「碁石を5つ先に並べたら勝ち」というシンプルなルールで、子どもから大人まで誰もが一度は遊んだことのある五目並べ。碁盤と碁石さえあればすぐに始められる手軽さが魅力ですが、実は奥がとても深いゲームです。
適当に石を置いているだけではなかなか勝てず、強い人に挑むと一方的に負けてしまう。そんな経験はありませんか。五目並べには、勝つための明確な「型」と理論があります。
この記事では、五目並べの基本ルールから、勝つための核心である「四三(しさん)」のしくみ、実戦で使える7つのコツ、そして「五目並べに必勝法はあるのか」という疑問にゲーム理論の視点から答えます。さらに、競技版である連珠(れんじゅ)との違いや、明治の文豪が名付けた意外な歴史、世界各国の五目並べまで、まるごと解説していきます。

目次
五目並べとは?碁盤と碁石で5つ並べる定番ゲーム

五目並べは、2人で交互に碁石を置き、自分の石を先に縦・横・斜めのいずれかに5個まっすぐ並べた方が勝ちというゲームです。並んだ5個の石を「五連(ごれん)」と呼びます。
使う道具は囲碁とまったく同じで、碁盤と黒・白の碁石だけ。家庭では囲碁用の19路盤がよく使われますが、後で紹介する競技版の連珠では15路の専用盤を使います。先に打つ方が黒石、後から打つ方が白石を持ち、黒(先手)から1手ずつ交互に置いていきます。
斜めも45度のラインがすべて有効なので、縦・横だけを警戒していると斜めから一気に5つ並べられてしまうのが、このゲームの怖いところです。盤の交点であればどこに置いてもよく、一度置いた石は囲碁と違って動いたり取られたりしません(基本ルールの場合)。だからこそ、1手1手が盤上にそのまま残り、構想がそのまま勝敗に直結します。
- 道具:碁盤と黒・白の碁石
- 勝ち:縦・横・斜めのどれかに自分の石を5個並べる(五連)
- 手番:黒(先手)→白(後手)の順に1手ずつ交互
- 置く場所:盤の交点ならどこでもOK・石は動かさない
基本ルールと勝敗の決まり方|先手・後手と長連の扱い
進め方はとても単純です。黒が盤の好きな交点に石を置き、次に白が置く。これを交互に繰り返し、先に五連を作った方の勝ちです。どちらも五連を作れないまま盤が埋まれば引き分けになります。
初心者がまず迷うのが「6個以上並んだらどうなるのか」という点です。6個以上つながった状態を長連(ちょうれん)と呼びますが、これは遊ぶ場のルールによって扱いが分かれます。家庭で遊ぶ五目並べでは「長連も勝ち」とする場合と「ちょうど5個だけを勝ちとし、長連は勝ちにしない」とする場合の両方があります。
このあいまいさを整理し、競技として成り立つようにきっちり定めたのが、次に紹介する「連珠」です。最初に遊ぶ相手とは、長連を勝ちにするかどうかだけ先に決めておくと、もめずに楽しめます。
五目並べと連珠の違いとは?禁じ手と15路盤
連珠(れんじゅ)は、五目並べを競技として成立するようにルールを整えたものです。見た目は五目並べそのものですが、いくつかの重要な決まりが加わっています。
最大の違いは、先手の黒だけに禁じ手があることです。なぜ黒だけかというと、禁じ手のない五目並べは黒(先手)がとても有利で、最善を尽くせば先手が必ず勝ててしまうからです。そこで先手・後手のバランスをとるために、黒にだけ次の3つを反則として禁止しました。
- 三々(さんさん):1手で「三」を2つ同時に作ること
- 四四(しし):1手で「四」を2つ同時に作ること
- 長連(ちょうれん):6個以上を一直線に並べること
黒がこの禁じ手を打つと、その瞬間に反則負けになります。一方、後手の白には禁じ手が一切ありません。白は三々でも四四でも自由に打ててよく、長連を作っても五連と同じく勝ちになります。これだけ白を優遇して、ようやく先手と後手が互角に近づくというわけです。
ただし1つだけ例外があります。黒が五連を完成させた手が、同時に三々や四四、長連にもなっていた場合は、禁じ手にはならず黒の勝ちです。「5つ並べた」勝利が最優先されるためで、ここを知らずに「禁じ手だから負け」と勘違いする人が多いので注意しましょう。
もう1つの違いが盤の大きさです。連珠では縦横15路の専用盤を使います。これは1931年に高木楽山が提唱したもので、広すぎる碁盤だと隅に逃げて延々と続いてしまうため、15路に絞って決着がつきやすくしているのです。

