ソロモン72柱の悪魔一覧!序列・階級・軍団数からバエル・アスモデウスまで全72体を徹底解説

「バエル」「アスモデウス」「ベリアル」。ゲームやアニメ、漫画、ライトノベルで一度は目にしたことのある、どこかかっこいい悪魔の名前。じつはその多くが、ソロモン72柱と呼ばれる悪魔たちを元ネタにしています。

ソロモン72柱とは、古代イスラエルの賢王ソロモンが使役したと伝わる72体の悪魔のこと。17世紀の魔術書『ゴエティア』に、その名前・序列・階級(位階)・軍団数までもが事細かに記されています。

この記事では、ソロモン72柱の悪魔を全72体まとめた完全一覧表に加えて、バエルやアスモデウスといった有名な魔神を序列順に徹底解説します。位階のしくみや軍団数の意味、「七つの大罪」との関係、元ネタの歴史まで丸ごと分かる保存版です。

中二病心をくすぐる悪魔の名前たち。由来や能力を知ると、好きなゲームや小説の世界がぐっと深く読めるようになりますよ。

ソロモン72柱の悪魔とは?ゴエティアに記された魔神たち

ソロモン72柱の悪魔が記された魔術書グリモワールのイメージ

ソロモン72柱の悪魔とは、旧約聖書に登場するイスラエルの王ソロモンが、神から授かった力で使役・封印したと伝えられる72体の悪魔の総称です。その名簿と召喚方法を記したのが、魔術書『ゴエティア』(Goetia)になります。

ゴエティアは単独の本ではなく、『レメゲトン(ソロモンの小さな鍵)』と呼ばれる魔術書の第1部にあたります。「レメゲトン」は作者不明のまま17世紀ごろに編まれたグリモワール(魔術の手引書)で、次の5部構成になっています。

  • 第1部 ゴエティア……72柱の悪魔の名簿と召喚・使役の方法
  • 第2部 テウルギア・ゴエティア……方位を司る善悪入りまじった霊の召喚法
  • 第3部 アルス・パウリナ(パウロの術)……時刻・星位に対応する天使の術
  • 第4部 アルス・アルマデル……天の四方を司る高位の霊を扱う術
  • 第5部 アルス・ノトリア……記憶力や学問を得るための祈祷術

このうち、もっとも有名で人気が高いのが第1部のゴエティアです。ここに72体の悪魔それぞれの姿・能力・序列・位階・統べる軍団の数、そして悪魔を呼び出すための魔法円や印章(シジル)のデザインが収められています。

ソロモン王とは
紀元前10世紀ごろのイスラエル王国の王。父ダビデの跡を継ぎ、神から「知恵」を授かった賢王として知られます。一方で、指輪の魔力で悪魔や精霊を意のままに操り、エルサレム神殿の建設に使役したという伝説が中世以降に膨らみ、数々の魔術書の「権威」として名前が借用されました。

ソロモン王と「真鍮の壺」の伝説

72柱の悪魔がなぜ世に知られているのか。その背景には、有名な「真鍮の壺(しんちゅうのつぼ)」の伝説があります。

伝説によれば、ソロモン王は神から授かった魔法の指輪の力で悪魔たちを次々と屈服させ、ベリアル・ベレト・アスモダイ・ガープを長とする悪魔の軍団を、ひとつの大きな真鍮の壺に封じ込めました。そして聖なる力でその壺をバビロンの深い湖(あるいは穴)の底へと沈めたといいます。

ところが後世、湖でこの壺を見つけたバビロンの人々が、「中に財宝が入っているのでは」と期待して壺を壊してしまいます。こうして72柱の悪魔は再び地上へ解き放たれた、というのが物語の筋書きです。封印が解けたからこそ、人は彼らの名を知り、再び呼び出せるようになった、というわけですね。

「財宝だと思って開けたら悪魔が出てきた」。パンドラの箱を思わせる、なんとも示唆に富んだ伝説です。

ソロモン72柱の悪魔の「階級(位階)」と序列・軍団数を解説

悪魔を呼び出すための魔法円と印章シジルのイメージ

ソロモン72柱を理解するうえで欠かせないのが、「序列」「位階(階級)」「軍団数」という3つの数字です。一覧表を見る前に、まずこの3つの意味を押さえておきましょう。

