有名な心理学実験30選!ミルグラム・監獄実験など人間心理に迫る名実験を結末と再評価つきで解説

「ふつうの人が、なぜ残酷な命令に従ってしまうのか」「人はどこまで周囲に流されるのか」。こうした人間の謎に、本物の実験で挑んできたのが心理学者たちです。

この記事では、教科書にも載る有名な心理学実験を30個厳選し、誰がいつ行い、どんな結果になったのかを、結末までわかりやすく解説します。

さらに、近年「やらせだったのでは」「再現できなかった」と見直されている実験についても、最新の研究をふまえてバランスよく紹介します。読み終えるころには、人間の心の不思議さと、科学のスリリングさの両方が見えてくるはずです。

どれも一度は耳にしたことがある実験ばかりですが、「その後どうなったか」まで知ると、印象がガラッと変わりますよ。
心理学実験とは
人間や動物の行動を観察・測定して、心のはたらきを科学的に明らかにしようとする実験のことです。頭の中だけで考える「思考実験」とは違い、実際に人を集めて行動を測るのが特徴です。

権威と服従をめぐる心理学実験

まずは「人はなぜ権威に逆らえないのか」をテーマにした心理学実験です。いずれも、善良なはずの人間が状況しだいで残酷になりうることを示し、世界に衝撃を与えました。

1. ミルグラムの服従実験(1963年)

アメリカ・イェール大学のスタンレー・ミルグラムが行った、心理学でもっとも有名な実験のひとつです。被験者は「教師」役として、別室の「生徒」が答えを間違えるたびに、どんどん強い電気ショックを与えるよう指示されます。

生徒役は実はサクラで、電気も流れていません。それでも白衣の実験者が「続けてください」と促すと、被験者40人のうち26人、つまり約65%が最大の450ボルトまでスイッチを押し続けました

ミルグラムは、ホロコーストを指揮したアイヒマンの「命令に従っただけ」という弁明をきっかけに、この実験を構想しました。なお実験場所を大学から街中の雑居ビルに移すと服従率は約48%まで下がり、権威の「見た目」が服従を左右することも分かっています。

ふつうの市民の3分の2が、見ず知らずの人に致死量の電流を流しかねない。これがこの実験の恐ろしい結論でした。

2. スタンフォード監獄実験(1971年)

心理学者フィリップ・ジンバルドーが、スタンフォード大学の地下に模擬刑務所を作り、公募した学生を「看守」役と「囚人」役に分けた実験です。役割を与えただけで看守役は囚人役を虐げるようになり、2週間の予定はわずか6日で中止されました。

長く「人は状況に飲まれて簡単に残酷になる」証拠とされてきました。しかし2018年、研究者ルテシエらが当時の音声記録を分析し、ジンバルドーらが看守役に「もっと厳しく振る舞え」と演技指導していたことを明らかにします。錯乱したとされる囚人役も、後に「演技だった」と認めました。

つまり、自然に起きた現象ではなく、実験者が望む結果へ誘導していた疑いが濃いのです。あまりに有名な実験ですが、いまでは科学的な信頼性に大きな疑問符がついています。

「人間は環境しだいで悪魔になる」という強烈な物語が、実は半分は仕込みだったかもしれない。実験の見直しは本当に大切ですね。

3. ホフリングの看護師実験(1966年)

こちらは病院という現実の場で行われた服従実験です。研究者が「医師」を名乗って看護師に電話をかけ、規定の2倍にあたる量の薬を、確認手続きを飛ばして患者に投与するよう指示しました。

本来なら断るべき危険な指示にもかかわらず、22人中21人の看護師が指示に従おうとしたのです。ミルグラムの実験が「人工的すぎる」と批判されたのに対し、権威への服従が日常の職場でも起こることを示した点で重要な実験とされています。

同調と集団心理をあらわす心理学実験

多数派に同調する集団心理を象徴する人混みの写真

次は「人は周りに合わせてしまう」「集団になると行動が変わる」ことを示した心理学実験です。自分だけは流されないと思っていても、結果を知ると自信がなくなるかもしれません。

4. アッシュの同調実験(1951年)

ソロモン・アッシュが行った、同調研究の古典です。1本の基準線と同じ長さの線を3本の中から選ぶだけの簡単な課題ですが、被験者以外の参加者は全員サクラで、わざと同じ間違った答えを口にします。

