レシートや海外旅行のメニュー、為替ニュースなどで見かける「¥」「$」「€」といったお金のマーク。これらは通貨記号(つうかきごう)と呼ばれ、世界中の通貨にそれぞれ固有のデザインが定められています。
見慣れた円記号やドル記号でも、「なぜこの形なのか」「線は1本なのか2本なのか」「インドやベトナムの通貨記号はどう読むのか」と聞かれると、意外と答えられないものです。
この記事では、世界の主要な通貨記号を一覧の早見表でまとめたうえで、円・ドル・ユーロ・ポンドといった主要通貨から、アジア・中東・仮想通貨の記号まで、それぞれの読み方・意味・由来をくわしく解説します。入力方法やクイズ、よくある質問もそろえました。

目次
通貨記号とは?お金のマークの基礎知識
通貨記号とは、通貨の単位を1文字(または数文字)の図形で表したマークのことです。英語では currency symbol と呼びます。金額の前後に添えることで、「これはお金の数字ですよ」「どの国の通貨ですよ」と一目で示す役割があります。
たとえば「100」と書くだけでは何の数字か分かりませんが、「$100」と書けばアメリカ・ドル、「€100」と書けばユーロだとすぐに分かります。これが通貨記号の便利なところです。
通貨を表す方法には、記号のほかに通貨コード(JPY・USD・EURなど3文字のアルファベット)もあります。記号は見た目で直感的に分かり、コードは正確で取り違えがないという、それぞれの長所があります。両者の違いは後半のFAQでくわしく説明します。
世界の通貨記号 一覧早見表【記号・通貨名・国・コード】

まずは世界の代表的な通貨記号を一覧でまとめました。読み方・主な国や地域・ISO 4217の通貨コードを並べてあります。気になる記号があれば、このあとの解説で由来をチェックしてみてください。
| 記号 | 通貨名(読み方) | 主な国・地域 | 通貨コード |
|---|---|---|---|
| ¥ | 円(えん)/元(げん) | 日本/中国 | JPY/CNY |
| $ | ドル/ペソ | アメリカ・カナダ・豪州ほか/メキシコほか | USD・CAD・AUDほか |
| € | ユーロ | EU加盟国ほか(ユーロ圏) | EUR |
| £ | ポンド | イギリス | GBP |
| ₩ | ウォン | 韓国 | KRW |
| ₹ | ルピー | インド | INR |
| ₽ | ルーブル | ロシア | RUB |
| ₺ | リラ | トルコ | TRY |
| ฿ | バーツ | タイ | THB |
| ₫ | ドン | ベトナム | VND |
| ₱ | ペソ | フィリピン | PHP |
| ₪ | シェケル | イスラエル | ILS |
| ₴ | フリヴニャ | ウクライナ | UAH |
| ₦ | ナイラ | ナイジェリア | NGN |
| ₡ | コロン | コスタリカ・エルサルバドル | CRC |
| ৳ | タカ | バングラデシュ | BDT |
| ₿ | ビットコイン | (暗号資産) | BTC・XBT |
| ¤ | 汎用通貨記号 | (通貨を特定しないとき) | なし |
こうして並べてみると、ドルマーク「$」のように縦線が入るものや、「₩」「₹」「₽」のように横線・斜線が入るものが多いことに気づきます。実は2本の線を引いて他の文字と区別するのは、通貨記号に共通するデザインの工夫なのです。次の章から、それぞれの由来を見ていきましょう。
主要4通貨の記号と由来(円・ドル・ユーロ・ポンド)

まずは日本人になじみ深い4つの通貨、円・ドル・ユーロ・ポンドの記号から。どれも一度は見たことがあるはずですが、その成り立ちにはそれぞれドラマがあります。
円・元 ¥(円記号)
日本円の「¥」は、近代的な円が誕生した明治時代にさかのぼります。1871年(明治4年)の新貨条例で、それまでバラバラだった通貨を「円」に統一したのが始まりです。
記号の形は、ローマ字で「円」を表す yen の頭文字「Y」に、横線を2本加えたものとされます。1870年代には欧米の文献にもこの「¥」が登場しており、当時すでに使われていた他の通貨記号にならって、線を足して「お金のマークらしさ」を出したと考えられています。
おもしろいのは、この「¥」が中国の人民元でも使われていることです。日本の「円」と中国の「元(圆)」は、どちらもおおもとは「丸い(円い)」という意味の同じ漢字に由来し、発音も日本語の「エン」、中国語の「ユアン」とつながっています。そのためラテン文字表記では同じ「¥」を共有しているのです。中国の人民元は1948年の発行時にこの記号を採用しました。区別したいときは中国元を「CN¥」や「RMB(人民幣)」と書きます。