序列=強さの順位ではない

悪魔にはそれぞれ1番から72番までの序列がふられています。ここで多くの人が誤解しがちなのですが、序列は「強さ順」ではありません。これはゴエティアに記載された順番、すなわちソロモン王に封印された順序とされ、番号が若いほど強い、というわけではないのです。

たとえば序列1番のバエルが統べる軍団は66。一方で序列9番のパイモンは200もの軍団を率いており、軍団数だけ見ればパイモンのほうが上です。序列はあくまで名簿の並び順だと考えてください。

位階=悪魔の社会の「爵位」

72柱の悪魔には、人間の貴族社会のような位階(爵位)が与えられています。ゴエティアと、その元になった『悪魔の偽王国』では、次の7つの位階が記されています。

王・君主・公爵・侯爵・伯爵・騎士・総裁の7つです。複数の位階を兼ねる悪魔もいますが、これは現実の貴族にも見られることなので不思議ではありません。さらにマサース版の『ゴエティア』では、各悪魔の印章に用いる金属まで位階ごとに対応づけられています。

位階 性格・役割の傾向 印章の金属 代表的な悪魔
王(おう) 地獄の支配者。他の悪魔を統率する最高位 バエル・パイモン・ベレト・アスモデウス・ベリアル
君主(くんしゅ) 特定の領域を支配し、その分野の知識を持つ ウァサゴ・シトリー・ストラス・オロバス
公爵(こうしゃく) 多くの軍団を率いる強力な実力者 銅(赤銅) アガレス・アスタロト・ダンタリオン
侯爵(こうしゃく) 戦・知識・魔法など幅広い分野に通じる アモン・マルコシアス・フェニックス
伯爵(はくしゃく) 侯爵に次ぐ位。多彩な術を操る 銅と銀の合金 ハルファス・ラウム・アンドロマリウス
騎士(きし) 72柱中ただ1柱のみの希少な位階 フルカス(序列50番)
総裁(そうさい) 知識・技術・行政能力にすぐれた実務派 水銀 マルバス・ブエル・マルファス

位階のなかで興味深いのが、騎士はフルカス(序列50番)ただ1柱しかいないという点です。72柱のなかでもっともレアな位階というわけですね。

軍団数=従える悪魔の規模

軍団数とは、その悪魔が配下に従えている悪魔の軍団の数です。1軍団がどれほどの規模かは諸説ありますが、数が多いほど強大な悪魔とされる目安になります。最多はパイモンの200軍団、次いでベレトの85軍団、ベリアルの80軍団と続きます。

数字には写本ごとの違いがあります
ソロモン72柱の悪魔の「軍団数」や「位階」は、もとになった写本や翻訳(ヴァイヤー版・マサース版など)によって数値が少しずつ異なります。本記事ではもっとも広く知られるマサース版『ゴエティア』の数値を基準にしています。資料によって「30軍団」が「3軍団」と記されるなど差があるのは、こうした事情によるものです。

ソロモン72柱の有名な悪魔を序列順に解説【バエル〜アンドロマリウス】

地獄の辞典に描かれたソロモン72柱の悪魔カイム序列53番の銅版画

ここからは、ソロモン72柱のなかでも特に人気が高く、創作にもよく登場する有名な悪魔を序列順にピックアップして解説します。全72体は次章の一覧表にまとめているので、まずは「顔ぶれ」を押さえていきましょう。

序列1番 バエル(Bael/王・66軍団)

72柱の筆頭をかざる、地獄の東方を支配する偉大な王。猫・蛙(ひきがえる)・人間という3つの頭を持ち、しわがれた声で話すとされます。召喚者に姿を消す(不可視になる)術を授けるのが得意。その名は、古代カナンやフェニキアで崇拝された豊穣神「バアル」に由来し、異教の神が悪魔へとおとしめられた典型例として知られています。

序列2番 アガレス(Agares/公爵・31軍団)

