だれもが一度はやったことのある「あっち向いてホイ」。じゃんけんに勝ってビシッと指をさし、相手がつい同じ方向を向いてしまう、あの瞬間のおかしさは格別ですよね。
でも、なぜ人は指につられてしまうのでしょうか。どうすれば勝率を上げられるのでしょうか。まじめに考えたことがある人は意外と少ないはずです。
じつはこの遊び、脳科学の世界では「アンチサッカード課題」と呼ばれる立派な研究テーマで、北海道大学の研究チームが本気で調べているほど奥が深いのです。
この記事では、基本ルールから、攻める側と守る側それぞれの必勝法、つられてしまう脳のしくみ、そして祇園のお座敷遊びだったという意外な由来まで、あっち向いてホイのすべてを徹底解説します。

目次
あっち向いてホイとは?基本ルールと遊び方

あっち向いてホイは、2人で向かい合って遊ぶ、じゃんけんから発展した読み合いの遊びです。道具は何もいりません。2人いれば、教室でも公園でも電車の待ち時間でもどこでもできるのが魅力です。
流れはとてもシンプルです。次の手順で進みます。
- まず2人でじゃんけんをして、勝ち負けを決めます。
- 勝った人が「あっち向いてホイ!」の掛け声に合わせて、上・下・左・右のどれか一方を指でさします。
- 負けた人は、その掛け声の「ホイ!」のタイミングで、上・下・左・右のどれか一方へ顔を向けます。
- 指がさした方向と、顔を向けた方向が一致したら、指をさした人(じゃんけんに勝った人)の勝ちです。
- 一致しなければ勝負はつかず、またじゃんけんからやり直します。
つまり、じゃんけんで勝っただけでは終わりではなく、そのあとの「指さし」と「顔の向き」の読み合いに勝って初めて、本当の勝者が決まる仕組みです。この二段構えが、あっち向いてホイをただのじゃんけんより何倍も面白くしています。
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 指の方向と顔の向きが一致 | 指をさした人(攻めた人)の勝ち |
| 指の方向と顔の向きが不一致 | 勝負つかず。じゃんけんからやり直し |

あっち向いてホイの必勝法【指をさす・攻める側のコツ】

じゃんけんに勝って「指をさす側」に回ったら、ここからが本当の勝負です。攻める側のコツは、ひとことで言えば「相手の注意を自分の手に集めて、考えるすきを与えないこと」です。具体的なテクニックを見ていきましょう。
1. メリハリのある指さしで注意を引きつける
ぼんやりと指をさすと、相手は落ち着いて逆方向を向いてしまいます。逆に、相手の目の前にビシッとはっきり指を出すと、相手の視線が思わず指に吸い寄せられ、つられやすくなります。「ここだ!」という強い指さしが、つられを生む第一歩です。
2. リズムとテンポを自分が握る
「あっち向いて」の言うスピードは、指をさす側が自由に決められます。急に速くしたり、わざとタメを作ったりして相手のリズムを乱すと、相手は考える時間を奪われ、とっさの判断でつられやすくなります。同じテンポを続けないことがポイントです。
3. 視線や体でフェイントをかける
自分の目線や体を一瞬だけ一方向に振ってから、まったく別の方向を指さすと、相手は最初のフェイントに引っぱられます。顔は右を見るそぶりを見せておいて、指は左、といった揺さぶりが効果的です。
4. じゃんけん直後の勢いを利用する
じゃんけんに勝った直後は、自分も相手も気持ちが高ぶっています。その勢いが冷めないうちに、間を置かずたたみかけるように指をさすと、相手の判断が雑になった一瞬を突けます。出発点であるじゃんけん自体の勝率を上げておくことも、立派な必勝法のひとつです。
じゃんけんそのものの必勝法や確率のしくみについては、以下の記事でくわしく解説しています。あわせて読むと、あっち向いてホイの一手目から有利に立てます。
顔を向ける側(守る側)の必勝法とコツ
じゃんけんに負けて「顔を向ける側」になっても、あきらめる必要はありません。守る側のコツは、攻める側とは正反対で「相手の指に注意を引っぱられないこと」に尽きます。
1. 指を直接見つめない
いちばん大事なのがこれです。相手の指先をじっと見ると、人間の本能でその方向につられてしまいます。指ではなく、相手の胸元や顔の中心あたりをぼんやり見て、指は視界のすみで「なんとなく」とらえるくらいがちょうどよいのです。
2. 向く方向を先に決めておく
「相手の指を見てから、逆を向こう」と考えると、どうしても反射でつられます。そうではなく、「次は右」と心の中で先に決めておき、指がどこを向こうと機械的にその方向へ顔を向けると、つられを断ち切れます。
3. ほんのワンテンポ置いてから向く
掛け声と同時に反射で動くと、本能のままにつられがちです。コンマ数秒だけ「ためる」意識を持つと、本能的な反応をおさえて、自分の決めた方向へ向けます。ただし置きすぎると相手のペースに乗せられるので、あくまで「ほんの一瞬」です。
4. 自分のクセを読まれないようにする
人は緊張すると、ふだん振り向きやすい方向(多くの人は右)を選びがちです。いつも同じ方向に逃げていると相手に読まれます。意識して上下も使い、ランダムに散らすことで、相手の予測を外せます。

