「世界一速い動物は?」と聞かれて、まっさきに思い浮かぶのはチーターでしょうか。たしかにチーターは陸上で最も足が速い動物ですが、空や海まで含めると、その上を行く生き物がたくさんいます。
この記事では、足が速い動物を陸・空・海・昆虫の部門別に、時速データつきでランキングします。さらに「体の大きさ比なら最速はどれ?」「なぜ速く走れるのか」「人間(ウサインボルト)と比べると?」といった切り口まで、全34種を理由つきで徹底解説します。
速度の数字は測定方法によって幅が出るものも多いので、できるかぎり諸説や根拠もそえて紹介します。それでは、地上から空、海中までいっきに見ていきましょう。

目次
「世界一速い動物」はどう決まる?速い動物の速度の測り方と諸説
速さのランキングを見るときに、まず知っておきたいことがあります。それは「動物の最高速度は、思った以上に正確に測るのが難しい」という点です。
たとえばチーターの「時速120km」という数字は、野生での目測や追跡から推定されたものが多く、科学的にきちんと計測された記録とは少し違います。鳥の急降下や魚の遊泳速度になると、測定はさらに難しくなります。
また、速さには大きく分けて2種類あります。獲物に向かって落下する急降下(ストゥープ)の速さと、自分の力で進む水平移動の速さです。ハヤブサのように急降下なら桁違いに速くても、水平飛行ではそれほどでもない、というケースは珍しくありません。
そこでこの記事では、条件がまざらないように陸・空・海・昆虫の部門に分けてランキングしています。数字はあくまで「よく知られた目安」として読んでください。
陸上で足が速い動物ランキング【時速・最高速度】

まずは多くの人がイメージする「足が速い動物」、陸上を走る動物のランキングです。地上には時速70kmを超える俊足がずらりとそろっています。
1. チーター(時速約100〜120km)
陸上で最も足が速い動物といえば、やはりチーターです。野生では時速100〜120kmに達するといわれます。
ただし、科学的に実測された公式記録は少し控えめで、時速約98km(時速61マイル)です。2012年にアメリカのシンシナティ動物園のメス「サラ」が、陸上競技の公認コースで100mをわずか5.95秒で走り、ナショナル ジオグラフィックの立ち会いのもとで計測されました。同じ100mを9.58秒で走るウサインボルトより、3秒以上も速い計算です。
チーターは止まった状態から数秒で時速96kmまで加速できますが、この速さを保てるのは数百メートルだけ。体温が一気に上がるため、長距離は走れない短距離のスペシャリストです。
2. プロングホーン(時速約89km)
北米に住むプロングホーン(エダツノレイヨウ)は、時速約89km(55マイル)で走ります。瞬間の速さならチーターに譲りますが、この動物の真価は持久力にあります。
チーターが数百メートルで失速するのに対し、プロングホーンは時速70km前後を数kmにわたって維持できます。氷河期に存在した俊足の捕食者アメリカチーターから逃げ続けた名残ではないか、という説もある「長距離ランナーの王者」です。
3. スプリングボック(時速約88km)
南アフリカのレイヨウ、スプリングボックも時速約88kmの俊足です。危険を感じると高く飛び跳ねる「プロンキング」という独特の行動でも知られています。
4. クォーターホース(ウマ・時速約88km)
身近な動物のなかで圧倒的に速いのがウマです。短距離向けの品種クォーターホースは、約400mの短距離競走で時速約88kmを記録します。長めの距離が得意なサラブレッドでも時速約70kmで走ります。
5. ブラックバック(時速約80km)
インドに住むブラックバック(インドレイヨウ)も時速約80kmで走る草原の俊足です。らせん状にねじれた長い角がトレードマークです。
6. ヌー(時速約80km)
アフリカの大草原を群れで大移動するヌーも、時速約80kmで走れます。数十万頭の群れがいっせいに走る姿は圧巻で、群れで逃げることが捕食者対策になっています。
7. トムソンガゼル(時速約80km)
チーターの主な獲物であるトムソンガゼルは、時速約80kmで逃げます。直線の速さでは追いつかれても、急なジグザグ走法で方向転換し、小回りのきかないチーターを振り切ろうとします。
8. ライオン(時速約80km)
百獣の王ライオンも、短距離なら時速約80kmを出せます。ただしスタミナはないため、草むらにひそんで獲物に忍び寄り、最後の数十メートルだけ全力で走る狩りをします。
9. グレイハウンド(時速約74km)
イヌのなかで最も速いのがグレイハウンドで、時速約74km。ドッグレースでおなじみのこの犬は、人類最速のウサインボルト(最高時速約45km)を軽くしのぎます。
10. ノウサギ(時速約72km)
ノウサギ(ジャックラビット)も時速約72kmの俊足です。長い後ろ足のバネと、左右に大きく跳ぶジグザグ走法で、捕食者をかわします。
11. ダチョウ(時速約70km)
飛べない鳥ダチョウは、走ることに特化して時速約70kmで疾走します。これは走る鳥として最速であり、2本足で移動する動物としても最速級。1歩で5mも進みます。
12. アカカンガルー(時速約70km)
オーストラリアのアカカンガルーは、跳ねながら時速約70kmで移動します。後ろ足の腱をバネのように使うため、速く跳ぶほどエネルギー効率がよくなるという、省エネ走法の達人です。
13. コヨーテ(時速約65km)
北米に広く住むコヨーテも時速約65kmで走れます。都市近くにもあらわれる身近な動物ですが、その俊足と賢さで、変化する環境をたくましく生き抜いています。
チーターのもっと意外な能力や、動物の体にまつわる雑学は、以下の記事でくわしく紹介しています。