すると本物の被験者は、明らかに正しい答えが分かっていても周囲につられ、約75%の人が少なくとも1回は誤答に同調しました。正解が一目瞭然でも、人は「みんなと違う」ことに強い不安を感じるのです。

5. シェリフの泥棒洞窟実験(1954年)

ムザファー・シェリフが、サマーキャンプに集めた11歳前後の少年22人を2グループに分けて行った実験です。最初は仲が良かったのに、対抗戦を始めたとたん相手チームへの敵意がふくらみ、罵り合いや小競り合いが起きました。

ところが、両グループが力を合わせないと解決できない「共通の困りごと」を用意すると、対立は自然とやわらいでいきます。集団間の対立は、共通の目標によって和らげられるという、いじめや分断を考えるうえでも示唆に富む結果でした。

6. リンゲルマンの綱引き実験(1913年)

フランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマンが、綱引きで1人あたりの力を測った実験です。1人で引くときを100とすると、人数が増えるほど1人あたりの力はむしろ下がっていきました。

「誰かがやってくれる」と無意識に手を抜いてしまうこの現象は、社会的手抜き(リンゲルマン効果)と呼ばれます。グループ作業で全員が全力を出すとは限らないことを、100年以上前に数字で示した実験です。

7. ダーリーとラタネの傍観者実験(1968年)

ジョン・ダーリーとビブ・ラタネが、「周りに人がいるほど人は助けない」ことを確かめた実験です。別室の人物が発作で苦しむ声を聞かせたところ、自分一人だと思っている人ほどすぐ助けに動き、その場に大勢いると信じている人ほど動きませんでした。

きっかけは1964年、大勢の目撃者がいながら助けられなかったとされるキティ・ジェノヴィーズ事件です。ただし「38人が見て見ぬふりをした」という有名な逸話は、後年の検証で大きく誇張されていたと分かっています。実験そのものは確かでも、語り継がれる物語には注意が必要だという好例です。

8. ジェーン・エリオットの青い目・茶色い目実験(1968年)

これは研究室ではなく小学校の教室で行われた、差別を体験させる授業実験です。教師ジェーン・エリオットは、キング牧師暗殺の翌日、クラスを目の色で分け、「青い目の子は優秀」と一方を持ち上げ、もう一方を冷遇しました。

すると、ほめられた側はわずか数時間で得意げになり、貶められた側は成績まで落ち込みました。差別はもともとの能力ではなく、扱われ方が生み出すことを子どもたち自身に実感させた、教育史に残る実践です。

自分は偏見と無縁だと思っていても、ちょっとした扱いの差で人は変わってしまう。背筋が伸びる実験です。

学習と行動を解き明かす心理学実験

古典的条件づけを発見したイワン・パブロフが研究室の机に座る写真

ここからは「行動はどう身につくのか」を探った心理学実験です。動物を使った研究が多く、人間の学習やクセを理解する土台になっています。

9. パブロフの犬(古典的条件づけ)

ロシアの生理学者イワン・パブロフが、消化の研究中に偶然見つけた現象です。犬はエサを見ると唾液を出しますが、エサの直前にいつもメトロノームの音を鳴らしていると、やがて音を聞いただけで唾液を出すようになりました。

本来は無関係な刺激が、繰り返しによって反応を引き起こすこの仕組みは「古典的条件づけ」と呼ばれます。梅干しを見ただけで唾が出るのも、この原理です。パブロフは消化の研究で1904年にノーベル賞を受けています。

10. ソーンダイクの問題箱(試行錯誤学習)

エドワード・ソーンダイクが、空腹の猫を仕掛け付きの箱に入れた実験です。猫は最初こそでたらめに暴れますが、たまたまレバーを踏むと扉が開くと気づき、回数を重ねるごとに脱出が速くなっていきました。

ここから「良い結果につながった行動は繰り返されやすい」という効果の法則が導かれました。ひらめきではなく、試行錯誤の積み重ねで学習が進むことを示した古典です。

11. スキナーのオペラント条件づけ(スキナー箱)

バラス・スキナーは、レバーを押すとエサが出る「スキナー箱」を使い、ネズミやハトの行動を意のままに変えてみせました。報酬を与えると行動は増え、与えないと減る。この仕組みがオペラント条件づけです。

ごほうびで望ましい行動を増やす考え方は、しつけや教育、ゲームのレベルアップ演出まで、現代のあらゆる場面に応用されています。

12. ワトソンのアルバート坊や実験(1920年)

