夏祭りの屋台や駄菓子屋の店先で見かける、ガラスの中に色とりどりの模様が閉じ込められたビー玉。手のひらでジャラジャラと転がすだけで、なんだか少し心が躍ります。
ところが「ビー玉ってどうやって遊ぶの?」「あの名前の由来って何だろう?」と聞かれると、意外と答えに詰まってしまう方が多いのではないでしょうか。
この記事では、ビー玉の基本的な遊び方とルールを9種類紹介しつつ、「ビー玉」という名前の由来やよく語られる「A玉・B玉説」の真相、ラムネに入っている理由、歴史、種類、さらにイギリスで毎年開かれている世界選手権まで、ビー玉の魅力をまるごと解説していきます。

目次
ビー玉とは?ガラスを弾いて遊ぶ昔ながらのおもちゃ

ビー玉とは、ガラスでできた小さな球状のおもちゃのことです。直径はおよそ1.5センチから5センチほどのものが一般的で、透明な単色のものから、中に色つきの模様が「ひねり」のように入ったものまで、さまざまな種類があります。
遊び方の基本は、自分のビー玉を指で弾いて、ほかのビー玉に当てること。当てたら相手の玉をもらえるという「取り合い」の要素があり、世界中で似たような遊びが楽しまれてきました。安価なのに宝物のように美しく、昭和の子どもたちを夢中にさせた定番のおもちゃです。
よく似たものに「おはじき」がありますが、おはじきが平たい円盤状で指先ではじくのに対して、ビー玉は球状で床や地面を転がして当てるという違いがあります。
おはじきの詳しい遊び方は、以下の記事で解説しています。
ビー玉の名前の由来とは?「ビードロ説」と「A玉・B玉説」
「ビー玉」という名前の由来には、大きく分けて2つの説があります。結論から言うと、有力なのは「ビードロ説」のほうです。
有力なのは「ビードロ説」
ビードロとは、ポルトガル語でガラスを意味する「vidro(ヴィドロ)」のことです。江戸時代に長崎へ伝わったガラス細工も「ビードロ」と呼ばれていました。この「ビードロの玉」が縮まって「ビー玉」になった、というのがビードロ説です。
実際、古い文献では「ビードロ玉」「ビイドロ玉」という表記が明治から大正にかけて見られます。夏目漱石の『明暗』(1916年)や有島武郎の『一房の葡萄』(1920年)にもガラス玉を指す言葉として登場しており、言葉としての歴史の古さがうかがえます。
俗説として広まった「A玉・B玉説」
もう一つ有名なのが「A玉・B玉説」です。これは、ラムネ瓶の栓に使うガラス玉のうち、規格に合格した上等な玉を「A玉」、規格から外れた玉を「B玉」と呼んで区別し、おもちゃに転用された規格外の「B玉」がそのまま「ビー玉」になった、という説です。
いかにも本当らしく聞こえますが、この説には疑問が投げかけられています。というのも、A玉・B玉説が登場するのは1990年以降の書籍ばかりで、それより前の文献には見当たらないのです。一方の「ビードロ玉」という表記は、先に述べたとおり明治・大正の時代からすでに使われていました。
2017年の時点で日本唯一のビー玉製造会社だった松野工業も、戦後に大阪のメーカーが「A玉・B玉」と区分していたと聞いた、と語る一方で、それが名前の起源かどうかまでは断定していません。時系列で見れば「ビードロ説」のほうが自然というわけです。

ラムネに入っているビー玉の仕組みとは?
ビー玉といえば、ラムネの瓶に入っているガラス玉を思い浮かべる方も多いでしょう。あのガラス玉は、業界では「ラムネ玉」と呼ばれています。
なぜビー玉が栓の役割を果たせるのか。仕組みはとてもシンプルで、ラムネに含まれる炭酸ガスの圧力を利用しています。瓶を立てると、内部の炭酸ガスの圧力でガラス玉が押し上げられ、飲み口のゴムパッキンにぴったりと圧着して栓になるのです。指やキャップで玉を押し下げると、ガラス玉が瓶のくびれに引っかかり、飲み口が開くという仕組みになっています。
このガラス玉で栓をする瓶は「玉詰めびん」や「コッド瓶」と呼ばれ、イギリスのハイラム・コッドが1870年代に考案したものが原型とされています。日本でも明治時代にラムネとともに広まりました。ちなみに「ラムネ」という名前そのものも、英語の「レモネード(lemonade)」がなまったものです。
ビー玉の歴史とは?ラムネの栓から駄菓子屋の人気おもちゃへ
ビー玉が日本で広まったきっかけは、やはりラムネでした。ビー玉が登場したのは1897年(明治30年)頃で、炭酸飲料であるラムネの栓として使われたのが始まりとされています。当時のビー玉は、表面にクレーターのようなくぼみや歪みのある、形のいびつなものでした。
その後、色つきのガラス玉そのものが子どもたちの目を引くようになり、1933年(昭和8年)頃には駄菓子屋などでビー玉が単体のおもちゃとして売られ始めます。色とりどりの模様が入った美しいビー玉は、安価ながら宝物のように扱われ、昭和の子どもたちの定番の遊び道具となりました。
ビー玉遊びは日本だけのものではありません。たとえば朝鮮半島では日本統治時代の1936年頃から売られるようになり、「구슬치기(クスルチギ)」と呼ばれるビー玉遊びが広まりました。世界各地で、子どもたちが地面にしゃがみ込んでガラス玉を弾く光景が見られたのです。
ビー玉の種類とサイズ

