ローマ字一覧!ヘボン式と訓令式の違い・書き方のルールを歴史・2025年の表記見直しつきで解説

ローマ字のヘボン式と訓令式の違いを解説するサムネイル

「し」はshiなのかsiなのか。「つ」はtsutuか。学校で習ったローマ字と、パスポートやパソコンで見るローマ字が違っていて、もやもやした経験はありませんか。

じつはこれ、あなたの記憶違いではありません。日本語のローマ字には「訓令式(くんれいしき)」「ヘボン式」「日本式」という複数の方式があり、場面によって使い分けられているからです。

しかも2025年(令和7年)8月、文化審議会が約70年ぶりにローマ字のルールを見直し、学校で教える基本を訓令式からヘボン式へ改める答申を出しました。今まさに「ローマ字の常識」が動いているタイミングなのです。

この記事では、3つの方式の違いを一覧表で整理し、書き方でつまずくポイント、パスポートの正式ルール、ローマ字の歴史、そして2025年の見直しまでをまとめて解説します。

学校・パスポート・パソコンでローマ字が食い違うのは、あなたのせいじゃありません。ちゃんと理由があるんです。

ローマ字とは?日本語をアルファベットで書く方法

ローマ字とは、日本語の音をラテン文字(アルファベットのABC)で書き表す方法のことです。英語の「Roman alphabet(ローマ字=ラテン文字)」に由来する呼び名で、「ローマ帝国で使われた文字」がもとになっています。

たとえば「さくら」はsakura、「ふじさん」はFujisan。日本語を知らない外国の人でも、ローマ字があればおおよその発音を再現できます。駅名の看板、道路標識、パスポートの名前など、私たちの身のまわりはローマ字であふれています。

ところが、この「日本語をどうアルファベットに置きかえるか」のルールが一つではない、というのがローマ字のややこしさの正体です。次の章で、その3つの方式を見ていきましょう。

ローマ字の「訓令式」「ヘボン式」「日本式」の違い

高速道路の案内標識に書かれたローマ字(京都Kyoto・大阪Osaka・名古屋Nagoya・伊勢Ise)

日本語のローマ字には、大きく分けて次の3方式があります。歴史の生まれた順番は「日本式 → 訓令式 → ヘボン式」ではなく、じつはヘボン式が最初です。

  • ヘボン式:英語の発音に近づけた方式。「し」をshi、「つ」をtsuと書く。パスポート・駅名・道路標識など実社会で最も広く使われる。
  • 日本式:五十音図の規則どおりに機械的に並べた方式。「し」はsi、「ぢ」はdiと、かなの並びに忠実。
  • 訓令式:日本式をもとに国が簡略化し、1937年に公式ルールとして定めた方式。長らく小学校で教えられてきた。

3方式でつづりが変わるのは一部の音だけです。「あいうえお」「かきくけこ」などは3方式とも同じで、差が出るのはおもに「さ・た・は行の一部」と濁音の一部。下の表でちがいを確認しましょう。

かな 日本式 訓令式 ヘボン式
si si shi
ti ti chi
tu tu tsu
hu hu fu
zi zi ji
しゃ sya sya sha
ちゃ tya tya cha
じゃ zya zya ja
di zi ji
du zu zu
を(助詞) wo o o

こうして並べると、ヘボン式だけがshi・chi・tsu・fu・jiと英語らしいつづりになっているのが分かります。訓令式と日本式は「si・ti・tu・hu・zi」と、ローマ字をそのまま読んだだけのシンプルな形です。

違いが生まれる理由は方式の目的の違いにあります。ヘボン式は「英語話者が読んで日本語の音に近づくこと」を、訓令式・日本式は「日本語の五十音の規則正しさ」を優先しています。どちらが正しい・間違いではなく、目的が違うのです。

ざっくり言うと、英語っぽいのがヘボン式、ローマ字を素直に読むのが訓令式・日本式。迷ったら「shiが入ってたらヘボン式」と覚えるとラクですよ。

ローマ字一覧表(清音・濁音・拗音)

続いて、よく使う音をまとめたローマ字の一覧表です。基本はヘボン式で示し、訓令式で書き方が変わるものはカッコ内に併記しました。表記が一つだけのものは3方式とも共通です。

■ 清音(せいおん)

a i u e o
ka ki ku ke ko
sa shi(si) su se so
ta chi(ti) tsu(tu) te to
na ni nu ne no
ha hi fu(hu) he ho
ma mi mu me mo
ya yu yo
ra ri ru re ro
wa o(を)

