郵便ポストはなぜ赤い?初代は黒だった!150年の色の変遷と世界のポスト色比較・〒マークの由来まで徹底解説

街を歩けば必ず目に入る、赤い郵便ポスト。日本人にとっては当たり前の光景ですが、「なぜ赤いの?」と聞かれたら、意外と答えられない方も多いのではないでしょうか。

実は、日本の郵便ポストは最初から赤かったわけではありません。初代ポストの色はなんと「黒」。しかも「郵便」の文字を「垂便(たれべん)」と読み間違えられ、中に用を足されてしまうという衝撃のエピソードまであるのです。

郵便ポストって150年以上の歴史があるんですよね。身近すぎて深く考えたことがなかったけど、調べてみたらめちゃくちゃ面白かったです!

この記事では、郵便ポストが赤くなった理由から、150年にわたる色と形の変遷、世界15カ国以上のポストの色比較、さらには海底ポストや富士山頂ポストなどの珍スポットまで、知れば思わず誰かに話したくなる豆知識を徹底解説します。

日本の郵便ポストが赤い理由

初代ポストは「黒」だった

日本の近代郵便制度は、明治4年(1871年)3月1日に始まりました。「郵便の父」と呼ばれる前島密(まえじまひそか)が、イギリスの郵便制度を参考に制度を設計し、東京〜大阪間で郵便事業がスタートしたのです。

ちなみに「郵便」「郵便切手」「葉書」といった用語は、すべて前島密が選んだもの。現在の1円切手にも前島密の肖像が使われています。

このとき設置された日本初のポストは「書状集め箱」と呼ばれるものでした。脚付きの台に四角い木箱を載せただけの簡素なつくりで、色は木がむき出しの白木。東京12カ所、京都5カ所、大阪8カ所、東海道の宿場62カ所に設置されました。

翌年の明治5年(1872年)には全国展開にあわせて「黒塗柱箱」が登場します。杉板を四角い柱のように組み合わせ、黒ペンキで塗ったポストで、この黒いポストが約30年にわたって使われることになりました。

黒ポスト時代のトラブル

しかし、黒いポストにはさまざまな問題がありました。

最大の問題は視認性の悪さです。夜間や雨の日には黒いポストが街の景色に溶け込んでしまい、どこにあるのか見つけられない人が続出しました。

さらに衝撃的なエピソードが「垂便(たれべん)事件」です。「郵便」という言葉がまだ浸透していなかった当時、ポストに書かれた文字を「垂便」と読み間違え、中に排泄してしまう人がいたというのです。

また、木製のポストに爆竹を入れられる放火事件も発生。素材・色ともに、黒い木製ポストは問題を抱えていました。

赤に変わった理由は「視認性」

明治34年(1901年)10月21日、東京・日本橋に2本の試験的な赤い鉄製ポストが設置されました。これが日本初の赤いポストです。北側には俵谷高七設計のもの、南側には中村幸治設計のものが置かれ、どちらが優れているか比較されました。

そして明治41年(1908年)、逓信省の公達第808号により赤い鋳鉄製円筒形ポストが正式採用。逓信省年報には「誰でもすぐに認識できるように朱塗りにした」と記録されています。

赤が選ばれた理由は主に以下の3つと考えられています。

赤いポストが採用された3つの理由

  1. 視認性の向上:遠くからでも、夜間や悪天候でも目立つ色である
  2. イギリスの影響:前島密が留学先のロンドンで赤いポストを見ており、参考にした可能性がある
  3. 耐久性の向上:木製から鋳鉄製に変更することで、放火・破壊のリスクを大幅に軽減した

ただし、前島密がイギリスから帰国した1871年から赤ポスト採用の1901年まで約30年の開きがあり、「イギリスの赤を直接真似した」という公式記録は残っていません。現時点では「視認性の向上」が最も有力な理由とされています。