ワニにまたがり、腕に鷹をとまらせた老人の姿で現れる公爵。あらゆる言語を教え、逃げ去った者を呼び戻し、地位を与える力を持ちます。怒れば地震を引き起こすともいわれ、温厚そうな見た目とのギャップが魅力の悪魔です。

序列5番 マルバス(Marbas/総裁・36軍団)

最初は獰猛なライオンの姿で現れ、求めに応じて人間の姿に変わる総裁。あらゆる病を癒し、あるいは病をもたらすという二面性を持ちます。機械技術や隠された秘密に関する知識を授け、人を別の姿に変える変身の術にも通じています。

序列7番 アモン(Amon/侯爵・40軍団)

炎を吐く狼の体に、蛇の尾を持つ姿で現れる侯爵。求めればフクロウの頭を持つ人の姿にもなります。過去と未来を見通し、争う者どうしを仲直りさせる力を持ちます。その名はエジプトの最高神アメン(アモン)に由来するとされ、これもまた神の悪魔化の一例です。

序列9番 パイモン(Paimon/王・200軍団)

72柱中で最多となる200軍団を率いる大王。堕天使ルシファーにもっとも忠実に従う悪魔とされ、ラクダにまたがり王冠をいただいた男の姿で、ラッパや楽器の高らかな音とともに現れます。あらゆる学問と芸術を授け、地上のあらゆる事柄、海や風の秘密までも教えるという、まさに王の風格をそなえた一柱です。

序列13番 ベレト(Beleth/王・85軍団)

蒼ざめた馬にまたがり、無数の楽器を鳴り響かせながら現れる恐ろしい王。召喚には細心の注意が必要とされ、油断すると術者に危害を加えるといわれます。その力は男女のあいだに愛をかき立てること。怒りっぽい性格を、ハシバミの杖でなだめる作法まで伝えられています。

序列29番 アスタロト(Astaroth/公爵・40軍団)

毒蛇を手にし、地獄のドラゴンにまたがった、けがらわしい姿の天使として現れる公爵。口からは恐ろしい悪臭を放つとされます。過去・現在・未来を答え、天使がいかにして堕落したかという秘密まで語るといいます。その名は、フェニキアの女神アスタルテ(イシュタル)に由来します。後述する「七つの大罪」の怠惰に対応づけられることもある、有名な悪魔です。

序列32番 アスモデウス(Asmodeus/王・72軍団)

牡牛・人・牡羊の3つの頭を持ち、蛇の尾を引きずり、火を吐く竜にまたがって現れる王。手には軍旗と槍を携えています。数学・天文学・幾何学・あらゆる技芸を完璧に教え、隠された財宝のありかを示します。旧約聖書外典『トビト記』にも登場する非常に古い悪魔で、後世には「色欲」を司る大悪魔として広く知られるようになりました。

序列33番 ガープ(Gaap/君主・66軍団)

真鍮の壺に封じられた四長の一柱。哲学とあらゆる学問を教え、人の心に愛や憎しみを生じさせます。人をすばやく別の場所へ運ぶ瞬間移動の力でも知られ、召喚者に使い魔を与えることもあります。

序列37番 フェニックス(Phenex/侯爵・20軍団)

不死鳥フェニックスの姿で現れ、子どものように美しい声で歌う侯爵。その歌声に聞きほれてしまわないよう、術者は注意せねばなりません。詩や学問の才を授けます。1200年後には天使の第一階級へ復帰できると信じ、その日を待ちわびているという、どこか物悲しい伝承を持つ人気の悪魔です。

序列45番 ヴィネ(Vine/王・伯爵・36軍団)

王と伯爵の位を兼ねる悪魔。獅子の姿で黒馬にまたがり、手には蛇を握って現れます。隠された物事や魔女を暴き、過去・現在・未来を告げ、術者の求めに応じて城壁を崩し、嵐を呼び起こすといわれます。

序列51番 バラム(Balam/王・40軍団)

牡牛・人・牡羊の3つの頭に、燃えるような目をたたえ、熊にまたがって腕に鷹をとまらせた王。蛇の尾を持つともされます。過去・現在・未来を答え、人を不可視にし、機知を授ける力を持ちます。

序列68番 ベリアル(Belial/王・80軍団)