空を飛ぶ最速の鳥|空で速い動物ランキング【急降下と水平飛行】

陸の王者チーターをはるかに超える速度を出すのが、空の動物です。とくに獲物めがけて落下する急降下は、動物界で群を抜く速さになります。
14. ハヤブサ(急降下で時速約320〜390km)
動物界で最も速い生き物が、このハヤブサです。獲物に向かって翼をたたんで急降下する「ストゥープ」で、ギネス世界記録では時速389kmが公認されています。1999年、「フライトフル」という個体がセスナ機から放たれ、計測用のチップを背負って落下した記録です。
ただしこれは高い高度から放たれた人工的な条件で、鳥類学者からは「自然の狩りとは違う」という指摘もあります。野生で実際に狩りをするときの急降下は、時速約320kmと推定されています。それでも文句なしに「世界一速い動物」です。
15. イヌワシ(急降下で時速約240〜320km)
大型の猛禽イヌワシも、急降下では時速240〜320kmに達します。翼を半分たたんで斜めに突っ込み、大きな体重を乗せて一気にウサギやキツネを仕留めます。
16. ハリオアマツバメ(水平飛行で時速約170km・諸説)
「水平飛行で最も速い鳥」としてよく紹介されるのがハリオアマツバメで、時速約170kmといわれます。
ただしこの記録は、測定方法がきちんと公表されておらず未確認とされています。急降下ではなく自力の水平飛行でこの速度なら驚異的ですが、数字を見るときは少し割り引いて受け止めるのが正確です。
17. オオグンカンドリ(時速約153km)
熱帯の海上を飛び続けるオオグンカンドリは、時速約153kmで飛びます。体重のわりに翼がとても大きく、ほとんど羽ばたかずに上昇気流を乗りついで、数週間も空にとどまることができます。
18. アマツバメ(水平飛行で時速約111km)
自力の水平飛行で確認された記録として最速級なのが、アマツバメの時速約111kmです。アマツバメは食事も睡眠も交尾も空中でこなし、一生のほとんどを飛び続けて過ごすことで知られています。
19. ハト(時速約80〜140km)
身近なハトも、じつは速い鳥です。とくにレース用に改良された伝書バトは平均時速約80km、追い風に乗れば時速140kmを超える記録もあるといわれます(諸説あり)。すぐれた帰巣本能で、何百kmも離れた場所から巣に戻ってきます。
速さではなく「強さ」で動物をくらべたランキングも用意しています。ハヤブサが最強のハンターとして登場します。
海・水中で速い動物ランキング|最速の魚と海洋生物

