
この記事では、世界の変な税金・面白い税金を「歴史上の税金」「現代の税金」「日本の税金」の3つに分けて約30個紹介します。
どれも実際に存在した(または現在も存在する)税金ばかり。なぜこんな税金ができたのか、その背景もあわせて解説していきます。
目次
【歴史編】もう廃止された衝撃の税金12選
まずは歴史上存在した、今では信じられないような税金から紹介します。
1. 髭税(ロシア):髭を生やすだけで課税
ロシア皇帝ピョートル大帝が1698年に導入した、世界で最も有名な変な税金のひとつです。
ロシアを西欧化しようとしたピョートル大帝は、伝統的に髭を生やしていたロシア男性に「髭をやめろ!」と命令。拒否する者には税を課しました。納税者は「髭手形」と呼ばれる銅製のトークンを常に携帯する必要があり、身分によって税額も違いました。農民は数コペイカ、貴族や軍人は100ルーブル以上という高額でした。
1772年にエカチェリーナ2世によって正式に廃止されました。
2. 窓税(イギリス):家の窓の数で課税
1696年にイングランドで導入された、家にある窓の数で課税するという信じられない税金。対仏戦争の戦費調達が目的でした。
人々はどうやってこの税金を逃れたと思いますか?答えは「窓をふさぐ」。当然ですが、窓をレンガで埋めて「窓じゃなくしてしまえ」作戦が大流行したのです。
結果、家の中は暗く換気も悪くなり、健康被害が続出。1851年にようやく廃止されました。今でもイギリスの古い建物には、埋められた窓の跡が残っている場所があります。
3. 尿税(古代ローマ):トイレの尿に課税
古代ローマでは、公衆トイレから集めた尿がアンモニア源として洗濯や歯磨きに使われていました。そこに目をつけたのが皇帝ウェスパシアヌス。
「尿の取引に課税しよう」と1世紀に制定。息子のティトゥスが「父上、それは汚らわしい税です」と文句を言ったところ、ウェスパシアヌスは尿税から得た金貨を息子の鼻に近づけて「これ、臭うか?」と言ったという逸話が残っています。
この出来事から生まれた名言が「Pecunia non olet(金は臭わない)」です。
4. ガベル(フランス塩税):フランス革命の遠因に
14世紀から1946年まで約600年続いた、フランスの塩に対する税金。すべての塩の購入に課税され、地域によって税率に大きな差がありました。パリ近郊は重く、南部は軽いか免除という不公平な仕組みです。
さらに悪質なのは、住民に強制的に一定量の塩を購入させるルール。これは後にフランス革命の遠因のひとつとされています。

5. 帽子税(イギリス):富裕層ほど帽子を持つという発想
1784年から1811年まで存在した税金。「富裕層は複数の帽子を持つ」という発想から、男性用の帽子1個ごとに課税されました。
当然、帽子屋は「帽子」と呼ばなくなります。1804年からは政府も対策として「被り物全般」への課税に変更しました。いたちごっこですね。
6. レンガ税(イギリス):巨大レンガ作戦
同じく1784年導入、1850年廃止のイギリスの税金。レンガ1個ずつに課税するという単純な仕組みでした。
製造業者の反応は見事でした。「1個あたりの税金なら、巨大なレンガを作ればいいじゃないか」。通常の何倍もの大きさのレンガを作り始めたのです。慌てた政府はレンガの最大サイズを規制する法律を追加する羽目に。
7. 壁紙税(イギリス):無地の紙を貼って自分で塗る
1712年にアン女王時代のイギリスで制定された、印刷・柄入りの壁紙に課税する税金。
業者の対応策は、無地の紙を貼ってから手作業でステンシル塗装するという方法でした。つまり「壁紙ではなく、現地で絵を描いている」という名目です。イギリスの業者の発想力にはいつも驚かされます。
8. 石鹸税(イギリス):国民の衛生状態が悪化
イギリスに重税がかけられたため、数十年間にわたり石鹸が贅沢品扱いとなった税金。結果として国民の衛生状態が悪化し、病気が蔓延する原因の一つにもなりました。
1835年に当時の財務大臣グラッドストンによって廃止されました。
9. トランプ税(イギリス):偽造カードが横行
トランプカードに印紙税がかけられた結果、急増税に対応して偽造カードが横行した例。税金は時として犯罪の温床にもなるという教訓的な事例です。
10. ロシアの人頭税(魂税):ピョートル大帝の勅令
1722年にピョートル大帝が制定。男性人口(年齢問わず)全員に課税するという、かなり乱暴な税金でした。
