一人称・二人称の一覧!「僕」「俺」「拙者」から「あなた」「貴様」まで読み方・由来・使い分けを解説

一人称・二人称の一覧 サムネイル

「わたし」「僕」「俺」「あたし」。日本語には、自分を指す言葉がいくつもあります。相手を指す「あなた」「君」「お前」「貴様」もまた然りです。

英語なら自分は I、相手は you の一語で足りるのに、日本語の一人称は古い言葉まで含めると70種類以上、二人称は80種類以上あるとも言われます。世界的に見ても、これはかなり珍しい現象です。

この記事では、日本語の一人称・二人称を「現代の定番」「古風・武士」「方言・罵倒語」などに分けて、それぞれの読み方・ニュアンス・由来・使う人を一覧で解説します。さらに、なぜこんなに数が多いのか、歴史的にどう移り変わってきたのか、創作でキャラクターにどう使い分けるのかまで、まとめて掘り下げます。

自分の呼び方ひとつで、その人のキャラがほぼ決まる。日本語って本当におもしろい言語です。

一人称・二人称とは?三人称との違いも簡単に

畳の上でかるたをする二人 一人称・二人称のイメージ

まず言葉の整理からです。会話に登場する人物は、立場によって三つに分けられます。

  • 一人称:話し手・書き手自身を指す言葉(例:私、僕、俺)
  • 二人称:話し相手・聞き手を指す言葉(例:あなた、君、お前)
  • 三人称:その場にいない第三者を指す言葉(例:彼、彼女、あの人)

英語では一人称が I、二人称が you、三人称が he / she / they と、ほぼ一語ずつに固定されています。性別や年齢、相手との関係によって変わるのは三人称の he / she くらいです。

ところが日本語は、自分を指すだけでも「私・僕・俺・わし・あたし・うち・拙者」と山ほどあり、しかも誰がどの場面で使うかで印象がガラリと変わります。この「数の多さ」と「使い分けの細かさ」こそ、日本語の人称の最大の特徴です。

なぜ日本語は一人称・二人称がこんなに多いのか

そもそも、なぜ日本語だけ自分や相手を指す言葉がこれほど増えたのでしょうか。理由は大きく三つあります。

理由1:もともと「代名詞」ではなく「普通の名詞」だから

英語の I は純粋な代名詞で、これ以上分解できません。一方、日本語の一人称・二人称は、もとをたどると普通の名詞や言葉であることがほとんどです。

「私(わたくし)」は「公(おおやけ)」に対する個人という意味の名詞、「僕(ぼく)」は男性の召使い(しもべ)、「貴様」は「貴(とうと)い様」という敬称でした。名詞ならいくらでも作れますから、新しい呼び方が次々と生まれてきたのです。

理由2:敬意逓減(けいいていげん)の法則が働くから

日本語の人称、とくに二人称には「敬意逓減の法則」と呼ばれる現象があります。最初は敬意をこめて使われた言葉でも、みんなが気軽に使ううちに手垢がついて、だんだん敬意が薄れていくのです。

敬意が下がると、あらためて相手を立てる新しい言葉が必要になります。こうして古い敬称が罵倒語に転落し、新しい敬称が補充される。この繰り返しで、人称の在庫がどんどん増えていきました。

理由3:上下・親疎・性別・場面を細かく言い分ける文化だから

日本語は、相手が目上か目下か、親しいか他人か、自分が男か女か、改まった場か砕けた場かによって、言葉を細かく選びます。一人称・二人称も同じで、TPOに合わせて最適な一語を選ぶ感覚が根づいています。

「敬語が劣化して罵倒語になる」って、よく考えるとすごい話ですよね。言葉は生き物だなあと実感します。

一人称の一覧【現代でよく使う定番】

日本語の五十音 ひらがな・カタカナ一覧表

まずは、今の日常で実際に使われている一人称からです。同じ自分を指す言葉でも、性別・年齢・場面の印象がそれぞれ違います。

私(わたし・わたくし)

現代でもっとも標準的な一人称です。男女問わず使え、「わたくし」と読めば最も改まった丁寧な響きになります。

由来は、公(おおやけ)に対する「個人的なこと」を意味する名詞「私(わたくし)」。中世以降に自分を指す言葉として定着し、その「わたくし」が縮まって日常語の「わたし」になりました。ビジネスや式典では、男性も「わたくし」を使うのが基本です。

僕(ぼく)

