アルプス一万尺の歌詞の意味とは?小槍の謎・29番まである全歌詞・原曲や手遊びのやり方まで徹底解説

「アルプス一万尺 小槍(こやり)の上で アルペン踊りを さあ 踊りましょ」。

子どものころ、友だちと手を合わせて歌ったアルプス一万尺。誰もが一度は口ずさんだ手遊び歌ですが、いざ「一万尺って何メートル?」「小槍ってどこ?」「そもそもアルプスって日本の山なの?」と聞かれると、意外とすらすら答えられないものです。

じつはこの歌、原曲はアメリカの民謡で、歌詞は29番まであるといわれ、舞台は登るのも命がけの北アルプスのとがった岩の上だったりします。歌の一つひとつの言葉に、山への強いあこがれが詰まっているのです。

この記事ではアルプス一万尺の歌詞の意味を、小槍・一万尺・アルペン踊りといったキーワードから、原曲の正体、作詞をめぐる諸説、29番まで増えた替え歌、そして手遊びのやり方まで、まるごと徹底解説します。

歌えるけれど意味はノーマーク、という人が本当に多い曲です。読み終わるころには、山好きにちょっと自慢できる雑学が身についていますよ。

アルプス一万尺とは?アメリカ民謡がもとになった手遊び歌

槍ヶ岳の鋭くとがった山頂と槍ヶ岳山荘

青空に槍の穂先を突き上げる槍ヶ岳。アルプス一万尺の舞台は、この山の頂上付近です。

アルプス一万尺は、二人組で手を合わせて遊ぶ手遊び歌として、全国の保育園・幼稚園や小学校で親しまれてきた曲です。「せっせっせーのよいよいよい」の掛け声で始め、歌に合わせて手をたたき合うあの遊びといえば、すぐに思い出せる人も多いでしょう。

メロディの正体は、アメリカ民謡「ヤンキードゥードル(Yankee Doodle)」です。この明るく行進曲のようなメロディに、日本語の歌詞をのせたものがアルプス一万尺なのです。

ここでいう「アルプス」は、ヨーロッパのアルプス山脈ではありません。長野県や岐阜県にまたがる日本アルプス、とくに北アルプスの槍ヶ岳を指しています。つまりこの歌は、日本の高い山の頂上で踊ろう、と歌う「山の歌」なのです。

ざっくり言うと
アルプス一万尺=アメリカ民謡「ヤンキードゥードル」+日本語の山の歌詞。舞台は北アルプスの槍ヶ岳。手を合わせて遊ぶ手遊び歌として広まりました。

アルプス一万尺の歌詞(1番)をふりがな付きで紹介

まずは、いちばん有名な1番の歌詞を確認しておきましょう。地域や本によって細かい違いはありますが、広く歌われているのは次の形です。

アルプス一万尺(いちまんじゃく)
小槍(こやり)の上(うえ)で
アルペン踊(おど)りを
さあ 踊(おど)りましょ

ラン ラン ラン……(ヘイ!)
ランラララ ランラララ ランラララ ラーンラン

歌詞そのものはとても短く、「ランラララ」というかけ声のような繰り返しが続きます。この短さこそが、二人で手を合わせてテンポよく遊ぶのにぴったりなのです。

そして注目すべきは、たった数行の中に「一万尺」「小槍」「アルペン踊り」という、意味を知らずに歌っている言葉が3つも詰まっている点です。次の章で一つずつ読み解いていきます。

アルプス一万尺の歌詞の意味を徹底解説

アルプス一万尺の歌詞は短いのに、山の知識がぎゅっと凝縮されています。キーワードごとに意味を見ていきましょう。

「一万尺」の意味は約3030メートル

「一万尺(いちまんじゃく)」の「尺(しゃく)」は、日本で古くから使われてきた長さの単位です。建築などで使う曲尺(かねじゃく)では、1尺は約30.3センチメートルにあたります。

つまり一万尺は、30.3センチ×10000=約3030メートル。これは日本アルプスの高い峰々のスケールを表した数字で、標高3000メートル級の稜線をイメージすると分かりやすいでしょう。

ちなみに槍ヶ岳の標高は3180メートルなので、一万尺(3030メートル)はぴったり頂上というより、頂上のすぐ下あたりの高さになります。この「3030メートル」が、次に出てくる小槍の高さと深く関わってきます。

「小槍」の意味は槍ヶ岳にある実在の岩(子ヤギではない)

