青く澄みきった湖面、氷河が落ち込むターコイズの湖、火口に張ったエメラルドの湖、そしてなぜかショッキングピンクに染まる湖……世界には「本当に地球の景色なのか」と疑うほどの美しい湖が数多く存在します。
この記事では世界の美しい湖を30ヶ所厳選し、大陸ごとに整理してそれぞれの見どころ・成因・豆知識を画像付きで徹底解説します。スロベニアのブレッド湖、カナダのレイクルイーズ、シベリアのバイカル湖、日本の摩周湖、オーストラリアのヒリアー湖など、世界地図をぐるりと一周する気持ちでお楽しみください。

目次
世界の美しい湖をめぐる旅、まずはヨーロッパの名湖5選

1. ブレッド湖(スロベニア)
ブレッド湖はスロベニア北西部、ユリウスアルプスの麓にある氷河湖です。標高475m、周囲約6km、最大水深30.6mと小ぶりながら、湖の中央にブレッド島が浮かび、島には白亜の聖マリア被昇天教会が建っています。
湖の北岸の断崖の上には11世紀築のブレッド城がそびえ、スロベニア最古の城としてそのままの姿で残っています。地元の船頭が漕ぐプレトナという木造渡し船で島へ渡るのが定番の観光体験です。
春のうっすら雪を被るアルプス、夏のエメラルドグリーンの湖面、秋の紅葉、冬の結氷と、四季それぞれの表情があるのも魅力です。

2. ハルシュタット湖(オーストリア)
ハルシュタット湖はオーストリア中部ザルツカンマーグート地方にある氷河湖で、標高508m、長さ8km、最大水深125mあります。
湖畔の町ハルシュタットは、紀元前4000年ごろから続く世界最古の岩塩鉱山で栄えた場所で、1997年に「ハルシュタット・ダッハシュタイン・ザルツカンマーグートの文化的景観」としてユネスコ世界文化遺産に登録されています。
ディズニー映画『アナと雪の女王』のアレンデール王国のモデルになったとも噂される景観で、狭い湖畔の斜面に色とりどりの木造家屋が積み木のように並びます。

3. プリトヴィツェ湖群(クロアチア)
プリトヴィツェ湖群国立公園はクロアチア中部にある自然保護区で、1979年にユネスコ世界自然遺産に登録されました。大小16個の湖が階段状に連なり、全長8kmの谷に90以上の滝が点在します。
湖と湖を仕切るのは石灰華(トラバーチン)の堤防で、水が流れ落ちるときに苔や藻とともに新しい石灰を堆積させるため、今も毎年1cmほど堤が成長しているといわれます。
透明度が高く、湖底が透けて見えるほどで、エメラルドとターコイズが入り混じった独特の色合いが観光客を惹きつけます。

4. コモ湖(イタリア)
コモ湖はイタリア北部ロンバルディア州にあるY字型(逆Y字)の氷河湖で、面積146km²、最大水深410mとイタリア最深を誇ります。
アルプスの氷河が谷を削って生まれた湖で、両岸に切り立つ山と湖畔の別荘群が「絵画のようだ」と古くから評されてきました。ジョージ・クルーニーをはじめ多くのセレブが別荘を構えることでも知られます。
湖に突き出た半島の先端にあるベラッジオ、向かいのヴァレンナ、北のコリコなど、どの町から眺めても違う表情を見せてくれるのがコモ湖の醍醐味です。

5. レマン湖(スイス・フランス)
レマン湖(ジュネーブ湖)はスイスとフランスの国境にまたがる三日月形の湖で、面積582km²、最大水深310mと、中欧最大級のスケールを誇ります。
湖畔にはスイス側のジュネーブ、ローザンヌ、モントルー、フランス側のエビアン(ミネラルウォーターの聖地)が並び、湖の東端近くには詩人バイロンが題材にしたシヨン城が水辺に立っています。
ジュネーブ港から噴き上がるジェ・ド・ジュネーブ(最大高度140mの大噴水)は街のシンボルで、毎秒500Lの水を空へ打ち上げ続ける圧巻のパフォーマンスを無料で楽しめます。