なぜ指につられるのか?つられてしまう脳のしくみ

そもそも、どうして人は指をさされると同じ方向を向いてしまうのでしょうか。ここには、人間の脳が持つ本能的なしくみが関係しています。
人間には「定位反応」と呼ばれる性質があります。これは、外から何か刺激を受けると、その方向へ思わず目や体を向けてしまう、生まれつきの反応です。横から急に音がしたり、視界のはしで何かが動いたりすると、反射的にそちらを見てしまうのは、この定位反応のためです。
あっち向いてホイで指をさされると、この定位反応がはたらいて、つい同じ方向を見てしまうわけです。つまり「つられる」のは、あなたの注意力が足りないからではなく、脳が正常に本能を発揮している証拠なのです。
一方で、人間は成長とともに、状況に応じてこの本能をおさえられるようにもなります。たとえば、恋人と一緒にいるときに魅力的な人が通りかかっても、わざとそちらを見ないようにした経験はないでしょうか。あれこそ、本能的な定位反応を意識の力でおさえている瞬間です。あっち向いてホイで「つられずに別の方向を向く」のも、まったく同じ脳の働きを使っています。
あっち向いてホイは「アンチサッカード課題」?脳科学で読み解く
この「刺激と逆の方向を向く」という行為は、じつは脳科学の研究で使われる本格的な実験課題とそっくりです。専門的には「アンチサッカード」と呼ばれます。サッカードとは、目をすばやく動かす運動(衝動性眼球運動)のこと。刺激された方向と逆へ目を動かすのがアンチサッカードで、まさにあっち向いてホイの「指と逆を向く」動きそのものです。
北海道大学医学部の田中真樹教授らは、このアンチサッカードを手がかりに、脳が反射をおさえて自分の意思で目を動かすしくみを研究してきました。その結果、大脳や大脳基底核に加えて、脳の奥にある「視床(ししょう)」という部分が、反射をおさえる働きに深く関わっていることが明らかになっています。視床は、時間をはかったり、特定の場所に注意を向けたりすることにも関わる、いわば脳の中継地点です。
さらに興味深いのは、この働きが医療とも深くつながっている点です。パーキンソン病や統合失調症、ADHD(注意欠如・多動症)の人は、こうした「反射をおさえて行動を切り替える」ことがうまくいきにくいとされています。前頭葉や大脳基底核に不調があると、アンチサッカードの成功率が下がることも分かっています。
つまり、子どものころに何気なく遊んでいたあっち向いてホイは、脳の高度な働きをそのまま映し出す「鏡」のような遊びでもあるのです。次に遊ぶときは、自分の視床がフル回転していると思うと、少し見方が変わるかもしれません。