水の中は空気より抵抗が大きいぶん、速度の測定がとても難しい世界です。ここには「最速の魚」をめぐる有名な論争もあります。順番に見ていきましょう。
20. バショウカジキ(諸説・従来は時速約100km)
長いあいだ「魚で最速、時速約100〜110km」とされてきたのがバショウカジキです。背中の大きな帆と、剣のように突き出た上あごが特徴です。
ところが2015〜2016年の研究で、この数字は過大評価だった可能性が指摘されました。高速度カメラなどで実測すると、瞬発でも時速35〜55km程度で、それ以上の速さで泳ぐと水中で泡が生じる「キャビテーション」が起き、ヒレが傷ついてしまうというのです。とはいえ、魚のなかで非常に速い部類であることに変わりはありません。
21. クロカジキ(諸説・時速約129kmとも)
クロカジキ(ブラックマーリン)も「時速約129kmで魚最速」と紹介されることがあります。ただしこの数字は1920年代に釣り糸が引き出される速さから計算されたもので、誇張の可能性が指摘されています。
22. メカジキ(時速約90kmとも)
メカジキは時速約90kmといわれる海の俊足です。目や脳を温める特別な器官を持ち、冷たい深海でもすばやく反応できるのが武器です。
23. クロマグロ(時速約70〜80km)
クロマグロは時速70〜80kmで巡航できる高速回遊魚です。水の抵抗を減らす紡錘形の体と、まわりより高い体温を保つしくみで、広い海を泳ぎ続けます。
24. アオザメ(時速約70km)
サメのなかで最も速いのがアオザメで、時速約70km。瞬発的にはさらに速いともいわれ、水面から飛び出すジャンプも見せます。すらりとした体と三日月形の尾びれが、高速遊泳に向いています。
25. シャチ(時速約55km)
海の頂点に立つシャチも、時速約55kmで泳ぎます。「海のオオカミ」とも呼ばれ、群れで連携して大きな獲物を追い込む、賢いハンターです。
26. ハンドウイルカ(時速約40km)
水族館でおなじみのハンドウイルカは、時速約40km(瞬発では50km超とも)で泳ぎます。船が作る波や、なかまが起こす水流に乗って、省エネで速く移動するのが得意です。
27. ジェンツーペンギン(泳ぎで時速約36km)
陸ではよちよち歩きのペンギンですが、水中ではちがいます。ジェンツーペンギンは時速約36kmで泳ぎ、泳ぐ鳥として最速です。翼を水中で羽ばたかせ、空を飛ぶように水中を進みます。

昆虫・小さな生き物で速い動物ランキング

体が小さいと速度の絶対値は小さくなりますが、昆虫や小さな生き物には「動き」がずば抜けた俊足がそろっています。
28. アブ(時速100km超とも・諸説)
ウマバエの仲間のアブは、オスがメスを追うときに時速100kmを超えて飛ぶという古い記録があります。これは過大評価とされていますが、それでも昆虫トップクラスのスピードであることはたしかです。
29. トンボ(時速約50km)
トンボは時速約50kmで飛ぶ、空中戦の名手です。前進だけでなく急停止・ホバリング・後退も自在にこなし、狩りの成功率は95%にもなるといわれる優秀なハンターです。
30. スズメガ(時速約50km)
ガのなかまのスズメガも時速約50kmで飛びます。ハチドリのように空中で静止しながら花の蜜を吸う、高速ホバリングの達人です。
31. ミツバチ(時速約29km)
ミツバチは時速約29kmで飛びます。小さな体のわりに速く、あの「ブーン」という羽音は、1秒間に200回以上はばたく高速飛行から生まれています。
32. ハンミョウ(速すぎて目が追いつかない)
地面を走るハンミョウは、絶対速度こそ速くありませんが、体に対する動きが速すぎるのが特徴です。走る速度が速すぎて一瞬まわりが見えなくなり、立ち止まって視覚情報を取り直してからまた走る、という研究結果があります。
33. ゴキブリ(逃げ足は体長比の達人)
身近なゴキブリの速さは時速約5km(秒速約1.5m)ほど。絶対値は遅いものの、これは1秒間に自分の体長の約50倍を走る計算になります。あの捕まえにくい逃げ足は、体のサイズを考えるとおどろくべき俊足なのです。
34. シャコ(パンチは銃弾級の加速)
最後は番外編、シャコです。泳ぐ速さではなく「パンチ」が桁外れで、前脚の打撃は水中で秒速約23m。その加速は小口径の銃弾に匹敵し、貝殻も割ってしまいます。速さの世界には、こういう「一瞬の動き」のチャンピオンもいるのです。
体の大きさ比なら最速は?体長比でみる速い動物

ここまでは時速、つまり絶対的な速さで見てきました。でも「体の大きさを考えたら、どの動物が最速か」という見方をすると、ランキングはがらりと変わります。指標は1秒間に自分の体長の何倍を進むかです。
この基準での世界チャンピオンは、なんとゴマ粒より小さなダニです。アメリカで見つかったパラタルソトムス・マクロパルピスという体長0.7mmのダニは、1秒間に体長の322倍を走ることが2014年に確認されました。
それまでの記録保持者はオーストラリアのハンミョウで、体長の約171倍。ちなみに地上最速のチーターは約16倍、人類最速のウサインボルトでさえ約6倍にすぎません。
このダニの速さを人間の大きさに当てはめると、時速約2000km、つまり音速を超えるスピードで走っている計算になります。絶対速度では目にも留まらない小さな生き物が、じつは「世界最速」だというのは面白い視点ですね。
ハンミョウ…約171倍/秒
チーター…約16倍/秒
人間(ボルト)…約6倍/秒
なぜ速い?速さを生む動物の体の仕組み
チーターをはじめとする俊足の動物は、速く走るために体じゅうが特別な作りになっています。代表的なポイントを見てみましょう。
しなる背骨。チーターの背骨はバネのように大きく曲げ伸ばしでき、これによって一歩のストライド(歩幅)が伸びます。走るとき、体が縮んでから一気に伸びる動きが、加速を生みます。
引っ込まない爪。多くのネコ科は爪を引っ込めますが、チーターの爪は半分出たままで、陸上選手のスパイクのように地面をしっかりとらえます。
大きな心臓・肺・鼻の穴。全力疾走には大量の酸素が必要です。俊足の動物は心臓や肺、鼻腔が大きく、酸素をたっぷり取り込めます。プロングホーンがチーターより長く走れるのは、この呼吸・循環の能力が高いからです。
長い脚と長い尾。長い脚は一歩で進む距離をかせぎ、長い尾は高速で方向転換するときの舵(かじ)の役目を果たします。
つまり速さには、瞬発力で一気に加速するスプリンター型(チーター)と、高速を長く保つスタミナ型(プロングホーン)があり、体の作りもそれぞれに最適化されているのです。

