ひらがな・カタカナの由来一覧!成り立ちと元になった漢字を一字ずつ解説【字源】

毎日あたりまえのように読み書きしている「ひらがな」と「カタカナ」。実はそのすべての文字が、もとをたどれば一つひとつの漢字から生まれたものだということをご存じでしょうか。

たとえば「あ」は「安」という漢字を崩した形であり、「ア」は「阿」の左半分を取った形です。同じ「あ」の音でも、ひらがなとカタカナで元になった漢字(これを字母・字源といいます)が違うことも珍しくありません。

この記事では、ひらがな・カタカナがどのように漢字から生まれたのかという歴史から、五十音すべての元になった漢字を一字ずつ一覧で、さらに「ん」の由来や消えた仮名といった雑学まで、まとめて徹底解説します。

学校では「漢字から作られた」と習うだけで終わりがちですが、一字ずつ見ていくと驚くほど面白いんです。

ひらがな・カタカナの由来とは?すべて漢字から生まれた「仮名」

ひらがなもカタカナも、ゼロから発明された文字ではありません。中国から伝わった漢字を日本語の音にあてはめて使ううちに、少しずつ簡略化されて生まれた「日本生まれの文字」です。

そもそも日本にはもともと固有の文字がありませんでした。そこで奈良時代の人々は、漢字の「音」だけを借りて日本語を書き表す工夫をします。たとえば「やま(山)」を「夜麻」、「はる(春)」を「波流」と書くようなやり方です。意味は無視して音だけを借りたこれらの漢字を万葉仮名(まんようがな)と呼びます。『万葉集』で多く使われたことが名前の由来です。

この万葉仮名こそ、ひらがな・カタカナ双方の共通の祖先です。やがて万葉仮名は「もっと速く・簡単に書きたい」という実用の要求から、二つの方向に簡略化されていきました。漢字の全体を崩したのがひらがな、漢字の一部分だけを取り出したのがカタカナです。

「仮名(かな)」の意味
「仮名」は「仮の字」という意味です。正式な文字である漢字を「真名(まな)」と呼んだのに対し、その音を借りた間に合わせの文字なので「仮名(かりな→かんな→かな)」と呼ばれました。漢字を一段下に見たこの呼び名に、当時の文字観があらわれています。

漢字そのものの成り立ちや、音だけを借りる発想の延長にある「当て字」について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてどうぞ。

ひらがなの成り立ちと歴史|漢字の草書体から生まれた「女手」

書道で使う筆と筆置き

ひらがなは、万葉仮名をさらさらと崩して書く「草書体(そうしょたい)」から生まれました。たとえば「安」をくずし字で続けて書くうちに、点画がつながって丸みを帯び、やがて「あ」の形に落ち着いていったのです。曲線的でやわらかい字形は、この草書由来の名残です。

平安時代になると、この崩した仮名は和歌や手紙、日記など私的な場面で広く使われるようになります。当時、公的な文章は漢字(真名)で書くのが男性貴族の教養とされていたため、ひらがなは主に女性が用いる文字とされ「女手(おんなで)」と呼ばれました。

この「女手」が、日本文学に大きな花を咲かせます。紫式部の『源氏物語』や清少納言の『枕草子』といった平安女流文学は、ひらがながあったからこそ生まれた繊細な表現の宝庫です。

ひらがなが公的にも認められる画期となったのが、905年(延喜5年)に成立した日本初の勅撰和歌集『古今和歌集』です。撰者の一人である紀貫之(きのつらゆき)は、巻頭に「やまとうたは、人の心を種として……」で始まる仮名序(かなじょ)を書きました。これは仮名で書かれた日本初の本格的な文学論とされ、ひらがなが正式な表現の道具として認められた象徴的な出来事です。

男性貴族だった紀貫之は『土佐日記』を「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて……」と、あえて女性のふりをして仮名で書きました。ひらがなで書きたいという情熱がうかがえますね。

ひらがな46字の字源一覧|元になった漢字を一字ずつ解説

百人一首のうた歌留多で遊ぶ着物姿の女性たち

それでは、ひらがな五十音の元になった漢字(字母)を一覧で見ていきましょう。次の表は、現在使われている清音のひらがなと、その字母をまとめたものです。

  あ段 い段 う段 え段 お段
あ行 あ←安 い←以 う←宇 え←衣 お←於
か行 か←加 き←幾 く←久 け←計 こ←己
さ行 さ←左 し←之 す←寸 せ←世 そ←曽
た行 た←太 ち←知 つ←川 て←天 と←止
な行 な←奈 に←仁 ぬ←奴 ね←祢 の←乃
は行 は←波 ひ←比 ふ←不 へ←部 ほ←保
ま行 ま←末 み←美 む←武 め←女 も←毛
や行 や←也 (い) ゆ←由 (え) よ←与
ら行 ら←良 り←利 る←留 れ←礼 ろ←呂
わ行 わ←和 ゐ←為 (う) ゑ←恵 を←遠
ん←无(「無」の異体字)