「ん」はnと書きます。母音やyの前で区切りがまぎらわしいときは、n のあとにアポストロフィを入れてn’とします(例:きんえん=kin’en)。

■ 濁音(だくおん)・半濁音

ga gi gu ge go
za ji(zi) zu ze zo
da ji(zi/di) zu(du) de do
ba bi bu be bo
pa pi pu pe po

■ 拗音(ようおん/小さい「ゃゅょ」のつく音)

kya kyu kyo
sha(sya) shu(syu) sho(syo)
cha(tya) chu(tyu) cho(tyo)
nya nyu nyo
hya hyu hyo
mya myu myo
rya ryu ryo
gya gyu gyo
ja(zya) ju(zyu) jo(zyo)
bya byu byo
pya pyu pyo

拗音も、差が出るのは「しゃ・ちゃ・じゃ」の行だけ。ヘボン式はsha・cha・ja、訓令式はsya・tya・zyaと規則的につづります。

ローマ字の書き方でつまずくポイント

天空橋駅の駅名標に書かれたヘボン式ローマ字Tenkubashi(長音記号つき)

ローマ字は表を覚えればおしまい、とはいきません。実際に書くときに迷いやすい「特別ルール」がいくつかあります。代表的なものを押さえておきましょう。

長音(のばす音)の書き方

「おかあさん」「おとうさん」のようにのばす音は、方式によって書き方が違います。訓令式では母音の上に山形の記号をつけてô・û(例:とうきょう=Tôkyô)、ヘボン式では横棒のついたō・ū(Tōkyō)で表すのが正式です。

ただし記号は入力が面倒なため、実際にはのばす音を省略してそのまま書くことがほとんどです(東京=Tokyo)。パスポートも原則として長音は表記しません。

促音(小さい「っ」)の書き方

小さい「っ」は、次にくる子音を重ねて書きます。「がっこう」ならgakkō、「きって」ならkitte、「ざっし」ならzasshi。

ひとつ注意したいのが「っち」です。ヘボン式では「ち」がchiなので、「っ」はcを重ねずtを足してtchと書きます(例:ぼっちゃん=botchan)。

「ん」の書き方

「ん」は基本的にnですが、ヘボン式の伝統的なルールやパスポートでは、b・m・pの前でmに変えます。「てんぷら」はtempura、「さんま」はsamma、「しんぶん(新聞)」はshimbunといった具合です。ただし近年のヘボン式では、すべてnのまま(shinbun)書くことも増えています。

また「ほんや(本屋)」のように「ん」のあとに母音やyが続くと、honya=「ほにゃ」と読み間違えられかねません。そこで区切りを示すため、hon’yaとアポストロフィを入れます。

長音記号と「ん→m」は、知らないと一生もやもやするポイント。ここだけ押さえれば、ローマ字でつまずくことはほぼなくなります。

パスポートのローマ字(ヘボン式)の書き方ルール

名前のローマ字でいちばん身近なのがパスポートです。外務省はパスポートにヘボン式を採用しています。海外で名前を見た外国の人が、できるだけ日本語の発音に近く読めるようにするためです。

外務省が定める主なルールは次のとおりです。

  • 撥音「ん」:原則Nだが、B・M・Pの前ではMにする。例=南部(なんぶ)NAMBU、本間(ほんま)HOMMA、俊平(しゅんぺい)SHUMPEI
  • 促音「っ」:次の子音を重ねる。例=服部(はっとり)HATTORI、吉川(きっかわ)KIKKAWA。ただしCHの前はTを入れる(例=発知〈ほっち〉HOTCHI)。
  • 長音(のばす音):原則として表記しない。例=大野(おおの)ONO、佐藤(さとう)SATO、ゆうこYUKO
  • 長音の例外:希望すれば「おお」「おう」をOHと書くことも認められる。例=大野OHNO、河野(こうの)KOHNO

なお外務省の「ヘボン式」は、一般的なヘボン式を旅券用に調整した外務省独自の方式です。一度パスポートで決めた表記は原則として変更できないため、家族でつづりをそろえたい場合などは最初の申請時によく確認しておきましょう。

パスポートのつづり方は各自治体や外務省のサイトで確認できます。

ローマ字の歴史|ヘボン式・日本式・訓令式の誕生

そもそもローマ字はいつ生まれたのでしょうか。日本語をアルファベットで書く試みは古く、室町時代の終わりごろに来日したポルトガルの宣教師が、布教のために日本語をポルトガル語式のつづりで書き残したのが始まりとされます。