人間(ウサインボルト)と速い動物の最高速度を比較
では、人間はどのくらい速いのでしょうか。史上最速のスプリンター、ウサインボルトが100m世界記録を出したときの最高時速は約45kmでした。
これは立派な数字ですが、動物の世界ではむしろ「遅い」ほうに入ります。グレイハウンド(時速74km)にもウマ(時速88km)にもチーター(時速98km)にも、まったく歯が立ちません。じつはイヌやウマと駆けっこをすれば、人類最速の男でも軽く置いていかれてしまうのです。
ただし、人間には別の強みがあります。それは持久力です。多くの動物は速く走れても長くは走れませんが、人間は汗で体温を下げながら何時間も走り続けられます。実際、昔のアフリカでは獲物がバテるまで追い続けて仕留める「持久狩猟」が行われていました。瞬発力では負けても、長距離なら人間は地球上で屈指のランナーなのです。
速い動物クイズ5問【あなたは何問わかる?】
ここまでの内容から、速い動物にまつわるクイズを5問出題します。家族や友だちと当てっこしてみてください。
第1問:陸上で最も足が速い動物は?
① ライオン ② チーター ③ ダチョウ
第2問:動物界で「世界一速い動物」とされるのは?
① ハヤブサ ② チーター ③ バショウカジキ
第3問:チーターより「持久力」があり、高速で長く走れる動物は?
① プロングホーン ② ヌー ③ コヨーテ
第4問:体の大きさ比で「世界最速」とされる、ゴマ粒より小さな生き物は?
① アリ ② ダニ ③ ノミ
第5問:泳ぐ鳥として最も速いのは?
① ペンギン ② カモ ③ アヒル
足が速い動物に関するよくある質問(FAQ)
Q. 世界一速い動物は結局どれですか?
急降下も含めればハヤブサ(時速約390km)が動物界最速です。自分の力で水平に動く速さなら、陸はチーター、空はアマツバメやハリオアマツバメ、というように部門で王者が変わります。
Q. チーターの最高速度は時速120kmですか?
野生では時速100〜120kmといわれますが、これは推定値です。科学的に計測された公式記録は時速約98km(シンシナティ動物園のサラ、2012年)で、こちらがより確実な数字です。
Q. バショウカジキは本当に時速100kmで泳ぐのですか?
従来はそう言われてきましたが、2015年以降の研究で、実際の瞬発は時速35〜55km程度ではないかと見直されています。水中ではそれ以上の速さを出すとヒレが傷つくため、というのが理由です。
Q. 人間はどのくらい速いですか?
ウサインボルトの最高時速で約45kmです。多くの俊足の動物には及びませんが、長時間走り続ける持久力では、人間は動物界でも屈指の存在です。
Q. 体が小さいほうが速いのですか?
絶対的な速さ(時速)は体が大きいほうが有利ですが、「体長の何倍進むか」で見ると、ダニやハンミョウのような小さな生き物が上位に来ます。速さは比べ方しだいで順位が変わるのです。
まとめ|足が速い動物ランキングのポイント
足が速い動物を、陸・空・海・昆虫の部門別に34種紹介してきました。
陸上の王者はチーターで、実測記録は時速約98km。空まで含めれば、急降下で時速約390kmに達するハヤブサが「世界一速い動物」です。
海では「魚最速」とされてきたバショウカジキの速度が近年見直されるなど、速さの記録は今も研究で更新されています。
そして体の大きさ比で見れば、ゴマ粒より小さなダニが世界最速。速さは「どこを走るか」「どう測るか」「何と比べるか」で、まったく違う顔を見せてくれます。
身近なイヌやウマ、ハト、ゴキブリにも、それぞれの俊足のひみつが隠れています。ぜひ次に出会ったとき、その速さに注目してみてください。


