どうぶつしょうぎのルールと必勝法とは?4歳からの遊び方・戦法・完全解析まで徹底解説

「どうぶつしょうぎ」は、ライオンやひよこのかわいい駒を使って遊ぶ、3×4マスの小さな将棋です。4歳の子どもでもすぐに覚えられるシンプルさが魅力ですが、その中身はおどろくほど奥深く、コンピュータによる完全解析まで行われています。

しかも、その解析結果はなんと「後手必勝」。先手が有利になりがちな多くのボードゲームの中で、後の番のプレイヤーが勝つという、とてもめずらしいゲームなのです。

この記事では、どうぶつしょうぎのルールと駒の動かし方から、勝つための必勝法やコツ、2大戦法「ゾウ冠」と「キリンの翼」、東京大学の研究者による完全解析の中身、由来やバリエーションまで、まとめて徹底解説します。

見た目はかわいいのに、中身は本格派。親子そろってハマる人が続出しているんですよ。

どうぶつしょうぎとは?4歳から将棋に親しめる入門ゲーム

どうぶつしょうぎの盤面と駒(ライオン・ぞう・きりん・ひよこ)

上の写真が、実際のどうぶつしょうぎの盤面です。3列×4段のマス目に、ライオン・ぞう・きりん・ひよこのかわいい動物駒を並べて遊びます。

どうぶつしょうぎは、女流棋士の北尾まどかさんがルールを考案し、同じく女流棋士の藤田麻衣子さんがデザインを手がけたボードゲームです。2008年に発表され、2009年9月に幻冬舎エデュケーションから一般向けに発売されました。

生まれた目的は「子どもに将棋を好きになってもらうこと」でした。本将棋は駒の種類が多く動きも複雑で、小さな子にはとっつきにくいものです。そこで盤を3×4マスに、駒をたった4種類にしぼり、動かせる方向を駒のマークで示すことで、ひらがなが読めれば遊べるようにくふうされています。

シンプルでありながら、相手から取った駒を自分の駒として使える「持ち駒」など、将棋の本質はしっかり残されています。だからこそ、子どもの思考力・集中力・決断力を育てる知育ゲームとしても高く評価されているのです。

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盤面と4つの駒の動き方|ルールの基礎を覚えよう

どうぶつしょうぎの盤は、横3列×縦4段の合計12マスです。自分から見て手前の段が自分の陣地、いちばん奥の段が相手の陣地になります。最初は、自分の陣地にライオンを置き、その左右にきりんとぞうを、ライオンの前にひよこを1枚置いた状態でスタートします。

駒は4種類(ひよこが成ると5種類)。それぞれの動ける方向は駒に赤い丸印で描かれているので、覚えていなくてもひと目でわかります。動き方を表にまとめました。

動ける方向 本将棋でいうと
ライオン 周囲8方向に1マス 王将(玉)
きりん 上下左右の4方向に1マス 飛車を弱くした駒
ぞう ななめ4方向に1マス 角行を弱くした駒
ひよこ 前に1マスだけ 歩兵
にわとり ななめ後ろ以外の6方向に1マス 金将(成った歩)

いちばん大切なのは、王様にあたる「ライオン」です。周囲8マスのどこへでも進めますが、取られたら負けなので、守りながら戦います。

「きりん」は上下左右、「ぞう」はななめ。2つを合わせるとライオンと同じ8方向をカバーできるので、きりんとぞうでライオンを守るのが基本の形になります。

「ひよこ」は前に1マスしか進めない弱い駒ですが、相手の陣地のいちばん奥(1段目)まで進むと裏返って「にわとり」に成り、金将と同じ強い動きに変身します。この「成り」がどうぶつしょうぎの逆転の鍵を握ります。