真鍮の壺の四長の一柱で、ルシファーの次に創造されたと伝わる高位の悪魔。炎の戦車に乗った美しい二人の天使の姿で現れ、麗しい声で語ります。高い地位や他者からの寵愛を授けますが、見返りに供物を求めるとされ、契約には注意が必要です。死海文書では「闇の子らの君主」として登場する、聖書的にも由緒ある名前です。

序列71番 ダンタリオン(Dantalion/公爵・36軍団)

無数の人間の顔を持ち、手には1冊の書物をたずさえて現れる公爵。あらゆる人間の心と思考を読み取り、それを自在に変えてしまう力を持ちます。さらに、見たいと願う相手の幻影を術者に見せることもできるとされる、ミステリアスな悪魔です。

序列72番 アンドロマリウス(Andromalius/伯爵・36軍団)

72柱の最後をしめくくる伯爵。大きな蛇を手にした男の姿で現れます。その力はユニークで、盗人を捕らえ、盗まれた品を取り戻し、隠された悪事や不正をあばいて罰するという、まるで正義の味方のような悪魔です。掉尾を飾るにふさわしい一柱といえるでしょう。

「病を癒す」「財宝を示す」「正義を行う」。悪魔といっても恐ろしいだけでなく、人に恩恵をもたらす存在として描かれているのが、ゴエティアの面白いところです。

ソロモン72柱の悪魔・完全一覧表(全72体の序列・階級・軍団数)

お待たせしました。ソロモン72柱の悪魔を序列1番から72番まで全て、名前(読み・英名)・位階・軍団数・司るものとともに一覧表にまとめます。スマートフォンでは表を横にスクロールしてご覧ください。