主に男性が使う、ややソフトで知的な印象の一人称です。学生から大人まで幅広く使われます。

漢字「僕」はもともと男性の召使い(しもべ)の意味で、自分をへりくだって言う謙譲の言葉でした。詳しい広まり方は後の歴史の章で解説しますが、幕末から明治にかけて一気に普及した、比較的新しい一人称です。

俺(おれ)

男性が親しい間柄や砕けた場で使う、力強く男性的な一人称です。目上の人や改まった場では失礼になります。

意外なことに、「俺」の語源は「己(おのれ)」で、古くは相手をののしる二人称でした。中世以降に一人称へと転じ、江戸時代には庶民・百姓の言葉として広く使われるようになりました。

あたし

主に女性が使う、砕けてかわいらしい印象の一人称です。「わたし」の語頭が落ちた形で、江戸時代に町人の女性言葉として広まりました。落語家が自分を指すときの「あたし」も有名です。

自分(じぶん)

体育会系や軍隊・警察などで「自分はそう思います」のように使われる一人称です。きっちりとした、規律のある印象を与えます。

面白いのは、関西では「自分、どないしたん?」のように相手を指す二人称にもなる点です。同じ言葉が一人称にも二人称にもなる不思議は、後の章でくわしく取り上げます。

うち

主に関西の女性や若い世代が使う一人称です。もとは「家(うち)」を指す言葉で、「うちの者」が縮まって自分自身を表すようになったとされます。やわらかく親しみのある響きが特徴です。

わし

年配の男性や、西日本の方言でよく使われる一人称です。「わたし」が変化した形で、時代劇の老人やフィクションの老賢者のセリフでもおなじみです。

一人称の一覧【古風・武士・時代劇でおなじみ】

馬上の武士を描いた浮世絵 一人称 拙者のイメージ

続いて、時代劇や歴史もの、創作でよく見る古風な一人称です。今は日常で使いませんが、キャラクターの背景を一瞬で伝える力があります。

拙者(せっしゃ)

武士が使う代表的な一人称です。「拙(つたな)い者」という謙遜の言葉で、侍キャラといえばこれ、という定番の響きを持ちます。

某・それがし

「某(それがし)」も武士が用いた一人称です。もともとは「誰それ」とぼかす不定称でしたが、転じて自分をへりくだって指す語になりました。重厚で硬派な印象です。

吾輩・我が輩(わがはい)

明治時代の男性が使った、やや尊大で威厳のある一人称です。夏目漱石の小説『吾輩は猫である』で一気に有名になりました。今では偉そうなキャラを演出する言葉として使われます。

小生(しょうせい)

主に男性が手紙や文章で使う、へりくだった一人称です。「小さき生(者)」の意味で、目上の人に宛てた書面でへりくだるときに用いられました。

妾(わらわ)

武家の女性や高貴な女性が使った一人称です。自分をへりくだって言う女性語で、お姫様キャラのセリフでよく見かけます。

麿(まろ)

平安時代以降、公家(貴族)が使った一人称です。古くは男女問わず使われました。「麻呂」とも書き、おっとりした王朝風の雰囲気を出します。

朕(ちん)

天皇・皇帝だけが使う特別な一人称です。古代中国で秦の始皇帝が皇帝専用と定めて以来のもので、日本でも近代までは天皇の自称として使われました。

余・予(よ)

君主や身分の高い男性が使った一人称です。王様や殿様が「余の名において」と言うときの、あの言葉です。重々しく威厳のある響きがあります。

当方(とうほう)・小職(しょうしょく)

ビジネス文書で使われる一人称です。「当方」は自分や自分の側を指し、「小職」は役職に就いた人が自分をへりくだって言う言葉です。どちらも改まった硬い場面で使われます。

一人称の歴史と変遷【上代から現代まで】

一人称は、時代とともに主役が次々と入れ替わってきました。流れを追うと、言葉が生き物のように動いてきたことがよく分かります。

上代(奈良時代):「ワ」と「ア」の時代

奈良時代の文献には、一人称として「ワ・ワレ」と「ア・アレ」が並んで使われていました。「ア」は「ワ」の w 音が落ちた形と考えられています。当時の二人称「ナ(汝)」と組み合わさって、「ワ」と「ナ」が最も基本的な対(つい)をなしていました。

中古〜中世:「わたくし」の登場と「俺」の転身

平安から中世にかけて、「公」に対する「私(わたくし)」が自分を指す言葉として使われ始めます。一方、もともと二人称の罵り語だった「おのれ」から「俺」が生まれ、一人称へと転じていきました。

