運動会や体育祭の華といえば、やっぱり騎馬戦です。土ぼこりを上げながら馬と馬がぶつかり合い、騎手が相手の帽子やハチマキを奪い取るあの迫力は、見ている方まで思わず力が入ります。
でも、いざ自分のチームで戦うとなると「気合いだけで突っ込んで、あっさり崩されて負けた」という経験はありませんか。実は騎馬戦は、勢いやパワーだけでは勝てません。勝敗を分けているのは、騎馬の組み方と、ちょっとした立ち回りのコツなのです。
この記事では、騎馬戦の必勝法とコツを、騎馬の組み方・作戦・一騎打ちの立ち回りまで具体的に解説します。さらに、基本ルールと勝敗の決め方、明治時代の自由民権運動から生まれたという意外な歴史、そして「運動会で最も危険な競技」とも言われる事故のデータと安全対策まで、騎馬戦のすべてを一気にまとめました。

目次
騎馬戦とは?基本ルールと勝敗の決め方
まずは騎馬戦の基本ルールをおさらいしておきましょう。なんとなく「馬を作って帽子を取り合う競技」というイメージはあっても、勝敗の決め方が何通りもあることは意外と知られていません。
騎馬戦の基本ルール(4人1組の騎手と騎馬)
騎馬戦は、ふつう4人で1つの「騎馬」を作ります。1人が上に乗る騎手(きしゅ)、残りの3人が土台となる騎馬役です。2チームに分かれ、合図とともに相手の騎馬に攻め込み、騎手がかぶっている帽子やハチマキを奪うか、相手の騎馬を崩したら勝ち、というのが基本です。
帽子やハチマキを取られた騎馬、あるいは崩れて地面に足や手をついてしまった騎馬は、その時点で退場になります。騎手が落ちてしまった場合も同じく退場です。シンプルなようで、攻めと守りを同時に考えなければならない奥の深い競技です。
騎馬戦の勝敗の決め方は3パターン
騎馬戦の勝敗の決め方には、大きく分けて3つの方式があります。学校や運動会によって、どれを採用するかが変わります。
- 殲滅戦(せんめつせん):相手チームの騎馬をすべて倒した方が勝ちという、いちばんシンプルで激しい方式です。
- 時間制限戦:あらかじめ時間を決めておき、終了の合図のときに多く騎馬が残っていたチームの勝ちとする方式です。安全面から学校ではこの形が多く採られます。
- 川中島(かわなかじま)方式:各チームに1騎だけ「大将」を置き、相手の大将騎を先に倒した方が勝ちという方式です。武田信玄と上杉謙信の合戦「川中島の戦い」になぞらえた呼び名で、大将戦とも呼ばれます。
同じ騎馬戦でも、殲滅戦なら全騎が乱戦になり、川中島方式なら「いかに大将を守り、相手の大将を狙うか」という頭脳戦になります。どの方式かでとるべき作戦がガラリと変わるので、本番前に必ず確認しておきましょう。
騎馬戦でやってはいけない反則と安全ルール
迫力のある競技だからこそ、ケガを防ぐための禁止事項がしっかり決められています。代表的なものは次の3つです。
- 首より上(顔・頭・首)を攻撃しない
- 踏んだり蹴ったり、足を使って攻撃しない
- 髪の毛をつかまない
これらはどれも、後で解説する重大な事故を防ぐための大切なルールです。「相手の帽子・ハチマキだけを狙う」のが騎馬戦の鉄則だと覚えておきましょう。
騎馬戦の騎馬の組み方|4人・3人・2人の作り方とコツ

