いろは歌とは?全文・意味・現代語訳をわかりやすく解説!作者の謎と「とがなくてしす」の暗号も

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「いろはにほへと」という言葉、一度は耳にしたことがあるはずです。物事の初歩を「いろはのい」と言ったり、順番を「イ・ロ・ハ……」と振ったりと、千年以上前に生まれた一首の歌は、今も私たちの暮らしのあちこちに息づいています。

しかしこの「いろは歌」、ただの語呂のよい言葉の並びではありません。仮名を一文字も重複させずに作られた奇跡のような詩であり、その内容には深い仏教思想が込められ、さらには「とがなくてしす」という恐ろしい暗号まで隠れていると言われます。

この記事では、いろは歌の全文と読み方、現代語訳から、作者をめぐる謎、隠された暗号、そして今も残る「いろは順」まで、知っているようで知らないいろは歌のすべてを、わかりやすく解説していきます。

「いろは」って当たり前に使うけど、改めて全文を言える人は意外と少ないんですよね。

いろは歌とは?仮名47文字を一度ずつ使った「奇跡の詩」

筆で仮名を書く書道の様子

いろは歌(いろはうた)とは、平安時代に作られたとされる誦文(しょうもん)で、当時使われていた仮名47文字を、一文字も重複させずにすべて一度ずつ使って作られた歌です。漢字で「伊呂波歌」と書くこともあります。

ある決められた文字をすべて一度ずつ使って意味の通る文を作るものを、専門的には「パングラム(全字使用文)」と呼びます。英語の有名なパングラムに「The quick brown fox jumps over the lazy dog(すばしこい茶色の狐がのろまな犬を飛び越える)」がありますが、これは同じ文字を何度も使っています。一字も重複させずに、しかも美しい詩として成立させているいろは歌は、世界的に見ても完成度の高い言葉遊びなのです。

古くは、子どもが文字を覚えるための「手習い歌(てならいうた)」として使われました。すべての仮名が一度ずつ出てくるので、この歌をなぞって書けば、自然とすべての仮名を練習できるという仕組みです。

まずは全文を見てみましょう
【仮名表記】
いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす

【漢字仮名交じり表記】
色は匂へど 散りぬるを
我が世誰そ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず

形式は七五調の「今様(いまよう)」という、平安時代中期にはやった歌のスタイルです。七音と五音のリズムをくり返す形になっており、声に出すと心地よく流れていきます。

「47文字」と「48文字」があるのはなぜ?

いろは歌は基本的に47文字です。ここには「ん」が含まれていません。これは、いろは歌が作られた当時、「ん」がまだ独立した一文字として定着していなかったためと考えられています。

一方で、48文字のいろは歌を見かけることもあります。古くは拗音(ようおん)の練習のために末尾へ「京(きやう)」の字を加えて48字とすることが行われ、現代では「ん」を加えて48字とする数え方もあります。いろはかるたが48枚一組になっているのは、この「京」を足した名残です。

なお、いろは歌に出てくる「ゐ」「ゑ」「を」は、今ではあまり使わない仮名です。「ゐ」は「ウィ/イ」、「ゑ」は「ウェ/エ」、「を」は「ウォ/オ」に近い音を表していました。一字ずつの仮名がどんな漢字から生まれたのかは、以下の記事で詳しく解説しています。

いろは歌の全文と読み方を一句ずつ確認

それでは、いろは歌を四つのまとまり(七五を一組とした四句)に分けて、仮名・漢字・読み方を確認していきましょう。歴史的仮名遣いなので、書いてある通りには読まない部分があります。

第一句 いろはにほへと ちりぬるを(色は匂へど 散りぬるを)

読みは「いろはにおえど ちりぬるを」。花は美しく咲き、よい香りを放っているけれど、やがては散ってしまう、という意味です。「匂へど」は色つやが美しいことを表し、香りだけでなく見た目の華やかさも含みます。