近世(江戸時代):庶民の言葉が花開く

江戸時代には、「俺」が百姓・庶民の言葉として定着し、「わたし」「あたし」も町人の間で広まりました。身分や性別、地域によって、実にさまざまな自称が飛び交う時代でした。

幕末〜明治:「僕」の大流行

そして幕末、現代にもつながる大きな変化が起こります。それが一人称「僕」の流行です。

「僕」を広めた立役者の一人とされるのが、幕末の思想家吉田松陰です。松陰は「天皇以外はみな対等だ」という考えのもと、自分をへりくだる「僕」を一人称として使い、松下村塾に集う志士たちの間に広めたと言われます。

明治に入ると、長州出身者が政府の要職を占めたこともあり、「僕」は知識人・書生(学生)の言葉として階級を越えて全国に広がりました。夏目漱石の「吾輩」が世に出たのも、ちょうどこの自称が揺れ動いた明治の時代です。

「俺」は元はののしり言葉、「僕」は元はしもべ。今ふつうに使ってる一人称、由来をたどると意外すぎます。

言葉の流行が時代によって変わる感覚は、現代の流行語にも通じます。昭和・平成の懐かしい言葉については、以下の記事もあわせてどうぞ。

二人称の一覧【現代でよく使う】

ここからは相手を指す二人称です。一人称以上に「相手との距離感」がストレートに出るので、使い方には注意が必要です。

あなた

現代でもっとも標準的な二人称で、ていねいな響きを持ちます。夫婦間で妻が夫を「あなた」と呼ぶ用法も有名です。

由来は、離れた場所や方向を指す「彼方(あなた)」。「向こうの方」と遠回しに相手を指したのが始まりで、直接名指しを避ける日本語らしい発想です。ただし目上の人に「あなた」と言うと失礼になることもあり、万能ではありません。

君(きみ)

主に男性が、同等か目下の相手に親しみをこめて使う二人称です。もともとは「君(きみ)」=主君・高貴な人を指す尊い言葉でした(「君が代」の「君」がこれです)。

それが時代とともに敬意が下がり、今では親しい相手ややや目下に向ける言葉になりました。これも後で述べる敬意逓減の一例です。

お前(おまえ)

親しい間柄や、自分と同等か目下の相手に使う二人称です。今では少し荒っぽい響きがありますが、由来は意外にも敬語です。

もとは「御前(おおまえ・おんまえ)」、つまり神仏や貴人の前を敬っていう言葉でした。それが相手そのものを指す敬称になり、やがて敬意が薄れて、現在のように同輩・目下に向ける言葉へと変化しました。

あんた

「あなた」が砕けた形で、親しい相手やくだけた会話で使われます。場合によってはぞんざいに響くこともあり、関係性しだいで印象が変わります。

名前+さん・様・くん・ちゃん

実は日本語でいちばん無難な二人称は、代名詞ではなく相手の名前+敬称です。「田中さん」「先生」「店長」のように、名前や肩書きで呼ぶのが最も角が立ちません。日本語で「you」をうまく訳しにくいのは、この習慣のためです。

二人称の一覧【古風・武士・罵倒語】

続いて、時代劇や創作でおなじみの古風な二人称と、相手をののしる言葉です。敬語から罵倒語まで、振れ幅の大きさが二人称の特徴です。

貴様(きさま)

今では完全な罵倒語ですが、由来は正反対です。室町時代末には「貴(とうと)い様」という、れっきとした敬意ある二人称で、武家の書簡などで「貴殿」と並んで使われていました。

それが庶民にも広まるうちに敬意が抜け落ち、江戸後期には同等・目下、ついには相手をののしる言葉へと転落しました。敬意逓減のもっとも分かりやすい例です。

貴殿(きでん)・貴公(きこう)

どちらも男性が目上や同等の相手に使った、改まった二人称です。「貴殿」は手紙などで今も使われることがあります。「貴公」はやや尊大な響きを持ち、武士の会話でよく見られます。

お主(おぬし)・そなた

時代劇でおなじみの二人称です。「お主」は同等か目下に、「そなた」は目下や親しい相手に使われました。落ち着いた古風な雰囲気を出したいときに、創作でよく用いられます。

汝(なんじ・なれ)

古語の二人称で、神話や聖書の翻訳、格言などで見かけます。「汝(なんじ)自身を知れ」のような荘厳で文語的な響きがあり、上代の「ナ」につながる、もっとも古い系統の言葉です。

御身(おんみ)

