紅葉(もみじ)の歌詞の意味とは?「秋の夕日に照る山紅葉」の現代語訳・モデルは碓氷峠・高野辰之と岡野貞一の由来まで徹底解説

秋になると、学校の音楽の時間や紅葉狩りの道すがら、自然と口ずさんでしまう一曲があります。「秋の夕日に照る山紅葉(やまもみじ)」で始まる唱歌『紅葉(もみじ)』です。

メロディーは誰もが知っているのに、いざ歌詞をじっくり読むと「裾模様(すそもよう)」「織る錦(にしき)」など、意味のわかりにくい古い言葉がいくつも出てきます。これらは一体どんな情景を描いているのでしょうか。

この記事では、唱歌『紅葉』の1番・2番の歌詞全文をやさしい現代語に訳しながら、一語ずつ意味を解説します。あわせて、モデルとされる碓氷峠(うすいとうげ)の風景や、作詞・作曲を手がけた高野辰之(たかの たつゆき)と岡野貞一(おかの ていいち)の「黄金コンビ」の由来まで、まるごと掘り下げていきます。

秋の名曲って、歌えるのに意味は知らないままだったりしますよね。今日で「紅葉」がもっと好きになりますよ。

紅葉(もみじ)の歌詞の全文|まず1番・2番を確認

秋の夕日に染まる紅葉の山

解説に入る前に、まずは唱歌『紅葉』の歌詞全文をおさらいしておきましょう。難しい漢字には読み仮名を添えました。

【1番】
秋(あき)の夕日(ゆうひ)に 照(て)る山紅葉(やまもみじ)
濃(こ)いも薄(うす)いも 数(かず)ある中(なか)に
松(まつ)をいろどる 楓(かえで)や蔦(つた)は
山(やま)のふもとの 裾模様(すそもよう)

【2番】
渓(たに)の流(ながれ)に 散(ち)り浮(う)く紅葉(もみじ)
波(なみ)にゆられて 離(はな)れて寄(よ)って
赤(あか)や黄色(きいろ)の 色(いろ)さまざまに
水(みず)の上(うえ)にも 織(お)る錦(にしき)

たった2番、8行の短い歌です。それでいて、山の頂から谷川の水面までを描き切り、日本の秋の色をぎゅっと閉じ込めています。ここから一行ずつ、その意味をほどいていきましょう。

紅葉(もみじ)1番の歌詞の意味と現代語訳|「照る山紅葉」から「裾模様」まで

真っ赤に色づいた日本の紅葉(もみじ)

1番は、夕日に照らされた山全体を遠くから眺めた情景です。まるで一枚の絵を見上げているような、雄大な構図になっています。

「秋の夕日に照る山紅葉/濃いも薄いも数ある中に」の意味

「秋の夕日に照る山紅葉」は、そのまま「秋の夕日に照らされて輝く、山の紅葉」という意味です。昼間の紅葉ではなく、あえて夕日を選んでいるのがポイントで、赤や黄の葉が西日を受けていっそう燃えるように見える瞬間を切り取っています。

「濃いも薄いも数ある中に」は、「色の濃い紅葉も、色の薄い紅葉も、たくさんある中に」という意味です。紅葉は木の種類や日当たりによって色づき方がまちまちで、同じ山でも濃淡がグラデーションになります。その微妙な色の違いを「濃いも薄いも」と表現しているわけです。

「濃いも薄いも」って、たった6文字で紅葉の奥行きを描いてるんですよね。言葉の選び方が本当に上手いです。

「松をいろどる楓や蔦は/山のふもとの裾模様」の意味

「松をいろどる楓や蔦は」は、「常緑の松に彩りを添える、楓(かえで)や蔦(つた)は」という意味です。松は一年じゅう緑のままなので、その緑を背景に、赤く染まった楓や蔦がいっそう鮮やかに映えます。ずっと緑の松と、季節で色を変える紅葉の対比が、さりげなく効いています。

そして最後の「山のふもとの裾模様(すそもよう)」が、1番いちばんの聞かせどころです。裾模様とは、着物の裾のあたりにだけ入れる模様のこと。山の麓(ふもと)を彩る紅葉の帯を、着物の裾を飾る優雅な模様に見立てているのです。

