ポルトガル語が由来の日本語30選|パン・カステラ・ボタン…実は南蛮由来だった意外な言葉たち

毎日なにげなく使っている「パン」や「ボタン」という言葉。実はこれらがポルトガル語に由来する外来語だということをご存じでしょうか。

日本語には英語やフランス語など多くの外国語が入り込んでいますが、最も古い時代に伝わった外来語の多くは、実はポルトガル語がルーツなのです。

この記事では、ポルトガル語が由来の日本語を食べ物・衣服・日用品・文化の4カテゴリ、全30語にわたって紹介します。それぞれの語源や伝来の背景もわかりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

「パン」が英語じゃなくてポルトガル語だったと知ったときは、筆者もかなり驚きました。調べれば調べるほど「この言葉も!?」という発見があって面白いですよ。

なぜ日本語にポルトガル語が多いのか?南蛮貿易の歴史的背景

日本にポルトガル語が大量に伝わった背景には、16世紀の南蛮貿易があります。ヨーロッパ人として初めて日本に到達したのは、1543年に種子島に漂着したポルトガル人でした。このとき鉄砲が伝来したことは有名ですが、同時にポルトガルの言葉・文化・食べ物も日本に流入し始めたのです。

さらに1549年には、イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸し、キリスト教の布教を開始しました。宣教師たちは日本各地に教会や学校を建て、宗教用語だけでなく日常的な言葉も日本語に浸透させていきました。

では、なぜスペインやイギリスではなくポルトガルが最初だったのでしょうか。その理由は1494年のトルデシリャス条約にあります。この条約により、新大陸の西側(南米など)はスペイン、東側(アフリカ・アジア方面)はポルトガルの勢力圏と定められました。そのためアジアへの航路開拓はポルトガルが先行し、インドのゴア、マレーシアのマラッカを経て日本へ到達したのです。

Tips
南蛮貿易は1550年代から1630年代にかけて最盛期を迎えましたが、1639年の鎖国令によりポルトガルとの交流は断絶しました。しかし、約100年間で日本語に定着した言葉は、その後も消えることなく現代まで使い続けられています。

【食べ物編】ポルトガル語が由来の日本語8選

まず最も身近な「食べ物」のカテゴリから見ていきましょう。日常的に使っている食べ物の名前にも、ポルトガル語由来のものが数多くあります。

1. パン(pão)

パンはポルトガル語の「pão(パォン)」が語源です。英語ではbreadですが、日本語のパンは英語由来ではありません。1543年にポルトガル人が種子島に到着した際に、小麦粉を焼いた食べ物とともにこの言葉が伝わりました。

ちなみに、フランス語でもパンは「pain」と言いますが、日本語のパンの直接の由来はポルトガル語です。

2. カステラ(Castella)

カステラの語源は、イベリア半島にあったカスティーリャ王国(Castilla)のポルトガル語読みです。宣教師が持ち込んだ焼き菓子の出身地を聞いたところ「カスティーリャのお菓子だ」と答えたことから、地名がそのまま菓子の名前になったと言われています。

長崎で独自に発展したカステラは、今やポルトガル本国にも逆輸入されるほどの日本名物になりました。

3. コンペイトウ(confeito)

金平糖(コンペイトウ)の語源は、ポルトガル語で「砂糖菓子」を意味する「confeito(コンフェイト)」です。織田信長がポルトガルの宣教師ルイス・フロイスから金平糖を献上されたという記録が残っており、戦国時代に伝来した歴史ある菓子です。

4. テンプラ(têmporas)

天ぷらの語源には複数の説がありますが、有力なのはポルトガル語の「têmporas(テンポラス)」に由来するという説です。これはカトリックの四季の斎日(Quatuor Anni Tempora)のことで、この期間は肉食が禁じられ、代わりに魚や野菜を油で揚げて食べていました。

別の説として、「tempero(調味料・味付け)」が語源だという意見もあり、学者の間で議論が続いています。

5. カボチャ(Camboja)