こうして並べると、もとの漢字の面影がはっきり残っている字が多いことに気づきます。代表的なものをいくつか見てみましょう。

「あ」←安/「お」←於|形がよく残っている字

「あ」は「安」の草書体そのものです。うかんむりと「女」がつながって一気に書かれ、今の形になりました。「お」のもとである「於」も、左側の「方」の名残が字の左半分にしっかり見てとれます。

「の」←乃|ほとんど崩れていない最短の字源

ひらがなの中でもっとも字母の原形をとどめているのが「の」です。元になった「乃」を一筆で書くと、ほぼそのまま「の」になります。だからこそ崩しても読み間違えにくく、現代でも変体仮名がほぼ生まれなかった珍しい字です。

「ぬ」←奴/「め」←女|似ている字には理由がある

「ぬ」と「め」がよく似ているのは偶然ではありません。「ぬ」の字母「奴」は「女+又」、「め」の字母は「女」そのものです。どちらも「女」という共通パーツを含むため、崩した形も似通ったというわけです。

「ぬ」と「め」、「わ」「ね」「れ」あたりは子どもがよく書き間違えますが、字源を知ると「なるほど親戚なのか」と納得できます。

カタカナの成り立ちと歴史|漢字の一部を取った「僧侶の符号」

紺紙に金字で書かれた法華経の写経

ひらがなが女性の私的な文字として育ったのに対し、カタカナはまったく別の世界で生まれました。生みの親は、お寺のお坊さんたちです。

9世紀初め(平安時代初期)、奈良の古い宗派の学僧たちは、中国から来た難しい漢文のお経を日本語の語順で読む「漢文訓読」に取り組んでいました。その際、漢字の横に読み方や助詞を小さくメモする必要がありました。これが訓点(くんてん)です。

狭い行間にすばやく書き込むには、画数の多い万葉仮名をいちいち書いていられません。そこで僧侶たちは、漢字の一部分(片)だけを取り出して符号として使いました。「阿」のこざとへんを取って「ア」、「伊」のにんべんを取って「イ」、という具合です。

この「漢字の片方(一部)を取った仮名」だから「片仮名(カタカナ)」と呼ばれます。直線的でカクカクした字形は、速く正確にメモするための実用本位の生まれを反映しています。学術・公用の場で育った文字なので、ひらがなとは出自も性格も対照的なのです。

ひらがな=草書全体/カタカナ=一部分
同じ漢字から生まれても、ひらがなは「漢字全体をやわらかく崩した」もの、カタカナは「漢字の一画・一部分だけを抜き出した」ものです。曲線のひらがな、直線のカタカナという見た目の違いは、この成り立ちの違いから来ています。

カタカナ46字の字源一覧|元になった漢字を一字ずつ解説

続いて、カタカナの元になった漢字を一覧で見ていきましょう。「漢字のどの部分が抜き出されたか」を意識すると、つながりが見えてきます。

  ア段 イ段 ウ段 エ段 オ段
ア行 ア←阿 イ←伊 ウ←宇 エ←江 オ←於
カ行 カ←加 キ←幾 ク←久 ケ←介 コ←己
サ行 サ←散 シ←之 ス←須 セ←世 ソ←曽
タ行 タ←多 チ←千 ツ←川 テ←天 ト←止
ナ行 ナ←奈 ニ←二 ヌ←奴 ネ←祢 ノ←乃
ハ行 ハ←八 ヒ←比 フ←不 ヘ←部 ホ←保
マ行 マ←万 ミ←三 ム←牟 メ←女 モ←毛
ヤ行 ヤ←也 (イ) ユ←由 (エ) ヨ←与
ラ行 ラ←良 リ←利 ル←流 レ←礼 ロ←呂
ワ行 ワ←和 ヰ←井 (ウ) ヱ←恵 ヲ←乎
ン←尓(諸説あり)

「ア」←阿/「イ」←伊|部首がそのまま残る

カタカナは「漢字の一部を取る」という作り方が一貫しています。「ア」は「阿」のこざとへん(阝)、「イ」は「伊」のにんべん(亻)がそのまま字になりました。元の漢字のどの部分を抜き出したかが、形からはっきり読み取れます。

「セ」←世/「ヒ」←比|漢字の輪郭をなぞった字

「セ」は「世」を、「ヒ」は「比」の右側(匕)を簡略にした形がもとです。漢字の全体や一部を一画ずつ省略して書くうちに、今のシンプルな形に整っていきました。もとの漢字の輪郭がうっすら残っているのが分かります。