朝日に照らされる槍ヶ岳の山頂と、そのわきに連なる小さな岩峰

朝日に染まる槍ヶ岳。主峰の大槍のわきに、小さくとがった岩がいくつも連なっているのが見えます。

「小槍(こやり)」は、歌の中でいちばん誤解されやすい言葉です。子どものころ「子ヤギの上で?」と勘違いしていた人も多いのではないでしょうか。実際には動物のヤギとはまったく関係がなく、槍ヶ岳の山頂近くにある実在の岩の名前です。

槍ヶ岳の頂上は「大槍(おおやり)」と呼ばれ、そのすぐ西側に、小槍・孫槍(まごやり)・曽孫槍(ひこやり)と、少しずつ小さな岩の峰が連なっています。小槍の高さはおよそ3030メートルとされ、まさに「一万尺」に対応します。

ポイントは、この小槍がロッククライミングの技術がなければ登れない、切り立った岩だということです。一般の登山者は、大槍(頂上)まではハシゴやクサリを使って登れても、小槍の上にはまず立てません。だからこそ、次の「アルペン踊り」がとんでもない話になるのです。

「アルペン踊りを踊りましょ」の意味は壮大なユーモア

「アルペン」は「アルプスの」という意味の言葉(ドイツ語のAlpenなどに由来)で、「アルペン踊り」はおおよそ「アルプス風の踊り」といったニュアンスの造語です。厳密な決まった踊りがあるわけではありません。

ここで前の章を思い出してください。小槍は、クライマーでなければ立つことすら難しい、とがった岩のてっぺんです。その上で踊りましょう、というのですから、これは現実にはほぼ不可能な、途方もなくスケールの大きい冗談なのです。

登るだけで精一杯の岩の上で、軽やかに踊ろうと歌う。この突き抜けた明るさとホラ話のような楽しさこそ、アルプス一万尺が長く愛されてきた理由の一つといえるでしょう。

「登れない岩の上で踊ろうぜ」という、山男らしい豪快な冗談。意味を知ると歌の見え方が変わりますよね。

「アルプス」はどこの山?槍ヶ岳と北アルプスの地理

歌の舞台をもう少し詳しく知っておくと、アルプス一万尺はぐっと面白くなります。主役である槍ヶ岳の基本データを押さえておきましょう。

槍ヶ岳は標高3180メートル・日本で5番目に高い山

槍ヶ岳(やりがたけ)は、長野県(松本市・大町市)と岐阜県(高山市)の境にそびえる、標高3180メートルの山です。これは日本国内で5番目に高い標高で、日本百名山にも選ばれています。

位置づけとしては、飛騨山脈、いわゆる北アルプスの南部にあり、一帯は中部山岳国立公園に指定されています。天を突く槍の穂先のような鋭い姿から、単に「槍」とも呼ばれ、多くの登山者があこがれる名峰です。

宗教的な初登頂は、1828年(文政11年)に僧の播隆上人(ばんりゅうしょうにん)が果たし、山を開いたと伝えられています。険しい岩の山でありながら、古くから人々を引きつけてきた歴史があるのです。

富士山や北岳など、名だたる高峰に続く堂々の第5位。歌の題材になるだけの風格がある名峰なんです。

大槍・小槍・孫槍・曽孫槍の関係

槍ヶ岳の頂上部は、一つの岩がぽつんとあるのではなく、いくつかの岩の峰が寄り集まってできています。西側の稜線に沿って、小槍の基部から小槍・曽孫槍・孫槍・大槍と峰が連なる、というのが基本の並びです。

いちばん高いのが頂上の大槍で、ここには小さな祠(ほこら)があり、ハシゴやクサリを使えば一般の登山者でも立つことができます。一方の小槍は、前述のとおりクライミング専用といってよい難所です。

「大きい槍」と「小さい槍」がすぐ隣にあると考えると、歌詞の「小槍の上で」がぐっとリアルに感じられます。歌は、名峰のいちばん際どい場所をわざわざ選んで踊ろうと言っているわけです。

アルプス一万尺の原曲はアメリカ民謡「ヤンキードゥードル」

独立戦争当時の軍服姿で笛と太鼓を演奏する鼓笛隊

アルプス一万尺の原曲ヤンキードゥードルは、笛と太鼓で演奏される行進曲として親しまれてきました。

アルプス一万尺のメロディは、アメリカ民謡「ヤンキードゥードル(Yankee Doodle)」です。運動会や行進の場面で流れる、あの軽快なメロディといえば思い当たる人も多いでしょう。じつはこの曲、生い立ちがなかなかドラマチックです。