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6. レイク・ルイーズ(カナダ)
レイク・ルイーズはカナダ・アルバータ州のバンフ国立公園内にある氷河湖で、標高1731m、長さ2km、最大水深70mあります。
湖に流れ込むヴィクトリア氷河が岩を削りながら運ぶ極細の岩石粒子(ロックフラワー)が水に溶け込み、夏には太陽光を独特のターコイズグリーンに反射します。雪解けが進む6月下旬〜7月に最も鮮やかな色になります。
湖畔にはフェアモント・シャトー・レイクルイーズという城のような高級ホテルが建ち、カヌー体験やベロートラックの散策が人気です。1882年に鉄道測量技師が発見し、ヴィクトリア女王の娘ルイーズ王女にちなんで命名されました。

7. モレーン湖(カナダ)
モレーン湖はレイク・ルイーズから南東へ約15km、同じくバンフ国立公園内にある氷河湖です。標高1885m、長さ約500m、最大水深14mと小ぶりですが、背景にそびえるテンピークス(十峰の谷)と湖面の鮮烈なコバルトブルーのコントラストが有名で、旧カナダ20ドル紙幣の裏面にも描かれました。
こちらも氷河のロックフラワーが色の正体ですが、湖が深く、底の岩盤が暗いため、レイク・ルイーズより濃い青に見えます。
2023年からは自家用車での湖畔アクセスが完全予約制(シャトルバスのみ)となり、混雑緩和と景観保護の両立が図られています。

8. ペイト湖(カナダ)
ペイト湖はバンフ国立公園の北、アイスフィールド・パークウェイ沿いにある氷河湖で、標高1860m、面積5.3km²あります。
上空から見ると湖の輪郭が犬(狐)の横顔に見えるユニークな形で、展望台からは湖全体と背景のミスタヤ山脈が一望できます。
夏は氷河解けが最大になるため、6月中旬〜8月にかけて最も鮮やかなターコイズに染まり、冬は雪と氷に覆われて静かな白銀の世界に変わります。

9. クレーター湖(アメリカ)
クレーター湖は米オレゴン州南部にあるカルデラ湖で、最大水深594mとアメリカ合衆国で最も深い湖です。世界でも9番目に深い湖にランクインします。
約7700年前、マザマ山の大噴火で山体が崩壊した跡に雨水と雪解け水だけが溜まって誕生した閉鎖湖で、流入河川が一切ないため透明度40m以上を保ち、湖水は透き通った深い青色をしています。
湖内にはかつての噴火口が再活動してできたウィザード島と、湖面に半分沈んで漂う「幽霊船(ファントムシップ)」と呼ばれる岩が浮かび、神秘的な景観を作っています。

10. タホ湖(アメリカ)
タホ湖はカリフォルニア州とネバダ州の州境、シエラネバダ山脈北部にある高山湖で、標高1899m、面積497km²、最大水深501mと北米で2番目に深い湖です。
約200万年前の地殻変動でできた地溝に水がたまった構造湖で、流域の森林が豊かなため透明度も高く、21m先まで見通せます。
夏はヨットとカヤックの聖地、冬は周辺に20以上のスキー場が集まるアメリカ西部最大のウィンタースポーツ拠点としても知られます。1960年のスコーバレー冬季五輪の会場もタホ湖畔にあります。

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11. アティトラン湖(グアテマラ)
アティトラン湖はグアテマラ高地の標高1560mにあるカルデラ湖で、面積130km²、最大水深340m。84,000年前の超巨大噴火(ロス・チョコヨス噴火)でできた直径約12kmのカルデラに水がたまって形成されました。
湖を取り囲むようにアティトラン火山、トリマン火山、サンペドロ火山の3座がそびえ、「世界で最も美しい湖」と評したのは『素晴らしい新世界』で知られる作家オルダス・ハクスリーです。
湖畔の12の村々には今もマヤの末裔(ツトゥヒル族、カクチケル族)が暮らし、民族衣装に身を包んだ住民の日常の暮らしを垣間見ることができます。

12. チチカカ湖(ペルー・ボリビア)
チチカカ湖はペルーとボリビアの国境にまたがる標高3812mの山岳湖で、面積8372km²、最大水深281m。大型船が航行可能な湖としては世界最高所に位置します。
インカ神話では創造神ビラコチャがこの湖から現れて天地を作ったとされ、古くから神聖な場所として崇められてきました。
湖上には葦(トトラ)を束ねて浮かべたウロス島(浮島)が40以上あり、今もウル族が葦の家に住み、葦の船で暮らしています。湖の大きさと標高の高さから、気圧と紫外線が強く、訪れる際は高山病対策が必須です。