相手を敬っていう古風な二人称です。「御身お大事に」のように、相手の身を気づかう文脈で使われました。やわらかく上品な響きがあります。

手前(てめえ)・うぬ・おのれ

いずれも相手を強くののしる二人称です。「てめえ」は「手前(てまえ)」、「うぬ」「おのれ」は「己(おのれ)」がもとで、どれも本来は自分を指す一人称でした。自分を指す言葉が相手への罵りに変わるという、日本語ならではの現象です。次の章でくわしく見ていきます。

二人称の「敬意逓減の法則」がおもしろい

ここまで何度か触れてきた「敬意逓減の法則」を、あらためてまとめます。これは、敬意をこめて使われた言葉ほど、時間とともに敬意が下がっていくという、日本語の人称に見られる傾向のことです。

代表例を並べると、その劇的な変化がよく分かります。

  • お前:神仏・貴人の前を敬う「御前」 から 敬称 へ、そして同輩・目下へ
  • 貴様:「貴い様」という武家の敬語 から 庶民へ普及、そして罵倒語へ
  • :主君・高貴な人 から 親しい相手・やや目下へ
  • きさま・てめえ:敬語・一人称 から 完全な罵り言葉へ

なぜこんなことが起きるのでしょうか。相手を高く持ち上げる言葉も、みんなが日常的に乱発すると「ありがたみ」が薄れます。すると敬意を取り戻すために、また別の新しい敬称が必要になります。こうして敬称は使い捨てられ、新しい言葉が次々と補充されてきました。

日本語の二人称が80種類以上もあるのは、まさにこの「敬称の世代交代」が何百年も続いてきた結果なのです。

今ていねいな「あなた」も、何百年後かには荒い言葉になってるかもしれません。言葉の未来予想、ちょっとこわいですね。

同じ言葉が一人称にも二人称にもなる不思議

日本語の人称でとくに面白いのが、同じ言葉が、自分にも相手にも使われる現象です。立場が正反対なのに、なぜか同じ単語が両方をまかなってしまいます。

手前(てまえ)/てめえ

「手前ども」と言えば自分(や自分の店)を指す一人称ですが、訛った「てめえ」は相手をののしる二人称になります。元は一つの言葉です。

自分(じぶん)

標準語では一人称ですが、関西では「自分、どないしたん?」のように相手を指す二人称として使われます。同じ大阪人でも、文脈で自分と相手を瞬時に区別しているのですから不思議です。

己(おのれ)/おんどれ・われ

「己(おのれ)」はもともと自分自身を指す言葉でしたが、相手への怒りをぶつける二人称「おのれ!」にもなります。近畿から山陽地方の「おんどれ」、関西で相手を威圧するときの「われ(我)」も同じ仲間です。

こうした「一人称が二人称に転じる現象」は言語学でも注目されていて、北河内地方の二人称「自分」を扱った大学の研究論文もあるほどです。自分と相手の境目があいまいになる感覚は、日本語独特のものかもしれません。

英語など外国語の人称と日本語の違い

世界の言語と比べると、日本語の人称の特殊さがよく分かります。

英語は、自分は I、相手は you の一語だけ。性別・年齢・上下関係に関係なく、社長にも友達にも子どもにも同じ you を使います。

中国語は一人称「我(ウォー)」、二人称「你(ニー)」が基本で、相手を敬うときだけ「您(ニン)」を使う程度です。フランス語スペイン語には、親しい相手と改まった相手で二人称を変える区別(フランス語の tu と vous など)がありますが、それでも二種類ほどです。

つまり、自分や相手を指す言葉が数十種類もあり、性別や年齢、場面で細かく使い分ける日本語は、世界的に見てもかなり珍しいタイプの言語だと言えます。外国語として日本語を学ぶ人が「一人称が多すぎる」と驚くのも無理はありません。

創作・小説でのキャラクター別 一人称・二人称の使い分けガイド

万年筆で文章を書く様子 創作・小説のイメージ

一人称・二人称は、小説や漫画でキャラクターを描き分けるときの強力な武器になります。自称ひとつで、性格・育ち・時代背景まで一瞬で伝わるからです。タイプ別に、定番の組み合わせをまとめました。

