却し、設備の費用を償却する。
54. へんざい ── 偏在/遍在
「偏在」は一部にかたよって存在すること、「遍在」は広くあまねく存在すること。一文字違いで正反対の意味になる難物です。
例文:富が都市に偏在する一方、その文化は全国に遍在する。
55. ついとう ── 追悼/追討
「追悼」は故人をしのび悲しむこと、「追討」は敵を追って討つこと。式典で書き間違えると大変失礼になります。
例文:戦没者を追悼する式典が、静かに営まれた。
56. ようご ── 用語/養護/擁護
「用語」は専門の言葉、「養護」は健康を守り育てること(養護教諭)、「擁護」はかばい守ること(人権擁護)。
例文:専門用語を避け、子どもの権利を擁護する。
57. しんき ── 新規/神器/心気
「新規」は新しく始めること、「神器」は神聖な宝物(三種の神器)、「心気」は心の状態。
例文:新規事業を、三種の神器になぞらえて紹介した。
58. しょうすう ── 少数/小数
「少数」は数が少ないこと(少数派)、「小数」は1より小さい数(小数点)。算数でも混同が起きやすい組み合わせです。
例文:少数意見を尊重し、小数第二位まで計算する。
59. へいき ── 平気/兵器/併記
「平気」は落ち着いていること、「兵器」は武器、「併記」は並べて書くこと。
例文:英語と日本語を併記した案内を、平気な顔で配る。
60. かんち ── 感知/関知/完治
「感知」は感じ取ること(センサーが感知)、「関知」は関わり知ること(一切関知しない)、「完治」は完全に治ること。
例文:煙を感知した装置のおかげで、被害なく事は完治に向かった。
61. ほうふ ── 豊富/抱負
「豊富」はたっぷりあること、「抱負」は心に抱く決意や目標。新年の挨拶で混同しがちです。
例文:経験が豊富な彼は、今年の抱負も具体的だった。
62. しんろ ── 進路/針路
「進路」は進んでいく道(進路相談)、「針路」は船や航空機の進む方向。
例文:進路に悩む生徒に、船の針路を例に話した。
63. きょうそう ── 競争/競走/狂騒
「競争」は競い合うこと、「競走」は走って速さを競うこと(徒競走)、「狂騒」は狂ったような騒ぎ。
例文:徒競走の前から、応援席は競争心で熱気にあふれた。
64. ふよう ── 扶養/不要/不用/浮揚
「扶養」は養うこと(扶養家族)、「不要」は必要ないこと、「不用」は使わないこと(不用品)、「浮揚」は浮き上がること(景気浮揚)。
例文:不要な手続きを省き、扶養の申請を済ませた。
日本一同音異義語が多い言葉は「こうしょう」

ここで、同音異義語の「王様」を紹介します。日本語でもっとも同音異義語が多いとされる読みが、「こうしょう」です。
『大辞林』などの大型国語辞典では、「こうしょう」と読む言葉がなんと48語も収録されています。代表的なものを挙げるだけでも、これだけあります。
交渉・考証・高尚・鉱床・口承・厚相・哄笑・公称・工廠・公証・公娼・校章・好尚・行賞・工匠・公傷・咬傷・甲状(腺)……。意味を知らない言葉も混じっているのではないでしょうか。
「交渉(話し合い)」「高尚(上品で程度が高い)」「口承(口で語り伝えること)」あたりは日常でも使いますが、「工廠(軍需工場)」や「公娼」のように、現代ではほとんど見かけない歴史的な言葉も含まれています。
このように一つの音に大量の言葉が集中するのは、漢語を大量に取り込んだ日本語の特徴がもっとも極端に表れた例といえます。会話で「こうしょう中です」とだけ言われたら、文脈なしには絶対に意味が取れませんね。
同音異義語クイズ10問に挑戦
ここまでの内容を踏まえて、腕試しのクイズです。空欄に入る正しい漢字を考えてみてください。答えはすぐ下のボックスにあります。
Q1. 会議の出席者を調査の(たいしょう)とする。
Q2. メーカーが製品の品質を(ほしょう)する。
Q3. アンケートのご(かいとう)ありがとうございます。
Q4. 真理を(ついきゅう)する研究者の姿勢。
Q5. 美術館で名画を(かんしょう)する。
Q6. 新しい経営(たいせい)が発足した。
Q7. 事態を(しゅうしゅう)するのに苦労した。
Q8. 福利(こうせい)が充実した会社。
Q9. 来年の(ほうふ)を語る。
Q10. 富が一部地域に(へんざい)している。
Q1. 対象(調査の相手・目標)
Q2. 保証(確かだと請け合う)