13. アルヘンティーノ湖(アルゼンチン)
アルヘンティーノ湖はアルゼンチン・パタゴニアのサンタクルス州にある氷河湖で、面積1415km²とアルゼンチン最大の湖です。最大水深500m以上、標高187m。
湖の西端にはペリトモレノ氷河(南パタゴニア氷原から流下する長さ30km、幅5kmの巨大氷河)が突き出しており、定期的に氷柱が崩落して湖に落下する瞬間を目撃できます。
ロス・グラシアレス国立公園の一部として1981年にユネスコ世界自然遺産に登録されており、湖に浮かぶ青白い氷山の間をクルーズする体験は世界的にも稀少です。
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14. 死海(イスラエル・ヨルダン)
死海はイスラエルとヨルダンの国境にある塩湖で、湖面標高マイナス430m、すなわち地球上で最も標高の低い地点です。塩分濃度は約33%で、一般的な海水の約10倍という圧倒的な濃さを誇ります。
この高濃度の塩分のおかげで人体がふわりと浮かび、観光客は新聞を広げて読むポーズをとるのが定番。魚や藻はほぼ生息できないため「死海」と呼ばれるようになりました。
湖底から採れる黒い泥(デッドシーマッド)はミネラルが豊富で化粧品原料として有名です。近年は上流のヨルダン川の水使用量が増え、年に1m前後のペースで水位が下がっている環境問題の象徴でもあります。

15. ナクル湖(ケニア)
ナクル湖はケニア中西部、グレート・リフトバレー(大地溝帯)沿いの塩湖で、標高1759m、面積45km²。周囲は国立公園に指定されています。
かつて湖面を覆うほどの数百万羽のピンクフラミンゴが湖面を覆うことで知られ、「地球上で最も壮観な鳥の光景」と評されてきました。
近年は水位変動の影響でフラミンゴが隣のボゴリア湖に移動することが増えていますが、シロサイやクロサイの群れ、ヒョウやバッファローなどのサファリ動物も見られる総合的な自然の宝庫です。

16. ボゴリア湖(ケニア)
ボゴリア湖はナクル湖の北約100km、グレート・リフトバレー沿いにある強アルカリ性湖です。面積34km²、最大水深10m。
湖畔には熱水間欠泉が点在し、最高温度98℃の熱水が噴き上げる光景が見られます。地熱の影響で湖水は微アルカリ性で藻類(スピルリナ)が豊富に育ち、それを餌にするフラミンゴの大群が集結します。
2011年にラムサール条約の湿地として登録され、2001年には世界で3番目に大きなフラミンゴの生息地として認定されました。

17. マラウイ湖(マラウイ)
マラウイ湖(ニアサ湖とも呼ばれる)はアフリカ東部の大地溝帯南端にある構造湖で、面積29500km²(アフリカ3番目)、最大水深706mとアフリカで最も深い湖です。マラウイ、モザンビーク、タンザニアの3ヶ国にまたがります。
湖には800種以上のシクリッド(熱帯魚)が生息し、そのうち9割が固有種。単一の湖にこれほど多くの魚種が固有進化した例は世界的にも珍しく、進化生物学の重要研究フィールドになっています。
1984年にユネスコ世界自然遺産(マラウイ湖国立公園)に登録されました。
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18. バイカル湖(ロシア)
バイカル湖はロシア・東シベリアにある世界最古・最深の湖で、標高456m、面積31500km²、最大水深1642m(世界一)、湖齢2500〜3000万年(世界最古)、淡水貯水量は地球全体の約20%と、すべての指標が桁違いです。
透明度は40m以上で、湖面下の岩が水中からくっきり見えます。固有種が多く、淡水唯一のアザラシバイカルアザラシや白い魚オムリが生息しています。
冬には湖全体が厚さ1m以上の透明な氷に覆われ、青白く光る氷のひび割れ(ブルーアイス)が絶景として有名です。湖畔のオリホン島のシャーマンロックはシベリアの聖地として崇められています。

19. カスピ海(ロシア・カザフスタン・イラン・トルクメニスタン・アゼルバイジャン)
カスピ海は5ヶ国にまたがる面積371000km²の世界最大の湖です。塩分濃度は約1.2%と海水の3分の1程度で、かつては地中海とつながっていた海の名残(海跡湖)とされています。
「海」と呼ばれますが国際法上は内陸湖で、沿岸諸国が海底資源の配分を巡って長年交渉を続けてきました。石油・天然ガスの埋蔵量は世界有数で、油井のプラットフォームが湖上に点在します。
固有種のチョウザメから採れるキャビア(ベルーガ、オセトラ、セヴルーガ)は世界三大珍味として知られ、カスピ海産は最高級品とされます。