序列 名前(読み) 英名 位階 軍団 主に司るもの
1 バエル Bael 66 不可視の術、東方の支配
2 アガレス Agares 公爵 31 言語、逃亡者の帰還、地震
3 ウァサゴ Vassago 君主 26 過去と未来、失せ物探し
4 ガミジン Gamigin 侯爵 30 死者の魂を呼ぶ、学問
5 マルバス Marbas 総裁 36 病の治癒と付与、機械技術
6 ウァレフォル Valefor 公爵 10 盗み、忠実な使い魔
7 アモン Amon 侯爵 40 過去と未来、不和と和解
8 バルバトス Barbatos 公爵 30 動物の言葉、隠された財宝
9 パイモン Paimon 200 学問と芸術、地上の知識
10 ブエル Buer 総裁 50 哲学、薬草、治療
11 グシオン Gusion 公爵 40 過去現在未来、名誉と和解
12 シトリー Sitri 君主 60 愛欲をかき立てる
13 ベレト Beleth 85 男女の愛をかき立てる
14 レラジェ Leraje 侯爵 30 争い、戦い、傷の化膿
15 エリゴス Eligos 公爵 60 戦争、隠し事、未来
16 ゼパル Zepar 公爵 26 愛、女性を不妊にする
17 ボティス Botis 総裁/伯爵 60 過去未来、敵との和解
18 バティン Bathin 公爵 30 薬草と宝石、瞬間移動
19 サレオス Sallos 公爵 30 男女の愛、平和的
20 プルソン Purson 22 隠された財宝、過去未来
21 モラクス Morax 伯爵/総裁 30 天文学・教養、薬草と宝石
22 イポス Ipos 伯爵/君主 36 未来、機知と勇気
23 アイム Aim 公爵 26 放火、機知
24 ナベリウス Naberius 侯爵 19 弁論と学問、失った地位
25 グラシャ=ラボラス Glasya-Labolas 総裁/伯爵 36 殺人、流血、不可視
26 ブネ Bune 公爵 30 富、雄弁、死者を移す
27 ロノウェ Ronove 侯爵/伯爵 19 語学、修辞、忠実な召使い
28 ベリト Berith 公爵 26 錬金術(卑金属を金に)
29 アスタロト Astaroth 公爵 40 過去現在未来、堕天の秘密
30 フォルネウス Forneus 侯爵 29 修辞、語学、好印象
31 フォラス Foras 総裁 29 論理学・倫理学、薬草、不可視
32 アスモデウス Asmoday 72 数学・幾何・天文、財宝、色欲
33 ガープ Gaap 君主/総裁 66 哲学と諸学、瞬間移動
34 フルフル Furfur 伯爵 26 夫婦愛、雷と嵐
35 マルコシアス Marchosias 侯爵 30 戦い、強き戦士
36 ストラス Stolas 君主 26 天文学、薬草と宝石
37 フェニックス Phenex 侯爵 20 詩と美声、学問
38 ハルファス Halphas 伯爵 26 塔と武器庫、兵士を送る
39 マルファス Malphas 総裁 40 砦と塔の建設、敵の企てを暴く
40 ラウム Raum 伯爵 30 富を盗む、破壊、和解
41 フォカロル Focalor 公爵 30 海と風、難破と溺死
42 ウェパル Vepar 公爵 29 海の案内、嵐、傷を腐らせる
43 サブナック Sabnock 侯爵 50 砦と塔、傷の化膿
44 シャックス Shax 侯爵 30 感覚を奪う、馬や金を奪う
45 ヴィネ Vine 王/伯爵 36 隠し事・魔女を暴く、城壁を崩す
46 ビフロンス Bifrons 伯爵 6 占星術・幾何、死者を移す
47 ウヴァル Vual 公爵 37 女性の愛、過去現在未来、友好
48 ハーゲンティ Haagenti 総裁 33 賢者の石、水を葡萄酒に
49 クロケル Crocell 公爵 48 幾何と水の術、隠れた水を温める
50 フルカス Furcas 騎士 20 哲学・占星術・修辞・手相
51 バラム Balam 40 過去現在未来、不可視、機知
52 アロケル Alloces 公爵 36 天文学・教養、軍団を率いる
53 カイム Caim 総裁 30 動物や水音の理解、論争
54 ムルムル Murmur 公爵/伯爵 30 哲学、死者の魂を呼ぶ
55 オロバス Orobas 君主 20 過去現在未来、神性、忠実
56 グレモリー Gremory 公爵 26 過去現在未来、女性の愛、財宝
57 オセ Ose 総裁 30 学問、人を狂わせる
58 アミー Amy 総裁 36 占星術・教養、財宝の在処
59 オリアス Orias 侯爵 30 占星術、変身、地位と寵愛
60 ウァプラ Vapula 公爵 36 哲学・技術・科学
61 ザガン Zagan 王/総裁 33 賢者の石、水を葡萄酒に、変身
62 ウァラク Valac 総裁 38 隠された財宝、蛇を見つける
63 アンドラス Andras 侯爵 30 不和と殺戮を招く
64 フラウロス Flauros 公爵 36 過去現在未来、敵を滅ぼす
65 アンドレアルフス Andrealphus 侯爵 30 幾何・測量・天文、人を鳥に変える
66 キマリス Cimeies 侯爵 20 文法・論理・修辞、失せ物
67 アムドゥスキアス Amduscias 公爵 29 音楽、木々を従わせる
68 ベリアル Belial 80 高位と寵愛、ルシファーの次に創造
69 デカラビア Decarabia 侯爵 30 鳥と宝石の力、使い魔の鳥
70 セーレ Seere 君主 26 瞬間移動、盗品の発見
71 ダンタリオン Dantalion 公爵 36 人の心と思考を読む、幻影
72 アンドロマリウス Andromalius 伯爵 36 盗人を捕らえ、悪を罰する

こうして全72体を見渡すと、「過去・現在・未来を答える」「学問を授ける」「愛をかき立てる」「財宝のありかを示す」といった役割が多いことに気づきます。中世の人々が悪魔に何を期待していたのか、その価値観までうかがえる、興味深い名簿です。

ソロモン72柱に入らない有名な悪魔と「七つの大罪」

ここで一つ、よくある疑問にお答えします。「ルシファーやサタン、ベルゼブブはソロモン72柱に入っていないの?」というものです。

答えは「入っていない」。これらの超大物悪魔は、72柱よりもさらに上位に位置づけられる別格の存在とされ、ゴエティアの72体には含まれていません。彼らを束ねるのが、有名な「七つの大罪」の枠組みです。