その後、江戸時代にはオランダ語式、幕末にはドイツ語式・フランス語式など、外国人がそれぞれの母語のクセでローマ字を書いていました。つづりがバラバラだったのです。

ヘボン式の誕生(明治時代)

流れを変えたのが、アメリカ人宣教師で医師のジェームス・カーティス・ヘボン(1815〜1911)です。1859年に来日して横浜で医療や辞書づくりに取り組み、1867年(慶応3年)に日本初の本格的な和英辞典『和英語林集成』を出版しました。

この辞書で使われたつづりがのちに整理され、1886年(明治19年)の第3版で今のヘボン式の原型が固まりました。「ヘボン」という呼び名は、Hepburnの当時の日本語表記そのままです(同じつづりの俳優オードリー・ヘプバーンと、もとは同じ名字なのは有名な雑学です)。

日本式と訓令式の登場

一方、日本人の物理学者田中舘愛橘(たなかだてあいきつ)は、1885年(明治18年)に「英語に寄せるのはおかしい、五十音図の規則どおりに書くべきだ」として日本式を提案しました。「し」はsi、「ぢ」はdiと、かなの並びに忠実なのが特徴です。

ヘボン式派と日本式派の論争は長く続きました。そこで政府が両者を調整し、日本式をベースに簡略化した訓令式を、1937年(昭和12年)の内閣訓令第3号で公式ルールとして定めます。

戦後の1954年(昭和29年)には内閣告示第1号「ローマ字のつづり方」が出され、訓令式を示す「第1表」を基本としつつ、ヘボン式や日本式のつづりを「第2表」として認める形になりました。これが、つい最近まで続いてきたローマ字の公式ルールです。

2025年、ローマ字表記が約70年ぶりに見直し(訓令式→ヘボン式)

そして2025年(令和7年)8月20日、文化審議会が日本語のローマ字表記に関する答申を文部科学大臣に提出しました。1954年の内閣告示以来、約70年ぶりの大きな見直しです。

答申の柱は、これまで基本とされてきた訓令式に代えて、社会で広く使われているヘボン式を基本とするという方針です。「し」はshi、「つ」はtsuといった、駅名やパスポートでおなじみのつづりが、いよいよ国の標準になります。

背景には、訓令式の「si」「tu」が実生活ではほとんど使われておらず、学校で習う表記と街なかで見る表記がずれている、という長年の課題がありました。国際化が進むなか、英語話者にも読みやすいヘボン式へそろえる狙いです。

正式には年内に内閣告示で改められる見込みで、2026年度以降は小学校の国語でもヘボン式を中心に教える流れになると見られています。ただし完全な一本化ではなく、長音や「ん」の書き方には幅を持たせる実用重視の内容とされています。

ポイント
学校で「し=si」と習った世代と、これから「し=shi」と習う世代では、ローマ字の常識が変わります。今まさに過渡期なのです。

パソコンの「ローマ字入力」とローマ字表記の違い

ローマ字入力に使うQWERTYキーボードのアルファベット

ローマ字と聞いて、パソコンやスマホのローマ字入力を思い浮かべる人も多いでしょう。じつは、文字入力に使う「ローマ字」は、これまで説明してきた正式なローマ字表記とは少し別物です。

日本語入力ソフト(IME)は、訓令式でもヘボン式でもどちらの打ち方でも変換できるように作られています。「し」はsiでもshiでも、「ふ」はhuでもfuでも入力可能。利用者が混乱しないよう、両方を受け付ける親切設計になっているのです。

一方で、入力ならではの独自ルールもあります。たとえば「ん」はnnと2回打つ、小さい「っ」は次の子音を重ねるかltu/xtuと打つ、「を」はwoと打つ、といった具合です。正式なローマ字表記とごっちゃにしないようにしましょう。

ちなみに、日本語入力には「ローマ字入力」のほかに、キーボードのかな刻印を使う「かな入力」もあります。現在はローマ字入力が主流で、覚えるキーが少なくて済むのが利点です。

身近なローマ字(駅名・道路標識・パスポート)

私たちの生活には、思った以上にローマ字があふれています。そして、そのほとんどがヘボン式です。普段から目にしているつづりが、今回ヘボン式が標準になる後押しにもなりました。

  • 駅名標:JRや私鉄の駅名ローマ字はヘボン式。新橋はShimbashi、渋谷はShibuyaと書かれています。
  • 道路標識:国土交通省の案内標識もヘボン式が基本。地名や施設名がアルファベットで併記されています。
  • パスポート:前述のとおり外務省のヘボン式。
  • 地名・人名:観光案内やニュースの英語表記も、おおむねヘボン式です。

逆に、小学校の教科書やローマ字練習帳ではこれまで訓令式が中心でした。「学校で習ったローマ字と街で見るローマ字が違う」という、あの違和感の正体がまさにこれです。2025年の見直しは、この長年のねじれを解消する動きでもあるのです。

ローマ字クイズ5問|あなたは何問わかる?