どうぶつしょうぎの基本ルールと遊び方|持ち駒・成り・勝ち方

駒の動きを覚えたら、次は試合の進め方です。基本のルールはとてもシンプルで、おもに次の3つを押さえれば遊べます。

  • 交互に1手ずつ動かす:先手と後手が1回ずつ、自分の駒を1つだけ動かします。パスはできません。
  • 取った駒は持ち駒になる:相手の駒を取ると自分のものになり、好きなタイミングで盤上の空いたマスに「打つ」ことができます。これが将棋ならではの面白さです。
  • ひよこは成って「にわとり」に:ひよこが相手陣のいちばん奥に進むと、裏返ってにわとり(金の動き)に強化されます。

勝ち方は2つあります。1つめは「キャッチ」で、相手のライオンを取れば勝ちです。2つめが「トライ」で、自分のライオンを相手陣のいちばん奥の段まで進めれば勝ちになります。

つまり攻める側は、相手のライオンをねらうだけでなく、自分のライオンを敵陣へ走らせる「トライ」も勝ち筋になります。守る側は両方を同時に警戒しなければならず、この二段構えがゲームを一気に奥深くしています。

「キャッチ」と「トライ」の二択を同時にねらえるのが、このゲームのいちばん面白いところなんです。
トライのルールの注意点
トライは、自分のライオンが相手陣の最奥に到達した時点で「次の相手の手番でそのライオンが取られない」場合にのみ成立します。到達しても、すぐ取られてしまう位置ならトライ勝ちにはなりません。ここを勘違いしやすいので注意しましょう。

どうぶつしょうぎの必勝法|勝つための5つのコツ

どうぶつしょうぎは運の要素がほとんどなく、考え方しだいで強くなれます。初心者がまず意識したい、勝つための5つのコツを紹介します。

1. 駒の「紐づけ」を意識する

紐づけとは、自分の駒どうしが守り合っている状態のことです。盤が狭いため、1枚の駒がぽつんと前に出ると、すぐ相手に取られてしまいます。取られても別の駒で取り返せるように、つねに味方どうしを支え合わせて進めるのが上達の第一歩です。

2. ライオンを軽率に前へ出さない

ライオンは取られたら即負けの大事な駒です。序盤からむやみに前進させると、相手の攻めの的になります。基本はきりんとぞうで囲って守り、終盤のトライをねらうときに満を持して動かしましょう。

3. トライと「トライ阻止」を常に意識する

勝ち方が2つあるということは、相手にも2つの負け筋があるということです。自分はライオンの侵入ルートをいつもさがし、同時に相手のライオンが自陣最奥へ走り込んでこないかを見張ります。攻防が一体になっているのがこのゲームの核心です。

4. ひよこを「成り」に向けて活用する

弱いひよこも、にわとりに成れば金と同じ強力な駒になります。持ち駒のひよこを相手陣の近くに打ち、成りをねらうのは有力な攻め筋です。相手のひよこが成りそうなときは、早めに対応しておきましょう。

5. 持ち駒を打つ場所とタイミングを選ぶ

取った駒をいつ、どこに打つかで形勢が大きく変わります。守りを固めるために打つのか、相手ライオンに王手をかけるために打つのか、目的をはっきりさせて使いましょう。狭い盤では、1枚の持ち駒が決め手になります。

最初は「紐づけ」と「ライオンを大事にする」の2つだけでも、ぐっと勝てるようになりますよ。

2大戦法「ゾウ冠」と「キリンの翼」を使い分ける

どうぶつしょうぎの定跡(決まった指し方)は、序盤の選択で大きく2つの戦法に枝分かれします。指し慣れたプレイヤーの間で知られる「ゾウ冠」と「キリンの翼」です。

ゾウ冠(ぞうかんむり)

初手でひよこを前に突き出すおだやかな出だしから生まれる戦法です。じっくり構えてから反撃を狙う、カウンター志向の人に向いています。激しい展開になりにくく、初心者が形を覚えるのにも向いた指し方です。

キリンの翼(きりんのつばさ)