1589年、ドイツの神学者ペーター・ビンスフェルトは、人間を罪へと誘う「七つの大罪」に、それぞれを象徴する悪魔を対応づけました。それが次の7体です。

大罪 悪魔 特徴
傲慢(しょうまん) ルシファー 神に反逆して堕とされた、最も美しかった堕天使
憤怒(ふんぬ) サタン 神に敵対する者の総称。赤い竜の姿で描かれる
嫉妬(しっと) レヴィアタン 海に棲む巨大な怪物。旧約聖書に登場
怠惰(たいだ) ベルフェゴール 発明や工夫をそそのかし、人を怠けさせる
強欲(ごうよく) マモン 富や金銭への執着を象徴する
暴食(ぼうしょく) ベルゼブブ 「蠅の王」と呼ばれる、腐敗と過剰の象徴
色欲(しきよく) アスモデウス 情欲と不貞を司る。72柱にも序列32番で登場

面白いのは、アスモデウスだけは72柱(序列32番)にも七つの大罪にも名を連ねているという点です。それだけ重要で、古くから恐れられてきた悪魔だということですね。日本の妖怪と西洋の悪魔を見比べると、それぞれの文化が「目に見えない力」をどう物語にしてきたかが見えてきます。

西洋の悪魔に対して、日本に伝わる「もののけ」たちが気になった方は、以下の記事もあわせてどうぞ。

ソロモン72柱の悪魔の歴史と元ネタ|ヴァイヤーからクロウリーまで

17世紀の書物と蝋燭。ソロモン72柱の魔術書が編まれた時代のイメージ

「ソロモン王が72柱の悪魔を使役した」とはいっても、もちろん紀元前にこの名簿が完成していたわけではありません。72柱の悪魔のリストは、長い時間をかけて少しずつ形づくられたものです。その歴史をたどってみましょう。

原型は16世紀『悪魔の偽王国』

72柱の直接の原型とされるのが、1577年にオランダの医師ヨハン・ヴァイヤーが著書に収めた『悪魔の偽王国(プセウドモナルキア・ダエモヌム)』です。ここには69体の悪魔が、名前・地位・召喚に適した時刻とともに記されています。ゴエティアの72体のうち68体が、この偽王国に登場する悪魔と共通しています。

興味深いことに、ヴァイヤーは魔女狩りに反対した良心的な医師でした。彼は「悪魔召喚などばかげている」と示すために、あえて悪魔の名簿を事細かに書き連ねたともいわれます。皮肉にも、その目録が後世に「実用的な召喚マニュアル」として受け継がれていったのです。

近代オカルティズムへ受け継がれる

17世紀になると、これらの悪魔学が『レメゲトン』の第1部ゴエティアとしてまとめられ、序列や軍団数、印章が整えられていきます。そして20世紀初頭の1904年、イギリスの魔術師アレイスター・クロウリーが、サミュエル・マサースの翻訳をもとに『ソロモン王のゴエティアの書』として刊行しました。これが現在もっとも広く知られるゴエティアの底本となっています。

魔術結社を率いたクロウリーら近代オカルティストの手を経て、72柱の悪魔は現代に生き続けています。こうしたオカルトの系譜や秘密結社について深掘りしたい方は、以下の記事もおすすめです。

ゲーム・アニメで生き続ける72柱

今日、ソロモン72柱の悪魔がもっとも身近に感じられるのは、やはりゲームやアニメ、ライトノベルでしょう。RPGの召喚獣や敵キャラクター、ソーシャルゲームのモンスターなどに、バエル・アスモデウス・ベリアル・パイモンといった名前が数多く採用されています。

キャラクターの「姿」や「能力」が、ゴエティアの記述を巧みにアレンジしていることも多く、元ネタを知っていると創作の見方が何倍も面白くなります。あなたの好きなキャラにも、72柱の悪魔が隠れているかもしれませんね。

推しキャラの名前が、実は500年前の魔術書由来だったと知るとちょっと感動しますよね。元ネタ探しはオカルト雑学のいちばんの楽しみ方です。

ソロモン72柱の悪魔クイズ5問

ここまで読んだあなたは、もうソロモン72柱の悪魔にかなり詳しくなったはず。腕試しにクイズへ挑戦してみましょう。答えはそれぞれの下に隠してあります。

第1問:ソロモン72柱の悪魔のなかで、最多となる200の軍団を率いる、ルシファーに最も忠実な王は誰でしょう?