「ミ」←三|あえて右下がりに書く理由

「ミ」は漢字の「三」がそのまま字母です。ただし、横棒をまっすぐ三本引くと漢字の「三」と見分けがつきません。そこでカタカナの「ミ」は三本の線をやや右下がりに書き、漢字と区別しやすくする工夫がされたと考えられています。何気ない字形に、読みやすさへの配慮が隠れているのです。

「ミ」を縦書きで右下がりに書くクセ、言われてみれば誰もが自然にやっていますよね。理由があったとは驚きです。

ひらがなとカタカナの成り立ちの違い|同じ音でも元の漢字が違う

ここまで見てきて、「同じ音なのに、ひらがなとカタカナで元の漢字が違う」ケースがあることに気づいた方も多いはずです。これはひらがなとカタカナが、別々の場所・別々の目的で独立して生まれたことの何よりの証拠です。

下の表は、元になった漢字が異なる代表的なペアです。

ひらがなの字母 カタカナの字母
あ/ア
え/エ
さ/サ
た/タ
ち/チ
に/ニ
は/ハ
ま/マ
み/ミ
む/ム
け/ケ
す/ス
る/ル
を/ヲ

たとえば「は」と「ハ」。ひらがなの「は」は「波」を崩したものですが、カタカナの「ハ」は数字の「八」が字母です。同じ「は」の音を表すのに、まったく別の漢字から出発しているのが面白いところです。

逆に、ひらがなとカタカナが同じ漢字から生まれたペアもあります。「う/ウ」はどちらも「宇」、「も/モ」はどちらも「毛」、「や/ヤ」はどちらも「也」が字母です。

中でも極めつきは「へ」と「ヘ」です。どちらも字母は「部」で、しかも崩した形と一部を取った形がほぼ同じになってしまったため、ひらがなとカタカナがほとんど見分けのつかない唯一の例になりました。フォントによっては区別が困難なほどそっくりです。

「へ」が、ひらがなとカタカナで同じ形だなんて、意識したことがある人は少ないのでは。雑学クイズのネタにぴったりですよ。

知っておきたいひらがな・カタカナの雑学|「ん」の由来や消えた仮名

暖簾のかかった伝統的な蕎麦屋の店構え

最後に、字源にまつわる面白い雑学をいくつか紹介します。明日だれかに話したくなる小ネタばかりです。

「ん」「ン」は五十音図に元々なかった

撥音(はつおん)の「ん」は、実は日本語に古くから独立した文字として存在していたわけではありません。五十音図にも、47字を一度ずつ使う「いろは歌」にも、もともと「ん」は含まれていませんでした。後から必要に迫られて加えられた、いわば新参者の文字なのです。

そのため字源にも諸説があります。ひらがなの「ん」は「无(=無の異体字)」を崩したものとする説が有力です。カタカナの「ン」は「尓」に由来するという説が通説ですが、「尓を崩しても『ン』には見えない」という異論もあり、撥音を示す記号から生まれたとする見方など、はっきり決着していません。

消えた仮名「ゐ・ゑ・を」|発音が変わって役目を終えた

かつての五十音には、今は日常で使わない「ゐ(ヰ)」「ゑ(ヱ)」という仮名がありました。ひらがなの「ゐ」は「為」、「ゑ」は「恵」が字母です。それぞれ「 wi(ウィ)」「 we(ウェ)」という音を表していました。

しかし時代とともに発音が変化し、「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」と区別がつかなくなります。そして1946年の「現代かなづかい」で正式に使われなくなりました。「を」も発音上は「お」と同じになりましたが、助詞の「を」としてだけ生き残った特別な字です。

変体仮名|蕎麦屋の看板に生きる「もう一つのひらがな」

今の私たちは「あ」の字は一種類だと思っていますが、昔は同じ「あ」の音に対して「安」由来の字も「阿」由来の字も使われ、字体は一つに決まっていませんでした。平安時代末期には、ひらがなの異体字が約300種もあったといわれます。

これが一つに整理されたのが1900年(明治33年)の「小学校令施行規則」です。ここで「一つの音に一つの字体」と定められ、選ばれなかった字体は変体仮名(へんたいがな)と呼ばれて表舞台から退きました。

その名残が、今も街角に残っています。蕎麦屋の暖簾や看板でよく見かける、読めそうで読めない「きそば(生そば)」の文字。あれは変体仮名で、まさに統一前のひらがなの生き残りなのです。今度見かけたら、ぜひ「これは明治より前のひらがなだ」と思い出してみてください。

