けん玉とは?歴史・やり方や基本の技・検定の級段位から世界大会まで徹底解説

けん玉とは?歴史・技・検定・世界大会を解説

赤い玉と十字の剣を糸でつないだだけのシンプルな道具なのに、いざ手に取ると大皿に乗せるだけでも一苦労。それがけん玉です。お正月やお祭り、学校の昼休みに一度は触ったことがある方も多いのではないでしょうか。

しかし「けん玉ってそもそも何が起源なの?」「技ってどれくらいあるの?」「検定の級や段ってどう決まるの?」と聞かれると、意外と答えられないものです。実はけん玉は今や世界中で「KENDAMA」として愛され、毎年広島県で世界大会まで開かれる、れっきとした国際的なホビーへと進化しています。

この記事では、けん玉の基本構造から発祥の歴史、やり方と技の種類、検定の級段位、そして世界大会や海外人気まで、けん玉のすべてを一気にわかりやすく解説します。

ただの子どものおもちゃだと思っていたら大間違い。けん玉の世界は奥が深いんです。

けん玉とは?基本の構造と各部の名称

けん玉を手に持ったところ

けん玉とは、十字状の「けん(剣)」と、穴の空いた「玉」を糸でつないだ木製の玩具です。けんを手に持ち、玉を各皿やけん先に乗せたり突き刺したりして遊びます。シンプルに見えて、体全体を使ってバランスを取る奥深さがあります。

まずは各部の名前を覚えておくと、技や検定の説明がぐっと理解しやすくなります。主な部位は次の通りです。

  • けん先:けんの先端のとがった部分。玉の穴に突き刺す「とめけん」などで使います。
  • 大皿:けんの横についた大きい方の皿。最初に覚える「大皿」の技で使う基本の場所です。
  • 小皿:大皿の反対側についた小さい方の皿。大皿より一回り小さく難しくなります。
  • 中皿:けんの一番下(持ち手の底)にある皿。3つの皿の中で最も平らです。
  • 皿胴(さらどう):大皿と小皿が左右についている胴の部分です。
  • :糸でつながった球。けん先を受ける穴が一つ空いています。
  • :けんと玉をつなぐひも。技をコントロールする重要なパーツです。

材質は主にブナやサクラなどの木が使われます。江戸時代から明治の初め頃には鹿の角で作られたものもありましたが、現在はほとんどが木製です。競技用のけん玉は玉の直径や重さ、糸の長さまで細かい規格が定められており、見た目以上に精密な道具なのです。

けん玉の歴史と起源|フランスのビルボケから日月ボールまで

けん玉発祥の地・広島県廿日市で売られているけん玉

けん玉のルーツには諸説あり、その歴史をたどると日本だけでなくヨーロッパまで話が広がります。順番に見ていきましょう。

ヨーロッパの「ビルボケ」と伝来の謎

けん玉に似た玩具として最もよく知られているのが、フランスの「ビルボケ(bilboquet)」です。カップに玉を入れて遊ぶこの玩具は16世紀のヨーロッパで親しまれ、1585年にはアンリ3世の時代に大人たちまで夢中になったという記録が残っています。

ただし、「ビルボケが日本に伝わってけん玉になった」と断定できる史料は実は見つかっていません。世界各地にカップ・アンド・ボール型の遊びが存在するため、フランス由来というのはあくまで有力な一説、というのが実際のところです。けん玉の起源は世界的にもはっきりしていない、というのが正確な理解です。

江戸時代の文献に登場するけん玉

日本でけん玉が確認できる最も古い文献は、1809年(文化6年)の『拳会角力図会(けんかいすもうずえ)』だとされています。ここに「すくいたまけん」として図入りで紹介されています。

さらに1830年(文政13年)の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』には「拳玉」という言葉が登場します。当時は大人がお酒の席で楽しむ遊びとして広まっていたと考えられており、もともとは子ども向けではなかった点も面白いところです。