もとは兵士をからかう歌だった

ヤンキードゥードルの起源には諸説あります。オランダ系の小作農が収穫のときに歌ったものだという説や、イギリス人の軍医リチャード・シャックバーグが、フレンチ・インディアン戦争のときに、装備のそろわない植民地軍の兵士をからかって作詞したという説などが知られています。

もともとは「ヤンキー(アメリカ人)はまぬけだ」とばかにするような、皮肉のこもった歌だったとされています。歌詞には、羽根を帽子にさして気取っている田舎者、といった揶揄が込められていました。

独立戦争で愛国歌に生まれ変わった

ところが、アメリカ独立戦争が始まると、この歌は思わぬ運命をたどります。からかわれていたはずの植民地側の人々が、逆にこの歌を気に入って自分たちで歌い、無数の替え歌を作っていったのです。

こうしてヤンキードゥードルは、ばかにする歌から、アメリカ人が誇りを込めて歌う愛国歌へと立場を逆転させました。皮肉の歌が、歌う人の手で意味を塗り替えられた例といえます。

そのおおらかで替え歌を生みやすいメロディは、海をわたった日本でも同じ力を発揮しました。次に見るように、アルプス一万尺もまた、たくさんの人の替え歌で育っていった歌なのです。

アルプス一万尺は誰が作詞したの?成立をめぐる諸説

これだけ有名なアルプス一万尺ですが、じつは日本語の歌詞を誰が作ったのか、はっきりとは分かっていません。よく語られる説を整理してみましょう。

ボーイスカウトから広まったという説

よく知られているのが、ボーイスカウトの先駆者だった中野忠八が、1950年ごろにスカウト向けの歌として作詞した「向こうのお山に」がもとになった、という説です。昭和20年代のボーイスカウトの歌集に、その形が見られるといわれます。

野山を歩くスカウト活動と、山を題材にした替え歌は相性がよく、そこから広まっていったと考えると自然な流れです。

登山家の替え歌という説・作詞者不明という説

一方で、京都大学の山岳部をはじめとする登山家たちの間で歌われた替え歌が広まった、とする説もあります。実際、楽譜に載るときには作詞者不明とされ、初めのころはわずか3番ほどしかなかったとも伝えられています。

共通しているのは、特定の一人が作り上げた歌ではなく、山を愛する多くの人の手を経て育っていったという点です。作詞者が一人に定まらないこと自体が、この歌のたどってきた道のりを物語っています。

登山ブームと歌声喫茶にのって全国へ

戦後、日本では登山が一大ブームになりました。山小屋やテントで山男たちが替え歌を歌い、それが昭和30年代に流行した歌声喫茶を通じて、山に登らない人たちの間にも広まっていったと考えられています。

さらに1962年(昭和37年)には、NHKの「みんなのうた」でアルプス一万尺が放送されました。編曲は石丸寛、歌ったのは東京少年少女合唱隊で、これによって歌はいっそう全国区の存在になりました。

作った人が特定できないほど、たくさんの人に歌い継がれてきた証拠でもあります。まさに「みんなの歌」ですね。

本当に29番まである?歌詞が増え続けた理由

アルプス一万尺といえば「29番まである」とよくいわれます。初めは3番ほどだった歌が、なぜここまで増えたのでしょうか。

理由は、前の章で見た「替え歌で育った歌」という性格にあります。山に登る人たちが、自分の登った山や体験を次々と歌詞にのせていったのです。原曲のヤンキードゥードルと同じで、メロディが替え歌を作りやすかったことも後押ししました。

増えていった歌詞には、槍ヶ岳や穂高(ほたか)といった北アルプスの名峰、可憐な高山植物、山小屋やテントでの暮らし、登山道具など、山にまつわるモチーフが次々と登場します。まさに、歌詞をたどるだけで北アルプス一帯を旅できるような内容になっているのです。

ただし「29番」という数字も絶対ではなく、本や地域によって収録される番数はまちまちです。3番までのもの、十数番のものなどさまざまで、今も新しい替え歌が生まれ続けていると考えると、この歌のふところの深さが分かります。