山全体を一着の着物に、麓の紅葉をその裾の意匠にたとえる。この和装の美意識こそ、唱歌『紅葉』が長く愛される理由のひとつです。

ワンポイント
「裾模様」は和服の用語です。山を「着物」、麓の紅葉を「裾の模様」に見立てることで、自然の風景に日本人らしい上品な美しさを重ねています。

紅葉(もみじ)2番の歌詞の意味|谷川に散る「水の上にも織る錦」

谷川の水面に散り浮かぶ紅葉

1番が山全体を見上げる遠景だったのに対し、2番はぐっと視点を近づけ、谷川の水面に散った紅葉を映します。カメラがズームインするような、映画的な構成です。

「渓の流に散り浮く紅葉/波にゆられて離れて寄って」の意味

「渓(たに)の流(ながれ)に散り浮く紅葉」は、「谷川の流れに、散って浮かんでいる紅葉」という意味です。「渓」は谷や谷川のことで、山を彩っていた葉が、やがて散って水の上に浮かぶ時間の流れまで感じさせます。

「波にゆられて離れて寄って」は、「水の波に揺られて、離れたり、また寄り集まったり」という意味です。流れに乗った紅葉が、集まっては散り、散っては集まる。その絶え間ない動きを、たった一行でいきいきと描いています。

「赤や黄色の色さまざまに/水の上にも織る錦」の意味

「赤や黄色の色さまざまに」は、そのまま「赤や黄色の、さまざまな色で」という意味です。水面に浮かぶ紅葉が、赤・黄・橙とさまざまに入り混じっている様子を表しています。

締めくくりの「水の上にも織る錦(にしき)」は、「水面にも、錦を織り成している」という意味です。錦とは、金糸や銀糸を使って色鮮やかに織り上げた高級な絹織物のこと。色とりどりの紅葉が浮かぶ川面を、豪華な錦の織物にたとえているのです。

じつは紅葉を「錦」に見立てるのは、この唱歌が発明した表現ではありません。『古今和歌集』の時代から続く、日本の和歌の定番の見立てです。在原業平(ありわらのなりひら)が竜田川(たつたがわ)の紅葉を詠んだ「ちはやぶる神代(かみよ)も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」も、川と紅葉と鮮やかな色を重ねた一首として知られています。1番の「裾模様」も2番の「錦」も、古くからの日本の美意識をやさしい唱歌の言葉に翻訳したものなのです。

1番は山の錦、2番は水の錦。遠くの山から足もとの川まで、目線がすーっと下りていく構成、気づくと鳥肌ものです。

作詞のモデルは碓氷峠だった?歌の舞台をめぐる話

これほど具体的な紅葉の情景は、どこかに実際のモデルがあるのでしょうか。よく語られるのが、群馬と長野の県境にある碓氷峠(うすいとうげ)だという説です。

作詞した高野辰之は、東京の学校と信州(長野県)の郷里を、当時の信越本線でたびたび行き来していました。その途中にあったのが、碓氷峠の山あいにある熊ノ平(くまのたいら)駅です。東京での仕事を終えて故郷へ帰る車窓から、峠を染める紅葉を眺めて詞を綴ったといわれています。

この説を裏づけるように、高野辰之の子息である正巳(まさみ)さんは、晩年の新聞取材に対して「この歌の舞台は、旧・熊ノ平駅周辺の碓氷峠の風景です。親父がはっきり申していました」と証言したと伝えられています。熊ノ平駅は現在は廃駅となり、当時の面影は静かに残るばかりです。

一方で、「あえて場所を特定する必要はなく、歌う人それぞれが思い浮かべる心の風景こそが大切だ」という受け止め方もあります。碓氷峠という手がかりを知ったうえで、自分の記憶にある秋の山を重ねて歌う。そんな楽しみ方ができるのも、名曲ならではです。

ちょっと注意
碓氷峠・熊ノ平説は有力な言い伝えですが、公式に確定した「唯一の正解」ではありません。作詞者本人が場所を明言した資料は残っておらず、あくまで有力な説のひとつとして知っておくとよいでしょう。

紅葉(もみじ)の作詞・作曲は誰?高野辰之と岡野貞一の「黄金コンビ」

唱歌『紅葉』を生んだのは、作詞・高野辰之と作曲・岡野貞一のコンビです。この二人は、日本の唱歌史に残る名曲を数多く一緒に手がけた、いわば「黄金コンビ」でした。

作詞・高野辰之(たかの たつゆき)