カボチャの語源は、なんと「カンボジア」のポルトガル語読み「Camboja(カンボージャ)」です。ポルトガル人がカンボジア経由で日本にこの野菜を持ち込んだことから、産地の名前がそのまま野菜の名前になりました。漢字では「南瓜」と書きますが、口語では「カボチャ」が定着しています。

6. ばってら(bateira)

ばってら(バッテラ)はポルトガル語で「小舟」を意味する「bateira(バテイラ)」が語源です。押し寿司の形が小舟に似ていたことからこの名がつきました。大阪の寿司文化を代表するばってら寿司は、ポルトガル語の名残を今に伝えています。

7. ザボン(zamboa)

ザボン(朱欒)はポルトガル語の「zamboa(ザンボア)」が語源で、柑橘類の一種です。九州地方で特に親しまれている果物で、「文旦(ブンタン)」と呼ばれることもあります。

8. 有平糖(alféloa)

有平糖(アルヘイトウ)は、ポルトガル語の「alféloa(アルフェロア)」に由来する飴菓子です。砂糖を煮詰めて飴状にし、花や動物などの形に細工したもので、現在でも茶道のお茶請けとして使われています。

【衣服・布地編】ポルトガル語が由来の日本語6選

南蛮貿易ではヨーロッパの衣服や布地も大量に持ち込まれました。その名残は、現代の日本語にも多く残っています。

9. ボタン(botão)

ボタンはポルトガル語の「botão(ボトォン)」が語源で、「つぼみ」「留め具」という意味があります。洋服文化とともに日本に入ってきた言葉で、英語の「button」よりも先にポルトガル語として定着しました。

10. カッパ(capa)

合羽(カッパ)の語源は、ポルトガル語で「マント・外套」を意味する「capa(カーパ)」です。雨具としてのカッパは日本独自の発展ですが、名前はポルトガル語由来です。漢字の「合羽」は当て字で、語源とは無関係です。

11. メリヤス(meias)

メリヤスはポルトガル語で「靴下」を意味する「meias(メイアス)」が語源です。現在は編み物の技法や素材を指す言葉として使われていますが、もとは靴下そのものを指していました。

12. ジュバン(gibão)

襦袢(ジュバン)の語源はポルトガル語の「gibão(ジバォン)」で、ヨーロッパの上着の一種です。日本に伝わった後、和服の下に着る肌着を指す言葉に変化しました。漢字の「襦袢」は当て字です。

13. ビロード(veludo)

ビロードはポルトガル語の「veludo(ヴェルード)」が語源で、英語では「velvet(ベルベット)」に相当します。南蛮貿易で高級布地として日本に入り、茶道具の袋や高級衣服に使われました。

14. ラシャ(raxa)

ラシャ(羅紗)はポルトガル語の「raxa(ラーシャ)」が語源で、厚手の毛織物を指します。明治時代以降はコートや軍服の素材として広く使われました。

「襦袢」や「合羽」が実はポルトガル語だったなんて、日本語としてあまりにも自然に溶け込んでいて驚きますよね。漢字まで当てられているので、外来語だと気づかない人も多いのではないでしょうか。

【日用品・道具編】ポルトガル語が由来の日本語7選

食べ物や衣服だけでなく、日常で使う道具や日用品の名前にもポルトガル語由来のものがあります。

15. コップ(copo)

コップはポルトガル語の「copo(コポ)」が語源です。オランダ語の「kop」が語源だとする説もありますが、ポルトガル語から入ったという説が有力です。英語では「cup」や「glass」に相当します。

16. ビードロ(vidro)

ビードロはポルトガル語で「ガラス」を意味する「vidro(ヴィードロ)」が語源です。息を吹き込むとペコペコと音がする長崎のガラス玩具「ぽっぺん」は、ビードロの代表的な工芸品です。

17. フラスコ(frasco)

フラスコはポルトガル語の「frasco(フラスコ)」がそのまま日本語になったもので、「瓶」を意味します。現在は理科の実験器具として知られていますが、もとは液体を入れる瓶全般を指していました。

18. シャボン(sabão)