20. 天池(中国・北朝鮮)
天池は中国と北朝鮮の国境に位置する長白山(白頭山)の山頂カルデラ湖で、標高2189m、面積9.8km²、最大水深373m。北朝鮮では国家の象徴とされています。
西暦946年に発生したミレニアム噴火(VEI7)は過去2000年で世界最大級の噴火とされ、日本の古文書にも「白い灰が降った」と記録が残ります。この噴火で火口にたまったのが現在の天池です。
湖には「天池怪獣」と呼ばれる未確認生物の目撃談が1903年以降50件以上報告されており、中国版ネッシーとしてUMA愛好家にも知られています。

21. アラル海(カザフスタン・ウズベキスタン)
アラル海はかつて世界4番目に大きな内陸湖でしたが、20世紀後半に上流のアムダリヤ川・シルダリヤ川の水を綿花栽培のための灌漑に使いすぎた結果、急激に縮小しました。
1960年に面積68000km²あった湖は、2014年時点で当時の10%以下にまで干上がり、2000年には南北に分断。漁村だったアラリスクやモイナクは海岸線から百数十km離れた砂漠の町になり、船の墓場と呼ばれる錆びた漁船群が砂漠に残されています。
アラル海の悲劇は、開発と環境の調和がいかに難しいかを世界に示す生々しい教訓として、地球環境問題の象徴になっています。

世界の美しい湖に負けない、日本を代表する名湖6選

22. 摩周湖(北海道)
摩周湖は北海道東部・弟子屈町にある阿寒摩周国立公園内のカルデラ湖で、標高351m、周囲約20km、最大水深212m。
透明度は1931年の調査で41.6mを記録し、これは世界最高水準(当時世界一、現在もバイカル湖に次ぐ2位級)です。流入河川・流出河川がほとんどない閉鎖湖のため、濁りが生じにくいのが理由です。
夏は濃霧に包まれることが多く「霧の摩周湖」として知られ、晴れて湖面が見えた日は「幸運が訪れる」と語り継がれます。アイヌ語ではカムイトー(神の湖)と呼ばれていました。

23. 田沢湖(秋田県)
田沢湖は秋田県仙北市にある円形のカルデラ湖で、最大水深423.4mと日本最深の湖です。面積25.8km²、標高249m。
深い水と澄んだ湖水が太陽光に反射してコバルトブルーに輝き、湖畔には金色のたつこ像(永遠の若さを願って龍になったという伝説のモデル)が立ちます。
1940年代の玉川毒水導入で湖水が強酸性化し、固有種のクニマスは絶滅したと長年考えられていましたが、2010年に山梨県の西湖で生存が確認され、再発見の奇跡として話題になりました。近年は中和処理で水質が回復しつつあります。

24. 十和田湖(青森県・秋田県)
十和田湖は青森県と秋田県の県境にまたがる二重カルデラ湖で、面積61.1km²、最大水深327m(日本3位)。十和田火山の活動で約2万年前に形成されました。
湖の東岸から流れ出る奥入瀬渓流は「日本の渓流美を代表する景勝地」として知られ、秋の紅葉シーズンは全国から観光客が訪れます。
湖畔に立つ高村光太郎作「乙女の像」は彼の最晩年の代表作で、湖を開発した先人たちを称える記念碑として愛されています。また、湖では養殖されたヒメマスの本場(和井内貞行氏が1903年に移植成功)としても有名です。

25. 中禅寺湖(栃木県)
中禅寺湖は栃木県日光市にある堰止湖で、標高1269m、面積11.9km²、最大水深163m。男体山の噴火(約2万年前)で大谷川がせき止められて形成されました。
大型の天然湖としては日本で最も標高が高い湖で、湖の東端からは名瀑華厳の滝(落差97m)が流れ落ちています。
明治〜大正期にかけて欧米の外交官が別荘を構える避暑地として発展し、イギリス大使館別荘記念公園・イタリア大使館別荘記念公園が湖畔に残ります。湖にマス類を放流したのもこの時代の外国人たちで、日本のフライフィッシング発祥の地ともされています。

