寒い冬の校庭や公園で、誰かが「おしくらまんじゅう、押されて泣くな」と歌い出すと、いつのまにか子どもたちが背中合わせに固まって押し合いをはじめます。多くの人が一度は体験したことのある、日本の冬の定番あそびが「おしくらまんじゅう」です。
ルールはとてもシンプルなのに、名前の由来をたどると江戸時代の文献にまで行き着き、「押し合うとなぜ体が温まるのか」には筋肉と体温のれっきとした仕組みが隠れています。意外と奥が深い遊びなのです。
この記事では、おしくらまんじゅうの遊び方やルールから、歌詞の意味、名前の由来や歴史、地域による別称、そして体が温まる科学的な理由まで、ひとまとめにして徹底解説します。

目次
おしくらまんじゅうとは?冬に体を温める伝承あそび
おしくらまんじゅう(漢字では「押し競饅頭」)とは、複数の子どもがお互いに背中やお尻、肩で押し合って遊ぶ伝承あそびです。改訂新版『世界大百科事典』でも「壁や塀などに沿って1列になるか、円の区画内で相互に押し合い、列外・区画外に出た者は失格となる」と説明されています。
特徴は、寒い季節に行われることです。みんなで力いっぱい押し合うと体がぽかぽかと温まるため、主に秋から冬にかけて遊ばれてきました。俳句の世界でも「押しくら饅頭」は冬(三冬)の季語とされています。
道具もコートも必要なく、4人ほど集まればその場ですぐに始められる手軽さも、長く親しまれてきた理由です。
- 人数:4人以上(多いほど盛り上がる)
- 場所:広い屋外。壁ぎわや円を描いた地面
- 季節:秋から冬の寒い時期(冬の季語)
- 道具:不要
おしくらまんじゅうの遊び方とルール

おしくらまんじゅうには大きく分けて「円タイプ」と「壁・列タイプ」の2つの遊び方があります。どちらも押し合うのは同じですが、勝敗の決め方が少し違います。
円タイプ(押し出し合うルール)
もっとも一般的なのが、地面に円を描いて押し出し合うルールです。手順はとても簡単です。
- 地面に大きめの円を描きます(5〜6人なら直径2メートルほどが目安)。
- 全員が円の中に入り、背中合わせになって輪をつくります。両どなりの人と腕を組むと安定します。
- 掛け声に合わせて、背中やお尻で中心に向かって押し合います。
- 押されて円の外に出てしまった人から抜けていきます。
- 円を少しずつ小さくしながら繰り返し、最後まで残った人の勝ちです。
勝敗をつけずに「ただ温まるために押し合う」だけでも十分に楽しめます。小さな子が多いときは、無理に勝ち負けを決めないのがおすすめです。
壁・列タイプ(押し合うルール)
もう一つは、壁や塀に沿って一列に並び、両側から中央へ押し合うルールです。列の外にはじき出された人が負けになります。校舎の壁ぎわなど、円を描きにくい場所でよく行われてきました。

おしくらまんじゅうの歌詞と掛け声の意味
おしくらまんじゅうには、押し合いながら歌う独特の掛け声(わらべうた)があります。もっとも広く知られている歌詞は次のとおりです。
おしくらまんじゅう 押されて泣くな
あんまり押すと あんこが出るぞ
あんこが出たら つまんで舐めろ
「押されて泣くな」は、強く押されても泣かずにふんばれ、という励まし。「あんまり押すとあんこが出るぞ」は、ぎゅうぎゅうに押し合う子どもたちを、あんこの詰まった饅頭にたとえたユーモアです。押しつぶされた饅頭からあんこがはみ出す様子を、押し合う体に重ねているわけですね。
この歌詞は地域や時代によって自由に変えられてきました。「あんまり押すと出るぞ」と短く歌う地域もあれば、続きを足して長く歌う地域もあります。決まった作詞作曲者はおらず、口伝えで広がってきた典型的なわらべうたです。

