日本語の文章には、文字以外にもたくさんの記号が使われています。「、」や「。」は毎日目にしますが、では「※」「〆」「々」「‥」の正しい名前を、あなたはいくつ言えるでしょうか。
じつは、これらをまとめて「約物(やくもの)」と呼びます。ふだん何気なく打っている記号にも、一つひとつに正式な名前と読み方、そして意外な由来があります。
この記事では、句読点をはじめとする約物の種類を一覧で整理し、それぞれの読み方・正しい使い方・由来までやさしく解説します。読み終えるころには、文章記号の見え方が少し変わっているはずです。

目次
約物(やくもの)とは?句読点との違いをわかりやすく解説

約物とは、言語を文字で書き表すときに使う、文字そのもの以外の記号の総称です。句読点や括弧、疑問符・感嘆符、アクセント記号などがすべて約物に含まれます。
もともとは印刷や組版(文字を版に組む作業)の現場で生まれた言葉で、活字の世界から一般に広まりました。文字を「約(つづ)めて」関係づける役割を持つことから、約物と呼ばれるようになったといわれます。
つまり、句読点は約物という大きなグループの一部です。「句読点」と「約物」は混同されがちですが、約物のほうがずっと広い言葉だと覚えておくと整理しやすくなります。
約物の4つの分類(くぎり符・くくり符・つなぎ符・しるし物)
約物はとても数が多いので、はたらきごとに分類するとぐっと見通しがよくなります。日本語の組版規格(JIS X 4051)などをもとに、ここではわかりやすく4つに分けて紹介します。
- くぎり符(区切り符)……文や語句の切れ目をはっきりさせる記号。句点「。」、読点「、」、ピリオド「.」、コンマ「,」、疑問符「?」、感嘆符「!」、中黒「・」、コロン「:」など。
- くくり符(括り符)……語句の前後をはさんで囲む記号。かぎ括弧「」、丸括弧()、隅付き括弧【】といった、いわゆる括弧の仲間です。
- つなぎ符……語と語、数と数をつないで関係づける記号。ハイフン「‐」、ダッシュ「―」、波ダッシュ「〜」、三点リーダー「…」など。
- しるし物(標物)……上のどれにも入らない、目印や符号として使う記号。米印「※」、アスタリスク「*」、アンパサンド「&」、アットマーク「@」、矢印「→」などです。
この記事も、おおむねこの4分類の順番にそって、代表的な約物を一つずつ見ていきます。
句読点の種類と使い方|句点「。」と読点「、」の正しい打ち方

約物のなかでもっとも身近なのが句読点です。読み方は「くとうてん」で、文末につける句点「。」(マル)と、文中の区切りにつける読点「、」(テン)の2つをあわせた呼び名です。
句点「。」は、原則として文の終わりにつけます。ただし、いくつか打たない場面があります。
- 「!」や「?」で文が終わるときは、その後ろに句点を打ちません(例:本当にすごい!)。
- かぎ括弧「」で会話や引用が終わるとき、閉じかっこの直前の句点は省くのが一般的です(例:「行ってきます」と言った)。
- 見出しや表のように、文として完結していない短い語句には句点をつけません。
一方の読点「、」は、文の意味の切れ目や、読みやすくしたい場所につけます。じつは読点には「ここに必ず打つ」という絶対的なルールがなく、打ちすぎても少なすぎても読みにくくなる、さじ加減の難しい記号です。
読点「、」を打つ位置の基本ルール
絶対のルールはないものの、多くの文章術で共通して挙げられる「読点を打つと読みやすくなる位置」があります。代表的なものを押さえておきましょう。
- 長い主語のあと……「私が学生時代に毎日通った喫茶店は、いまも残っている」のように、主語が長いときは区切るとわかりやすくなります。
- 意味の取り違えを防ぎたいところ……「ここではきものを脱ぐ」のように、区切る位置で意味が変わる文では読点が役立ちます。
- 逆接や並列の接続のあと……「努力した、しかし届かなかった」「赤、青、黄の三色」など、流れの変わり目や並びの区切りに打ちます。
- 漢字やひらがなが続いて読みにくいところ……「ここではきものを」のように同じ種類の文字が続くときに、区切りの目印として打ちます。
迷ったときは、声に出して読んで、自然に息継ぎをする位置を目安にすると失敗しにくくなります。