26. 五色沼(福島県)
五色沼は福島県北塩原村、磐梯朝日国立公園内にある大小30以上の湖沼群の総称です。1888年の磐梯山の大噴火で山体崩壊が発生し、川がせき止められてできました。
毘沙門沼、弁天沼、るり沼、青沼、赤沼など個々に名前が付けられ、それぞれが青・緑・エメラルド・赤褐色・コバルトブルーなど異なる色に見えます。鉄分・アルミニウム・珪酸などの含有量の差と水深によって色が決まるといわれますが、正確な仕組みは解明途上です。
湖沼間を結ぶ3.6kmの自然探勝路(五色沼自然探勝路)を歩くと、数十分ごとに目の前の水の色が変わる不思議な体験ができます。

27. 琵琶湖(滋賀県)
琵琶湖は滋賀県の中央に広がる日本最大の湖で、面積669km²、最大水深103m、湖齢は約400〜600万年。これは世界で3番目に古い古代湖(バイカル湖、タンガニーカ湖に次ぐ)に当たります。
長い湖齢のおかげで1400種以上の生物が生息し、ビワコオオナマズ、ホンモロコ、イサザなど60種以上の固有種が進化を続けています。近江八景として古くから景勝地に数えられ、竹生島・多景島・沖島という3つの島が浮かびます。
琵琶湖から流出する瀬田川〜宇治川〜淀川は京都・大阪の水源でもあり、関西1450万人の水がめとしての役割も果たしています。
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28. テカポ湖(ニュージーランド)
テカポ湖はニュージーランド南島カンタベリー地方にある氷河湖で、標高710m、面積87km²、最大水深120m。
氷河由来のロックフラワーが水に溶け込み、太陽光の中で独特のミルキーターコイズに輝きます。湖畔には1935年建立の石造りの小さな教会善き羊飼いの教会(Church of the Good Shepherd)があり、祭壇の窓越しに湖と南アルプスが一枚の絵のように見える設計になっています。
11月〜12月には湖畔一面に紫・ピンク・白のルピナスが咲き、世界中のフォトグラファーが訪れる季節になります。また周辺はオレラン・マッケンジー国際ダークスカイ保護区に指定されており、南十字星を含む南半球の星空観測の聖地でもあります。

29. ヒリアー湖(オーストラリア)
ヒリアー湖は西オーストラリア州エスペランス沖のミドル島にある鮮やかなピンク色の塩湖で、面積はわずか600m×250m、最大水深約20m。
ピンク色の正体はドナリエラ・サリナという好塩性の緑藻と、塩湖に住む特殊なバクテリア(ハロバクテリア)が生産するカロテノイド色素です。気温・塩分濃度・光の条件が揃うとこの色素が強調され、真ピンクの湖面になります。
1802年にイギリス人探検家マシュー・フリンダースが発見し、当時の日記にも「岩塩のようなピンクの湖を目にした」と記されています。現在は保護区指定で一般立ち入りは禁止されており、セスナ機からの遊覧が唯一の観賞手段です。

30. ワカティプ湖(ニュージーランド)
ワカティプ湖はニュージーランド南島、クイーンズタウンを擁する氷河湖で、標高310m、長さ80km、最大水深380m。S字型に曲がる細長い形が特徴的です。
マオリの伝説では、「眠っている巨人マタウの心臓が湖底にあり、今も鼓動している」と語られ、実際に湖面の高さが約25分周期で10cmほど上下する現象が観測されています(気圧変化と湖の振動が原因のサイシュとみられています)。
湖畔のクイーンズタウンは南島最大級の観光都市で、バンジージャンプ発祥の地(1988年、カワラウ橋)、ジェットボートやスカイダイビングのメッカとしても知られています。