名前の由来と漢字「押し競饅頭」に込められた意味

「おしくらまんじゅう」という不思議な響きの名前は、漢字で書くと「押し競饅頭」となります。ここに名前の由来が隠れています。
前半の「押しくら(押し競)」は、「押し競べる(おしくらべる)」つまり「押し合って力をくらべる」という意味です。これが縮まって「おしくら」になったと考えられています。相撲の「押し」と同じく、相手を押す力くらべを表しているのですね。
後半の「饅頭」は、食べ物の饅頭そのものというより、大勢の人が一カ所にぎゅっと丸くかたまった様子をたとえたものとされています。歌詞に「あんこが出るぞ」と出てくるのも、この「饅頭にたとえる」発想とつながっています。押し合ってまんまるに固まった人だかりを、あんこ入りの饅頭に見立てた、というわけです。
歴史をたどる|江戸時代の「めじろおし」
おしくらまんじゅうがいつ始まったのか、正確な起源はわかっていません。ただし、押し合って遊ぶこの遊びは、かなり古くからあったことが文献からうかがえます。
江戸時代後期に書かれた風俗事典『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』(1830年成立)には、押し合う遊びが「めじろおし」という名で登場します。これは、小鳥のメジロが木の枝に体を寄せ合ってびっしり並ぶ習性に由来する言葉で、「目白押し」という現在も使う表現のもとにもなっています。
『世界大百科事典』には、おしくらまんじゅうについて「寒い季節の遊びで、この声が聞こえるようになると年の瀬の近いことを知らされた」という記述もあります。冬の風物詩として、人々の暮らしに溶け込んでいたことがわかります。俳人・大野林火をはじめ、季語として句に詠まれてきたのも、その表れです。

おしくらまんじゅうの地域による別称(おしあい・めじろおし)
おしくらまんじゅうは全国で遊ばれてきたため、地域によってさまざまな呼び名があります。『世界大百科事典』などに記録されている主な別称をまとめました。
| 呼び名 | 時代・地域 | 補足 |
|---|---|---|
| おしくらまんじゅう | 全国(一般的) | もっとも広い呼び名。漢字は「押し競饅頭」 |
| おしあい | 地方による | 「押し合い」がそのまま遊びの名前になったもの |
| おしあいしんじ | 地方による | 「押し合い」に由来する呼び名の一つ |
| おしくらまんぞ | 地方による | 「まんじゅう」がなまって変化した形と考えられる |
| めじろおし | 江戸時代 | 『嬉遊笑覧』に登場。メジロが枝に押し合って並ぶ様子から |
同じ遊びでも、呼び名を聞くだけでその土地の言葉の感覚が伝わってきます。地元での呼び方を思い出してみると、懐かしい人も多いのではないでしょうか。
おしくらまんじゅうでなぜ体が温まるのか|筋肉と熱産生の仕組み

おしくらまんじゅう最大の特徴は「押し合うと体が温まる」こと。これは気のせいではなく、人間の体の仕組みでちゃんと説明できます。鍵をにぎるのは筋肉です。
私たちの体温のうち、熱の大部分は筋肉が生み出しています。野田市の健康情報でも「身体の熱の発生源は筋肉」と紹介されており、通常の活動では体内でつくられる熱のおよそ6割を筋肉が、残りの多くを内臓が担っているとされます。筋肉は力を出すときにエネルギーを消費し、その過程で多くの熱が発生するのです。
おしくらまんじゅうでは、相手を押し返すために脚・お尻・背中・体幹といった全身の大きな筋肉に力を込め続けます。激しく走り回るわけではないのに汗ばむほど温まるのは、力を入れ続けることで筋肉の熱産生が一気に高まるからです。関西大学の研究でも、運動中の熱は筋肉で生まれ、それが血液を通じて全身に運ばれて体温が上がることが説明されています。
さらに、おしくらまんじゅうには「みんなで密着して固まる」というもう一つの効果があります。体をぴったり寄せ合うと、外気に触れて熱が逃げていく面積(放熱)が減ります。熱をつくる量が増え、逃げる量が減る。この二段構えで、寒い冬でもぽかぽかになるのです。
- 筋肉に力を込めると、エネルギー消費にともなって熱が生まれる
- 体の熱のおよそ6割は筋肉が生み出している
- みんなで密着することで、体から逃げる熱(放熱)が減る
勝つためのコツと作戦|力まかせだけじゃない
勝敗をつけて遊ぶなら、ちょっとした作戦で有利になれます。力まかせだけではない、おしくらまんじゅうのコツを紹介します。
1. 重心を低くして踏ん張る
ひざを軽く曲げて腰を落とすと、体が安定して押されにくくなります。背を高く伸ばしたままだと、横からの力で簡単にバランスを崩してしまいます。
2. 壁や人を背にする
列タイプなら、壁を背にできる端のポジションが有利です。円タイプでも、押しの強い人を背中側に置くと、押し返す力を借りられます。
3. 仲間とタイミングを合わせる
バラバラに押すより、「せーの」で同時に同じ方向へ押すほうが何倍も効きます。声をかけ合って力を合わせるのが、いちばんの必勝法です。
4. 体格差を活かす
体の大きい人は安定感で、小回りのきく人は素早い押し引きで勝負できます。自分の体格に合った押し方を見つけましょう。