シャボンはポルトガル語で「石鹸」を意味する「sabão(サバォン)」が語源です。「シャボン玉」という言葉に残っており、石鹸が日本に伝来した当時の名残を感じられます。

19. ブランコ(balanço)

ブランコはポルトガル語で「揺れる・振り子」を意味する「balanço(バランソ)」が語源です。遊具のブランコは英語では「swing」ですが、日本語ではポルトガル語由来の名前が定着しています。

20. ジョウロ(jarro)

ジョウロ(如雨露)の語源は、ポルトガル語で「水差し」を意味する「jarro(ジャーロ)」です。漢字の「如雨露」は「雨露のごとく水を注ぐ」という意味の当て字で、こちらもポルトガル語との関連を知ると驚く言葉のひとつです。

21. トタン(tutanaga)

トタンの語源はポルトガル語の「tutanaga(トゥタナーガ)」で、亜鉛合金を意味します。トタン板(亜鉛メッキ鋼板)は日本の家屋の屋根材として広く使われましたが、その名前がポルトガル語由来だとは意外に知られていません。

【宗教・文化・その他】ポルトガル語が由来の日本語9選

キリスト教の布教とともに伝わった宗教用語のほか、文化や娯楽に関する言葉にもポルトガル語由来のものが多数あります。

22. キリシタン(cristão)

キリシタン(切支丹)はポルトガル語で「キリスト教徒」を意味する「cristão(クリスタォン)」が語源です。戦国時代から江戸時代にかけて日本のキリスト教徒を指す言葉として使われ、現在は歴史用語として定着しています。

23. バテレン(padre)

伴天連(バテレン)はポルトガル語で「神父」を意味する「padre(パードレ)」が変化したものです。キリスト教の宣教師を指す言葉として使われ、豊臣秀吉が出した「バテレン追放令」でも有名です。

24. ロザリオ(rosário)

ロザリオはポルトガル語の「rosário(ロザーリオ)」がそのまま日本語になったもので、カトリックの祈りに使う数珠のことです。語源をたどるとラテン語の「rosarium(バラの園)」に行き着きます。

25. カルタ(carta)

カルタはポルトガル語で「手紙・カード」を意味する「carta(カルタ)」が語源です。トランプ遊びとともに伝来し、日本では「いろはかるた」「百人一首かるた」など独自のカードゲームに発展しました。

26. オルガン(órgão)

オルガンはポルトガル語の「órgão(オルガォン)」が語源です。宣教師が教会に持ち込んだ楽器で、日本で最初にオルガンを聴いたのは天正遣欧使節の少年たちだったとも言われています。

27. タバコ(tabaco)

タバコはポルトガル語の「tabaco(タバコ)」が語源です。南蛮貿易で喫煙文化とともに伝来し、江戸時代には庶民の間にも広がりました。漢字では「煙草」と書きますが、読みはポルトガル語そのままです。

28. イギリス(Inglês)

意外に知られていませんが、「イギリス」という国名の語源はポルトガル語の「Inglês(イングレス)」です。英語では「England」「United Kingdom」ですが、日本語の「イギリス」はポルトガル語経由で入ってきた言葉なのです。

MEMO
同様に「オランダ」もポルトガル語の「Holanda(オランダ)」が語源です。英語では「Netherlands」ですが、日本語の呼び方にはポルトガル語の影響が色濃く残っています。

29. チャルメラ(charamela)

チャルメラはポルトガル語で「木管楽器の一種」を意味する「charamela(シャラメーラ)」が語源です。屋台のラーメン屋を呼ぶ音として知られるチャルメラの音色は、元をたどればヨーロッパの楽器に行き着きます。

30. マント(manto)

マントはポルトガル語の「manto(マント)」がそのまま日本語になったもので、肩から羽織る外套を意味します。英語では「cloak」や「cape」に当たりますが、日本語ではポルトガル語の「マント」が定着しています。