行動主義の祖ジョン・ワトソンが、生後11か月ほどの乳児「アルバート坊や」に対して行った恐怖条件づけの実験です。白いネズミを見せると同時に大きな金属音を鳴らすことを繰り返すと、赤ちゃんはネズミを見ただけで泣くようになりました。

さらにその恐怖は、白いウサギやひげ、毛皮にまで広がりました。感情さえ後天的に学習されうると示した一方、幼児を怖がらせ、恐怖を取り除かないまま終えた点で、今日では倫理的に許されない実験とされています。

倫理の話
初期の心理学実験には、現在の基準では認められないものが少なくありません。だからこそ後の時代に厳しい倫理審査が生まれた、という流れも合わせて知っておきたいところです。

13. バンデューラのボボ人形実験(1961年)

アルバート・バンデューラが、子どもは大人の振る舞いを見て学ぶことを確かめた実験です。大人が「ボボ人形」という起き上がりこぼしを殴ったり蹴ったりするのを見た子どもは、自分の番になると同じように人形へ暴力をふるいました。

ごほうびや罰がなくても、ただ見ているだけで行動は学習される(観察学習・モデリング)という発見です。暴力的な映像が子どもに与える影響を考えるうえで、今も引用され続けています。

14. セリグマンの学習性無力感の実験(1967年)

マーティン・セリグマンらが犬を使って行った、うつ研究の出発点となった実験です。何をしても電気ショックから逃げられない経験をした犬は、後で簡単に逃げられる状況になっても、もう何も試みず、ただ耐えるようになりました。

この学習性無力感は、人が「どうせ無駄だ」と諦めてしまう心理の説明に広く使われています。なおセリグマン自身は2016年、後の神経科学の知見をふまえ、「無力感こそが初期状態で、むしろ制御できる感覚を学ぶ方が本質だ」と当初の解釈を修正しています。

記憶・知覚・脳に挑んだ心理学実験

知覚と注意のはたらきを象徴する人間の目のクローズアップ写真

続いては、記憶や見え方、脳のはたらきに切り込んだ心理学実験です。「自分の記憶や目は意外とあてにならない」という、ちょっと怖い事実が見えてきます。

15. エビングハウスの忘却曲線(1885年)

ヘルマン・エビングハウスが、自分自身を被験者にして記憶を測った実験です。意味のない3文字のつづりを大量に覚え、時間とともにどれだけ忘れるかを記録しました。

その結果、覚えた内容は20分で約4割、1時間で約5割が忘れ去られるという「忘却曲線」が描かれました。一気に詰め込むより、間隔をあけて復習する方が定着しやすいという勉強のコツも、ここから生まれています。

16. ロフタスの目撃証言実験(1974年)

記憶研究の第一人者エリザベス・ロフタスが、人の記憶がいかに書き換えられやすいかを示した実験です。自動車事故の映像を見せた後、質問の言葉だけを変えて車の速度を尋ねました。

「ぶつかったとき」と聞かれた人より、「激突したとき」と聞かれた人の方が速度を速く見積もり、さらに実際には割れていないガラスを「割れていた」と記憶しました。質問のしかた一つで証言が変わるこの発見は、裁判での目撃証言の扱いを大きく変えました。

17. ロフタスのショッピングモール実験(1995年)

同じくロフタスが、まったく経験していない出来事の記憶を植えつけられるかを試した実験です。被験者に、子どものころ「ショッピングモールで迷子になった」という作り話を、家族の証言として伝えました。

すると約4分の1の人が、その偽の体験を本物の記憶として語り出し、ありもしない詳細まで付け足しました。記憶は録画ではなく、その都度作り直されるもの。冤罪やでっち上げの記憶を考えるうえで欠かせない実験です。

自分の記憶ほど信用できないものはない、と教えてくれる実験です。思い出話が食い違うのも当然かもしれません。

18. ストループ実験(1935年)

ジョン・ストループが見つけた、注意のクセをあぶり出す実験です。「あか」「あお」といった色の名前を、文字とは違う色のインクで印刷し、文字の意味ではなくインクの色を答えてもらいます。

すると、文字とインクの色が食い違っているとき、答えるのに明らかに時間がかかります。文字を読む処理が自動的に働き、色を答える邪魔をするのです。この「ストループ効果」は、脳の注意機能を調べる検査として今も使われています。

19. 見えないゴリラ実験(1999年)