大正時代の「日月ボール」と発祥の地・廿日市

現在のけん玉の形を決定づけたのが、大正時代に登場した「日月ボール(にちげつボール)」です。1918年(大正7年)、広島県呉市の江草濱次(えぐさはまじ)が考案し、翌1919年(大正8年)5月14日に実用新案として登録されました。三日月のような皿と太陽のような玉を組み合わせた形が名前の由来です。

この日月ボールは、広島県廿日市(はつかいち)市の本郷木工所などで大正10年頃から大量生産されるようになりました。最盛期には全国シェアの約7割、年間30万本ものけん玉が廿日市で作られたといわれ、現在も廿日市は「けん玉発祥の地」として知られています。

日本けん玉協会の設立とけん玉ルネッサンス

1975年(昭和50年)、童話作家の藤原一生(ふじわらいっせい)が中心となり、東京都田無市(現・西東京市)で日本けん玉協会が設立されました。皿の大きさや形を統一した競技用けん玉の基準が整えられ、けん玉は「遊び」から「競技」へと進化していきます。

そして1977年頃には、テレビなどの影響で爆発的なブームが起こりました。これは後に「けん玉ルネッサンス」と呼ばれています。1979年には第1回の全日本けん玉道選手権大会が開かれ、競技としての歴史が本格的にスタートしました。

300年以上前の文献に載っているなんて、けん玉は立派な伝統文化ですね。

基本の持ち方とやり方・上達のコツ

けん玉が上手くなる最大のポイントは、腕の力で玉を持ち上げようとしないことです。コツを押さえれば、初心者でも大皿成功までは意外と早くたどり着けます。

基本の持ち方とやり方は次の通りです。

  • けんの持ち方:鉛筆を持つように、人さし指と親指でけんをはさみ、中皿が上を向くように軽く支えます。
  • 玉の構え:玉を下にだらんと垂らし、いったんピタッと静止させてから始めます。揺れていると失敗の原因になります。
  • ひざを使う:手で引き上げるのではなく、ひざを軽く曲げて沈み込み、伸び上がる反動で玉を真上に上げます。
  • 受けるときもひざ:玉が落ちてくる瞬間に、ひざをふわっと曲げて衝撃を吸収すると、玉が皿から弾かれにくくなります。
  • 目線:玉の動きをよく見て、皿を玉の真下に運ぶイメージを持ちます。

「ひざのクッションで玉を迎えにいく」という感覚をつかめると、大皿・小皿・中皿の基本3技は一気に安定します。まずはこの3つを連続で決められるよう練習するのがおすすめです。

けん玉の技の種類|基本技から難しい大技まで一覧で解説

けん玉の技は、一説には300種類とも、細かい派生まで含めれば5万種類ともいわれます。技は「皿系」「とめけん系」「飛行機系」「ふりけん系」「一周系」「灯台系」「うぐいす系」など、動きの系統ごとに分類されています。ここでは代表的な技を、やさしい順に紹介します。

まず覚えたい基本の技

初心者がまず挑戦するのが、皿に玉を乗せる基本技です。検定でも最初の関門になります。

  • 大皿:玉を真上に上げ、大皿で受け止める最も基本の技。すべての基礎です。
  • 小皿:大皿の反対側、小さい皿で受け止める技。皿が小さい分シビアになります。
  • 中皿:けんの底にある中皿で受ける技。3皿の中では比較的乗せやすい技です。
  • ろうそく:けんを下にして、ろうそくを立てるように持ち、玉を中皿に乗せる技です。
  • とめけん:真上に上げた玉の穴を、けん先にスパッと突き刺す技。けん玉らしさを一番感じる花形の技です。

中級〜上級の技

基本に慣れたら、玉とけんを持ち替えたり回転を加えたりする技に進みます。

  • 飛行機:玉の方を持ち、垂らしたけんを半回転させて、けん先を玉の穴に入れる技です。
  • ふりけん:けんを持ち、玉を前に振り上げて半回転させ、戻ってきた玉の穴にけん先を刺す連続動作の技です。
  • もしかめ:大皿と中皿に玉を交互に乗せ続ける技。リズム良く何百回も続けられる人もいて、けん玉の代名詞的存在です。