横書きの読点は「、」と「,」どっち?公用文ルールの改定
「役所の文書や論文では、読点に『,(コンマ)』が使われている」と気づいたことはありませんか。これは昔のルールの名残です。
国の文書(公用文)では、昭和27年(1952年)に示された「公用文作成の要領」で、横書きの読点には「,」を使うと定められていました。学校の教科書や理系の論文でも、長くこの「,.」方式が使われてきました。
ところが2022年(令和4年)1月、文化庁が約70年ぶりに方針を見直し、「公用文作成の考え方」で、横書きでも読点は「、」、句点は「。」を原則とすることになりました。これからは公用文でも「、。」が基本になっていきます。
括弧(くくり符)の種類一覧|「」『』()【】の読み方と使い分け
語句をはさんで囲む括弧は、約物のなかでも種類が多いグループです。それぞれに名前と得意な役割があります。代表的な括弧を読み方つきで整理しました。
- 「」かぎ括弧……会話や引用、強調したい語句を囲む、もっとも基本の括弧です。
- 『』二重かぎ括弧……書名や作品名、また「かぎ括弧の中でさらに引用する」ときに使います(例:「彼は『走れメロス』が好きだ」)。
- ()丸括弧・パーレン……補足や注釈、読みがなを添えるときに使います。約物(やくもの)のように使うのがこれです。
- 【】隅付き括弧(すみつきがっこ)……見出しや重要語をいちばん目立たせたいときに使う、太くて存在感のある括弧です。
- 〔〕亀甲括弧(きっこうがっこ)……引用文のなかに編集者が注を補うときなどに使われます。
- []角括弧・ブラケット……数式や発音記号、補足情報を囲むときに使います。
- {}波括弧・ブレース……複数の項目をひとまとめにするときや、数学の集合の表記に使います。
- 〈〉山括弧・《》二重山括弧……特別な引用や強調、専門的な表記に使われる、ややフォーマルな括弧です。
同じ「かっこ」でも、書名なら『』、補足なら()、見出しなら【】、と役割で選び分けると、文章がぐっと読みやすく整います。
つなぎ符・区切り記号の使い方|中黒「・」三点リーダー「…」ダッシュ「―」
語と語をつないだり、余韻を表したりする記号も、日本語ではよく使われます。見た目が似ていて混同しやすいので、正体を整理しておきましょう。
- 中黒「・」(なかぐろ・中点)……並列(りんご・みかん・ぶどう)や、外国人名の区切り(レオナルド・ダ・ヴィンチ)に使います。中点(なかてん)や中ぽつとも呼ばれます。
- 三点リーダー「…」……余韻・省略・沈黙を表します。小説などでは「……」と2つ重ねて使うのが基本です。
- ダッシュ「―」(ダーシ)……話の中断や間(ま)、副題の前などに使います。小説などでは2つ重ねて使うのが伝統的です。
- 波ダッシュ「〜」……「東京〜大阪」「9時〜17時」のように範囲を示します。
三点リーダー「…」はなぜ「……」と2つ重ねるのか
小説や書籍の三点リーダーは、ほとんどが「……」と2つ重なっています。これは出版・組版の世界の慣例で、1つだけだと余白が間延びして見えるため、2倍(2つ重ね)を標準とする習わしが続いてきました。
明確な法律やJIS規格で「必ず2つ」と決まっているわけではありません。じっさい、この「2つ重ねの根拠は何か」という問い合わせが国立国会図書館のレファレンス事例にも残されているほど、確たる出典のない“業界の作法”なのです。
紛らわしい横棒の見分け方(ダッシュ・ハイフン・マイナス・長音)
パソコンやスマホでいちばん混乱しやすいのが、横棒の仲間です。見た目がそっくりなのに、別の文字として扱われます。
- ―(ダッシュ/ダーシ)……文の中断や副題に使う、いちばん長い横棒。
- ‐(ハイフン)……英単語の区切りや、語と語をつなぐ短い横棒。
- −(マイナス)……計算式で引き算を表す記号。
- ー(長音符)……「コーヒー」のように音を伸ばすカタカナ用の記号。
- 〜(波ダッシュ)と ~(全角チルダ)……どちらも波形ですが、じつは別の文字です。波ダッシュはU+301C、全角チルダはU+FF5Eという別々のコードを持ち、検索や文字化けで違いが出ることがあります。
見た目で選ぶと誤変換のもとになります。範囲を表すなら波ダッシュ、伸ばす音なら長音符、と役割で選ぶのが正解です。
しるし物(記号)の名前・読み方一覧|「※」「&」「@」「〒」「〆」の由来