ドル $(ドル記号)
世界で最も有名な通貨記号といえば、やはりドルの「$」でしょう。アメリカ・ドルだけでなく、カナダ・ドル、オーストラリア・ドル、さらにメキシコなどのペソでも使われる、いわば「お金のマークの代表選手」です。
由来として最も広く支持されているのは、スペインの銀貨「8レアル銀貨」(通称ピース・オブ・エイト、スパニッシュ・ダラー)に行き着く説です。この銀貨は1700年代のアメリカ大陸で広く流通した基軸通貨で、帳簿では「Ps」(peso/pesosの略)と書かれていました。商人たちが大量の取引を走り書きするうちに、「P」と「S」が重なり、Pの丸い部分が消えて縦線だけが残り、Sに縦線が貫く「$」の形になっていった、というわけです。
アメリカ独立を支援したアイルランド出身の商人オリバー・ポロックが、1778年の手紙でこの略記を「$」に近い形で使った例が知られています。活字として印刷物に登場するのは1790年代だとされます。なお「8(エイト=ピース・オブ・エイト)」の数字が変化したという俗説もありますが、ブリタニカは「文献的な裏づけに乏しい人気の説」と位置づけています。ちなみに「ドル」という名称自体は、ドイツ語圏の銀貨「ターラー(Thaler)」に由来します。
ユーロ €(ユーロ記号)
ヨーロッパ共通通貨ユーロの「€」は、4つの中でいちばん新しく、デザインの意図がはっきり分かっている記号です。1996年に欧州委員会が公募とデザインチームによって作成し、同年12月12日に発表しました。
形の元になったのは、ギリシャ文字のε(エプシロン)です。これはヨーロッパ文明のゆりかごであるギリシャへの敬意と、「Europe(ヨーロッパ)」の頭文字Eをかけたものです。そして横切る2本の平行線は、通貨としての「安定」を表しています。当初30案あったデザインを10案に絞り、世論調査を経て4人の専門家チームによる案が選ばれました(チームの氏名は公表されていません)。
ユーロの€がギリシャ文字から生まれたように、私たちが数学や物理で使う記号の多くもギリシャ文字がルーツです。記号の世界に興味がわいたら、以下の記事もどうぞ。
ポンド £(ポンド記号)
イギリス・ポンドの「£」は、ラテン語の「libra(リブラ)」の頭文字Lを装飾化したものです。libraは古代ローマで使われた重さの単位(天秤・はかりの意味)で、もともとポンドは銀の重さを基準にした通貨でした。横線は、数字と区別するために加えられたものです。
イングランド銀行博物館には、1661年1月7日付の小切手に「£」がはっきり読み取れる形で残っており、1694年の同行設立のころには広く使われていたことが分かります。記号「£」がコンピュータの文字コードに正式採用されたのは1985年のISO Latin-1規格でした。「スターリング(sterling)」や「クイッド(quid)」という呼び名でも知られます。
アジアの通貨記号と読み方(ウォン・ルピー・バーツほか)
アジアには個性的な通貨記号がそろっています。日本から近い国の通貨ほど、旅行や買い物で目にする機会も多いはずです。
ウォン ₩(韓国)
韓国ウォンの「₩」は、ローマ字「W」(won)に横線を2本加えたものです。ウォン(원)という名称は、円や元と同じく「丸い」を意味する漢字(圜・圓)に由来する、いわば兄弟のような通貨です。線を2本足して他の文字と区別するデザインは、¥や$と共通しています。
ルピー ₹(インド)
インド・ルピーの「₹」は、2010年に登場した比較的新しい記号です。財務省が国民から公募し、IITボンベイ出身のデザイナー、ウダヤ・クマール氏の案が選ばれ、2010年7月15日に発表されました。
デザインは、デーヴァナーガリー文字(ヒンディー語の文字)の「र(ラ)」とローマ字の「R」を組み合わせたもので、上部の2本の平行線はインド国旗の三色と「等号(=)」を連想させ、均衡のとれた経済を象徴しています。2010年10月にUnicode 6.0へ収録され、2011年からは紙幣にも使われるようになりました。それ以前は「₨」(Rs)という記号が使われていました。