第二句 わかよたれそ つねならむ(我が世誰そ 常ならむ)

読みは「わがよたれぞ つねならん」。この世に生きる私たちのうち、いったい誰が永遠に変わらずにいられるだろうか、いや誰もいない、という反語です。「たれそ」の「そ」は「ぞ」と濁って読みます。

第三句 うゐのおくやま けふこえて(有為の奥山 今日越えて)

読みは「ういのおくやま きょうこえて」。「有為(うい)」は仏教語で、さまざまな原因や条件によって移り変わっていくこの世のすべてを指します。その有為転変の奥深い山を、今日もまた越えていく、という意味です。

第四句 あさきゆめみし ゑひもせす(浅き夢見じ 酔ひもせず)

読みは「あさきゆめみじ えいもせず」。浅はかな夢を見ることもなく、現実に酔いしれることもない、という意味です。末尾の「みし」は「見じ(見るまい)」という打ち消しの意志を表すと解釈するのが一般的で、迷いや煩悩を断ち切った悟りの境地を示しています。

いろは歌の意味・現代語訳をわかりやすく解説

満開から散りゆく桜(諸行無常のイメージ)

四つの句をつなげて、全体の現代語訳をまとめると次のようになります。

香りたつように美しく咲く花も、いつかは必ず散ってしまう。
この世に生きる私たちの誰が、永遠に変わらずいられるだろうか。
移り変わるこの世という奥深い山を、今日もまた越えていく。
もう浅はかな夢に惑わされることもなく、現実に酔いしれることもなく生きていこう。

桜が満開のあとに散っていくように、どんなに美しいものも、栄えているものも、いつかは終わりを迎えます。これは仏教でいう「諸行無常(しょぎょうむじょう)」、すべては移り変わり、永遠に変わらないものなど存在しない、という世界観そのものです。

ただ世の無常を嘆くだけでなく、最後の句で「だからこそ迷いや欲を捨てて、静かに生きていこう」と前を向いているのが、いろは歌の奥深いところです。短い四十七文字のなかに、人生観がぎゅっと凝縮されているのです。

ただの文字練習の歌だと思っていたら、内容はものすごく哲学的。昔の人の言葉の力には驚かされます。

いろは歌に込められた仏教思想|涅槃経の「無常偈」との関係

紺紙金字で書かれた仏教の写経

いろは歌の内容が仏教的であることは、古くから指摘されてきました。新義真言宗の祖である覚鑁(かくばん)は、その著書のなかで、いろは歌は『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』に出てくる「無常偈(むじょうげ)」を意訳したものだと説明しています。

無常偈とは、次の四句からなる漢文の偈(げ/仏の教えをうたった詩)です。この四句が、いろは歌の四つの句とみごとに対応していると言われています。

無常偈(涅槃経) いろは歌
諸行無常(しょぎょうむじょう) 色は匂へど散りぬるを
是生滅法(ぜしょうめっぽう) 我が世誰そ常ならむ
生滅滅已(しょうめつめつい) 有為の奥山今日越えて
寂滅為楽(じゃくめついらく) 浅き夢見じ酔ひもせず

無常偈は「この世のすべては移ろいゆく(諸行無常)。それは生まれては滅びる定めである(是生滅法)。その生滅を超えたところに(生滅滅已)、静かな安らぎの境地がある(寂滅為楽)」という教えです。

いろは歌は、この難しい漢文の教えを、誰もが口ずさめる美しい仮名の歌に置き換えたものだと考えられているのです。子どもの文字練習に使われながら、同時に仏教の根本思想をそっと伝えていたというわけです。

いろは歌の作者は空海(弘法大師)?作者不詳とされる理由

弘法大師(空海)の修行大師像

いろは歌の作者は、古くから真言宗を開いた空海(弘法大師)だと伝えられてきました。仏教思想が色濃いこと、空海が書や言葉の天才とされることから、いかにもありそうな話に思えます。しかし現在の研究では、空海作とする説はほぼ否定されています。