騎馬戦の強さは、土台となる騎馬の組み方でほぼ決まると言っても過言ではありません。まずは基本の4人の組み方から、人数が少ないときの組み方まで紹介します。
4人(騎手1人+騎馬3人)の基本の組み方
もっとも一般的なのが、騎手1人と騎馬役3人の4人編成です。騎馬役3人は、1人が前、2人が後ろという三角形に並びます。
前の1人と後ろの2人が向かい合い、後ろの2人はそれぞれ内側の手を前の人の肩にかけます。さらに後ろの2人が外側の手を組んで、その腕を「鞍(くら)」のようにして騎手を乗せます。前の人は後ろの2人の腕を支え、騎手は前の人の肩に手を置いてバランスを取ります。三角形にすることで、前後左右どの方向から押されても崩れにくい安定した土台になります。
3人・2人での簡易的な組み方
人数が少ないときや、遊びで行うときは、3人や2人でも騎馬を作れます。3人なら騎馬役2人が向かい合って腕を組み、その上に騎手が乗ります。2人なら肩車(かたぐるま)の形が手軽です。
ただし人数が減るほど土台は不安定になり、崩れやすく危険も増します。本格的に競技として行うなら、やはり4人編成がもっともバランスが良いでしょう。
崩れない騎馬を作る3つのコツ
同じ4人でも、組み方ひとつで安定感はまるで違います。崩れにくい騎馬を作るコツは次の3つです。
- 腕はしっかり組んで固定する:騎馬役同士の腕の組みが甘いと、押された瞬間に鞍がほどけて騎手が落ちます。手首をつかみ合うくらいの気持ちで固めましょう。
- 重心を低く保つ:3人ともやや腰を落とし、低い姿勢で構えると、相手に押されても踏ん張りがききます。
- 騎手は前のめりにならない:騎手が攻めたい一心で前に体重をかけすぎると、騎馬ごと前へ倒れます。攻めるとき以外は背すじを保ち、土台に体重を預けすぎないのがコツです。

騎馬戦の必勝法とコツ|勝てる作戦と立ち回りを徹底解説

ここからが本題、騎馬戦の必勝法です。やみくもに突っ込むのではなく、理屈で攻めれば、体格やパワーで多少劣っていても勝てます。実際に効く5つのコツを紹介します。
コツ1. 「足の速い騎馬」と「背の高い騎馬」を作り分ける
チームに複数の騎馬がいるなら、役割を分けるのが定石です。足の速いメンバーで組んだ騎馬は、すばやく動いて相手をかく乱したり、囲い込んだりする役。背の高いメンバーで組んだ騎馬は、上からの攻撃で相手の帽子を奪う役です。
全部の騎馬が同じ動きをするより、「かく乱役」と「とどめ役」に分かれた方が、チーム全体としてずっと戦いやすくなります。
コツ2. 「上を取れる方」が圧倒的に有利
騎馬戦には「上から攻撃できる方が有利」という大原則があります。相手より高い位置に騎手がいれば、上から押さえつけるように帽子へ手を伸ばせて、こちらは攻撃されにくいからです。
だからこそ背の高い騎馬が強く、一騎打ちでも「いかに自分が上を取るか」が勝負を分けます。相手より低くなってしまったら、無理に手を伸ばさず、いったん引いて体勢を立て直しましょう。
コツ3. 崩すのは「騎手」ではなく「騎馬役」
多くの人がやりがちな失敗が、騎手が相手を引っ張って崩そうとすることです。これは自分の体勢まで崩れて逆効果になりがちです。
相手の騎馬を崩したいときは、土台である騎馬役が相手の騎馬を肩で押し込むのが効果的です。騎手は帽子・ハチマキを奪うことに専念し、崩しは騎馬役にまかせる。この分業が勝率を大きく上げます。
コツ4. 役割分担と声かけでチームを連携させる
騎馬戦は1騎では戦えません。騎馬の中で「進む方向を指示する人」「周りの敵に注意する人」と役割を決めておくと、4人がひとつの生き物のように動けます。
さらに味方の騎馬同士で連携し、孤立した相手の騎馬を2騎・3騎で囲んで攻めれば、数の有利でほぼ確実に倒せます。「あの馬を囲め」「右から来てる」と声をかけ続けることが、何よりの武器になります。
コツ5. 一騎打ちの必勝法
一対一の一騎打ちになったら、まず自分の騎馬を安定させ、相手より上を取ることを最優先にします。そのうえで、相手の利き手と反対側に回り込むと、相手は奪いに来づらく、こちらは奪いやすくなります。
力比べに持ち込むより、左右に細かく動いて相手の体勢が崩れた一瞬を突くのがコツです。あせって手を伸ばしすぎると、自分から落ちてしまうので注意しましょう。