バーツ ฿・ドン ₫・ペソ ₱(東南アジア)
タイ・バーツの「฿」は、タイ文字の要素を取り入れた記号です。ベトナム・ドンの「₫」は、ローマ字「d」(dong)に横線を加えたもの。フィリピン・ペソの「₱」は、「P」に2本の横線を通したデザインで、1903年にアメリカ統治下の行政命令第66号で定められました。米ドルの「$」やスペイン・ペセタと区別するために作られた記号です。
中東・ヨーロッパ・その他の通貨記号
世界にはまだまだユニークな通貨記号があります。その国の文字や歴史が反映されていて、見ているだけで世界一周をした気分になれます。
シェケル ₪(イスラエル)
イスラエルの新シェケルの「₪」は、ヘブライ文字を組み合わせた記号です。「シェケル(שקל)」の頭文字「ש(シン)」と、「新しい(חדש=ハダシュ)」の頭文字「ח(ヘット)」を合わせたもの。ヘブライ語は右から左に書くため、その並びで構成されています。新シェケルは1986年に、ハイパーインフレを起こした旧シェケルを1000分の1に切り下げて導入されました。
ルーブル ₽(ロシア)・リラ ₺(トルコ)
ロシア・ルーブルの「₽」は、キリル文字の「Р」に横線を1本加えた形です。2013年に国民投票が行われ、28万票以上のうち61%の支持を得てこの案が採用され、同年12月11日にロシア中央銀行が正式決定しました。
トルコ・リラの「₺」は、2012年に全国公募(8,362案の応募)で選ばれたデザイナー、トゥライ・ラレ氏の作品です。L字を「半分の錨(いかり)」の形にし、金融の「安全な避難先」を意味する錨で強さと信頼を、上向きの2本線で通貨と経済の上昇を表現しています。2012年3月1日に発表されました。
その他の通貨記号
ほかにも、ウクライナのフリヴニャ「₴」、ナイジェリアのナイラ「₦」、コスタリカやエルサルバドルのコロン「₡」、バングラデシュのタカ「৳」、カザフスタンのテンゲ「₸」など、世界には数多くの通貨記号があります。多くがローマ字や各国の文字に1〜2本の線を加えるという共通の発想でデザインされているのが分かります。
仮想通貨・汎用の通貨記号(ビットコイン₿・¤)
通貨記号は、現実のお金だけのものではありません。仮想通貨(暗号資産)や、「通貨を特定しないとき」のための記号も存在します。
ビットコイン ₿
暗号資産のビットコインにも、専用の記号「₿」があります。「B」に縦線を2本通したデザインで、考案したのはビットコインの生みの親とされる謎の人物サトシ・ナカモトです。初期のビットコインソフトでは「BC」と表記していましたが、他の通貨記号に似せた₿が作られました。2017年6月のUnicode 10.0(コードはU+20BF)で正式に文字として収録されています。
汎用通貨記号 ¤
あまり見かけませんが、「¤」という記号もあります。これは特定の通貨を指さない「汎用通貨記号」で、円の周りに4本の短い線が放射状に伸びた形から「スカラベ(フンコロガシ)」とも呼ばれます。1972年、コンピュータの文字コード(ASCIIの各国版であるISO 646)で、ドル記号「$」を置けない国のための代用枠として最初に採用されました。今でもソフトの設定などで「通貨記号一般」を表す場面で使われることがあります。
通貨記号の歴史と豆知識

通貨記号をいくつか見てきて、共通点に気づいたでしょうか。多くの記号が「アルファベットや各国文字の頭文字+1〜2本の線」という発想でできています。これは偶然ではありません。
線を加えるのは、ふつうの文字(YやLやP)と区別して「これはお金のマークだ」と示すための工夫です。¥がドルの$をお手本にしたように、新しい通貨記号は先輩の記号にならってデザインされてきました。その結果、世界の通貨記号は「線入りの頭文字」というよく似た見た目に落ち着いたのです。
もう一つの大切な仕組みが通貨コード(ISO 4217)です。これは国際標準化機構(ISO)が定めた3文字のアルファベットで、最初の2文字は国コード、最後の1文字は通貨名の頭文字でできています。たとえば日本円は JP(日本)+ Y(yen)で「JPY」、米ドルは US + D で「USD」、英ポンドは GB + P で「GBP」となります。為替や国際送金で「$」ではなく「USD」が使われるのは、ドルがアメリカ以外にもたくさんあって、記号だけでは区別できないからです。
記号を金額の前に置くか後ろに置くかも、国によって慣習が違います。英語圏では「$100」「£50」のように前に置くのが一般的ですが、ヨーロッパでは「100 €」のように後ろに置く国もあります。日本語では「100円」と単位を後ろに書きますが、「¥100」と前に置く書き方も併用されています。
通貨記号の入力方法(パソコン・スマホ・HTML)
パソコンやスマホで通貨記号を入力したいときの方法をまとめます。よく使う記号は読みから変換するのが手軽です。
- 日本語入力で変換:「えん」→¥、「どる」→$、「ぽんど」→£、「ゆーろ」→€ のように、読みを打って変換すれば多くの記号が出せます。
- WindowsのIME:「きごう」と打って変換candidateから探す方法も使えます。
- HTML(Webページ):¥(¥)、€(€)、£(£)、$($)といった文字実体参照で書けます。
- Unicode:€はU+20AC、£はU+00A3、¥はU+00A5、₹はU+20B9、₿はU+20BFなど、コードポイントから入力することもできます。
間違えやすいお金のマークと読み間違い注意
通貨記号には、見た目が似ていたり、1つの記号を複数の通貨が共有していたりして、取り違えやすいものがあります。代表的なものを押さえておきましょう。
- ¥(円と元):日本円と中国・人民元が同じ記号を使います。文脈で判断するか、中国元はCN¥やRMBと書いて区別します。
- $(多くのドルとペソ):米ドル・カナダドル・豪ドル・メキシコペソなど多数が共有。USD・CAD・AUD・MXNなどコードで区別します。
- £と₤:ポンド記号は線が1本(£)が標準ですが、2本の「₤」も歴史的に使われました。意味は同じです。
- ₹と₨:現在のインド・ルピーは「₹」ですが、古い表記「₨(Rs)」はパキスタンやスリランカなど他のルピー系通貨でも使われます。
- 半角¥と全角¥:「¥」(半角・U+00A5)と「¥」(全角・U+FFE5)は別の文字コードです。見た目はほぼ同じですが、システムによっては区別されます。