世界の美しい湖が生まれる、5つの地学的な成因
1. 氷河湖(ひょうがこ)
氷河が岩盤を削った窪地に、氷河解け水がたまってできる湖です。レイク・ルイーズ、モレーン湖、ペイト湖、テカポ湖、ワカティプ湖、ブレッド湖、ハルシュタット湖、コモ湖、レマン湖、アルヘンティーノ湖が典型例で、ロックフラワー(氷河粉)によって独特のターコイズ色になるのが共通点です。最終氷期(約2万年前)以降に形成されたものが多いです。
2. カルデラ湖・火口湖
火山の山体崩壊や火口にできた凹地に水がたまった湖です。クレーター湖、摩周湖、田沢湖、十和田湖、アティトラン湖、天池がこのタイプ。流入河川がない閉鎖湖になりやすく、透明度が高いのが特徴です。深さも大きくなりがちで、日本の水深ランキング上位は軒並みカルデラ湖です。
3. 構造湖(地殻変動湖)
地溝(リフトバレー)や断層の陥没帯に水がたまった湖で、バイカル湖、マラウイ湖、タホ湖、ナクル湖、ボゴリア湖が典型例。プレートが引き離される力で地殻が沈み込むため、深さと長さのスケールが桁違いになり、湖齢も長いのが特徴です。
4. 海跡湖・残存湖
かつて海だった場所が地殻変動で陸に閉じ込められた湖です。カスピ海、アラル海、死海が代表例で、塩分濃度が高く、固有の魚介類が進化するケースが多くあります。アラル海のように人為的要因で劇的に縮小する例もあります。
5. 堰止湖(せきとめこ)
地滑り・火山噴火・氷河堆積などで川がせき止められてできた湖です。日本では中禅寺湖、印旛沼、五色沼、富士五湖がこのタイプ。比較的新しい湖が多く、湖畔に噴火や崩壊の痕跡が観察できるのも特徴です。
世界の美しい湖へ行く前に押さえておきたい観光豆知識
世界の美しい湖を旅するときに役立つポイントを簡単にまとめておきます。
- ベストシーズンは6〜9月の氷河湖:北半球の氷河湖は夏の氷河解けで最も色が鮮やかになります。レイクルイーズ・モレーン湖・ペイト湖は7月が色のピークです。
- 南半球は11月〜2月:テカポ湖のルピナス、ワカティプ湖の遊覧船はこの季節が最高です。
- 高山湖は高山病対策:チチカカ湖(3812m)・天池(2189m)は頭痛や息切れが出やすいので、前日からの水分補給とゆっくりペースが基本です。
- 死海・ヒリアー湖は塩害注意:皮膚の傷がある日は入水を避け、カメラ等は防塩対策をしましょう。
- 保護区の湖は許可制:ヒリアー湖は上陸禁止、モレーン湖はシャトルバスのみなど、湖ごとのアクセスルールを事前に確認することが大事です。
世界の美しい湖についてよくある質問(Q&A)
Q1. 世界三大湖・世界三大瀑布と並ぶ「世界三大美湖」のようなランキングはあるのですか?
公式な「世界三大美湖」という枠組みは存在しません。ただし慣例的にバイカル湖(ロシア)、レイク・ルイーズ(カナダ)、アティトラン湖(グアテマラ)の3つを並べる旅行媒体が多く、「それぞれの地球の美しい湖」を代表する存在と扱われがちです。
Q2. 世界で一番深い湖・高い場所にある湖はどこですか?
世界一深い湖はバイカル湖(1642m)、一番高い場所にある大型航行可能湖はチチカカ湖(3812m)です。なお、湖としてもっと高所に存在するのは標高6390mのチリ・オホス・デル・サラド山の名もない小さな火口湖とされますが、一般観光の対象ではありません。
Q3. 日本一深い湖・広い湖・透明度の高い湖は?
日本最深は田沢湖(423.4m)、日本最大は琵琶湖(669km²)、透明度日本一は摩周湖(かつては世界1位、現在も日本1位)です。水深2位は支笏湖(363m)、3位は十和田湖(327m)と続きます。
Q4. なぜヒリアー湖はピンク色なのですか?
原因はドナリエラ・サリナという緑藻と好塩性バクテリア(ハロバクテリウム)が作り出すカロテノイド色素です。高い塩分濃度・強い日光・適度な水温という3条件が揃うと、微生物が色素を大量生産し、湖面がショッキングピンクに染まります。水を汲んでも容器の中はピンクのままで、長時間置いても色が消えないのが特徴です。
Q5. 世界の美しい湖で「船の墓場」があるのはどこですか?
アラル海(カザフスタン・ウズベキスタン)のモイナクという旧港町には、砂漠の真ん中に錆びた漁船が数十隻残されています。1960年代には湖岸だった場所が、現在は湖から100km以上離れた砂漠になっており、環境問題を象徴する観光地として知られています。
世界の美しい湖のまとめ
今回は世界の美しい湖を30ヶ所、7つの地域に分けてご紹介しました。
ヨーロッパの氷河湖、北米のターコイズの氷河湖、南米の火山湖、アフリカのサバンナ塩湖、ユーラシアのスケール違いの4大湖、日本の名湖、オセアニアの異彩を放つ3湖と見てきました。
湖の表情は地域によって全く違いますが、いずれも「氷河・火山・地殻変動」という地球のダイナミックな営みが形作った地球の芸術です。
旅の計画を立てるときも、家で写真を眺めるときも、ぜひ「この湖はどう生まれたのか」という視点で見ると、景色の味わいが何倍にも深くなります。

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