いろは歌と五十音図
同じ仮名を整理する仕組みでも、「いろは歌」は47字を重複なく一度ずつ並べた手習い歌、「五十音図」は母音と子音で縦横に整理した表です。五十音図は、インドのサンスクリット語(梵語)の音韻学である悉曇学(しったんがく)の影響を受けて平安時代に成立したと考えられています。

漢字をさらに簡略化した「旧字体と新字体」の関係や、漢字を組み立てる「部首」の話も、文字の成り立ちつながりで面白い分野です。あわせてどうぞ。

ひらがな・カタカナの由来クイズ|字源を当ててみよう

ここまで読んだあなたなら、もう字源マスターのはず。腕試しに5問のクイズに挑戦してみましょう。答えはすぐ下の囲みにあります。

第1問:「あ」の元になった漢字は?

毎日いちばん最初に習う、あの字の字母です。

答え:。「安」の草書体が崩れて「あ」になりました。

第2問:ひらがなの「は」とカタカナの「ハ」、字母は同じ?違う?

同じ「は」の音ですが、はたして……。

答え:違う。ひらがなの「は」は「波」、カタカナの「ハ」は「八」が字母です。

第3問:ほとんど崩れず、元の漢字とほぼ同じ形のひらがなは?

「乃」という漢字が字母です。

答え:。「乃」を一筆で書くとほぼ「の」になります。

第4問:ひらがなとカタカナで形がそっくりになってしまった、字母「部」の文字は?

ヒントは、おならの音でおなじみのあの字です。

答え:へ/ヘ。どちらも「部」が字母で、見分けがつかないほど似ています。

第5問:蕎麦屋の看板でよく見る、統一前の昔のひらがなを何と呼ぶ?

1900年の字体統一で表舞台を去った仮名たちです。

答え:変体仮名。「きそば」などの看板文字がその代表例です。

ひらがな・カタカナの由来に関するよくある質問

Q. ひらがなとカタカナ、先にできたのはどっち?

ほぼ同じ平安時代初期に、別々に成立したと考えられています。万葉仮名という共通の祖先から、私的な場面で使われた草書由来のひらがなと、漢文訓読の符号として生まれたカタカナが、並行して発達しました。どちらが先と単純には言いにくいのが実際のところです。

Q. ひらがなは一人の人物が発明したのですか?

いいえ。「弘法大師(空海)がひらがなを、吉備真備(きびのまきび)がカタカナを作った」という言い伝えがありますが、これは後世の俗説です。実際には特定の発明者がいるのではなく、多くの人が長い時間をかけて少しずつ簡略化していった結果として生まれました。

Q. なぜ日本語は漢字・ひらがな・カタカナを混ぜて使うのですか?

意味を表す漢字、文法を支えるひらがな、外来語や強調を担うカタカナと、三種類が役割分担しているからです。「私はカタカナでメモする」のように、漢字で意味の骨格を、ひらがなで助詞や送り仮名を、カタカナで外来語を書き分けることで、文の区切りが読み取りやすくなります。

Q. 「変体仮名」は今でも使われていますか?

日常の文章では使いませんが、蕎麦屋やうなぎ屋の看板、和菓子の商品名、書道や雅号など、伝統的な雰囲気を出したい場面で今も生きています。読めると街歩きが少し楽しくなります。

Q. 字母(字源)は学問的に確定しているのですか?

多くの字は有力な定説がありますが、「つ」「ん」「ツ」「ン」など一部の字には複数の説が残っています。本記事は広く知られている字母を中心に紹介していますが、研究上は諸説ある字もあることを補足しておきます。

まとめ|ひらがな・カタカナの由来を知ると文字が面白くなる

ひらがなもカタカナも、すべては漢字から生まれた「仮名」です。漢字の音を借りた万葉仮名を、全体を崩してやわらかくしたのがひらがな、一部分を抜き出して符号にしたのがカタカナでした。

ひらがなは女流文学を育てた「女手」として、カタカナは僧侶の漢文訓読を支える符号として、それぞれ別の場所で育ちました。だからこそ「は←波/ハ←八」のように、同じ音でも元の漢字が違うという面白い現象が生まれたのです。

「ん」が後から加わった新参者であることや、蕎麦屋の看板に変体仮名が生きていることなど、知ってみると身近な文字がぐっと味わい深くなります。今日からは「あ」の一字にも、千年以上の歴史が宿っていると感じられるはずです。

いつも使っている文字の裏側に、こんな物語があったとは。次に手書きするとき、ちょっと愛着がわきますね。

「ゐ」「ゑ」が使われなくなった「現代仮名遣い」など、かなづかいの公的な決まりについては、文化庁の解説もあわせてご覧ください。