サイコロを振って自分の駒を進め、相手より早く全部をゴールさせる。一見すると、すごろくのようなシンプルなゲームに見えるかもしれません。
しかしバックギャモンは、約5000年の歴史を持つ「世界最古のボードゲーム」のひとつでありながら、運と実力が高度に噛み合う奥深い頭脳ゲームです。世界中に数億人のプレイヤーがいて、モナコのモンテカルロでは毎年のように世界選手権が開かれています。
この記事では、バックギャモンのルールと遊び方を初心者向けにかみ砕いて解説し、そのうえで勝率を上げる必勝法とコツ、5000年の歴史や日本の盤双六(ばんすごろく)との関係、世界各国の似たゲームまでをまとめて紹介します。

目次
バックギャモンとは?世界最古とも言われるボードゲーム

バックギャモンは、2人で対戦するボードゲームです。プレイヤーはそれぞれ15個の駒(チェッカーやマンと呼びます)を持ち、サイコロの出目にしたがって駒を進め、自分の駒を相手より早く全部ゴールさせた方が勝ちになります。
盤の上には24個の三角形が並んでいて、これを「ポイント」と呼びます。盤の中央には「バー」と呼ばれる仕切りがあり、盤はそれぞれのプレイヤーの陣地に分かれています。自分の駒を最後に集めるゴール側の6ポイントを「インナーボード(ホームボード)」と言います。
大切なのは、2人の駒は盤上をそれぞれ反対向きに進むという点です。お互いがゴールを目指してすれ違いながら進むため、途中で相手の駒とぶつかり合う駆け引きが生まれます。ここがバックギャモンを「ただのすごろく」で終わらせない最大のポイントです。
ルールそのものは難しくありません。基本だけなら10分ほどで覚えられます。それでいて、勝つためには確率の読みや大局観が問われます。この「入りやすく極めにくい」バランスこそが、5000年も遊ばれ続けてきた理由なのです。
バックギャモンのルールと遊び方を初心者向けに徹底解説

ここからはバックギャモンの基本ルールを、順番に見ていきましょう。準備するものは、専用のバックギャモン盤、15個ずつの駒、2個のサイコロ、そしてダイスを振るための筒(ダイスカップ)です。
駒の動かし方とサイコロの使い方
自分の番が来たら、2個のサイコロを同時に振ります。出た2つの目の数だけ、駒を進めることができます。たとえば「3」と「5」が出たら、1つの駒を3ポイント進めてもう1つの駒を5ポイント進めてもよいですし、1つの駒を3+5で合計8ポイント動かしても構いません。
ゾロ目(同じ目が2つ=ダブル)が出たときは特別です。その目を4回使えます。たとえば「6」のゾロ目なら、6ポイントの移動を4回、合計24ポイントぶん動かせるので、一気に形勢を変えられます。ゾロ目をうまく引けるかどうかも、勝負の大きな分かれ目になります。
ヒットとブロック(相手をふりだしに戻すルール)
相手の駒が1個だけ置かれているポイントを「ブロット」と呼びます。このブロットに自分の駒を進めると、相手の駒を「ヒット」できます。ヒットされた相手の駒は、盤中央のバーに乗せられ、振り出しまで戻されてしまいます。
逆に、自分の駒が2個以上あるポイントには、相手は入ってくることができません。これを「ブロック(ポイントを作る)」と言います。ブロックを横に6つ連続で並べると「プライム」となり、相手の駒は壁を越えられず、完全に足止めされます。
バーに戻された駒は、相手のインナーボードから再び盤に入れ直さなければなりません。これを「エンター」と言い、エンターが終わるまでは他の駒を動かせません。ヒットされると大きく時間をロスするので、ブロットを作らない打ち回しが勝敗を分けます。
ベアオフ(上がり方)と勝ち点の数え方
自分の15個の駒をすべてインナーボードに集めると、いよいよ駒を盤の外に取り出せます。これを「ベアオフ」と言い、すべての駒を先に取り出した方が勝ちです。
勝ち方には3段階あり、得点が変わります。相手も駒を取り出せている状態での通常の勝ちは「シングル(1点)」です。相手が1個もベアオフできていないうちに勝てば「ギャモン(2点)」、さらに相手の駒が自分のインナーボードかバーに残ったまま勝てば「バックギャモン(3点)」となり、ゲーム名の由来にもなった最大の勝ちです。
ダブリングキューブ(賭け点を倍にする駆け引き)
バックギャモンを一気に戦略ゲームへ引き上げているのが「ダブリングキューブ」です。これは1から64(2・4・8・16・32・64)の数字が書かれた大きなサイコロ型の道具で、ゲームの賭け点(得点の倍率)を管理します。
自分が有利だと感じたら、相手に「ダブル」を提案できます。提案された側は、受けるか降りるかを選びます。受ければ賭け点は2倍になり、以降ダブルを提案する権利は受けた側に移ります。降りれば、その時点の賭け点を失ってそのゲームは終了です。
このキューブがあるおかげで、有利な側がどこまで攻めるか、不利な側がどこで引くか、という心理戦が生まれます。実はこのダブリングキューブは1920年代のアメリカで発明された比較的新しい仕掛けで、これによってバックギャモンの人気が再燃したと言われています。