郵便ポストの色と形の変遷【150年の歴史】

約150年の歴史の中で、日本の郵便ポストは大きく姿を変えてきました。主な変遷を年表にまとめます。

年代 名称 素材・色 特徴
1871年(明治4年) 書状集め箱 木製・無塗装 日本初のポスト。脚付き四角箱
1872年(明治5年) 黒塗柱箱 木製・黒 全国展開。約30年間使用された
1901年(明治34年) 赤色円筒形ポスト 鋳鉄製・赤 日本橋に試験設置された初の赤ポスト
1908年(明治41年) 鉄製赤色円筒形 鋳鉄製・赤 正式採用。現在の丸型ポストの原型
1937〜1945年 代用ポスト コンクリート・陶器 戦時中の金属不足に対応した代替素材
1949年(昭和24年) 郵便差出箱1号(丸型) 鉄製・赤 戦後の新規格。高さ約135cm
1970年(昭和45年) 郵便差出箱1号(角型) 鋼板製・赤 現在の角型ポストの原型
現在 郵便差出箱14号 鋼板製・赤 現行の主流モデル。投函口2つ

戦時中の「代用ポスト」という苦肉の策

昭和12年(1937年)の日中戦争勃発により、鉄が軍需物資として優先的に回されるようになりました。郵便ポストに使う鉄もなくなり、やむを得ずコンクリートや陶器で代用ポストが作られたのです。

戦争がいかに日常生活のすみずみにまで影響を与えたかを物語るエピソードです。終戦後の1949年に鉄製ポストが復活し、現在の形へとつながっていきました。

丸型ポストはなぜ減った?

レトロな雰囲気が人気の丸型ポスト。1972年時点では全国に約55,000本ありましたが、現在は約5,000本程度にまで減少しています。

減少の理由は、レターパックなど大型郵便物の普及です。丸型ポストの投函口は小さく、現代の多様なサイズの郵便物に対応できなくなったのです。1970年の規格改正で角型ポストへの切り替えが始まりました。

ただし、一部の地域では景観保全のために丸型ポストが大切に保存されています。東京都小平市には37本もの丸型ポストが現役で活躍しており、「丸ポストのまち」として知られています。

世界の郵便ポストは何色?15カ国以上を比較

日本の郵便ポストは赤ですが、世界に目を向けると国によってポストの色はじつにさまざまです。主要な国のポストの色を色別にまとめました。

主な国 背景・理由
イギリス・日本・インド・オーストラリア・カナダ・韓国・タイ イギリス式郵便制度の影響が大きい
黄色 フランス・ドイツ・スイス・スペイン・トルコ 大陸ヨーロッパに多い。悪天候でも視認性が高い
アメリカ・ロシア 米国は消防車との混同を避けるため青に変更
中国・アイルランド・香港 アイルランドは独立時に赤から緑に塗り替え
オレンジ オランダ・チェコ オランダは2006年に赤からオレンジに変更
シンガポール・サンマリノ 世界的にも非常に珍しい

赤いポストの国はイギリス圏に集中

赤いポストを使う国は、イギリスおよび旧イギリス植民地に集中しています。イギリスの郵便ポストは1852年に初めて設置されましたが、当初の色は実はでした。

1874年にロンドンで赤への塗り替えが始まり、その後イギリス全土で赤に統一されます。この赤いポストがイギリスの郵便制度とともに世界中に広がり、インド、オーストラリア、カナダなどでも赤いポストが定着したのです。

ちなみにイギリスでは、2012年のロンドンオリンピックで金メダリストの出身地にある郵便ポストを金色に塗装するという粋な取り組みも行われました。

黄色いポストは大陸ヨーロッパの定番

フランス、ドイツ、スイスなど大陸ヨーロッパの国々では黄色いポストが主流です。黄色は光の反射率が高く、曇りがちなヨーロッパの天候でも視認性が良いことが理由の一つとされています。

政治的理由で色が変わった国もある

興味深いのは、政治的な理由でポストの色を変えた国があることです。

アイルランドは、1922年にイギリスから独立した際、それまでの赤いポストを国のシンボルカラーであるエメラルドグリーンに塗り替えました。香港も1997年の中国返還を機に、イギリス時代の赤いポストから緑に変更しています。

一方、アメリカのポストが青い理由も独特です。もともとは赤や緑だったのですが、赤は消防車と混同されやすいことから変更を重ね、1971年に現在の濃紺(USPS Dark Blue)に落ち着きました。

ポストの色一つにも、その国の歴史や政治、文化が色濃く反映されているのですね。

世界中のポストの色を調べてみると、イギリスのポストも最初は緑だったり、アメリカは消防車と間違えられないよう色を変えたりと、それぞれにドラマがありました。日本の赤いポストにも、こうした世界的な流れが影響しているんですね。