似た「押し合う」遊び・競技との共通点
「力を込めて押し合う」という動きは、おしくらまんじゅう以外にもいろいろな遊びや競技で見られます。代表的なのが相撲です。立ち合いからの「押し」は、まさに全身で相手を押す力くらべで、おしくらまんじゅうと共通しています。
ラグビーのスクラムも、両チームが組み合って前へ押し合う点でよく似ています。大人数で力を一点に集めて押す姿は、巨大なおしくらまんじゅうのようにも見えます。
また、運動会の定番である綱引きは、おしくらまんじゅうとは逆に「引き合う」力くらべですが、全身の筋肉を使ってチームで力を合わせる点はそっくりです。勝つための物理や作戦も共通点が多いので、あわせて読むと面白いですよ。
安全に楽しむための注意点とケガの防ぎ方
おしくらまんじゅうは手軽な反面、大勢で強く押し合うため、遊び方を間違えるとケガにつながります。安全に楽しむためのポイントを押さえておきましょう。
- 肘で突かない・引っぱらない:押すのは背中やお尻だけ。手や肘で突くと相手をケガさせます。
- 人数を分ける:一度に押し合うのは5〜6人くらいまで。多すぎると中央の人がつぶれて危険です。
- 広い場所で行う:転んでも大丈夫なように、まわりに物がない広い場所を選びます。壁ぎわでは強く押しすぎないこと。
- 身長差・体格差に配慮する:小さい子と大きい子が混ざるときは、力加減を大人が見守りましょう。
おしくらまんじゅうクイズ5問
ここまで読んだ知識のおさらいに、おしくらまんじゅうクイズに挑戦してみましょう。答えはそれぞれの下にあります。
第1問
「おしくらまんじゅう」を漢字で書くと?
第2問
おしくらまんじゅうは、何の季語になっているでしょう?
第3問
歌詞「あんまり押すと○○が出るぞ」。○○に入る言葉は?
第4問
江戸時代の文献『嬉遊笑覧』に出てくる、おしくらまんじゅうの別名は?
第5問
おしくらまんじゅうで体が温まるのは、主に体のどの部分が熱を生み出すから?
よくある質問(FAQ)
Q. おしくらまんじゅうは何人から遊べますか?
4人ほどいれば遊べますが、人数が多いほど押し合いが盛り上がり、体も温まりやすくなります。安全のため、一度に押し合うのは5〜6人を目安にするとよいでしょう。
Q. なぜ冬の遊びなのですか?
みんなで力いっぱい押し合うと体がよく温まるからです。寒い季節に体を温める知恵として親しまれ、俳句でも冬の季語になっています。
Q. 歌詞に決まったバージョンはありますか?
口伝えで広まったわらべうたなので、決まった正解はありません。「押されて泣くな/あんまり押すとあんこが出るぞ」が広く知られていますが、地域ごとに替え歌があります。
Q. 「目白押し」という言葉と関係がありますか?
あります。どちらもメジロが枝に押し合って並ぶ様子が語源で、江戸時代にはおしくらまんじゅうが「めじろおし」とも呼ばれていました。
Q. 室内でもできますか?
できますが、転倒や家具への衝突に注意が必要です。広くて物のない場所を選び、人数を少なめにして、強く押しすぎないようにしましょう。
まとめ|おしくらまんじゅうは奥が深い冬の伝承あそび
おしくらまんじゅうは、道具もいらず4人いればすぐに始められる、シンプルな冬の伝承あそびです。背中やお尻で押し合い、円や列から出た人が負けというルールで、勝負をつけずに温まるだけでも楽しめます。
名前は「押し競べ(力くらべ)」と「丸く固まった饅頭」に由来し、江戸時代の文献には「めじろおし」として登場します。「目白押し」という言葉の語源とも地続きの、歴史ある遊びです。
そして最大の魅力である「押すと温まる」現象は、筋肉が熱を生み出す仕組みと、密着して放熱を減らす効果で説明できます。寒い冬を体ひとつで乗り切る、昔の人の知恵が詰まった遊びと言えるでしょう。
寒い日に子どもや仲間と集まる機会があれば、安全に気をつけて、ぜひおしくらまんじゅうで温まってみてください。