ダニエル・シモンズとクリストファー・チャブリスが行った、注意の盲点を示す有名な実験です。バスケットボールのパス回数を数える映像を見せると、その途中でゴリラの着ぐるみが堂々と横切っても、約半数の人がまったく気づきません

一つのことに集中すると、目の前のものすら見えなくなる。この「非注意性盲目」は、運転中のながら見の危険などにも通じます。2004年にはイグ・ノーベル賞を受賞しました。

20. スペリーの分離脳実験

ロジャー・スペリーが、左右の脳をつなぐ脳梁を切る手術を受けたてんかん患者を調べた研究です。右の視野に見せた文字は言葉で答えられるのに、左の視野に見せたものは「見えない」と言いながら、左手では正しく選べました。

ここから言語は主に左脳、空間の処理は主に右脳というように、左右の脳が異なる役割を担うことが明らかになりました。スペリーはこの業績で1981年にノーベル賞を受けています。

発達と愛着を見つめた心理学実験

愛着の研究で知られるアカゲザルの母子の写真

ここでは、子どもの心の育ちや「親子の絆」に迫った心理学実験を紹介します。温かい話もあれば、考えさせられる話もあります。

21. ハーロウのアカゲザル代理母実験(1958年)

ハリー・ハーローが、子ザルに2種類の「母親人形」を与えた実験です。一方はミルクの出る針金製、もう一方はミルクは出ないけれど柔らかい布製でした。

子ザルはお腹がすいたときだけ針金の母に行き、それ以外の時間は布の母にしがみついて過ごしました。愛着はエサ(栄養)ではなく、ぬくもりや触れ合いから生まれることを示し、「スキンシップが心の安全基地になる」という考え方の土台になりました。

22. エインズワースのストレンジ・シチュエーション法

メアリー・エインズワースが、赤ちゃんと母親の絆のタイプを測るために考えた手続きです。見知らぬ部屋で母親が一度退室し、また戻ってくる場面での、赤ちゃんの反応を観察します。

再会したときに安心して遊びに戻る「安定型」、無関心を装う「回避型」、怒りながらも離れられない「抵抗型」など、愛着には個人差があり、それが後の対人関係にも影響することが示されました。発達心理学の基礎となる方法です。

23. ピアジェの保存課題

発達心理学の巨人ジャン・ピアジェが、子どもの思考の発達段階を調べた課題です。同じ量の水を、細長いコップと平たいコップに移して見せ、「どちらが多い?」と尋ねます。

幼い子どもは見た目に引きずられ、水位の高い細長いコップの方が「水が増えた」と答えてしまいます。量が見た目では変わらないと理解できるようになるのは、ある年齢以降。子どもは小さな大人ではなく、独自の論理で世界を見ていると教えてくれます。

24. ミシェルのマシュマロ・テスト(1972年)

ウォルター・ミシェルが、4歳児の自制心を測った有名な実験です。目の前のマシュマロを「15分我慢できたら2個あげる」と告げて部屋を出て、待てるかどうかを観察しました。

当初の追跡では、我慢できた子ほど将来の成績が良い傾向が報告され、自制心の大切さの象徴となりました。しかし2018年、918人を対象にした大規模な再検証で、家庭の経済状況などを考慮すると将来との関連はぐっと弱まることが分かりました。我慢の力そのものより、安心できる環境の方が効いていた可能性が高いのです。

「我慢できる子が成功する」という美談も、背景の貧富を見落としていたわけですね。再現研究の大切さが光ります。

25. ローゼンタールのピグマリオン効果実験(1968年)

ロバート・ローゼンタールらが、小学校で行った教師の期待をめぐる実験です。本当はランダムに選んだ子どもたちを「これから成績が伸びる子」と、教師に偽って伝えました。

すると、特別な指導をしていないのに、「伸びる」と期待された子の成績が実際に向上しました。教師の期待が態度や接し方ににじみ出て、子どもの結果を変える。これが「ピグマリオン効果」で、期待のかけ方の重要さを示しています。

社会・道徳・自己をめぐる心理学実験

最後は、人の良心や自己認識、社会のつながりに光を当てた心理学実験です。人間の意外な一面と、世界の狭さが見えてきます。

26. フェスティンガーの認知的不協和の実験(1959年)

レオン・フェスティンガーらが、人が自分の言動を正当化する仕組みを示した実験です。退屈きわまりない単純作業をさせた後、次の参加者に「面白かった」と嘘をつくよう頼み、報酬として1ドルか20ドルを渡しました。