難易度の高い大技

さらに難しくなると、複数の技を連続でつなげる「一周系」や、玉の上にけんを立てる超難技が登場します。

  • 日本一周:大皿→小皿→とめけんを連続で決める技です。
  • 世界一周:大皿→小皿→中皿→とめけんと、さらに技を増やした連続技です。
  • 灯台:玉を下にして、その上にけんの中皿側を逆さに立ててバランスを取る技。静止系の代表格です。
  • うぐいす:玉のフチを、けん先と皿のすき間に引っかけて乗せる繊細な技です。
  • 月面着陸(つきめんちゃくりく):とめけんの状態から、玉の上にけんの中皿を逆さに乗せる大技で、見せ場として人気があります。

「もしかめ」をやり始めると止まらなくなるんですよね。気づいたら数百回いってます。

けん玉検定の級段位|10級から十段までの21階級

けん玉の腕前を客観的に示せるのが、日本けん玉協会が運営する「けん玉道級段位認定制度」です。級位と段位を合わせて、なんと全21階級も用意されています。

内訳は、初心者向けの10級から1級まで(10階級)、その上の準初段、さらに初段から十段まで(10階級)です。級は数字が小さくなるほど、段は数字が大きくなるほど難しくなります。

級位の認定では、受審する級の課題技について最大10回まで挑戦し、規定の回数を成功させれば合格となります。代表的な認定種目の流れは次の通りです(基準は改定により変わることがあります)。

級・段位 主な認定種目(代表例)
10級 大皿
9級 小皿
8級 中皿
7級 ろうそく
6級 とめけん
5級 飛行機
4級 ふりけん
3級 日本一周
2級 世界一周
1級 灯台 など
準初段〜十段 連続技・大技に加え「もしかめ」などの規定回数

認定品と推奨品・飛び段なしのルール

検定には道具のルールもあります。準初段までの検定は「推奨品」のけん玉でも受けられますが、初段以上の検定は協会の「認定品」けん玉を使わなければなりません。規格の揃った道具で公平に技を競うためです。

また段位は、いきなり高い段から受けることはできず、初段から順番に取得していく必要があります。飛び級ならぬ「飛び段」は認められていないのです。

十段ともなると、もはや人間離れした技のオンパレード。一度動画で見てほしいレベルです。

けん玉の世界大会「けん玉ワールドカップ廿日市」とは

けん玉ワールドカップに集まった海外チーム

けん玉は今や日本だけのものではありません。その象徴が、けん玉発祥の地・広島県廿日市市で毎年開かれる「けん玉ワールドカップ廿日市(Kendama World Cup)」です。

この大会は2014年に始まり、一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク(GLOKEN)が主催しています。世界中のトッププレーヤーが廿日市に集まり、フリースタイルの技を競い合う、世界最大級のけん玉イベントです。

規模は年々拡大しており、2025年の大会には26の国と地域から、過去最多となる1000名を超える選手が出場しました。これまでの累計参加国は40を超え、世界遺産・宮島のある廿日市は、毎年けん玉を通じて世界とつながる街になっています。

けん玉が海外で人気になった理由|ストリートけん玉の広がり

では、なぜ日本の伝統玩具が世界でこれほど受け入れられたのでしょうか。きっかけは2000年代のアメリカにありました。

2007年頃、アメリカでヒップホップの音楽に合わせてけん玉のトリックを披露する動画が広まり、けん玉は若者の「ストリートカルチャー」として一気に火がつきました。KENDAMA USAをはじめとする海外ブランドが次々に誕生し、カラフルでスタイリッシュなけん玉が登場します。

日本の「競技けん玉」が技の正確さや美しさを重視するのに対し、海外発の「ストリートけん玉」は自由なトリックやファッション性を楽しむ文化として発展しました。今では「KENDAMA」がそのまま世界共通語になっており、精神が落ち着くとして海外の療養施設で取り入れられる例もあるほどです。