空海説が否定される主な理由

第一に、形式の問題です。いろは歌は七五調をくり返す「今様」の形式ですが、この今様がはやったのは平安時代の中期以降です。空海が生きたのは平安初期(9世紀)であり、まだ今様の形式は成立していませんでした。

第二に、発音の問題です。古い日本語では、ア行の「え」とヤ行の「え」が別の音として区別されていました。ところがいろは歌にはこの区別がありません。両者の区別が失われたのは10世紀ごろとされ、いろは歌はそれ以降に作られたことになります。これは空海の時代より後です。

第三に、文献の問題です。空海の時代に近い書物にいろは歌への言及が見られず、作者を空海とする確かな根拠がありません。こうした理由から、現在では作者不詳とするのが定説です。

いろは歌の成立と最古の記録
いろは歌が成立したのは、10世紀末から11世紀半ばごろと考えられています。文献に残る最古の例は、承暦3年(1079年)に成立した『金光明最勝王経音義(こんこうみょうさいしょうおうきょうおんぎ)』です。また2010年には、三重県明和町の斎宮跡(さいくうあと)から、平仮名で書かれたいろは歌としては最古級とされる土器の破片が発見されています。

「弘法大師が作った」と習った人も多いはず。でも、ことばの証拠から時代を割り出す研究って、推理小説みたいでかっこいいですよね。

「とがなくてしす」|いろは歌に隠された暗号の謎

いろは歌には、有名な「隠し読み」の暗号があります。47文字を7文字ずつに区切って、それぞれの行のいちばん最後の文字を縦に読むと、不気味な言葉が浮かび上がるのです。

7文字ずつの区切り 行末の字
いろはにほへ
ちりぬるをわ か(が)
よたれそつね
らむうゐのお
やまけふこえ
あさきゆめみ
ゑひもせ

行末の字を上から読むと「と・か・な・く・て・し・す」、すなわち「とがなくてしす」となります。漢字をあてれば「咎無くて死す」、つまり「罪も無いのに死んでいく」という意味になるのです。

この一文から、いろは歌には無実の罪で処刑された人物の無念が込められているのではないか、という説が生まれました。さらに、同じく7文字区切りで各行の最初の文字を読むと「いちよらやあゑ」となり、これにもさまざまな解釈がなされてきました。

あくまで「言葉遊び」の側面が強い
「とがなくてしす」は確かに読み取れますが、これを作者が意図的に仕込んだという確かな証拠はありません。47文字を一度ずつ使うという厳しい制約のなかで、偶然そう読めてしまった可能性も十分にあります。後世の人々が発見した「読み解きの遊び」として楽しむのがよいでしょう。

なお、いろは歌そのものを暗号表として応用した例も歴史上にあります。幕末の薩摩藩が、いろは歌に数字を対応させて密書をやり取りした「薩摩いろは歌暗号」が有名です。こうした歴史上の暗号については、以下の記事でまとめています。

いろは歌以前の手習い歌|あめつちの詞・たゐにの歌

「すべての仮名を一度ずつ使う歌」は、実はいろは歌が最初ではありません。いろは歌が広まる前にも、文字を覚えるための手習い歌がいくつか存在しました。代表的なものを紹介します。

あめつちの詞(あめつちのことば)

平安時代の初め、いろは歌よりも古い時代に使われていた手習い歌です。仮名48文字を重複なく使っています。「あめ(天)つち(地)ほし(星)そら(空)やま(山)かは(川)……」と、身近な自然のものを並べていく内容です。

注目すべきは、この歌にはア行の「え」とヤ行の「え」が両方含まれている点です。古い発音の区別が残っているため、いろは歌よりも成立が古いと考えられています。

たゐにの歌(たいにのうた)

あめつちの詞のあとに作られ、いろは歌に先立つとされる手習い歌です。いろは歌と同じく仮名47文字を一度ずつ使います。「たゐにいて(田居に出で)なつむわれをそ(菜摘む我をぞ)……」と、野で菜を摘む情景をうたっています。平安中期の学者・源為憲が著した『口遊(くちずさみ)』に記録が残っています。