  • 素直な主人公:一人称「僕」/二人称「君」。やわらかく誠実な印象。
  • 熱血・ワイルド系:一人称「俺」/二人称「お前」。力強く距離が近い。
  • クール・敵役:一人称「俺」「私」/二人称「貴様」「お前」。冷たく見下す響き。
  • お嬢様・令嬢:一人称「わたくし」/二人称「あなた」「あなた方」。上品で改まった印象。
  • 武士・侍:一人称「拙者」「某」/二人称「貴殿」「お主」。重厚で硬派。
  • お姫様・高貴な女性:一人称「わらわ」/二人称「そなた」。古風で気品がある。
  • 老人・賢者:一人称「わし」/二人称「お主」。落ち着きと年輪を感じさせる。
  • 関西系のキャラ:一人称「うち」「自分」/二人称「自分」「われ」。親しみと勢い。
  • 尊大・自信家:一人称「吾輩」「余」/二人称「貴公」。偉そうで存在感がある。

逆に言えば、人称を一つ変えるだけでキャラの印象は大きく動きます。迷ったら「このキャラはどんな育ちで、相手とどんな距離感か」を考えると、自然な一語が選べます。

キャラクターづくりでは、自称とあわせて「異名・二つ名」も効果的です。創作のネーミングに興味がある方は、以下の記事も参考になります。

キャラの一人称を「俺」から「僕」に変えるだけで、別人になります。創作する人はぜひ遊んでみてください。

一人称・二人称クイズ5問

ここまでの内容から、一人称・二人称にまつわるクイズを5問出題します。答えはそれぞれの下にあります。

第1問

現代では男性的で力強い一人称「俺」。もともとは何を指す言葉だったでしょう?

答え:相手をののしる二人称(「己=おのれ」がもと)。中世以降に一人称へ転じました。

第2問

一人称「僕」を幕末に広めた立役者とされる、松下村塾の思想家は誰でしょう?

答え:吉田松陰。「天皇以外はみな対等」という考えから、へりくだりの「僕」を使い志士に広めたとされます。

第3問

今では強烈な罵倒語の「貴様」。室町時代末ごろは、どんな意味だったでしょう?

答え:「貴い様」という敬意ある二人称。武家の書簡で「貴殿」と並んで使われていました。

第4問

二人称「あなた」は、もともと何を指す言葉から来ているでしょう?

答え:離れた場所・方向を指す「彼方(あなた)」。遠回しに相手を指したのが始まりです。

第5問

標準語では一人称ですが、関西では相手を指す二人称にもなる言葉は何でしょう?

答え:「自分」。「自分、どないしたん?」のように、相手への呼びかけに使われます。

一人称・二人称に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 日本語の一人称・二人称は全部でいくつあるのですか?

古語や方言まで含めると、一人称は70種類以上、二人称は80種類以上あるとも言われます。日常で使うものに絞れば、それぞれ10種類前後です。数え方によって変わるため、正確な総数は確定していません。

Q2. ビジネスで一番無難な一人称・二人称は?

一人称は「わたくし」、二人称は相手の名前や肩書き+さん・様が最も無難です。「あなた」は目上の人にはやや失礼になることがあるので、ビジネスでは名前で呼ぶのが安全です。

Q3. 「お前」や「貴様」は昔は失礼ではなかったのですか?

はい。どちらも本来は敬意をこめた言葉でした。「お前」は貴人の前を敬う「御前」、「貴様」は「貴い様」が由来です。時間とともに敬意が下がる「敬意逓減」によって、今のぞんざいな響きになりました。

Q4. なぜ英語の「you」は日本語に訳しにくいのですか?

英語の you は相手が誰でも同じ一語ですが、日本語では相手との関係によって「あなた・君・お前・先生・◯◯さん」などを選ぶ必要があるためです。状況に合う一語を選ばないと不自然になります。

Q5. 女性らしい一人称・男性らしい一人称はどれですか?

女性的とされるのは「あたし」「うち」「わらわ」、男性的とされるのは「俺」「僕」「わし」「拙者」などです。ただし「私(わたし)」は男女ともに使える中立的な一人称で、改まった場では誰でも使えます。

まとめ:一人称・二人称は日本語のキャラを映す鏡

日本語の一人称・二人称は、古語や方言まで含めると一人称70種類以上、二人称80種類以上という、世界でも珍しい豊かさを持っています。

その背景には、もともと普通の名詞から人称が生まれること、敬意が時とともに下がる「敬意逓減の法則」、そして上下や親疎を細かく言い分ける文化があります。

「俺」は元は罵り言葉、「僕」は元はしもべ、「貴様」は元は敬語。由来をたどると、いつも使っている呼び方の意外な過去が見えてきます。

自称ひとつ、呼びかけひとつで、その人のキャラクターや相手との距離感までもが伝わる。一人称・二人称は、日本語の奥深さがぎゅっと詰まった、小さな鏡のような存在なのです。

あなたの一人称は何ですか? その一語にも、長い歴史と物語が隠れています。