定期的な国勢調査で納税対象を把握し、常備軍の維持費用として使われました。19世紀末に段階的に廃止されています。
11. 独身税(ブルガリア):出生率対策の失敗
1968年から1989年までブルガリア人民共和国に存在した税金。25歳以上の独身者に所得の5〜10%を課税するという厳しい内容でした。
出生率向上を目的とした社会主義国家の人口政策でしたが、短期的には出生率上昇も、長期的には国民の不満が蓄積して廃止されました。
12. 無子税(ソ連):子どもがいないと課税
1941年にスターリンが制定した税金。子どもがいない成人に課税するという内容で、1990年まで約50年間続きました。
第二次世界大戦の人口減対策として導入され、戦後も長く維持されました。ソ連らしい強権的な政策ですね。
【現代編】今も存在する変な税金12選
驚くことに、現代にも「え、本当に?」と思うような税金が存在します。
13. ポテトチップス税(ハンガリー)
2011年に導入された通称「ポテチ税」。正式には塩分・糖分・カフェインの多い加工食品への物品税です。ポテチはもちろん、エナジードリンク、お菓子、スナック、調味料まで対象。
導入後、消費者の73%が対象商品の消費を減らしたという調査結果もあり、健康政策として一定の効果を上げています。2022年7月には甘味全般にも拡大されました。
14. 犬税(ドイツ)
ドイツでは19世紀から現在まで続く犬の税金があります。ベルリンでは1頭目120ユーロ、2頭目以降180ユーロ。危険犬種とされる犬は年間1,000ユーロに達することも。
2022年のドイツ自治体の犬税収入は約4億1,400万ユーロ(約660億円)にものぼります。犬のフン処理費用などに充てられています。
オーストリア、スイス、ルクセンブルクなどでも導入されています。
15. 日陰税(イタリア・コネリアーノ)
1993年にイタリア全土で法制化されましたが、実際に課税しているのは北部のコネリアーノ市のみという珍しい税金。
内容は、店舗のパラソルや日除けが公共の土地に影を落とすと課税されるというもの。導入後、多くのカフェやレストランが慌てて日除けを撤去する騒ぎになりました。

16. 牛のげっぷ税(アイルランド・デンマーク等)
現代ならではの環境税。牛の腸内発酵で発生するメタンガスが温室効果ガスの主要な排出源であることから、畜産農家に1頭あたり最大110ドル相当の課税がされています。
デンマークは2030年施行予定、ニュージーランドも検討中です。「牛のおならに税金」と聞くと笑ってしまいますが、地球温暖化対策としては真面目な話です。
17. タトゥー税(アメリカ・アーカンソー州)
2005年から導入された、タトゥー・レーザー脱毛・ボディピアスに6.5%の売上税。美容系サービスへの特定課税という珍しい事例です。
18. ベーグル調理税(アメリカ・ニューヨーク州)
ニューヨーク州の奇妙な税金。ベーグル自体は非課税ですが、スライスしたり温めたり、クリームチーズを塗ったりすると「調理済み食品」扱いになって8%の売上税がかかるのです。
つまり、ベーグルを丸ごと買えば非課税、お店で半分に切ってもらうだけで課税対象になるということ。ニューヨーカーは今もこの複雑なルールと戦っています。
19. ジャック・オ・ランタン税(アメリカ)
ニュージャージー州とアイオワ州の変わった税金。食用のかぼちゃは非課税ですが、ハロウィンの飾り用に買うと課税対象になります。
店員「これ、食べる用ですか?飾る用ですか?」
客「…食べる用です」(実は飾るつもり)
というやり取りが想像できますね。
20. ベネチア入島税(イタリア)
2024年に導入された新しい税金。日帰り観光客に1人5〜10ユーロを課すもので、オーバーツーリズム対策が目的です。
ベネチアは観光客が多すぎて住民の生活に支障が出ているため、「観光公害」を抑える試みとして注目されています。
21. 砂糖税(イギリス・フランス・メキシコ等)
糖分入り飲料に課税する「砂糖税」は現代の健康政策の主流です。イギリスは2018年に導入し、糖度によって税率が変わる仕組み。肥満・糖尿病対策として多くの国が追随しています。
22. 脂肪税(デンマーク):世界初にして1年で廃止
2011年にデンマークが導入した世界初の脂肪税。飽和脂肪酸2.3%超の食品に課税するというものでした。
ところがわずか1年で廃止に。理由は、デンマーク人がドイツやスウェーデンで買い物して脱税するようになったから。健康政策として面白い試みでしたが、国境を越えた買い物は止められなかったようです。