ポルトガル語由来の日本語 一覧表

ここまで紹介した30語を一覧表にまとめました。

日本語 ポルトガル語 意味 カテゴリ
パン pão パン(食べ物) 食べ物
カステラ Castella カスティーリャ王国 食べ物
コンペイトウ confeito 砂糖菓子 食べ物
テンプラ têmporas 四季の斎日 食べ物
カボチャ Camboja カンボジア 食べ物
ばってら bateira 小舟 食べ物
ザボン zamboa 柑橘類 食べ物
有平糖 alféloa 飴菓子 食べ物
ボタン botão つぼみ・留め具 衣服
カッパ capa 外套・マント 衣服
メリヤス meias 靴下 衣服
ジュバン gibão 上着 衣服
ビロード veludo ベルベット 衣服
ラシャ raxa 毛織物 衣服
コップ copo 杯・器 日用品
ビードロ vidro ガラス 日用品
フラスコ frasco 日用品
シャボン sabão 石鹸 日用品
ブランコ balanço 揺れる・振り子 日用品
ジョウロ jarro 水差し 日用品
トタン tutanaga 亜鉛合金 日用品
キリシタン cristão キリスト教徒 文化
バテレン padre 神父 文化
ロザリオ rosário 数珠 文化
カルタ carta 手紙・カード 文化
オルガン órgão 楽器 文化
タバコ tabaco タバコ 文化
イギリス Inglês 英国人・英語 その他
チャルメラ charamela 木管楽器 文化
マント manto 外套 衣服

ポルトガル語→オランダ語→英語:日本の外来語の変遷

日本の外来語の歴史を見ると、時代ごとに主要な「輸入元」が変わっていることがわかります。

16世紀〜17世紀前半はポルトガル語の時代でした。しかし1639年の鎖国令でポルトガルとの交流は途絶え、代わりに出島を通じたオランダが唯一のヨーロッパとの窓口になりました。この時代に入ってきた言葉には「ランドセル(ransel)」「ビール(bier)」「ゴム(gom)」などがあります。

そして明治維新後は英語が外来語の主流になり、現在に至ります。面白いのは、同じ概念に対してポルトガル語とオランダ語・英語の両方から入った言葉がある点です。たとえばガラス製品を指す「ビードロ」はポルトガル語由来、「ガラス」はオランダ語の「glas」由来で、現在は「ガラス」のほうが一般的に使われています。

注意
ポルトガル語由来の日本語の中には、語源について複数の説があるものもあります。この記事では有力とされる説を紹介していますが、学術的には議論が続いている言葉もあるため、ご了承ください。

日本語にはほかにも面白い言語的特徴がたくさんあります。たとえば、日本で独自に作られた漢字「国字」については「日本で生まれた漢字「国字」20選|峠・榊・凪・辻など由来と読み方を徹底解説」で、ウサギを「1羽」と数える不思議な助数詞については「日本語の変わった数え方20選|ウサギが1羽・タンスが1棹・イカが1杯になる意外な理由」で詳しく解説しています。

まとめ

この記事では、ポルトガル語が由来の日本語30語を紹介しました。食べ物の「パン」「カステラ」「天ぷら」から、衣服の「ボタン」「カッパ」「襦袢」、日用品の「コップ」「シャボン」「ブランコ」、そして文化・宗教用語の「キリシタン」「カルタ」「オルガン」まで、多岐にわたるジャンルにポルトガル語の影響が見られます。

これらの言葉は、16世紀の南蛮貿易という約100年間の交流の中で日本語に溶け込み、鎖国後も消えることなく約480年にわたって使い続けられてきました。漢字の当て字まで作られた「合羽」「襦袢」「如雨露」などは、もはや外来語とは思えないほど日本語に定着しています。

普段なにげなく使っている言葉の語源をたどると、思わぬ歴史のつながりが見えてくるものです。この記事をきっかけに、身の回りの言葉に隠された歴史に興味を持っていただけたら嬉しいです。

個人的に一番驚いたのは「イギリス」がポルトガル語由来だったことです。英語で「England」なのに、なぜ日本語では「イギリス」なのか――その答えが南蛮貿易の歴史にあったとは、言葉って本当に奥が深いですね。

参考文献