初手できりんを動かす積極的な出だしから生まれる戦法です。早い攻めをねらえる反面、変化が複雑になりやすく、読みの力が問われます。前に出したきりんを引き戻して、相手の攻めを待つゾウ冠に合流させるテクニックもあります。

どちらが正解ということはありません。まずはおだやかなゾウ冠で基本を覚え、慣れてきたらキリンの翼で攻めの感覚を磨く、という順番がおすすめです。

どうぶつしょうぎの完全解析「後手必勝」とは?|東大・田中哲朗の研究

どうぶつしょうぎは、コンピュータによって「完全解析」されたゲームです。完全解析とは、起こりうるすべての局面を計算しつくし、両者が最善を尽くすとどちらが勝つかを数学的に確定させることを指します。

この解析を行ったのが、東京大学情報基盤センターの田中哲朗さんです。2009年6月、起こりうる全2億4680万3167局面をすべて調べ上げ、両者が最善を尽くすと「78手で後手が勝つ」、つまり後手必勝であることを発表しました。計算にかかった時間は、当時のパソコンでわずか5時間半ほどだったといいます。

解析からは面白い事実もわかりました。相手陣のいちばん奥にひよこを打つ手(実質的には1手パスに近い手)が、勝つために有効な局面が68個も存在したのです。また、駒の動きと配置の関係から、指せる手がまったくなくなる状態は起こり得ないことも証明されました。

注目すべきは、その結論が「後手必勝」だという点です。多くのゲームは先手が有利か、引き分けに落ち着きます。後手が必ず勝てるという結論はとてもめずらしく、どうぶつしょうぎの奥深さを物語っています。ほかの盤上ゲームの完全解析の結果と並べてみましょう。

ゲーム 完全解析の結論 解明された年
三目並べ(○×ゲーム) 引き分け 古くから知られる
コネクトフォー 先手必勝 1988年
五目並べ(自由ルール) 先手必勝 1993年
チェッカー 引き分け 2007年
オセロ(8×8) 引き分け 2023年
どうぶつしょうぎ 後手必勝 2009年

こうして並べると、後手必勝のどうぶつしょうぎがいかに異色かがわかります。なお、これは「最善を尽くせば」の話で、人間どうしの対局では先手にも後手にも十分チャンスがあるのでご安心ください。

盤上ゲームの完全解析つながりでは、2023年に引き分けと結論づけられたオセロの記事も読みごたえがあります。あわせてどうぞ。

「後手必勝」って聞くと身がまえちゃいますが、実戦では先手でも後手でも勝負はわかりません。気楽に楽しみましょう。

どうぶつしょうぎの由来と歴史|将棋人口を増やすために生まれた

人間将棋イベントの様子。将棋は世代を超えて親しまれている

将棋は古くから世代を超えて親しまれてきた日本の文化です。どうぶつしょうぎは、そのすそ野をもっと広げたいという思いから生まれました。

考案者の北尾まどかさんは女流棋士として活動するなかで、「子どもや初心者が将棋に入りづらい」という課題を感じていました。そこで2008年、藤田麻衣子さんとともに、ひと目で動きがわかる動物の駒と3×4マスの盤を考案します。

2008年11月の試験販売では、用意した在庫が午前中で完売するほどの人気を集めました。翌2009年には日本ボードゲーム大賞で「ゆうもあ賞」を受賞し、知育玩具としての地位を確立します。

その後は海外にも広がり、英語では「Let’s catch the Lion!」の名で親しまれています。シンプルな入門ゲームでありながら、本将棋へのかけ橋として今も多くの子どもたちに遊ばれているのです。