これらの先輩格の手習い歌がありながら、最終的にいろは歌が圧倒的に広まったのは、語呂のよさに加えて、仏教の無常観という深い意味を持っていたからだと言われています。覚えやすく、しかも心に響く。だからこそ千年も歌い継がれてきたのです。

いろは歌の「いろは順」が今も残る場所

古いいろはかるた

五十音図が普及した現在でも、「いろは順(い・ろ・は・に・ほ・へ・と……)」は私たちの身の回りにしっかり残っています。代表的なものを見ていきましょう。

1. 番号や記号の「イ・ロ・ハ」

項目を順番に並べるとき、数字やアルファベットの代わりに「イ・ロ・ハ・ニ……」を使うことがあります。とくに法令の条文では、細かい項目を区切る記号として今も「イ・ロ・ハ……」が正式に使われています。

2. 音楽の音名「ハニホヘトイロ」

日本語の音名は、ドレミファソラシに「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ」をあてています。「ハ」がド(C)、「ニ」がレ(D)、「ホ」がミ(E)という具合です。「ハ長調」と言えば、ハ=ドから始まる、シャープもフラットもつかない明るい調のことを指します。

3. 旧日本海軍の艦艇名

かつての日本海軍では、潜水艦を大きさや種類によって「伊号(いごう)・呂号(ろごう)・波号(はごう)」と区別していました。「伊号第四百潜水艦」の「伊」も、このいろは順から来ています。

4. いろはかるた・いろは坂

正月遊びの定番「いろはかるた」は、いろは47文字に「京」を加えた48枚でことわざを集めたものです。江戸・京都・大坂で内容が異なる三系統が伝わっています。また、栃木県日光の「いろは坂」は、48か所のカーブがいろは48文字にちなんで名づけられました。

5. 物事の初歩「いろはのい」

何かを始めたばかりの段階や基礎の基礎を、「いろはのい」「仕事のいろは」と表現します。いろは歌が文字学習の出発点だったことから、「物事のいちばん最初・基本」を意味する言葉として定着しました。

音楽の「ハ長調」までいろは歌由来だったとは。気づかないだけで、本当にあちこちに残っているんですね。

明治生まれの新しいいろは歌「鳥啼歌(とりなくうた)」

いろは歌は平安時代の作品ですが、実は明治時代にも「新しいいろは歌」が公募で作られたことがあります。それが「鳥啼歌(とりなくうた)」です。

1903年(明治36年)、新聞『萬朝報(よろづちょうほう)』が、47文字に「ん」を加えた48字で新しい「国音の歌」を作る懸賞を実施しました。約1万通の応募が集まり、1等に選ばれたのが埼玉県の坂本百次郎の作品です。

鳥啼く声す 夢覚ませ
見よ明け渡る 東を
空色栄えて 沖つ辺に
帆船群れゐぬ 靄の中

(とりなくこゑす ゆめさませ みよあけわたる ひんがしを そらいろはえて おきつへに ほふねむれゐぬ もやのうち)

夜明けの海辺の情景をうたった、すがすがしい歌です。戦前には、この鳥啼歌の順番(とりな順)が、いろは順と並んで使われたこともありました。千年前の名作に挑んだ明治の人々の心意気が感じられます。

いろは歌の覚え方のコツ

いろは歌を覚えたいなら、やみくもに丸暗記するより、いくつかのコツを押さえると一気に楽になります。

  • 七五のリズムで区切って声に出す……「いろはにほへと/ちりぬるを」と、七音・五音のまとまりで区切ってリズムよく音読すると、歌のように体に入ってきます。
  • 意味とセットで覚える……「花が散る→誰も永遠ではない→世を越えて→迷わず生きる」という無常のストーリーを思い浮かべると、丸暗記より格段に忘れにくくなります。
  • 漢字仮名交じりで意味を取る……「色は匂へど散りぬるを」と漢字で書くと意味がはっきりし、仮名だけで覚えるより記憶に定着します。
  • 実際に書いてみる……手習い歌だっただけに、紙に書くのは効果抜群です。すべての仮名が一度ずつ出てくるので、書き取り練習にもなります。

いろは歌クイズ|あなたは何問わかる?