ひとくちにビー玉といっても、サイズや模様、材質によってさまざまな種類があります。
サイズによる違い
一般的なビー玉のサイズは直径1.5センチから5センチ程度です。標準的な玉のほかに、ひと回り大きな「大玉(親玉)」もあり、遊びによっては大玉を狙う側・狙われる側で役割を変えて楽しみます。大きい玉は当たりが強く、勝負の切り札になりました。
模様による違い
ガラスの中に入った模様は、ビー玉の最大の魅力です。色のついたガラスをひねり込んだ「ひねり」模様のもの、猫の目のように見える「キャッツアイ」、全体が一色の「単色玉」、ラメやマーブル模様の入ったものなど、多彩なバリエーションがあります。光に透かすとガラスの中の色が浮かび上がり、集めて並べるだけでも楽しめます。
材質による違い
定番はガラス製ですが、ビー玉には鋼(鉄球)、プラスチック、メノウ(瑪瑙)などで作られたものもあります。鋼製の玉は重くて当たりが強く、地域によっては別格の存在として扱われました。古い時代には、粘土を焼いて作った素朴なビー玉が使われていたこともあります。
ビー玉の遊び方とルール9種

ビー玉遊びの基本は「玉の所有権をやりとりすること」です。自分の玉を相手の玉に当てたり、決められた場所に入れたりして、相手の玉を獲得していきます。ここでは代表的な遊び方を9種類紹介します。
1. ビー玉当て(当てっこ)
最も基本的でポピュラーな遊び方です。床や地面にビー玉を散らし、順番に1人ずつ自分の玉を指で弾いて、ほかの玉に当てます。当たったらその玉は自分のものになり、最後に持ち玉が一番多い人の勝ちです。
弾き方には大きく2つの流派があります。爪を使って勢いよくはじく「打撃型」と、親指と人差し指で玉をはさんで圧力で押し出す「圧出型」です。圧出型を極めると、カーブやバックスピンといった変化球まで操れるようになります。
2. 目玉落とし(落とし当て)
自分の持ち玉を目の高さまで持ち上げ、真下に散らしたビー玉めがけて落とします。見事に命中させたら、その玉をもらえます。狙いを定める集中力と、落とす高さの感覚が問われる遊びです。立ったまま遊べるので、地面に手をつきたくないときにも向いています。
3. 三角出し・枠出し
地面に円や三角形を描き、その中に全員のビー玉を出し合います。線の外から自分の玉を弾いて、枠の中の玉を外へはじき出せたら、その玉を獲得できます。欧米で「Ringer(リンガー)」と呼ばれる定番ルールも、これと同じく円の中の玉を弾き出す遊びで、世界選手権でも採用されています。
4. 穴入れ(天国と地獄)
地面に複数の小さな穴を掘り、決められた順番で玉を穴に入れながら進んでいく、すごろくのような遊びです。近畿地方では「ビーダン」とも呼ばれ、「地・中・左・右・天」といった穴をすべて回ると「鬼(殺し屋)」になれます。鬼になると自由に動いてほかのプレイヤーの玉を奪える、という逆転要素が盛り上がりどころ。間違った穴に入ってしまう「ネムリ」や、ペナルティの「チョーエキ(懲役)」など、地域ごとに独特のルールがあるのも面白い点です。
5. 奇数か偶数か当て(握り当て)
片方が手の中にビー玉を何個か握り、もう片方がその数は奇数か偶数かを当てる、シンプルな運試しのゲームです。当たれば握っていた玉をもらえ、外れれば自分が賭けた分を渡します。ルールが簡単なので、小さな子でもすぐに参加できます。
6. ビー玉転がし・坂レース
本やブロックで坂やコースを作り、ビー玉を転がしてゴールまでの速さや、コースから落ちないかを競う遊びです。ビー玉がカラカラと転がる音と動きそのものが楽しく、近年は溝のパーツを組み合わせて複雑なコースを作る知育玩具としても人気があります。
7. 的入れ・ゴール入れ
空き箱や紙コップを的にして、少し離れた場所からビー玉を弾いて入れる遊びです。的ごとに点数をつければ得点を競うゲームになり、小さな子どもとも一緒に楽しめます。輪投げのビー玉版といったところです。