すると意外にも、たった1ドルしかもらえなかった人ほど、その作業を「本当に面白かった」と評価したのです。少ない報酬では嘘を正当化できず、「面白かったと思い込む」ことで心の矛盾を解消したと考えられます。これが「認知的不協和」の理論です。

27. ローゼンハンの精神病院実験(1973年)

デヴィッド・ローゼンハンが、精神医学の診断の危うさを突いた実験です。健康な協力者8人が「幻聴が聞こえる」とだけ偽って精神科を受診したところ、全員が入院となり、統合失調症などと診断されました。

入院後は普通に振る舞っても、行動はすべて病気の症状として解釈されてしまいます。「狂気の場所では正常さは見抜けない」と主張したこの研究は大反響を呼びましたが、2019年、ジャーナリストのキャハランがデータの一部捏造の疑いを指摘し、現在は評価が揺れています。問題提起の鋭さと、検証の必要性をあわせて伝える実験です。

28. ダーリーとバトソンの善きサマリア人実験(1973年)

「善い行いをするかどうかは、性格より状況で決まるのか」を調べた実験です。神学生たちに別の建物で講演するよう指示し、一方には「もう遅刻だ、急いで」と伝え、もう一方には余裕を持たせました。

その道中に、助けを求めて倒れている人(サクラ)を配置します。すると、急がされた学生はわずか1割ほどしか助けず、時間に余裕のある学生は6割以上が立ち止まりました。皮肉にも、講演テーマが人を助ける「善きサマリア人」の聖書の話でも結果は同じ。心のゆとりが思いやりを左右することを示しています。

29. ホーソン実験(1924〜1932年)

アメリカのホーソン工場で、照明の明るさが作業効率に与える影響を調べた一連の研究です。ところが照明を明るくしても暗くしても生産性は上がり、研究者を困らせました。

原因は照明ではなく、「自分たちは注目され、観察されている」という意識そのものが、やる気を高めていた点にありました。この「ホーソン効果」は職場のマネジメント論に大きな影響を与えましたが、後年のデータ再分析では効果の大きさに疑問も出ており、解釈には幅があります。

30. ミルグラムのスモールワールド実験(1967年)

服従実験で有名なミルグラムによる、明るいテーマの実験です。アメリカ中西部の人に1通の手紙を渡し、面識のない遠方の目標人物まで、「知り合いを介してのみ」転送するよう頼みました。

すると手紙は、平均しておよそ5〜6人の知人を経由して目標人物に届きました。世界中の誰とでも数人でつながれるという「六次の隔たり」の出発点で、現代のSNSのつながりやすさを先取りした実験として知られています。

有名な心理学実験を楽しむときの3つの心がまえ

たくさんの心理学実験を見てきましたが、面白がるだけでなく、受け取り方にも少しコツがあります。最後に3つだけ押さえておきましょう。

1つ目は、「結果が独り歩きしていないか」を疑うことです。スタンフォード監獄実験やキティ・ジェノヴィーズ事件のように、衝撃的な物語ほど誇張やねつ造が紛れている場合があります。

2つ目は、再現研究を重んじることです。マシュマロ・テストのように、後から大人数で確かめ直すと結論が変わる実験は珍しくありません。1回の派手な結果より、何度も確かめられた知見を信頼しましょう。

3つ目は、時代の倫理観の違いを忘れないことです。アルバート坊や実験のように、今なら絶対に許されない手法も過去にはありました。だからこそ現在の厳しい倫理審査がある、という歴史も一緒に味わうと、心理学はもっと面白くなります。

実験から生まれた「効果」や「法則」として日常で使える心理学のネタは、別の記事でたっぷりまとめています。あわせて読むと理解が深まりますよ。

まとめ:有名な心理学実験は人間の取扱説明書

今回は、教科書に残る有名な心理学実験を30個、結末と近年の再評価まで添えて紹介しました。

権威への服従、集団への同調、記憶のあいまいさ、愛着の大切さ。どれも、自分や他人の行動の「なぜ」を解き明かすヒントになります。

一方で、有名な実験ほど、後年に「やらせ」や「再現できない」といった見直しが入っているのも事実です。鵜呑みにせず、最新の検証もあわせて知ることで、より確かな知識になります。

気になる実験があったら、ぜひ名前で調べてみてください。一つひとつにドラマがあって、人間って面白いなと思えるはずです。