必勝法の核心「四三(しさん)」とは何か

五目並べの必勝法を理解するうえで、絶対に外せないのが「四三(しさん)」という考え方です。これを知っているかどうかで、勝率がまるで変わります。
まず用語を整理します。両端が空いていて、あと1手で五連になる4個の並びを「四(達四・棒四)」、放っておくと四になる3個の並びを「三(活三)」と呼びます。相手は「四」を作られたら、必ずその両端のどちらかを止めないと次に負けます。
ここがポイントです。四三とは、1個の石を置くことで「四」と「三」を別々の方向に同時に作る手のこと。相手は四を止めるだけで手一杯になり、もう一方の三を止める手が残りません。三はそのまま四へ、四は五連へと伸び、止められずに勝ててしまいます。
五目並べの攻めは、突き詰めれば「いかにして四三を作るか」というゲームです。一直線に5つ並べることだけを考えていると簡単に止められてしまいます。2つ以上の方向から脅威をかけ、相手が両方は止められない形に追い込む。これが勝ち方の本質です。
同じように盤の上で2人が交互に石を打ち、先を読み合うゲームにオセロがあります。あわせて読むと、盤上ゲームの考え方がぐっと深まります。
五目並べで勝つための7つのコツと勝ち方

四三の考え方がわかったら、次は実戦で使えるコツです。意識するだけで勝率が上がる7つのポイントを紹介します。
1. まずは中央(天元)の近くに打つ
盤の端や隅は、石を伸ばせる方向が少なく不利になります。中央付近なら縦・横・斜めの全方向に展開でき、攻めの選択肢が最も広がります。連珠でも初手は盤の中央である「天元(てんげん)」に打つと決められています。序盤は中央に勢力を築くのがセオリーです。
2. 「二」を作って「三」へ育てる
いきなり五連は作れません。石は「二(並んだ2個)」から「三」「四」「五」へと一段ずつ育てていきます。序盤は自分の石が2個つながる「二」をたくさん作るのがポイントです。特に両端が空いている二は、放置すれば三・四へ伸びる大切な種になります。
3. 相手の「三」「四」は最優先で止める
相手が両端の空いた三を作ったら、四にされる前に止めましょう。これを放置すると、四を作られ、その次に五連を完成されてしまいます。とくに「四」を作られたら、その手ですぐ止めないと負けが確定します。攻める前に、相手の伸びを止める「受け」を徹底するのが負けないコツです。
4. 必勝の形「四三」を狙う
攻めの最終目標は、前章で説明した四三です。1つの石で四と三を同時に作れば、相手は片方しか止められず、ほぼ勝ちが決まります。自分の石を置くたびに「この一手で四三につながるか」を意識すると、攻めに一本筋が通ります。
5. おとり(フェイント)で本命を隠す
露骨に四三を狙うと相手に読まれて潰されます。そこで、本命の攻め筋とは別に「おとり」の筋を作り、相手の注意をそらします。相手がおとりを止めるために打った隙に、本命の四三を完成させるのです。本筋とおとり、2つ以上の攻め筋を同時に進めるのが上級者の戦い方です。
6. 先手は攻め、後手は受けてカウンター
五目並べは基本的に先手(黒)が有利です。先手なら主導権を握って積極的に攻め、四三の形を目指しましょう。後手(白)のときは無理に攻めず、相手の三・四を確実に止めながら、相手が攻めをしくじった瞬間を狙ってカウンターに転じます。手番によって戦い方を切り替えるのが勝率を上げるコツです。
7. よく出る「定石」を覚える
序盤の有利な打ち方には、研究され尽くした「定石(じょうせき)」と呼ばれる形があります。プロの連珠では膨大な定石が知られており、最初の数手の選び方で勝敗が大きく変わります。すべて覚える必要はありませんが、よく出る形をいくつか知っておくだけで序盤から差をつけられます。