ここからは、句読点でも括弧でもない、目印として使うしるし物を見ていきます。どれも名前と由来を知ると、つい誰かに話したくなる記号ばかりです。
※米印(こめじるし)
注意書きや補足を示す記号で、「※ただし送料は別途」のように文の頭につけて但し書きを目立たせます。注釈が複数あるときは「※1」「※2」と番号を添えます。
名前の由来は、漢字の「米」を斜めに傾けた形に見えるから、というのが通説です。日本で発達した記号で、欧文では同じ役割を後述のアスタリスクが担います。
&アンパサンド
「A&B」のように「〜と〜(and)」を表す記号です。その起源は古く、ラテン語で「〜と」を意味する接続詞 “et” を一文字に合体させた合字(ごうじ)にあります。1世紀ごろの古代ローマの筆記体で、E と T をつなげて書いた形が元になりました。
英語名「アンパサンド(ampersand)」も愉快な由来を持ちます。アルファベットの最後にこの記号を唱えるとき「and per se and(&、それ自体がand)」と言っていたのが、長い年月でなまって一語になったものです。
@アットマーク
いまではメールアドレスでおなじみですが、もともとは商売の帳簿で「単価」を表す記号でした(@は「at the rate of=〜の割合で」の意味)。語源はラテン語の “ad” だとする説もあります。
メールで使われるようになったのは1971年。電子メールを開発したレイ・トムリンソンが、「利用者名@所属するコンピューター」を区切る記号として選んだのがきっかけで、世界中に広まりました。
おもしろいのは各国での呼び名です。イタリア語では chiocciola(カタツムリ)、オランダ語では apenstaartje(猿のしっぽ)、ロシア語では собака(犬)、ドイツ語では Klammeraffe(クモザル)。形のとらえ方が国によってこれほど違うのです。

〒郵便記号
日本の郵便を表すおなじみのマークです。誕生は明治20年(1887年)。当時の逓信省(ていしんしょう=郵便や通信を担った官庁)が、はじめは「T」を郵便マークに定めました。
ところが、国際郵便では「T」が料金不足を示す記号だと判明。これは大変だと、わずか数日後に横棒を一本足した「〒」へ変更されました。逓信(Teishin)の頭文字Tを図案化した説と、漢字の「丁」を図案化した説が伝わっています。
〆しめ
封筒の閉じ目に書く「〆」は、「確かに封をしました」という封緘(ふうかん)の印です。日本で作られた国字(こくじ=日本生まれの漢字風文字)で、「締める」の意味から来ています。
受け取る人に「途中で誰かが開けていない」と伝えるための記号なので、バツ印「×」で代用するのはマナー違反とされます。改まった手紙ほど「〆」を使いたいところです。
々踊り字(おどりじ)
「人々」「時々」「日々」のように、同じ漢字の繰り返しを表す記号が「々」です。「同の字点(どうのじてん)」とも呼ばれます。
漢字のように見えますが、じつはこれ自体は漢字ではなく、読みを持たない記号です。だからパソコンでは「おなじ」や「どう」と打って変換すると出てきます。
なお、足し算や引き算で使う「+」「−」、円周率の「π」やルート「√」といった数や数式の記号は、約物とは別の「数学記号」の仲間です。気になる方は、以下の記事もあわせてどうぞ。
感嘆符「!」と疑問符「?」の由来|雨だれ・耳だれと呼ばれる記号
気持ちや問いかけを表す「!」と「?」。じつはどちらも、もともと日本語にはなかった欧文から輸入された記号です。日本語に定着したのは比較的最近のことです。
- !感嘆符(エクスクラメーションマーク)……驚き・感動・強調を表します。日本では俗に「雨だれ」とも呼ばれます。起源には諸説あり、ラテン語で喜びを表す感嘆詞 “io” を縦に重ねた合字だとする説が有名で、1400年ごろの印刷物に登場します。
- ?疑問符(クエスチョンマーク)……疑問や問いかけを表します。俗称は「耳だれ」。ラテン語で「問い」を意味する “quaestio” の頭文字 q を、下の o の上に置いた形が崩れて生まれた、という説が知られています。
使うときの注意点として、「!」「?」の直後には句点「。」を打ちません。すでに文の終わりを示しているからです。
ちなみにスペイン語では、文の始めに上下逆さまの「¿」「¡」を置き、文末の「?」「!」と挟む独特のスタイルがあります。読み始めた瞬間に「これは疑問文だ」とわかる、合理的なしくみです。
句読点・約物の歴史|日本語に「、」「。」が生まれたのはいつ?