8. 並べ・色分け遊び
勝ち負けにこだわらず、ビー玉を並べて模様を作ったり、色ごとに分けたりして楽しむ遊びです。小さな子の指先の訓練にもなり、眺めているだけでも美しいビー玉ならではの楽しみ方です。
9. 陣取り・マスを使ったアレンジ遊び
地面に陣地やマス目を描き、自分の玉を弾いて相手の陣地を攻めたり、マスを埋めたりする遊びです。ルールを自分たちで決めてアレンジできるのも、ビー玉遊びの自由で楽しいところです。
上手に弾くコツと勝つためのテクニック
ビー玉当てで勝つには、いくつかのコツがあります。
まず大切なのは、弾く指の使い方です。人差し指の爪を親指で押さえてためを作り、狙った瞬間に一気に弾くと、まっすぐで強い球が飛びます。肩や腕に力を入れすぎず、指先のスナップで弾くのがポイントです。
次に狙いです。当てたい玉と自分の玉、そして弾く方向を一直線に結ぶイメージで構えると、命中率が上がります。圧出型の弾き方を覚えれば、わざとカーブをかけて、まっすぐでは当てにくい位置の玉を狙うこともできるようになります。
世界のビー玉遊び「marbles」と世界選手権
ビー玉遊びは日本だけでなく、世界中で親しまれてきました。英語では「marbles(マーブルズ)」と呼ばれ、古代ローマやエジプトの遺跡からも、ビー玉のような球が見つかっています。
なかでも有名なのが、イギリスで開かれる「世界ビー玉選手権(British and World Marbles Championship)」です。毎年、復活祭前の聖金曜日(グッドフライデー)に、西サセックスのティンズリー・グリーンにあるパブ「グレイハウンド」で開催されています。
その起源は、なんと1588年、エリザベス1世の時代にさかのぼると伝えられています。言い伝えによれば、ティンズリー・グリーンの娘ジョーンをめぐって2人の若者ジャイルズとホッジが腕を競い合い、6対6の同点で迎えた最後の勝負として「ビー玉」が選ばれ、聖金曜日に決着がついたのだとか。
現在のかたちの大会が始まったのは1932年で、1938年からは「世界選手権」と呼ばれるようになりました。6人1組のチーム戦で銀のトロフィーを競い、年齢も国籍も問わず誰でも参加できます。これまでにオーストラリア、ベルギー、カナダ、エストニア、アイルランド、フランス、ドイツ、日本、オランダ、ウェールズ、アメリカなど、世界各国の選手が出場してきました。

昔ながらの遊びの知育効果と現代の楽しみ方
ビー玉遊びは、ただ懐かしいだけの遊びではありません。指先で玉を弾く動作は手先の細かなコントロールを養い、狙いを定める動作は集中力や距離感覚を育てます。勝ち負けのやりとりを通じて、順番やルールを守る社会性も自然と身につきます。
現代では、遊び道具としてだけでなく、インテリアやアートの素材としても人気です。透明な器にビー玉を敷き詰めて飾ったり、光を通してきらめく様子を眺めたり、ビー玉を転がすコースを工作したりと、楽しみ方はどんどん広がっています。
ビー玉に関するよくある質問(FAQ)
ビー玉とおはじきの違いは?
ビー玉は球状で、床や地面を転がして当て合うのに対し、おはじきは平たい円盤状で、指先ではじいて相手の玉に当てて取る遊びです。素材はどちらもガラスが定番ですが、形と遊び方が異なります。
ラムネのビー玉は取り出せる?
取り出せます。最近のラムネ瓶は飲み口の部分が外せる構造になっているものが多く、洗って乾かせば、きれいなビー玉として手元に残せます。瓶を割るのは危険なので、絶対にやめましょう。
「ビー玉はB玉のこと」というのは本当?
俗説の可能性が高いとされています。先に述べたとおり、A玉・B玉説は比較的新しい時代の書籍にしか見られず、「ビードロ(ガラス)」由来とするほうが、文献的には自然です。
ビー玉はどこで買える?
100円ショップやおもちゃ屋、ホームセンターの手芸・工作コーナーなどで手に入ります。観賞用の大きなものや色のきれいなものは、雑貨店やネット通販でも販売されています。
まとめ
ビー玉は、ガラスの球を弾いて相手の玉を取り合う、シンプルながら奥深い昔ながらの遊びです。当てっこや穴入れ、三角出しなど、遊び方のバリエーションも豊富にあります。
名前の由来は、規格外の「B玉」からとする俗説よりも、ポルトガル語でガラスを意味する「ビードロ」由来とする説が有力でした。
ラムネの栓として日本に広まり、駄菓子屋の人気おもちゃとして子どもたちを夢中にさせ、海を越えてイギリスでは世界選手権まで開かれています。小さなガラス玉には、それだけ豊かな物語が詰まっているのです。
透き通ったビー玉を見かけたら、ぜひ手に取って、昔ながらの遊びを楽しんでみてください。

ラムネのビー玉や名前の由来については、以下の公式サイトでも解説されています。