通貨記号クイズ【全6問】
ここまでの内容から、通貨記号にまつわるクイズを6問出題します。何問わかるか挑戦してみてください。
第1問:ユーロ記号「€」のデザインの元になったギリシャ文字は何でしょう?
第2問:ドル記号「$」の有力な由来とされる、1700年代に流通したスペインの銀貨の通称は?
第3問:日本円「¥」は、もう一つある国の通貨でも同じ記号が使われています。その通貨は?
第4問:ポンド記号「£」の由来になったラテン語「libra」の意味は?
第5問:インド・ルピーの記号「₹」が新しく作られて発表されたのは何年でしょう?
第6問:金額の通貨を特定しないときに使う、スカラベとも呼ばれる「汎用通貨記号」は?
お金のマークに関するよくある質問(FAQ)
Q. 通貨記号と通貨コード(JPYなど)はどう違うのですか?
A. 通貨記号(¥・$など)は見た目で直感的に分かるマークで、値札やレシートで使われます。通貨コード(JPY・USDなど)はISO 4217で定められた3文字の略号で、取り違えがないため為替・国際送金・会計で使われます。$は多くの国のドルやペソが共有しますが、コードなら米ドルUSD・豪ドルAUDと正確に区別できます。
Q. ドル記号の線は1本ですか、2本ですか?
A. どちらも正しいドル記号です。Unicodeでは1本線($)が標準ですが、2本線($)で表示するフォントもあります。意味の違いはありません。
Q. 日本のパソコンで「\」を打つと「¥」になるのはなぜ?
A. かつての日本語の文字コード(JIS)で、バックスラッシュ「\」の位置に円記号「¥」を割り当てていた名残です。同じ文字コードを別のフォントで表示すると、一方は「\」、もう一方は「¥」に見えます。故障ではありません。
Q. ユーロ記号は金額の前と後ろ、どちらに置きますか?
A. 国や言語によって異なります。英語表記では「€100」と前に置くことが多く、ドイツやフランスなどでは「100 €」と後ろに置く習慣もあります。どちらも誤りではありません。
Q. 通貨記号が「□」や「?」に文字化けするのはなぜ?
A. 表示に使っているフォントやシステムが、その記号(特に₹・₿など比較的新しい記号)に対応していない場合に起こります。対応したフォントや最新の環境では正しく表示されます。
まとめ:通貨記号は世界の歴史が詰まったお金のマーク
世界の通貨記号を、由来とあわせて見てきました。最後に要点を整理します。
通貨記号の多くは「アルファベットや各国文字の頭文字+1〜2本の線」でできており、線は普通の文字と区別するための工夫です。
円¥はYに、ポンド£はラテン語libraのLに、ドル$はスペイン銀貨の略記Psに由来します。ユーロ€はギリシャ文字ε、インド・ルピー₹は2010年の公募から生まれた新しい記号です。
正確にやり取りしたいときは、記号ではなく通貨コード(JPY・USD・EURなど)を使うのが安心です。¥が円と元、$が多くのドルとペソで共有されているように、記号だけでは取り違えが起きることもあるからです。
何気なく使っているお金のマークにも、それぞれの国の文字や歴史が刻まれています。海外旅行や為替ニュースで通貨記号を見かけたら、その由来をちょっと思い出してみてください。きっと世界が少し違って見えるはずです。