答え:パイモン(序列9番)。ラクダにまたがり王冠をいただいた姿で現れ、あらゆる学問と芸術を授けます。

第2問:序列1番をかざる、猫・蛙・人の3つの頭を持ち、姿を消す術を授ける「東方の王」は誰でしょう?

答え:バエル(序列1番)。古代カナンの豊穣神「バアル」が悪魔化した存在です。

第3問:72柱で「色欲」を司り、「七つの大罪」の悪魔にも名を連ねる、序列32番の王は誰でしょう?

答え:アスモデウス(序列32番)。72柱と七つの大罪の両方に登場する唯一の悪魔です。

第4問:72柱のなかでただ1柱だけ「騎士」の位階を持つ、序列50番の悪魔は誰でしょう?

答え:フルカス(序列50番)。哲学・占星術・修辞・手相を教える、唯一の騎士です。

第5問:72柱の悪魔の名簿が記された、『レメゲトン(ソロモンの小さな鍵)』の第1部のタイトルは何でしょう?

答え:ゴエティア。72柱の悪魔の召喚法や印章を収めた、レメゲトン第1部の魔術書です。

ソロモン72柱の悪魔に関するよくある質問(FAQ)

Q1. ソロモン72柱で一番強い悪魔は誰ですか?

明確な「最強」は定められていませんが、軍団数で見ればパイモンの200軍団が最多です。序列・地位・知名度を総合すると、バエル・パイモン・ベレト・アスモデウス・ベリアルあたりが「最高位の王」として別格に扱われることが多いです。

Q2. 序列の番号が若いほど強いのですか?

いいえ。序列はゴエティアに記された順番(封印された順とされる)であり、強さの順位ではありません。序列1番のバエル(66軍団)より、序列9番のパイモン(200軍団)のほうが多くの軍団を率いています。

Q3. ルシファーやサタンは72柱に含まれますか?

含まれません。ルシファー・サタン・ベルゼブブ・レヴィアタン・マモン・ベルフェゴールは72柱より上位の別格の存在とされ、主に「七つの大罪」の枠組みで語られます。72柱と両方に登場するのはアスモデウスだけです。

Q4. 悪魔によって「軍団数」や「位階」が資料ごとに違うのはなぜですか?

ソロモン72柱の情報は、ヴァイヤーの『悪魔の偽王国』やマサース版『ゴエティア』など、複数の写本・翻訳をもとにしているためです。書き写しや翻訳の過程で数字や位階に異同が生じており、どれが「唯一の正解」というわけではありません。

Q5. 悪魔なのに「病を治す」「正義を行う」など良い能力を持つのはなぜ?

ゴエティアは、悪魔を「召喚して使役する」ための実用書という性格を持っています。そのため、術者にとって役立つ能力(治療・財宝・知識・予言など)が数多く記されているのです。一方的に恐ろしいだけの存在ではなく、契約相手として描かれているのが特徴です。

まとめ|ソロモン72柱の悪魔は中世の知の結晶

ソロモン72柱の悪魔は、ソロモン王の伝説を入り口に、ヴァイヤーやクロウリーら多くの人の手を経て形づくられた、いわば中世から近代にかけての「想像力の結晶」です。

序列は強さ順ではなく封印された順番であること。位階には王から総裁まで7つがあり、騎士はフルカスただ1柱であること。最多の軍団を率いるのはパイモンの200軍団であること。こうしたポイントを押さえておけば、一覧表もぐっと読みやすくなります。

そしてルシファーやサタンは72柱には含まれず、「七つの大罪」という別の枠組みで語られること。この区別を知っておくと、創作で悪魔が登場したときの解像度が一段上がるはずです。

恐ろしくも、どこか魅力的なソロモン72柱の悪魔たち。お気に入りの一柱を見つけて、ゲームや小説の世界をさらに楽しんでくださいね。