カラフルなガラス玉を指でパチンとはじいて遊ぶ「おはじき」。名前を聞けば誰もが思い出す、昔ながらの伝承あそびです。
ところが、いざ「ルールを説明して」と言われると、意外と曖昧になってしまう方が多いのではないでしょうか。実はおはじきには、基本のはじき当てから中抜き・陣取り・マンカラまで、いくつもの遊び方があります。
しかもその歴史は古く、ルーツは古代中国までさかのぼり、平安時代には宮中でも楽しまれていたといわれます。この記事では、おはじきの基本ルールと遊び方のバリエーション、上手にはじくコツ、1000年以上の歴史と由来、素材の移り変わり、そして福岡の放生会で授与される縁起物のおはじきまで、まるごと徹底解説します。

目次
おはじきとは?ガラス玉ではじき合う昔ながらの遊び

おはじきとは、平たいガラス玉などを台の上に広げ、指ではじいてほかの玉に当て、当てた玉を取り合う遊びです。漢字では「御弾き」と書き、まさに「はじく」遊びであることが名前に表れています。
使うおはじきは直径12mmほどの平たいガラス玉が一般的で、1円玉よりも小さいサイズです。青・赤・緑・黄色など色とりどりで、見ているだけでも美しく、並べて模様を作るだけでも楽しめます。
遊ぶのは2人以上、必要な道具はおはじきだけ。畳や机の上があればすぐに始められる手軽さが、長く親しまれてきた理由のひとつです。
よく似た遊び道具に「ビー玉」がありますが、ビー玉は球状なのに対し、おはじきは平たい円盤状をしています。床で転がして遊ぶビー玉とちがい、おはじきは平らな面を指ではじくのが特徴です。
基本の遊び方とルールを手順で解説
地方やグループによって細かなルールは少しずつ違いますが、もっとも基本的な「はじき当て」の流れは次のとおりです。
基本ルール「はじき当て」の手順
- じゃんけんなどで遊ぶ順番を決めます。
- 全員が同じ数のおはじきを出し合い、1人がまとめて手のひらから台の上にパラっと撒きます。
- 自分の番になったら、撒かれたおはじきの中から狙う2個を選びます。
- その2個の間に、ほかのおはじきがなく、指が通るくらいのすきまがあることを確かめます。
- 片方を指ではじき、もう片方の玉に当てます。
- うまく当たり、途中でほかのおはじきに触れていなければ、当てた玉をもらえて、続けて自分の番を行えます。
- 外したり、別のおはじきに触れたりしたら失敗で、次の人に交代します。
- 台のおはじきがすべてなくなったら、取った数がもっとも多い人の勝ちです。
順番を決めるじゃんけん自体にも、実は必勝法や奥深い歴史があります。気になる方は以下の記事もどうぞ。
「すきま」の確認と勝敗の決め方
おはじき遊びの肝になるのが「すきま」のルールです。狙う2つの玉の間に指が1本通るくらいの間隔があるかどうかを確認し、間に別の玉があったり、すきまが狭すぎたりする場合は、その手は失敗とするのが一般的です。
このすきまの判定は地方やグループによって解釈が分かれます。「指1本分」とする所もあれば、「狙う玉と玉の間を指でスッとなぞれればOK」とする所もあります。遊び始める前に、参加者でルールをそろえておくとトラブルなく楽しめます。
道具:おはじき(1人10〜20個ほど)
場所:畳・机・フローリングなど平らな場所
勝敗:最後に取った数がもっとも多い人の勝ち

おはじきの遊び方バリエーション7つ(中抜き・陣取りなど)
おはじきは基本のはじき当て以外にも、遊び方のバリエーションが豊富です。ここでは代表的な7つの遊び方を、ルールと楽しみ方つきで紹介します。
1. おはじき取り(基本のはじき当て)
もっともポピュラーな遊び方が、前の章で紹介した「はじき当て」です。狙った玉に当てて取り合い、最後に持っている数を競います。シンプルですが、どの玉を狙うか、どの順で取るかという戦略性があり、何度遊んでも飽きません。
2. 中抜き(ほかに触れずに抜き取る)
並んだおはじきの中から、ほかの玉に触れないように狙った1個だけをはじき出す遊び方です。密集した場所から1個だけきれいに抜くのは難しく、指先のコントロールが試されます。
地方によっては、2個のおはじきを「門」に見立てて台の端に置き、欲しい玉をその門の間に通せたらもらえる、という「門くぐり」形式で遊ぶこともあります。
3. 陣取り(色で陣地を取り合う)
赤・青・緑・黄の折り紙などを台に貼っておき、それぞれの色の上に自分のおはじきを3個ずつ乗せられたら、その色が自分の陣地になる遊び方です。最終的に陣地の数が多い人の勝ちになります。
当てる技術だけでなく、どの陣地から狙うかという作戦も重要になり、年齢が上がるほど盛り上がります。
4. おはじきマンカラ
世界中で遊ばれている古代ゲーム「マンカラ」を、おはじきで再現する遊び方です。6つのポケット(くぼみや皿)にそれぞれ4個ずつおはじきを置き、ポケットの玉をすべて取って右隣から1個ずつ配っていき、先に自分のゴールへ入れきった人の勝ちとします。
はじく技術はいりませんが、頭を使う戦略ゲームとして人気で、おはじきが計算や論理的思考の教材にもなります。
5. 的入れ・ゴールゲーム
床や机に円や線でゴールを描き、決められた数のおはじきを先にゴールへはじき入れた人が勝ち、という遊び方です。小さなお皿やコップを的にしてもよいでしょう。
ルールが分かりやすいので、小さな子どもや大人数でも楽しみやすいのが魅力です。
6. 色分け・並べ遊び(小さい子向け)
はじかずに、おはじきを色ごとに分けたり、好きな形に並べたりするだけの遊び方です。花や顔の形を作ったり、数を数えたりと、遊びながら色や数の感覚が自然と身につきます。
まだ上手にはじけない2〜3歳ごろの子でも楽しめるので、おはじきデビューにぴったりです。
7. おはじき占い
願いごとを唱えてからおはじきをはじき、狙った玉に当たれば願いがかなう、という昔ながらの遊び方です。明確な勝ち負けはありませんが、ドキドキしながら楽しめます。
古くは少女たちが恋占いとして楽しんだともいわれ、おはじきが女の子の遊びとして親しまれてきたことがうかがえます。