高野辰之は1876年(明治9年)、長野県水内郡永江村(現在の中野市永江)の農家に生まれた国語・国文学の研究者です。1909年(明治42年)に文部省の小学校唱歌教科書の編さん委員に委嘱され、作詞担当として『尋常小学唱歌』全6冊づくりに深く関わりました。故郷(ふるさと)の信州の自然を思う気持ちが、その詞の随所ににじんでいます。

作曲・岡野貞一(おかの ていいち)

岡野貞一は1878年(明治11年)、鳥取県(現在の鳥取市)に生まれた作曲家です。東京音楽学校(現在の東京藝術大学)で学び、のちに教授を務めました。熱心なキリスト教徒で、東京の教会でオルガンを弾き聖歌隊を長年指導した経験が、その澄んだ旋律づくりに生きているといわれます。

二人が生んだ唱歌の名曲たち

高野辰之と岡野貞一のコンビは、『紅葉』のほかにも「故郷(ふるさと)」「春の小川」「春が来た」「朧月夜(おぼろづきよ)」といった、今も歌い継がれる名曲を次々と世に送り出しました。四季それぞれを代表する唱歌の多くが、じつはこの二人の手によるものなのです。

『紅葉』が発表されたのは1911年(明治44年)、『尋常小学唱歌 第二学年用』でのことでした。学校で習う一曲として世に出て、100年以上たった今も秋の定番として愛され続けています。

同じ黄金コンビの春・夏の名曲については、こちらの記事でも詳しく解説しています。あわせて読むと、二人の作風の一貫した美しさが見えてきます。

知っておきたい豆知識|二部合唱と「かえで」の違い

最後に、唱歌『紅葉』をもっと味わうための豆知識をいくつか紹介します。知っておくと、次に歌うときの景色が少し変わって見えるはずです。

じつは二部合唱・輪唱の名曲

『紅葉』は、小学校の音楽で二部合唱の教材として親しまれてきました。前半では、低音のパートが高音のパートを1小節あとから追いかけていく、カノン(輪唱)のような作りになっています。二つの声が少しずつずれて重なり合うことで、紅葉が幾重にも折り重なる奥行きが、音でも表現されているのです。

一人で口ずさんでも美しい曲ですが、二つのパートで歌ってみると、この曲の本当のすごさがよくわかります。

「もみじ」と「かえで」はどう違う?

歌詞の1番には「楓(かえで)」、タイトルには「紅葉(もみじ)」と、よく似た言葉が両方登場します。この二つ、じつは植物学的にはどちらもカエデ科カエデ属の仲間で、はっきりした区別はありません。

園芸の世界では、葉の切れ込みが深く紅葉が特に美しいものを「もみじ」、それ以外を広く「かえで」と呼び分ける習慣があります。また「もみじ」という言葉は、秋に草木が赤や黄に色づくことを指す古語「揉み出づ(もみいづ)」に由来するといわれ、もともとは植物名ではなく「色づく」という現象そのものを表す言葉でした。

豆知識
『紅葉』は2006年、文化庁と日本PTA全国協議会が選んだ「日本の歌百選」にも選ばれています。世代を超えて歌い継ぎたい名曲として、公式にお墨付きを得た一曲なのです。

「もみじ」がもともと「色づく」って意味の動詞だったなんて、ちょっと感動しませんか。言葉の由来まで秋らしいんですよね。

まとめ|紅葉(もみじ)は日本の秋を映す二枚の絵

唱歌『紅葉』は、わずか2番の短い歌に、日本の秋の美しさを見事に凝縮した名曲です。

1番は、夕日に照らされた山の紅葉を、着物の「裾模様」に見立てた遠景の一枚。2番は、谷川に散って浮かぶ紅葉を、水面の「錦」に見立てた近景の一枚です。山の頂から足もとの川へと目線が下りていく構成が、この歌に映画のような奥行きを与えています。

作詞・高野辰之と作曲・岡野貞一の黄金コンビが、故郷の信州の秋を思って紡いだ一曲。モデルは碓氷峠とも伝えられますが、大切なのは、歌う一人ひとりが心に思い浮かべる秋の風景かもしれません。

今年の秋、山や川で紅葉に出会ったら、ぜひこの歌を口ずさんでみてください。「裾模様」や「織る錦」の意味を知ったあなたには、きっと歌詞の一行一行が、鮮やかな絵になって見えてくるはずです。

たった8行にこれだけの景色を詰め込むなんて、やっぱり名曲は違いますね。今年の紅葉狩りが楽しみになりました。