Q3. 回答(質問への返事)
Q4. 追究(深く明らかにする)
Q5. 鑑賞(芸術を味わう)
Q6. 体制(組織の仕組み)
Q7. 収拾(混乱をおさめる)
Q8. 厚生(生活を豊かにする)
Q9. 抱負(心に抱く目標)
Q10. 偏在(一部にかたよって存在)

同音異義語を正しく使い分けるコツ
たくさんの同音異義語を、どう覚えて使い分ければいいのでしょうか。丸暗記に頼らず、仕組みで攻略する3つのコツを紹介します。
コツ1:漢字一文字の「意味」に立ち返る
熟語に含まれる漢字の意味を分解すると、自然と正解が見えてきます。たとえば「ほしょう」なら、「証(あかし)」がある保証は請け合い、「障(さわり=守る)」がある保障は守ること、「補(おぎなう)」がある補償は埋め合わせ、という具合です。
コツ2:意味の近い別の言葉に言い換える
迷ったら、文の意味を別の言葉で言い換えてみましょう。「制作/製作」なら、「クリエイトする」なら制作、「マニュファクチャーする」なら製作、と英語に置き換えると区別しやすくなります。
コツ3:ペアで例文を作って覚える
「以外/意外」のように紛らわしいものは、両方を使った一文をセットで覚えるのが効果的です。「彼以外は全員、意外な顔をした」のように、対比で記憶すると忘れにくくなります。
こうした語彙の感覚は、ふだん使う言葉を意識するだけでも磨かれていきます。言葉の意味や誤用に興味がわいた方は、以下の記事もあわせてどうぞ。
同音異義語と同訓異字・異字同訓の違い
同音異義語とよく似た言葉に、「同訓異字(どうくんいじ)」があります。混同しやすいので、ここで整理しておきましょう。
同音異義語は、「音読みも含めて発音が同じで、意味の異なる別々の言葉」です(例:こうえん→公園・講演)。それぞれが独立した別の語である点がポイントです。
一方同訓異字(異字同訓)は、「同じ訓読みを持つ、意味の近い漢字の書き分け」を指します。一つの和語をニュアンスで書き分けるイメージです。代表例を挙げます。
おさめる……収める(中に入れる)/納める(納入する)/治める(統治する)/修める(学び身につける)。
かえる……変える(変化させる)/替える(別のものにする)/換える(交換する)/代える(代理を立てる)。
あう……会う(人と会う)/合う(一致する)/遭う(好ましくない事態にあう)。
みる……見る(目で見る)/観る(鑑賞する)/診る(診察する)。
文化庁は「『異字同訓』の漢字の使い分け例」という指針を公開しており、こうした書き分けの考え方をまとめています。迷ったときの拠りどころになるので、覚えておくと安心です。
同音異義語についてよくある質問(Q&A)
Q1. 同音異義語が日本語にとくに多いのはなぜですか?
中国から音読みの漢語を大量に取り入れた際に、もとは声調で区別されていた言葉が同じ音にまとまってしまったことが最大の理由です。さらに明治期に翻訳語が増えたことも拍車をかけました。
Q2. 同音異義語と同音語は同じ意味ですか?
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には「同音語」が発音の同じ語全般を指し、その中でとくに意味が異なるものを「同音異義語」と呼びます。日常では同音異義語という言い方が一般的です。
Q3. 書き分けに迷ったとき、手早く確かめる方法は?
国語辞典や変換ソフトの語義表示を使うのが確実です。多くの辞書アプリは、変換候補に「保証(請け合う)」のように簡単な語義を添えてくれます。提出前のひと手間で誤用を防げます。
Q4. アクセントで区別する同音異義語にはどんな例がありますか?
「橋・箸・端」「雨・飴」「柿・牡蠣」などが代表例です。文字では同じでも、標準語では音の高低(アクセント)で意味を区別しています。方言ではこのアクセントが異なる地域もあります。
まとめ
同音異義語を64組、使い分けと例文つきで紹介しました。
「保証・保障・補償」のような書き分けの定番は、漢字一文字の意味に立ち返れば迷いません。
「橋・箸・端」のようにアクセントで区別するものや、「こうしょう」が48語もあるという事実には、日本語の奥深さと面白さが詰まっています。
同音異義語は、知っているだけで文章の精度と説得力が上がる「大人の教養」です。今日気になった一組だけでも、意味の核を覚えて帰ってください。きっと明日からの文章が、少し変わるはずです。