23. プラスチック税(EU・イギリス等)
2021年にEUで、2022年にイギリスで導入された環境税。リサイクル材30%未満のプラスチック包装に課税するもので、プラスチックごみ削減が目的です。
24. トイレの水洗税(アメリカ・メリーランド州)
2004年に導入された「Chesapeake Bay Restoration Fee」。住民は年間約60ドルを下水処理料金として負担します。チェサピーク湾の水質汚染対策に使われています。
【日本編】意外と知られていない日本の面白い税金
25. うさぎ税(明治時代):バブル対策
東京府で1873年(明治6年)に導入された、日本で最も衝撃的な税金のひとつ。飼いうさぎ1羽あたり月1円という課税でした。
当時の巡査初任給が4〜9円だったことを考えると、かなりの高額です。
なぜこんな税金が?実は明治初期、日本では「うさぎバブル」が発生していたのです。珍しい毛並みのうさぎが投機対象となり、1羽が数百円で取引されるなど市場が過熱。政府は重税で鎮静化させようとしました。1879年に廃止されています。
26. 犬税(昭和まで存在)
日本の犬税は明治時代から導入され、1982年(昭和57年)の長野県四賀村を最後に廃止されました。昭和30年頃には全国約2,700の自治体が採用していたと言われています。
狂犬病対策や野犬対策の財源として使われていました。
27. 入湯税(現行):温泉に入ると課税
日本全国の温泉地で徴収されている現行税。温泉入浴客1人1日150円(標準税額)を市町村が徴収しています。
観光振興や環境衛生、消防施設、鉱泉源保護などの財源として使われています。温泉旅館で明細を見ると「入湯税150円」と書かれているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
28. ゴルフ場利用税(現行):趣味に直接課税
日本の都道府県税。ゴルフ場利用者1人1日あたり数百〜1,200円程度を徴収します。ホールの規模やコースの格により税額が異なります。
「趣味に直接課税する」というのは世界的にも珍しく、日本独自の税制として知られています。
29. 核燃料税(現行):原発立地都道府県の独自税
福井・新潟・福島など原発立地都道府県が制定している法定外普通税。原子力発電所の核燃料に課税する日本独特の税金です。
原発リスクに対する地域の財源確保が目的で、国レベルではなく地方自治体が独自に制定しているのが特徴。
30. 狩猟税(現行)
都道府県税で、狩猟者登録を受ける人に課される税金。鳥獣保護や狩猟行政の財源として使われています。

変な税金に共通する3つの特徴
ここまで30個の変な税金を見てきて、いくつか共通する特徴が見えてきました。
1. 戦費調達がきっかけの税が多い
窓税、帽子税、レンガ税、壁紙税など、イギリスの変な税金の多くは戦争の戦費調達が目的でした。戦争になると国は必死に財源を探すため、変なアイデアでも採用されやすくなるのです。
2. 人々の抜け道とのいたちごっこ
窓税→窓を埋める、レンガ税→巨大レンガ、壁紙税→無地の紙を塗装、脂肪税→国外で買い物…。国民の知恵は権力に勝るということが、歴史上何度も証明されています。
3. 健康・環境対策として使われる現代の税
一方で、現代の変な税金の多くは健康・環境対策という明確な目的があります。ポテチ税、砂糖税、脂肪税、プラスチック税、牛のげっぷ税など、「悪いものを減らす」ためのツールとして税金が使われています。
まとめ:世界の変な税金ランキングTOP5
最後に、個人的に特に衝撃的だった税金をランキングでまとめます。
1位:髭税(ロシア)
髭を生やすだけで課税、しかも「髭手形」トークン携帯必須
2位:尿税(古代ローマ)
「金は臭わない」という名言を生んだ伝説の税
3位:日陰税(イタリア)
影に課税するという哲学的な税金
4位:うさぎ税(日本・明治)
うさぎバブル鎮静化のための重税
5位:ベーグル調理税(ニューヨーク)
切るだけで課税されるカオスな税金
変な税金の歴史を見ていくと、人類がいかに「何にでも税金をかけようとしてきた」かがよくわかります。同時に、どんな税金にも必ず抜け道を見つけ出してきたのが人間の面白さでもあります。

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