バックギャモンの必勝法とコツ・戦略を解説

バックギャモンは運の要素もありますが、長い目で見れば実力が確実に出るゲームです。ここでは勝率を上げるための代表的な戦略と、初心者がまず意識したいコツを紹介します。
5つの基本戦型を覚える
バックギャモンには、盤面の状況に応じた代表的な戦い方が5つあります。自分がどの戦型で勝ちにいくのかを意識するだけで、打ち方が一段とハッキリします。
「ランニングゲーム」は、ぶつかり合いを避けてとにかく駒を速く進める競争型です。後述のピップ数で自分がリードしているときに有効です。「ホールディングゲーム」は、相手の陣地に拠点(アンカー)を確保したまま、相手がブロットをさらすのを待ってヒットを狙う型です。
「プライミングゲーム」は、連続したポイントの壁(プライム)を築いて相手を閉じ込める型です。「バックゲーム」は、相手陣に複数の拠点を残しておき、終盤のヒットで一発逆転を狙う上級者向けの型です。「ブリッツ」は、相手をヒットして相手のインナーボードを一気に閉じ、再進入させずに攻め切る速攻型です。
初心者がまず守りたい3つのコツ
まず意識したいのは「不要なブロットを作らない」ことです。1個だけの駒はヒットの的になります。とくにゴール近くでヒットされると、振り出しまで一気に戻されてダメージが甚大です。
次に「アンカーを確保する」ことです。相手の陣地に2個以上の拠点を持っておくと、こちらの駒がヒットされてバーから戻るときの安全地帯になり、終盤の逆転のチャンスも残せます。
3つめは「序盤に自分のインナーボードを固める」ことです。ゴール付近に2個以上のブロックを複数作っておくと、相手の駒をヒットしたときに再進入を妨げられ、有利な展開に持ち込めます。
ピップカウントとダブリングキューブの判断
実力者が必ず使うのが「ピップカウント」です。これは、自分の全15駒がゴールするまでに必要なサイコロの目の合計を数えたもので、この数字が相手より少ないほどレースで有利という指標になります。ピップ数を数えると、攻めるべきか逃げ切るべきかが客観的に判断できます。
そしてダブリングキューブの使いどころです。一般に、自分の勝率がおよそ70%を超えたあたりがダブルを提案する目安とされます。逆に提案された側は、勝率がおよそ25%以上あれば受けたほうが長期的に得だと言われています。この「25%ライン」は、降りて確実に1点失うより、受けて勝負した方が期待値で勝るという確率論にもとづいた考え方です。

バックギャモンの歴史と起源(5000年の世界最古ゲーム)
バックギャモンの祖先は、なんと5000年以上前までさかのぼると言われています。ただし、その起源には誤解されがちな俗説もあるので、順を追って正確に整理しておきましょう。
よく「古代エジプトのセネトがバックギャモンの起源」と紹介されます。セネトは紀元前3500年頃にエジプトで遊ばれた10マス3列の盤上遊戯で、ツタンカーメンの墓からも盤が見つかっています。ただし、セネトは現代のバックギャモンとは見た目もルールも大きく異なるため、「直接の原型」と言い切るのは正確ではありません。
バックギャモンに似た形がはっきり現れるのは古代ローマです。ローマでは「ドゥオデキム・スクリプタ(12のマス目という意味)」という12マス3列のゲームが流行しました。これが5世紀ごろに12マス2列へと姿を変えて「タブラ」と呼ばれ、中世ヨーロッパで広く遊ばれるようになります。これが現代バックギャモンの直接の先祖です。
一方、同じ系統のゲームは中近東では「ナルド」の名で広まりました。2004年には古代イランのシャフリ・ソフタ(「焼けた街」という意味の遺跡)から、紀元前3000年頃のバックギャモンによく似た盤とサイコロ・駒が発掘され、世界最古級のボードゲームとして注目を集めました。
バックギャモンと日本の盤双六(飛鳥時代の伝来と禁止令)
実はこのゲーム、はるか昔に日本にも伝わっていました。それが「盤双六(ばんすごろく)」です。私たちが正月に遊ぶ絵双六(紙のすごろく)とは別物で、盤双六はまさにバックギャモンとほぼ同じルールのゲームでした。
盤双六は6世紀ごろに大陸から日本へ伝わったとされ、貴族の間で大流行しました。『万葉集』や『源氏物語』にも登場し、奈良の正倉院には当時の豪華な双六盤が今も保管されています。
ところが、この盤双六はサイコロを使う性質上、賭博(ギャンブル)の道具として広まってしまいます。そのため朝廷はたびたび禁止令を出しました。『日本書紀』によれば、689年(持統3年)には「雙六を禁断す」という記録が残り、これは日本の法令による賭博禁止の最初期の例とされています。754年(天平勝宝6年)にも孝謙天皇が双六を禁じています。
つまり、世界最古級のゲームが1400年近くも前から日本人を熱中させ、しかも国が禁止令を出すほどのめり込ませていたわけです。バックギャモンと聞くと西洋のゲームという印象がありますが、その正体は私たちにとっても意外と身近な「ご先祖さま」だったのです。