同じく昭和の子どもたちに親しまれ、地域ごとに呼び方が違う伝承玩具については、以下の記事もあわせてどうぞ。

けん玉の選び方|初心者はまず認定品から

これからけん玉を始めるなら、道具選びも上達の近道です。100円ショップのものでも遊べますが、本格的に練習するなら規格の整ったけん玉を選ぶのがおすすめです。

  • 初心者・検定を目指す人:日本けん玉協会の認定マークが付いた「認定品」がおすすめ。玉の大きさや重さ、糸の長さが基準通りで、技が決まりやすく作られています。
  • トリックを楽しみたい人:玉が滑りにくい塗装や、独自の形をしたストリート系のけん玉が向いています。デザインも豊富です。
  • 子ども用:軽くて小ぶりなものや、最初から皿が大きめのビギナー向けモデルだと挫折しにくくなります。

迷ったら、まずは認定品の定番モデルから始めるのが無難です。公式サイトでは認定品の情報やルールが確認できます。

知って楽しい豆知識とトリビア

最後に、思わず誰かに話したくなるけん玉の雑学を紹介します。

5月14日は「けん玉の日」

5月14日は「けん玉の日」に制定されています。これは、現代けん玉の原型である日月ボールが1919年5月14日に実用新案登録された日にちなんだもので、2017年に日本記念日協会によって認定されました。

NHK紅白の「けん玉チャレンジ」

2017年からは、NHKの紅白歌合戦の企画として大人数でけん玉の大皿を同時に成功させる「けん玉ギネス記録チャレンジ」がたびたび行われ、お茶の間でも話題になりました。

山形県長井市は競技用けん玉の聖地

山形県長井市は、厳しい基準を満たした競技用けん玉が国内で唯一生産される街として知られています。市はけん玉でのまちおこしに力を入れ、2020年にはけん玉を「市技」に指定しました。

脳トレ・集中力アップの効果も

けん玉は、玉の動きを目で追い、ひざを使って全身でバランスを取る全身運動です。集中力や姿勢の改善、手先のトレーニングにつながるとして、子どもから高齢者まで幅広い世代のレクリエーションにも活用されています。

よくある質問(Q&A)

Q. けん玉は英語で何といいますか?
A. 英語でもそのまま「kendama」と呼ばれます。海外でブームになった際に日本語の呼び名がそのまま広まり、世界共通語になりました。

Q. けん玉の技は全部でいくつありますか?
A. 公式に整理されているものでおよそ300種類、細かい派生やオリジナル技まで含めると5万種類とも言われ、今も新しい技が生まれ続けています。

Q. 大人から始めても上達しますか?
A. もちろんです。けん玉は力よりもひざの使い方とコツが重要なので、年齢に関係なく上達できます。脳トレや健康づくりとして大人になってから始める人も増えています。

Q. 100円ショップのけん玉でも検定は受けられますか?
A. 遊ぶ分には問題ありませんが、初段以上の検定では協会の認定品が必要です。検定を目指すなら認定品を用意しましょう。

まとめ|けん玉は世界に広がる日本の伝承玩具

けん玉は、ヨーロッパのビルボケにも通じる長い歴史を持ち、大正時代の「日月ボール」を経て現在の形になった日本を代表する伝承玩具です。

シンプルな大皿から、十段クラスの超難技まで、奥行きは無限大。日本けん玉協会の21階級にもおよぶ検定や、廿日市で開かれる世界大会が、その奥深さを物語っています。

今ではKENDAMAとして世界中で愛され、ストリートカルチャーとしても進化を続けています。久しぶりに手に取って、まずは大皿、そして「とめけん」を狙ってみてはいかがでしょうか。

子どもの頃にできなかった技も、コツをつかめば大人になった今ならできるかも。ぜひ一本、手元に置いてみてください。