同じように、勝ち方を理屈で攻めるのが面白い競技として、綱引きの必勝法もあわせて読むと運動会がもっと楽しくなります。
乱戦・一騎打ち・大将戦|競技形式のバリエーション
ひとくちに騎馬戦と言っても、戦い方の形式にはいくつかの種類があります。形式が変われば、必要な作戦も変わります。
乱戦型(らんせんがた)
複数の騎馬が同時にフィールドへ出て、自由に動き回りながら戦う、もっとも一般的でにぎやかな形式です。あちこちでぶつかり合いが起き、迫力は満点ですが、その分だけ予期せぬ接触も増えます。味方同士の連携と、周囲への注意がとても重要になります。
一騎打ち(いっきうち)
1騎ずつ順番に出て、一対一で勝負する形式です。乱戦型に比べて周りからの不意打ちがないぶん、危険性は低めです。純粋に騎馬同士の技術と力がぶつかる、見ごたえのある形式です。
川中島方式(大将戦)と水中騎馬戦
前にも触れた川中島方式は、大将騎を守りながら相手の大将を狙う頭脳戦です。守りの騎馬と攻めの騎馬の配置がそのまま勝敗に直結します。
このほか、プールの中で行う「水中騎馬戦」もあります。水の浮力で転んでもケガをしにくい一方、足がつかない深さでは溺れる危険があるため、水深の管理や監視がとても大切になります。
騎馬戦の歴史と由来|運動会で行われるようになったのはいつから?

今では運動会の定番になっている騎馬戦ですが、その始まりをたどると、意外なほど政治的な歴史にぶつかります。
武者の合戦がモチーフ
騎馬戦という競技そのものは、馬に乗った武士(騎馬武者)同士が戦った、昔の合戦がモチーフだと言われています。「川中島方式」という呼び名に戦国武将の名が出てくるのも、その名残です。土台の人間を馬に見立て、上の人が大将というわけです。
明治の自由民権運動が生んだ「政権争奪騎馬戦」
運動会の競技としての騎馬戦の原型は、明治時代の自由民権運動のなかで生まれたという説があります。当時、言論を厳しく取り締まられた自由民権運動の活動家(壮士)たちは、自分たちの主張を訴える場として「壮士運動会」を開きました。
そこで行われたのが「政権争奪騎馬戦」と「圧政棒倒し」という競技だったと言われています。政権争奪騎馬戦は、誰が政治の主導権を握るかの争いを表現したもの。圧政棒倒しは、今の政府を倒すことを象徴したものでした。これらが、現在の運動会で行われる騎馬戦や棒倒しの原型になったとされています。
そもそも日本の運動会自体、イギリス海軍から伝わったアスレチックスポーツ(競闘遊戯)が起源と言われています。明治以降に学校行事として全国へ広まる過程で、騎馬戦も体育的な種目として定着していきました。スポーツの形を借りて政治的な主張を込めていた競技が、今では子どもたちの花形競技になっているというのは、なんとも面白い歴史です。