名前の由来と世界各国の似たゲーム
「バックギャモン(backgammon)」という名前は、1650年頃のイギリスで定着したとされます。語源には諸説ありますが、有力なのは「back(後ろ)」と「gamen(中英語でgame=ゲームの古い形)」を組み合わせたという説です。ヒットされた駒が後ろ(振り出し)へ戻されることに由来する、と考えると覚えやすいでしょう。
同じ系統のゲームは、世界中でそれぞれの名前で親しまれてきました。主なものを見てみましょう。
中近東やロシアでは「ナルド」、古代ローマやビザンツでは「タブラ」と呼ばれました。フランスでは「トリックトラック」、ドイツでは「プッフ」、ギリシャでは「プラコト」という派生ルールが有名です。アメリカ海軍では「エーシードゥーシー」という独自ルールが親しまれてきました。
名前もルールも少しずつ違いますが、「サイコロを振って自分の駒をゴールへ運ぶ」という骨格は共通しています。地域ごとに独自進化したご当地版がこれほど多いのも、バックギャモンが世界中で愛されてきた証拠と言えます。
腕だめしクイズ5問に挑戦
ここまでの知識をクイズでおさらいしてみましょう。答えはそれぞれの下に隠してあります。何問わかるでしょうか。
第1問:バックギャモンで、各プレイヤーが使う駒の数は何個でしょう?
第2問:サイコロでゾロ目(ダブル)が出たとき、その目を何回使えるでしょう?
第3問:相手の駒が1個だけのポイントに進んで、相手を振り出しに戻すことを何と言うでしょう?
第4問:賭け点を倍にする提案に使う、1〜64の数字が書かれた道具の名前は?
第5問:バックギャモンの祖先が古代の日本に伝わったとき、何という名前で呼ばれたでしょう?
バックギャモンのよくある質問(FAQ)
Q1. バックギャモンは何人で遊ぶゲームですか?
基本は2人対戦のゲームです。3人以上で遊ぶ「チャウター」という勝ち抜き形式もありますが、まずは1対1で基本ルールを覚えるのがおすすめです。
Q2. 運のゲームですか、それとも実力のゲームですか?
その両方です。1ゲームだけならサイコロの運で初心者が勝つこともありますが、何度も対戦すると確実に実力が出ます。とくにダブリングキューブの判断が勝率に直結するため、上級者ほど安定して勝てるゲームです。
Q3. 初心者でもすぐに覚えられますか?
基本ルールだけなら10分ほどで覚えられます。駒の動かし方とヒット・ブロックさえ理解すれば、すぐに対戦を楽しめます。そのうえで戦型やピップカウントを覚えていくと、どんどん奥深くなっていきます。
Q4. すごろくと何が違うのですか?
サイコロで駒を進める点はすごろくと同じで、実際にバックギャモンは「すごろくの一種」です。ただし、相手をヒットして振り出しに戻す、壁(プライム)で足止めする、ダブリングキューブで賭け点を操作する、といった要素があり、戦略性は段違いに高くなっています。
Q5. どこで遊べますか?道具がなくても試せますか?
専用の盤が手軽な値段で売られているほか、スマートフォンの無料アプリでも気軽に対戦できます。ニンテンドースイッチの「世界のアソビ大全51」にも収録されているので、まずはそこで試してみるのもおすすめです。
まとめ:運と実力が噛み合う世界最古の頭脳ゲーム
バックギャモンは、サイコロの運と緻密な戦略が高度に噛み合う、奥深いボードゲームです。基本ルールは10分で覚えられるのに、ピップカウントやダブリングキューブを使いこなすほどに勝率が上がっていきます。
その歴史は5000年を超え、古代ローマのタブラやペルシャのナルドを経て世界へ広まりました。日本にも「盤双六」として古くから伝わり、国が禁止令を出すほど人々を夢中にさせてきた、由緒あるゲームでもあります。
運だけでも実力だけでもない、その絶妙なバランスをぜひ盤の上で体感してみてください。一度ヒットの応酬やダブルの駆け引きを味わえば、なぜ5000年も遊ばれ続けてきたのかがきっと分かるはずです。
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