ごろごろ・おおきな森も!種類とバリエーション

どうぶつしょうぎには、慣れてきた人がステップアップできる発展版もそろっています。代表的なものを紹介します。

  • ごろごろどうぶつしょうぎ:盤が5×6マスに広がり、いぬやねこの駒が加わった中級版です。本家にはない「成り」のバリエーションも増え、より将棋に近い読み合いが楽しめます。
  • おおきな森のどうぶつしょうぎ:9×9マスの本格版で、ルールはほぼ本将棋と同じ。駒だけが動物になっており、かわいい見た目のまま本将棋へ移行したい人にぴったりです。
  • アンパンマンはじめてしょうぎ:セガトイズが発売する3×5マスの入門版で、駒は3種類。さらに小さな子向けに易しくしたバージョンです。
  • みんなのどうぶつしょうぎ(ゲーム版):2019年にNintendo SwitchやPlayStation 4向けに配信されたデジタル版です。一人でもCPUを相手に練習できます。

このように、3×4マスの本家から本将棋級の9×9マスまで段階的に用意されているのが、どうぶつしょうぎシリーズの大きな魅力です。子どもの成長に合わせて選べます。

「もっとやりたい!」の気持ちに合わせて、少しずつ大きい盤に挑戦していけるのがうれしいですね。

どうぶつしょうぎクイズ5問|あなたは何問わかる?

ここまでの内容のおさらいです。全部で5問、家族で出し合っても盛り上がります。答えは各問のすぐ下にあります。

第1問:どうぶつしょうぎの盤面は何マスでしょう?

答え:3列×4段の合計12マスです。

第2問:王様にあたる、いちばん大切な駒の名前は?

答え:ライオンです。取られたら負けになります。

第3問:ひよこが相手陣のいちばん奥に進むと、何に成るでしょう?

答え:にわとりです。金将と同じ強い動きになります。

第4問:自分のライオンを相手陣のいちばん奥に進めて勝つ方法を何という?

答え:トライです。もう一つの勝ち方「キャッチ」は相手ライオンを取ることです。

第5問:完全解析の結果、両者が最善を尽くすとどちらが勝つでしょう?

答え:後手です。78手で後手必勝と証明されています。

よくある質問(FAQ)|遊び方のギモンを解決

どうぶつしょうぎを始めるときによく出る疑問をまとめました。

Q. 何歳から遊べますか?
A. 目安は4〜5歳からです。ひらがなが読めて、駒のマークの意味がわかれば遊べます。ルールが少ないので、はじめてのボードゲームにも向いています。

Q. 何人で遊ぶゲームですか?
A. 2人用です。1対1で交互に駒を動かして対戦します。デジタル版なら一人でCPU相手に練習もできます。

Q. 本将棋の練習になりますか?
A. なります。持ち駒を打つ、駒を成る、王様を守るといった将棋の本質的な考え方が自然に身につくので、本将棋へのかけ橋として最適です。

Q. 1局にどのくらい時間がかかりますか?
A. 数分です。慣れた人どうしなら1〜2分で決着することもあります。短時間で何局も繰り返せるのも魅力です。

Q. 引き分けになることはありますか?
A. 同じ局面が繰り返される「千日手」が起きれば引き分け扱いになる場合があります。ただし盤が狭く決着がつきやすいため、実戦ではどちらかが勝つことがほとんどです。

まとめ|どうぶつしょうぎはシンプルで奥深い知育ゲーム

家族でボードゲームを楽しむ様子

どうぶつしょうぎは、4歳から遊べるやさしさと、完全解析されるほどの奥深さをあわせ持ったボードゲームです。

ルールは「交互に動かす・取った駒は持ち駒・ひよこは成る」の3つが基本。勝ち方は相手ライオンを取る「キャッチ」と、自分のライオンを敵陣最奥へ走らせる「トライ」の2つでした。

強くなるコツは、駒の紐づけを意識し、ライオンを大切に守ること。さらに2大戦法のゾウ冠とキリンの翼を覚えれば、対局はぐっと面白くなります。

完全解析の結論が「後手必勝」というめずらしさも、このゲームの魅力です。かわいい見た目にだまされず、ぜひ親子で頭を使う時間を楽しんでみてください。

まずは1局。負けても数分でやり直せるので、気づいたら何局も指しているはずですよ。

完全解析の詳しい研究内容は、以下の論文(東京大学)で公開されています。