騎馬戦は危険?事故のデータと安全に行うための対策
迫力ある騎馬戦ですが、一方で「運動会で最も危険な競技のひとつ」とも言われます。実際、棒倒しと並んで重大な事故が起きやすい種目です。ここは少しまじめに、データをもとに見ていきましょう。
事故は「騎手」に集中している
文部科学省の「学校における体育活動中の事故防止について(報告書)」などによると、騎馬戦の事故は圧倒的に騎手に集中しています。けがをした人のうち騎手が占める割合は、小学校で約5割、中学校で約7割、高校(高等専門学校を含む)で約6割にのぼるとされています。
事故の中身でいちばん多いのが「騎手が騎馬から落ちる」こと、次に多いのが「騎手同士の接触」です。高い位置にいる騎手が頭や首から落ちると、大きなケガにつながりやすいのです。
2億円の賠償命令となった重大事故
騎馬戦の危険性を象徴する事故が、2003年に起きています。福岡県の県立高校の体育祭で、騎手として参加した3年生の男子生徒が落下し、首の骨を折って、首から下にまひが残る重い後遺症を負いました。
裁判では、学校側の安全配慮義務違反が認められ、福岡県におよそ2億円の賠償を命じる判決が出ました。特に問題とされたのが、危険な騎馬戦であるにもかかわらず、ほとんど練習をしない「ぶっつけ本番」に近い状態で行われていたことと、勝敗を決めるときのルールや審判の配置が不十分だったことでした。
「ぶっつけ本番」が事故を招く
専門家の指摘によると、騎馬戦はそのほとんどが練習なしの「ぶっつけ本番」か、それに近い形で行われているといいます。先ほどの事故でも、事前に騎馬を組む練習をしたのは代表の生徒だけで、大半の生徒は本番まで一度も騎馬を組んだことがなかったとされています。
組体操の重大事故が練習中にも起きるのに対し、騎馬戦の重大事故はそのほとんどが本番中に集中しているというデータもあります。これは、騎馬戦が「ぶっつけ本番」で行われがちなことの裏返しだと考えられています。
騎馬戦を安全に行うための対策
こうした事故を防ぐために、押さえておきたい対策をまとめます。楽しく盛り上がるためにも、安全はいちばん大切です。
- 必ず事前に騎馬を組む練習をする:全員が本番前に組み方と崩れ方を体で覚えておくことが、最大の事故防止策です。
- 騎手の落下に備える:周りの騎馬役がとっさに受け止められるよう意識し、必要に応じてマットなどを準備します。
- 禁止事項を徹底し、審判を十分に置く:首より上への攻撃や足での攻撃を禁じ、危険な場面ですぐ止められるよう審判を多く配置します。
- 体格差の出る組み合わせを避ける:学年が大きく違うチームを混ぜると体格差で事故が増えるため、東京都教育委員会などは学年混合戦を抑えるよう通達を出しています。
腕試しクイズ5問|ルール・歴史・雑学に挑戦
ここまでの内容のおさらいに、騎馬戦クイズに挑戦してみましょう。答えはそれぞれの下にあります。
第1問:騎馬戦は基本、何人で1つの騎馬を作る?
運動会でおなじみの基本の人数です。
第2問:相手の「大将」を倒した方が勝ちになる形式の名前は?
戦国時代の有名な合戦にちなんだ呼び名です。
第3問:騎馬戦の事故が最も多いのは、騎手と騎馬役のどっち?
高い位置にいる人ほど危険、というヒントです。
第4問:相手の騎馬を「崩す」とき、押すのは騎手?騎馬役?
必勝法のコツ3で解説した分業がヒントです。
第5問:明治時代、自由民権運動で生まれた騎馬戦の原型の名前は?
政治的な主張が込められた、ちょっと物騒な名前です。
よくある質問【Q&A】
最後に、騎馬戦についてよく聞かれる質問にまとめて答えます。
Q. 騎馬戦は何人で行いますか?
基本は1つの騎馬を4人(騎手1人+騎馬役3人)で作ります。人数が少ないときは3人や2人でも組めますが、安定性と安全性を考えると4人編成がもっともおすすめです。
Q. 騎馬戦で勝ついちばんのコツは?
「上を取ること」と「分業」です。背の高い騎馬で相手より高い位置から帽子を狙い、崩すのは騎馬役、奪うのは騎手と役割を分けます。さらに味方で孤立した相手を囲めば、数の有利でほぼ勝てます。
Q. 騎馬戦はなぜ危険と言われるのですか?
高い位置にいる騎手が落下し、頭や首を打つと重大なケガにつながるからです。事故の多くが練習不足の「ぶっつけ本番」で起きており、過去には2億円の賠償命令が出た事故もあります。事前の練習と安全ルールの徹底が欠かせません。
Q. 騎馬戦と棒倒しはどちらが危険ですか?
どちらも運動会で最も危険な部類とされています。騎馬戦は騎手の落下、棒倒しは大勢が密集して転倒・将棋倒しになるリスクが大きいのが特徴です。いずれも十分な練習と安全配慮が必要です。
まとめ|迫力ある騎馬戦を、安全に楽しむために
騎馬戦で勝つために本当に大切なのは、勢いやパワーではなく「崩れない騎馬を作ること」と「上を取って役割分担で攻めること」でした。
崩すのは騎馬役、奪うのは騎手。足の速い騎馬と背の高い騎馬を作り分け、孤立した相手を味方で囲む。この基本を押さえるだけで、同じメンバーでも見違えるほど強いチームになります。
さらに、運動会の騎馬戦が明治の自由民権運動から生まれたかもしれないという歴史を知ると、あの競技がぐっと味わい深く見えてきます。
その一方で、騎馬戦は騎手の落下による重大な事故が起きやすい競技でもあります。必ず事前に練習し、禁止事項を守り、無理をさせないこと。迫力ある騎馬戦を全力で楽しむためにこそ、安全への配慮を忘れないようにしましょう。