あっち向いてホイの由来と歴史

これほど身近なあっち向いてホイですが、その由来をたどると、意外にも華やかな世界にいきつきます。
もともとは京都・祇園のお座敷遊びだったとされています。芸妓さんやお客が座敷で楽しむ遊びのひとつだったというのですから、ちょっと意外ですよね。それが、落語家の六代桂文枝さん(当時の三枝さん)がテレビ番組『ヤングおー!おー!』で紹介したことで、花柳界の外へと広まっていったと言われています。
そして全国区の遊びにした立役者が、コメディアンの萩本欽一(欽ちゃん)さんです。1972年(昭和47年)ごろ、日本テレビの歌手オーディション番組『スター誕生!』で、審査結果を待つあいだの場つなぎコーナーとして実演し、お茶の間に一気に浸透しました。じつはこのとき使われていた掛け声は「あっち向いて」ではなく「こっち向いてホイ!」だったというのも面白いところです。
萩本さん自身は、この遊びについて「大阪で子どもたちがやっていたのを聞いた放送作家が持ってきたもの」と語っています。お座敷遊びから子どもの遊びへ、そしてテレビを通じて全国の定番へ。あっち向いてホイは、日本の遊びの伝わり方を象徴するような歴史を持っているのです。
バリエーションとアレンジ7種で盛り上がる
あっち向いてホイは基本ルールだけでも十分楽しいですが、少しアレンジを加えると、さらに盛り上がります。代表的なバリエーションを紹介します。
1. こっち向いてホイ(逆ルール版)
萩本欽一さんが広めた元祖スタイル。基本とは勝敗が逆で、顔と指の方向が一致しなければ指をさした側の勝ちになります。頭が混乱して、いつものクセが通用しなくなるのが面白いところです。
2. あっち向いてパイ(罰ゲーム版)
テレビ番組などで使われた派手なアレンジ。負けた人はクリームパイを顔にぶつけられる、というおまけつきです。家庭では水鉄砲やデコピンなど、ゆるい罰ゲームにアレンジしても楽しめます。
3. 全身であっち向いてホイ
顔だけでなく、体ごと上下左右へ向くルール。大きな動きになるぶん運動量が増え、小さな子どもや体を動かしたいときにぴったりです。
4. 勝ち抜きトーナメント
大人数のときは、勝った人がどんどん次の相手と対戦していく勝ち抜き戦に。最後まで残ったチャンピオンを決めれば、パーティーやレクリエーションでも大いに沸きます。
5. 指の本数しばり
指を1本だけでさす、手のひら全体でさす、などフォームを限定するアレンジ。フェイントがかけにくくなり、純粋な読み合いの勝負になります。
6. スピードあっち向いてホイ
じゃんけんから指さしまでを超高速で連続して行う上級ルール。考える時間がほぼないので、反射神経と直感の勝負になります。
7. オンラインであっち向いてホイ
ビデオ通話の画面ごしでも遊べます。カメラに向かって指をさし、相手は顔を向けるだけ。離れた家族や友達とのちょっとした遊びにおすすめです。
あっち向いてホイが強くなる練習方法
「もっと勝ちたい」という人のために、家でもできる練習方法を紹介します。コツは、本能的な反射をおさえる脳の働きを、くり返し使ってきたえることです。
- あえて逆を向く練習:鏡の前で、自分の指を上下左右にさし、その都度わざと逆を向く動きをくり返します。反射をおさえる感覚が身につきます。
- 動体視力をきたえる:速く動くものを目で追う遊びやスポーツは、とっさの判断力につながります。
- とにかく数をこなす:家族や友達と何度も対戦するのがいちばんの近道。相手のクセを読む力も自然と育ちます。
とはいえ、勝ち負けにこだわりすぎると楽しさが半減してしまいます。あくまで遊びとして、笑いながら強くなっていくのが理想です。

あっち向いてホイクイズ5問に挑戦
ここまでの内容がどれくらい頭に入ったか、ミニクイズで確かめてみましょう。答えはまとめて下のボックスにあります。
第1問:あっち向いてホイは、まず何をしてから始める遊びでしょう?
第2問:指の方向と顔の向きが「一致」したとき、勝つのはどちらでしょう?
第3問:1972年ごろ『スター誕生!』の場つなぎで実演し、この遊びを全国に広めたとされる芸人は誰でしょう?
第4問:刺激された方向と「逆」を向く課題を、脳科学では何と呼ぶでしょう?
第5問:北海道大学の研究で、反射をおさえて視線を動かす働きに深く関わるとされた脳の部分はどこでしょう?
第1問:じゃんけん
第2問:指をさした側(じゃんけんに勝った側)
第3問:萩本欽一(欽ちゃん)
第4問:アンチサッカード(課題)
第5問:視床(ししょう)
よくある質問(FAQ)
最後に、あっち向いてホイについてよく聞かれる質問に答えます。
Q. 何人で遊べますか?
基本は2人で対戦する遊びです。大人数のときは、勝ち抜きトーナメントにすれば何人でも盛り上がれます。
Q. つられないコツを一言でいうと?
「相手の指を直接見ず、向く方向を先に決めておく」こと。この2つを意識するだけで、つられる回数がぐっと減ります。
Q.「こっち向いてホイ」との違いは?
勝敗の条件が逆です。「こっち向いてホイ」は、顔と指の方向が一致しなければ、指をさした側の勝ちになります。元祖はこちらの掛け声でした。
Q. 小さい子どもとやっても大丈夫?
道具もいらず、とても安全な遊びです。反射をおさえる脳の働きを使うので、遊びながら自己コントロールの練習にもなり、子どもの成長にもよい遊びといえます。
Q. あいこ(不一致)が続くときは?
一致しなければじゃんけんからやり直すルールなので、不一致が続くのは正常です。テンポよくくり返すほど、ふいに勝負がつく瞬間が盛り上がります。
まとめ:あっち向いてホイを脳科学で攻略しよう
あっち向いてホイは、じゃんけんと指さしの読み合いが組み合わさった、シンプルだけど奥の深い遊びです。
攻める側は「はっきり指さして相手の注意を集める」、守る側は「指を見ず、向く方向を先に決める」。これが勝率を上げる基本の必勝法です。
つられてしまうのは、定位反応という人間の本能。それをおさえるには、視床をはじめとした脳の高度な働きが必要だと、北海道大学の研究が教えてくれます。
由来をたどれば祇園のお座敷遊びにいきつき、萩本欽一さんがテレビで全国に広めた、という歴史も持っています。
次にだれかと遊ぶときは、ぜひ今日の必勝法と脳科学の知識を思い出してみてください。きっと、いつもより少しだけ強く、そして何倍も楽しくなっているはずです。

本記事の脳のしくみや視床に関する内容は、以下の研究者の研究を参考にしています。