五目並べに必勝法はある?ゲーム理論で証明された先手必勝
「五目並べに必勝法は本当にあるの?」という疑問の答えは、はっきり「あります」です。しかも、感覚的な話ではなく数学的に証明されています。
五目並べは、運の要素がなく、すべての情報が両者に見えている二人零和有限確定完全情報ゲームに分類されます。これは将棋やオセロと同じ仲間で、理論上は最善手がすべて計算できるタイプのゲームです。
禁じ手のない自由ルールの五目並べ(15路盤)については、1993年にオランダの研究者ヴィクター・アリス(L. Victor Allis)らが、証明数探索(proof-number search)や依存性探索(dependency-based search)と呼ばれる新しいコンピュータ探索技術を使って解明し、先手必勝であることを証明しました。つまり、先手が最善を打ち続ければ後手は絶対に勝てない、ということが確定しているのです。
禁じ手のある連珠についても、2001年にワーグナーとヴィラーグ(Wagner & Virág)が「Solving Renju」という研究で、やはり先手必勝であることを示しました。じつは、これらの解析よりずっと前の1899年、連珠を整備した黒岩涙香自身が経験的に「先手必勝の手順」を見抜いていたとされ、その先見性には驚かされます。
では、先手必勝とわかっているなら勝負にならないのでは、と思いますよね。だからこそ競技の世界では、先手の有利を打ち消すための特別なルールが用意されています。
ちなみに、同じく盤上で2人が交互に打つオセロは、2023年に「最善を尽くすと引き分け」であることが証明されました。先手必勝の五目並べとは結論が違うのが面白いところです。
先手有利を抑える「開局規定」とプロ連珠のルール

先手必勝という弱点を補うため、競技連珠では序盤の打ち方を細かく縛る開局規定(かいきょくきてい)が発展してきました。先手が一方的に勝てないよう、最初の数手にハンデを課すしくみです。
その出発点が「珠型(しゅけい)」です。黒の初手は天元に固定し、白の2手目、黒の3手目までの並びを分類すると全部で26種類あり、これを珠型と呼びます。どの珠型から始めるかで、その後の難しさが変わります。
さらに、先手有利を抑えるための代表的な取り決めとして、次のようなルールが使われてきました。
プロルール・ロングプロ
黒の初手を中央に置いたあと、黒の3手目を初手から一定以上離さなければならない、という制限です。プロルールでは3路以上、ロングプロではさらに厳しく4路以上離します。それでも1989年から1991年ごろの世界選手権では黒の勝率が約67%もあり、まだ先手有利が解消しきれていませんでした。
スワップ・スワップ2
そこで考案されたのが、石を置く人と色を選ぶ人を分ける方式です。スワップでは、一方が黒2個・白1個を盤に置き、もう一方がその局面を見てから黒と白のどちらを持つか選びます。不利になる色を相手に押しつけられないので、自然とバランスのとれた配置になります。発展形のスワップ2では先手の勝率が約52%まで下がり、ほぼ互角に近づきました。
現在の連珠の公式戦では、これらをさらに洗練させた「五珠交代打ち(タラグチ10)」などが採用されています。先手必勝のゲームを、人間同士が真剣勝負として楽しめるよう、ルールそのものが進化し続けているのです。
五目並べの歴史と由来|黒岩涙香が名付けた「連珠」
五目並べのルーツは古く、日本では平安時代から似た遊びがあったとも言われますが、史料ではっきり確認できるのは江戸時代の中ごろです。1700年代中頃には民間に広まっていた記録があり、1850年代には専門の書物も出版されていました(1856年刊『五石定磧集』など)。
当時はまだ呼び名が定まっておらず、流派によって「五石」「格五」「五目並べ」「五法」などバラバラに呼ばれていました。これを1つにまとめ、ゲームの名前を決めたのが、意外な人物です。
明治の新聞『萬朝報(よろずちょうほう)』を率いたジャーナリスト、黒岩涙香(くろいわ るいこう)です。『巌窟王』や『噫無情』といった海外小説の翻案でも知られる文豪で、無類のこのゲーム好きでもありました。涙香は自紙で名称を公募し、1899年(明治32年)に「聯珠(れんじゅ)」という名を発表します。現在は「連珠」と書きます。この発表日にちなみ、12月6日は「連珠の日」とされています。
その後、黒だけに三々や長連を禁じ、15路の専用盤を導入し、四四を禁じ手に加えるなど、先手と後手の均衡をとる工夫が段階的に積み重ねられて、現在のルールが完成しました。組織面でも、1966年に分裂していた団体が統一されて日本連珠社となり、2014年には公益社団法人になっています。
連珠は今や日本だけのものではありません。1988年には連珠国際連盟(RIF)が発足し、1989年からは世界選手権が開かれています。日本生まれの素朴な遊びが、世界で競われる頭脳スポーツへと育ったのです。