上手くなるコツとはじき方のテクニック
おはじきは運だけの遊びに見えて、実は指先のテクニック次第で勝率が大きく変わります。上達のコツを押さえておきましょう。
指の使い方を意識する
基本のはじき方は、親指の先に人差し指または中指の爪を引っかけ、ためた力を一気に解放して玉をはじく方法です。デコピンの要領をイメージすると分かりやすいでしょう。
はじく指を変えると力の強さや細かさが変わります。強く飛ばしたいときは中指、繊細にコントロールしたいときは人差し指、と使い分けると狙いやすくなります。
狙いと力加減を調整する
当てたい玉までの距離をよく見て、力加減を調整するのが上達の近道です。近い玉には弱く、遠い玉には強く、と距離に応じて力を変える感覚を覚えましょう。
強くはじけば当たりやすい一方で、当たった勢いで自分の玉が別のおはじきに触れて失敗、ということも起こります。「当てて止める」くらいの力加減がベストです。
配置をよく見て狙う順番を考える
むやみにはじくのではなく、どの玉から取れば連続で取りやすいかを考えるのも大切です。密集した場所は中抜きの失敗リスクが高いので、まずは周りにほかの玉がない、取りやすい玉から狙っていくのが定石です。

おはじきの歴史と由来|弾碁から源氏物語まで
何気なく遊んでいるおはじきですが、そのルーツをたどると驚くほど長い歴史が見えてきます。
起源は古代中国の「弾碁(だんぎ)」
おはじきの起源は、古代中国の6世紀、西魏(せいぎ)の時代に考案された「弾碁(だんぎ)」という遊びにあるといわれています。弾碁は玉や石を指ではじいて遊ぶもので、これが日本には奈良時代に伝わったとされています。
平安時代は宮中の遊び(源氏物語に登場)

日本に伝わったおはじきは、平安時代には宮中でも楽しまれていました。そのようすは、紫式部による『源氏物語』にも描かれていると、日本大百科全書などに記されています。
当時のおはじきは小石を用いることが多く、「石はじき」「石なご」などと呼ばれていました。1000年も前の宮中で、今と同じように指で石をはじいて遊んでいたと思うと、なんだか親しみがわいてきます。
「石はじき」から江戸の「きさごはじき」へ
時代が下って江戸時代になると、「きさご」と呼ばれる小さな巻き貝を使って遊ぶようになり、「きさごはじき」とも呼ばれました。この頃には女の子の遊びとして庶民の間にも広く定着していきます。
ガラス製の普及(明治後期から現代へ)
私たちがよく知るガラス製のおはじきが普及したのは、明治時代の後期からのことです。さらに戦後にはプラスチック製の「花はじき」なども登場し、素材は時代とともに変化してきました。
小石から貝、そしてガラスへ。道具は移り変わっても、「指ではじいて取り合う」という遊びの本質が1000年以上変わらず受け継がれてきたのは見事というほかありません。

種類と素材の移り変わり(小石・貝・ガラス・プラスチック)

おはじきの素材は、歴史の中でさまざまに変化してきました。それぞれの素材には時代ごとの特徴があります。
昔のおはじき(小石・貝・木の実)
もっとも古いおはじきは、その辺で拾える小石でした。やがて江戸時代には、上の写真のような「きさご」と呼ばれる小さな巻き貝が使われるようになります。木の実が使われることもあり、いずれも身近な自然物を遊び道具にしていたことが分かります。
今のおはじき(ガラス・プラスチック)
現在の主流は、平たく加工されたガラス製のおはじきです。透明感と色の美しさが魅力で、光に透かすときれいに輝きます。戦後に登場したプラスチック製の「花はじき」は軽くて割れにくく、小さな子ども向けの知育おもちゃとして人気です。
このほか、陶器製のおはじきもあり、次の章で紹介する福岡の縁起物がその代表例です。
福岡・放生会の「おはじき」は災いをはじく縁起物