ここまでの内容を、クイズで確認してみましょう。答えはそれぞれの下にあります。

第1問 「ち」をヘボン式で書くと? (a)ti (b)chi (c)tsi

答え:(b)chi。訓令式・日本式ではtiですが、ヘボン式は英語の発音に寄せてchiと書きます。

第2問 パスポートで「なんぶ(南部)」はどう書く? (a)NANBU (b)NAMBU (c)NANNBU

答え:(b)NAMBU。ヘボン式では「ん」がb・m・pの前でmに変わります。

第3問 「がっこう」のローマ字で正しいのは? (a)gakkou (b)gakkō (c)galtukou

答え:(b)gakkō。促音「っ」は次の子音kを重ねます。長音は記号で示すか省略します(gakko)。galtukouはパソコン入力用の打ち方です。

第4問 1937年に国が定めたローマ字の方式は? (a)ヘボン式 (b)日本式 (c)訓令式

答え:(c)訓令式。日本式をもとに簡略化し、内閣訓令第3号で公式ルールになりました。

第5問 2025年の答申で、学校の基本になる方式は? (a)訓令式 (b)ヘボン式 (c)日本式

答え:(b)ヘボン式。約70年ぶりの見直しで、社会で広く使われるヘボン式が基本になります。

何問正解できましたか。3問以上なら、もうローマ字で迷うことはないはずです。

ローマ字のよくある質問(FAQ)

Q. 結局、ローマ字はヘボン式と訓令式どちらで書けばいいの?

A. 名前や地名など実社会で使うものはヘボン式が安全です。パスポート・駅名・道路標識はすべてヘボン式で統一されています。学校のテストでは、これまでは訓令式が基本でしたが、2025年の見直しで今後はヘボン式中心に変わっていきます。

Q. なぜ学校では「si」「tu」と習ったの?

A. 1954年の内閣告示で、訓令式(第1表)が基本とされてきたからです。訓令式は五十音の規則が分かりやすく、日本語の仕組みを学ぶのに向いているとされてきました。ただし実生活との食い違いが大きく、2025年に見直されました。

Q. 「ヘボン式」の「ヘボン」って何?

A. 方式を広めたアメリカ人宣教師ヘボン博士(James Curtis Hepburn)の名前です。同じHepburnでもオードリーやキャサリンのヘプバーンはHepburnを英語読みしたもので、もとは同じ名字です。

Q. ローマ字とアルファベット(英語)は同じもの?

A. 使う文字(A〜Z)は同じですが、役割が違います。アルファベットは英語などを書く文字そのもの、ローマ字は日本語の音をその文字で書き表す方法を指します。sakuraは英単語ではなく、日本語「さくら」のローマ字です。

Q. ローマ字に記念日はある?

A. 5月20日が「ローマ字の日」です。1922年(大正11年)のこの日に日本のローマ字会が創立されたことにちなみ、日本式の提唱者・田中舘愛橘の功績もあわせて顕彰する日として制定されました。

まとめ|ローマ字は今が変わり目

ローマ字には「訓令式」「ヘボン式」「日本式」の3方式があり、つづりが変わるのは「し・ち・つ・ふ・じ」など一部の音だけでした。

英語の発音に寄せたヘボン式は、パスポート・駅名・道路標識など実社会で広く使われています。一方、五十音の規則に忠実な訓令式は、長く学校で教えられてきました。

そして2025年、約70年ぶりの見直しで、学校の基本も訓令式からヘボン式へと舵を切りました。「し=si」で習った世代にとっては、ちょっとした時代の変わり目です。

名前や地名を書くときはヘボン式、長音と「ん→m」のルールだけ押さえておけば、もうローマ字で迷うことはありません。身のまわりの駅名標や標識を、ぜひヘボン式の目で見直してみてください。

「し=shi」が当たり前になる時代。今日からあなたも、駅の看板のローマ字をちょっと得意げに読めるはずです。

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