世界の五目並べ|Gomoku・五子棋・Pente
5つ並べる遊びは世界中にあり、国や地域ごとに少しずつルールが違います。代表的なものを表にまとめました。
| 名称 | 地域 | 特徴 |
|---|---|---|
| 五目並べ / Gomoku | 日本 | 碁盤で5個並べる。長連の扱いは遊ぶ場によって異なる |
| 連珠 / Renju | 国際(日本発祥) | 15路盤・黒に三々四四長連の禁じ手・開局規定あり |
| 五子棋(ウーズーチー) | 中国 | ルールは五目並べとほぼ同じ。碁盤を使って打つ |
| オモク(오목) | 韓国 | 19路盤で打つことが多く、三々を禁じる遊び方もある |
| カロ(Caro) | ベトナム | 五連を両端から挟まれて止められると無効になるなど独自ルール |
| ペンテ(Pente) | アメリカ | 相手の石を挟んで取れる「捕獲」ルールを加えた派生ゲーム |
| 人取り連珠 | 日本発の派生 | 相手の石のペアを5組取っても勝ちになる |
名前も道具も違いますが、「相手より先に5つ並べる」という芯は世界共通です。ペンテのように石を取り合うルールが加わると、まったく別ゲームのような駆け引きが生まれます。
五目並べクイズ5問|ルールと必勝法の知識テスト
ここまでの内容が頭に入ったか、クイズで確かめてみましょう。答えはそれぞれの下にあります。
第1問
五目並べは、自分の石を一直線に何個並べたら勝ちでしょうか。
第2問
連珠で先手の黒だけに禁じられている3つの手を答えてください。
第3問
1個の石で「四」と「三」を同時に作り、相手が両方は止められない状態に追い込む必勝の手筋を何と呼ぶでしょうか。
第4問
1899年にこのゲームを整理し「連珠」と名付けた、『巌窟王』の翻案でも知られる新聞人は誰でしょうか。
第5問
禁じ手のない五目並べは、両者が最善を尽くすと先手・後手のどちらが必ず勝つと証明されているでしょうか。
よくある質問(FAQ)|ルールと強くなる方法
五目並べと連珠は何が違うの?
連珠は五目並べを競技として整備したものです。15路の専用盤を使い、先手の黒にだけ三々・四四・長連の禁じ手を課して、先手が有利になりすぎないよう均衡をとっています。家庭で遊ぶ五目並べは、これらの制限がないぶん気軽です。
長連(6個以上並ぶ)は勝ちになるの?
家庭の五目並べでは、勝ちにする場合と、ちょうど5個だけを勝ちとして長連は認めない場合の両方があります。連珠では黒の長連は反則負け、白の長連は勝ち扱いです。遊ぶ前に取り決めておくと安心です。
初心者でも強くなれますか?
なれます。まずは「相手の三・四を必ず止める」受けを徹底するだけで、簡単には負けなくなります。慣れてきたら「四三」を狙う攻めを覚えると、一気に勝てるようになります。守りから入るのが上達の近道です。
パソコンやアプリの五目並べに勝てません。
強いコンピュータは先手必勝の手順を正確に打ってくるため、後手で完璧に対応するのはプロでも至難です。自分が先手の設定で、四三を狙う練習から始めるのがおすすめです。負けた対局を振り返り、どこで相手の四三を許したかを確認すると上達します。
五目並べはどんな道具があれば遊べますか?
囲碁の碁盤と碁石があれば十分です。専用の盤がなくても、方眼紙に鉛筆で丸とバツを書き込めば遊べます。本格的に連珠を楽しみたいなら、15路の連珠盤も市販されています。
まとめ|五目並べは「四三」を制する者が勝つ
五目並べは、ルールこそ「先に5つ並べる」だけですが、その裏には四三という明快な必勝の理論があります。
勝つための要点はシンプルです。まず相手の三・四を止める受けを固め、そのうえで四と三を同時に作る四三を狙う。この2つを意識するだけで、ぐっと強くなれます。
競技版の連珠では、先手の黒に三々・四四・長連の禁じ手を課し、開局規定で先手有利を抑えて、互角の勝負を実現しています。
そして、禁じ手のない五目並べは先手必勝であることが、1993年にコンピュータ解析で数学的に証明されました。明治の文豪・黒岩涙香が「連珠」と名付けたこの遊びは、今や世界で競われる頭脳スポーツです。
碁盤と碁石、あるいは紙とペンさえあればすぐに始められます。今日学んだ四三を武器に、ぜひ一局打ってみてください。