豆知識
子どもたちの間では「アルプス五万尺」のように数字をさらに大きくした派生も生まれています。歌が自由に姿を変えていくのは、替え歌文化ならではの楽しさです。

アルプス一万尺の手遊びのやり方

意味が分かったところで、二人で楽しむ手遊びのやり方も確認しておきましょう。基本はとてもシンプルで、慣れてくるとスピードを上げて盛り上がれます。

  1. 向かい合って座る(立つ):二人一組で向かい合い、両手を軽く前に出して準備します。
  2. 「せっせっせーの よいよいよい」:両手をつないで上下に3回ふり、つないだまま腕を交差させて、もう一度上下にふります。ここが遊びの合図です。
  3. 歌に合わせて手を打つ:自分の手を打つ、相手と両手を合わせる、片手ずつ交差して合わせる、といった動作を順番に組み合わせていきます。
  4. 1番の終わりでぴったり止まる:決められた手の動きを歌の長さに合わせて繰り返すと、歌い終わりと最後の動作がちょうど重なるように作られています。
  5. 慣れたらスピードアップ:同じ動きを少しずつ速くしていくと難易度が上がり、二人の息が合ったときの達成感が楽しめます。

手の動かし方には地域や園によって細かなバリエーションがありますが、「相手と息を合わせてテンポよく手を打つ」という楽しさは共通です。うまくいかずに笑ってしまうのも、この遊びの醍醐味でしょう。

童謡やわらべうたの歌詞をあらためて読み解くと、身近な歌に隠れた物語が見えてきます。ほかの歌の意味が気になった方は、以下の記事もどうぞ。

歌にまつわる雑学クイズ5問

ここまで読んだ知識のおさらいに、アルプス一万尺の雑学クイズに挑戦してみましょう。全部答えられたら立派な山雑学マスターです。

第1問:歌詞の「アルプス」は、どこの山を指しているでしょう?

答え:日本アルプス(北アルプス)、とくに槍ヶ岳。ヨーロッパのアルプス山脈ではありません。

第2問:「一万尺」はおよそ何メートルでしょう?

答え:約3030メートル。1尺=約30.3センチメートル×10000で計算できます。

第3問:歌詞の「小槍」の正体は次のうちどれ? (ア)子ヤギ (イ)槍ヶ岳にある岩 (ウ)小さな槍の武器

答え:(イ)槍ヶ岳にある岩。頂上の大槍のわきにある、クライミングが必要な難所です。

第4問:アルプス一万尺の原曲となったアメリカ民謡の名前は?

答え:ヤンキードゥードル(Yankee Doodle)。もとは兵士をからかう歌でした。

第5問:アルプス一万尺の歌詞は、よく何番まであるといわれるでしょう?

答え:29番。もとは3番ほどでしたが、登山ブームの中で替え歌が増えていきました。

アルプス一万尺のよくある質問(FAQ)

最後に、アルプス一万尺についてよく検索される疑問をまとめて解説します。

Q1. 「小槍」は本当に登れるのですか?

クライミングの技術と装備があれば登ることは可能ですが、切り立った岩のため一般の登山者向けではありません。頂上の大槍とは難易度がまったく違う、上級者向けの難所です。

Q2. 「アルペン踊り」という決まった踊りはあるのですか?

特定の振り付けが決まっているわけではありません。「アルプス風の踊り」という雰囲気を表した言葉で、登れないような岩の上で踊るという冗談として楽しむのが本来のニュアンスです。

Q3. アルプス一万尺は誰が作詞したのですか?

日本語の作詞者ははっきり特定されていません。ボーイスカウト由来説や登山家の替え歌説などがあり、多くの人の替え歌を経て今の形になったと考えられています。

Q4. 「アルプス」はヨーロッパのアルプスではないのですか?

違います。歌詞に小槍が出てくることからも分かるとおり、舞台は日本の北アルプス、槍ヶ岳です。日本の山を海外の名峰になぞらえて「日本アルプス」と呼ぶ言い方に由来します。

まとめ:アルプス一万尺は山へのあこがれが詰まった歌

アルプス一万尺は、アメリカ民謡ヤンキードゥードルのメロディに日本語の歌詞をのせた、山の手遊び歌です。

「一万尺」は約3030メートル、「小槍」は槍ヶ岳にある実在の岩、「アルペン踊り」は登れない岩の上で踊るという壮大な冗談でした。短い歌詞の一語一語に、北アルプスの地理と山男たちのユーモアが凝縮されています。

作詞者が一人に定まらないほど多くの人に歌い継がれ、替え歌で29番まで育っていった歴史も、この歌の大きな魅力です。

今度アルプス一万尺を口ずさむときは、青空に槍の穂先を突き上げる槍ヶ岳を思い浮かべてみてください。ただの手遊び歌が、山への強いあこがれを歌った一曲に聞こえてくるはずです。

意味を知ってから歌うと、同じ歌でもまるで景色が違って見えます。ぜひ家族や友だちにも、この雑学を教えてあげてくださいね。