毎日使う句読点ですが、日本語の歴史のなかではじつはかなり新しいものだということをご存じでしょうか。
古典や漢文には、もともと句読点はほとんどありませんでした。読む人が文脈から区切りを判断したり、「ヲコト点」などの補助記号を打ったりして読んでいたのです。江戸時代になっても、句読点に統一されたルールはなく、書き手しだいでした。
転機は明治時代です。西洋の文章にならって句読法(句読点の使い方)を取り入れる動きが進み、明治39年(1906年)に文部省が「句読法案」を示したことで、句点「。」と読点「、」の使い分けが学校教育を通じて広まりました。これが、いまの句読点の直接の原型です。
つまり、私たちが当たり前に使っている「、」「。」のルールは、まだ100年あまりの歴史しかない、意外と若い習慣なのです。

句読点・約物に関するクイズ【全6問】
ここまでの内容で、約物にだいぶ詳しくなったはずです。腕試しに、3択クイズへ挑戦してみましょう。答えは各問のすぐ下にあります。
第1問:「※」の正しい名前は?
① 米印 ② 星印 ③ 注印
第2問:「&」の起源になったラテン語は?
① and ② plus ③ et
第3問:三点リーダー「…」は、文章中で基本いくつ重ねて使う?
① 1つ ② 2つ ③ 3つ
第4問:2022年の公用文ルール改定で、横書きの読点は「,」から何に変わった?
① 、 ② . ③ ・
第5問:郵便記号「〒」のもとになった官庁は?
① 大蔵省 ② 郵政省 ③ 逓信省
第6問:「@(アットマーク)」をイタリア語では、ある生き物にたとえて呼びます。それは?
① 犬 ② カタツムリ ③ 猿のしっぽ
句読点・約物のよくある質問(FAQ)
最後に、句読点や約物について検索されることの多い疑問にまとめてお答えします。
Q. 「約物」は何と読みますか?
「やくもの」と読みます。句読点・括弧・疑問符など、文字以外の記述記号をまとめて指す総称です。
Q. 句読点と約物の違いは?
句読点(「。」「、」)は約物の一種です。約物は句読点を含む、文章記号全体の大きな総称だと考えるとわかりやすいです。
Q. 横書きの読点は「、」と「,」のどちらが正しいですか?
縦書きは「、」です。横書きは、2022年の公用文ルール改定で「、」が原則になりました。ただし理系の論文など、分野によっては今も「,.」を使う慣習が残っています。
Q. 「!」や「?」は正式な文章で使ってよいですか?
公用文では原則として使いません。一方、一般の文章やWebの記事では広く使われています。使う場合も、直後に句点「。」は打たないのがルールです。
Q. 三点リーダーは「…」1つではいけませんか?
厳密な決まりではありませんが、小説や書籍では「……」と2つ重ねるのが慣例です。きちんとした文章では2つ重ねがおすすめです。
まとめ|句読点・約物の名前と由来を知ると文章が楽しくなる
句読点をはじめとする約物は、ふだん意識せずに使っていますが、一つひとつに正式な名前と読み方、そして由来があります。
句点「。」と読点「、」は、明治時代に西洋の影響で広まった意外と新しい記号でした。読点の打ち方に絶対のルールはなく、声に出して自然な位置が目安になります。
「※」は漢字の米から、「&」はラテン語の et から、「〒」は逓信省のTから生まれました。「!」「?」も、もとは欧文から来た記号です。
名前と由来を知るだけで、いつもの文章記号が少し愛おしく見えてきます。次に「※」や「〆」を打つとき、その背景をそっと思い出してみてください。

数字や音、文字に関するほかの記号も、由来から知るとぐっとおもしろくなります。あわせてご覧ください。
記事の作成にあたっては、以下の公的機関・専門団体の情報を参考にしました。