遊び道具としてだけでなく、おはじきは縁起物としても親しまれています。その代表が、福岡市の筥崎宮(はこざきぐう)で秋に開かれる祭り「放生会(ほうじょうや)」のおはじきです。
このおはじきは1955年から授与が始まったもので、ふだんのガラス製とは違い、素焼きの陶器でできた直径2cmほどの手作りの品です。博多人形の制作技術を受け継ぐ「博多人形師白彫会(はくちょうかい)」の職人が、一つひとつ手作業で作り上げています。
筥崎宮の社紋や楼門、祭りの屋台などをかたどった愛らしいデザインが1組20種そろい、「災い(わざわい)をはじく」という願いが込められた縁起物として、毎年多くの参拝者に愛されてきました。
あまりの人気に徹夜の行列やネット転売が問題となり、放生会期間中の販売は2017年に取りやめとなりました。現在は「筥崎宮おはじき」として、年間を通じて社頭で授与されています。遊びのおはじきが、地域の伝統工芸と信仰に結びついている好例といえるでしょう。

おはじき遊びの知育効果と現代の楽しみ方
素朴な遊びに見えるおはじきですが、実は子どもの成長を助ける知育効果が詰まっています。
まず、玉を狙ってはじく動作は、指先の細かな運動能力(巧緻性)を養います。デジタル機器に慣れた現代の子どもにとって、指先を繊細に使う体験は貴重です。
また、色ごとに分ける遊びは色彩感覚を、取った数を数える場面は数の感覚を自然と育てます。順番を守る、ルールを理解するといった社会性の練習にもなります。
静かに集中して取り組むため、集中力を高める効果も期待できます。こうした特長から、近年は高齢者施設のレクリエーションとしても取り入れられ、手先のリハビリや脳の活性化に役立てられています。世代を問わず楽しめるのが、おはじきの大きな魅力です。
遊ぶときの注意点と誤飲の予防
手軽に楽しめるおはじきですが、安全に遊ぶために気をつけたい点があります。
遊び終わったら数を確認して片づけ、床に残った玉を踏んで滑らないように注意することも大切です。とくにフローリングの上に落ちたおはじきは見つけにくいので、最後にきちんと数を合わせて回収する習慣をつけましょう。
おはじきクイズ5問|雑学に挑戦
ここまで読んだあなたは、もうおはじき博士のはず。知識を確かめる5問にチャレンジしてみましょう。
第1問:おはじきのルーツとされる、古代中国で生まれた遊びの名前は?
第2問:おはじきが宮中で遊ばれていたようすが描かれている、平安時代の有名な物語は?
第3問:江戸時代のおはじきに使われた「きさご」とは何でしょう?
第4問:一般的なガラス製おはじきの直径は、およそ何mmでしょう?
第5問:福岡・筥崎宮の放生会で授与される素焼きのおはじきには、どんな願いが込められている?
おはじきのよくある質問(FAQ)
Q. おはじきとビー玉は何が違うの?
A. 形が違います。おはじきは平たい円盤状で、指ではじいて当てる遊びに使います。ビー玉は球状で、床で転がしたり当てたりして遊びます。
Q. おはじきは何人から遊べますか?
A. 2人から遊べます。色分けや並べ遊びなら1人でも楽しめ、はじき当てや陣取りは3〜4人いるとより盛り上がります。
Q. 小さい子でも遊べますか?
A. 色分けや並べる遊びなら2〜3歳ごろから楽しめます。ただし誤飲の危険があるため、必ず大人が見守ってください。
Q. おはじきはどこで買えますか?
A. 100円ショップやおもちゃ売り場、文具店などで手に入ります。ガラス製のほか、軽くて割れにくいプラスチック製の花はじきもあります。
Q. おはじきの「中抜き」とはどんな遊び方ですか?
A. 並んだおはじきの中から、ほかの玉に触れずに狙った1個だけをはじき出す遊び方です。指先のコントロールが試される上級者向けの遊びです。
まとめ|おはじきは1000年続く指先の伝承遊び
おはじきは、平たいガラス玉を指ではじいて取り合う、シンプルで奥深い伝承あそびです。基本のはじき当てのほか、中抜き・陣取り・マンカラ・的入れなど、遊び方のバリエーションも豊富です。
そのルーツは古代中国の弾碁にさかのぼり、平安時代には『源氏物語』に描かれるほど宮中で親しまれていました。小石から貝、そしてガラスへと素材を変えながら、1000年以上もの間、遊びの本質は受け継がれてきました。
福岡・放生会の「災いをはじく」おはじきのように、遊びの枠を越えて縁起物にもなっています。指先を使い、集中力や数の感覚を育てる知育効果も見逃せません。
道具はおはじきだけ。畳や机があれば、今すぐ親子で1000年の歴史にふれられます。ぜひ一度、パチンとはじく感触を楽しんでみてください。