ここまでの内容から、いろは歌に関するクイズを5問出題します。答えは各問のボックスを開く前に、ぜひ自分で考えてみてください。

第1問

いろは歌は、仮名を何文字使っているでしょうか?

答え:47文字。「ん」は含まれていません(「京」や「ん」を足して48文字とする数え方もあります)。

第2問

「色は匂へど散りぬるを」という一句が表している、仏教の根本思想は何でしょうか?

答え:諸行無常(しょぎょうむじょう)。すべては移り変わり、永遠不変のものはない、という考え方です。

第3問

いろは歌の作者として古くから伝えられてきた人物は誰でしょうか?

答え:空海(弘法大師)。ただし、形式や発音の研究から、現在では空海作とする説は否定されています。

第4問

いろは歌を7文字ずつ区切り、各行の最後の字を読むと現れる暗号は何でしょうか?

答え:とがなくてしす(咎無くて死す)。罪も無いのに死ぬ、という意味に読めます。

第5問

音楽の「ハ長調」の「ハ」は、ドレミでいうとどの音にあたるでしょうか?

答え:ド(西洋音名のC)。日本語音名ではハ=ド、ニ=レ、ホ=ミ……と対応します。

いろは歌に関するよくある質問(FAQ)

Q. いろは歌に「ん」は入っていますか?

A. 基本のいろは歌(47文字)には「ん」は入っていません。作られた当時、「ん」がまだ独立した仮名として定着していなかったためです。現代では「ん」を加えて48文字とすることもあります。

Q. いろは歌と五十音図は何が違うのですか?

A. どちらも仮名を整理する仕組みですが、いろは歌は47文字を重複なく並べた「意味のある歌」です。一方の五十音図は、母音と子音で縦横に整理した「表」で、こちらは江戸時代以降に広く使われるようになりました。

Q. いろは歌の作者は本当に空海ではないのですか?

A. 空海作という伝承は古くからありますが、今様の形式や、ア行・ヤ行の「え」の区別が無い点などから、空海の時代より後の成立と考えられ、現在は作者不詳とするのが定説です。

Q.「とがなくてしす」は作者がわざと隠した暗号ですか?

A. 7文字区切りで確かに読み取れますが、作者が意図的に仕込んだという確証はありません。厳しい制約のなかで偶然そう読めた可能性もあり、後世の発見した遊びとして楽しむのが無難です。

Q. いろは歌は今でも使われていますか?

A. 文字を覚える役割は五十音図に譲りましたが、「いろは順」は法令の項目記号、音楽の音名、いろはかるたなど、今も身近なところで生き続けています。

まとめ|いろは歌は千年の知恵が詰まった日本語の宝

いろは歌は、仮名47文字を一度ずつ使って作られた、世界的にも完成度の高い言葉遊びです。

その内容は「諸行無常」という仏教の無常観をうたったもので、涅槃経の無常偈の意訳とも言われ、短い詩のなかに深い人生観が込められています。

作者は空海と伝えられてきましたが、形式や発音の研究から現在は作者不詳とされ、成立は10世紀末から11世紀ごろと考えられています。

「とがなくてしす」という隠し読みの謎や、いろは順として今も残る音名・かるた・法令記号など、知れば知るほど奥が深いのがいろは歌です。何気なく使っている「いろは」の四十七文字に、千年分の知恵と美意識が詰まっていると思うと、少し見え方が変わってきませんか。

当たり前すぎて素通りしていた「いろは」。改めて向き合うと、日本語って本当に面白いなと感じます。