投函口が2つある理由

日本の角型ポストには投函口が2つありますが、これにもちゃんとした理由があります。

Tips
投函口の使い分け

  • 左側:普通郵便・はがき・手紙
  • 右側:速達・大型郵便・レターパック・国際郵便

この仕組みは、郵便局での仕分け作業を効率化するために導入されました。小さなはがきと大きな封筒が混在していると、仕分けに手間がかかってしまうためです。

ちなみに、左右を間違えて投函しても郵便物はちゃんと届きます。郵便局員が回収時にすべて取り出して改めて仕分けするので、届け先を間違える心配はありません。

知って楽しい郵便ポストの豆知識7選

1. 「〒」マークは日本だけの独自マーク

郵便マーク「〒」は、実は日本独自のマークで、世界の他の国では使われていません。

1887年(明治20年)2月8日、逓信省は当初「T」を郵便の徽章として告示しました。ところが「T」は国際郵便で「料金不足」を意味するマークと酷似していたのです。

このミスに気づき、わずか6日後の2月14日に「〒」へ変更されました。最有力説では、逓信省の「テイシンショウ」のカタカナ「テ」を図案化したものとされています。

MEMO
郵便マーク「〒」は日本独自のもので、海外では通用しません。「T」が料金不足マークと被ったため、わずか6日で差し替えられたという、ちょっとドタバタな誕生秘話があります。

2. 全国のポスト数は約17.5万本

2022年度末時点で、日本全国には約175,145本の郵便ポストが設置されています。2006年のピーク時(約191,400本)から比べると約1.6万本の減少です。メールやSNSの普及で郵便物が減り、ポストの数も少しずつ減っています。

一方、郵便局は全国に24,284局あり、最寄りの郵便局までの平均距離は約630m。これは小学校(680m)や交番(830m)よりも近い距離です。

3. ポストへのいたずらは「5年以下の懲役」

意外と知られていませんが、郵便ポストを壊したりいたずらしたりすると、郵便法第78条により「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処せられます。

これは一般的な器物損壊罪(最大懲役3年)や業務妨害罪(最大懲役3年)よりも重い刑罰です。郵便が国民生活を支える重要な社会インフラであるため、法律で厳しく保護されています。

注意
過去にはポストに焼肉のタレやミルクティーを流し込んで書類送検されたケースもあります。軽い気持ちでも重い罰則が科される可能性があるので、絶対にやめましょう。

4. 速達はポストからでも出せる

速達は郵便局の窓口に行かなくても、ポストから投函することが可能です。やり方は以下のとおりです。

  1. 封筒の表面右上に赤い太線を引く
  2. 赤字で「速達」と記入する
  3. 基本料金+速達料金分の切手を貼る
  4. ポストの右側の投函口に入れる

ただし、料金不足のリスクを避けたい場合は郵便局の窓口で出すほうが確実です。

5. コンビニにもポストがある

ポストが設置されているコンビニは、ローソンミニストップ(ともに全店舗)です。セブンイレブンやファミリーマートには原則として設置されていません。

集荷頻度はコンビニのポストで1日1〜2回、郵便局前のポストで1日3〜4回が目安。急ぎの郵便物は、集荷回数が多い郵便局前のポストに投函するのがおすすめです。

6. 郵便番号は最初3桁だった

いまや当たり前の7桁の郵便番号ですが、制度が始まったのは1968年(昭和43年)7月1日のこと。当初は大規模局が3桁、それ以外が5桁という仕組みでした。

1998年に現在の7桁に移行。これにより町域単位はもちろん、大きなビルの階層ごとに個別の番号が割り当てられるようになりました。

7. 青いポスト(速達専用)は全国にわずか35本

実は日本にも赤以外のポストが存在します。青い速達専用ポスト(郵便差出箱4号)がそれで、2021年3月時点で全国にわずか35本しかありません。

内訳は大阪26本、東京6本、神戸2本、名古屋1本。見つけたらかなりレアなので、ぜひ記念に写真を撮ってみてください。

日本全国のユニークな「ご当地ポスト」

全国各地には、その土地ならではの個性的なポストが数多く存在します。旅先で見つけたらぜひ立ち寄りたい、代表的なものを紹介しましょう。

世界一深い「海底ポスト」(和歌山県すさみ町)

和歌山県すさみ町の枯木灘海岸から約100m沖、水深約10mの海底に設置されたポストです。1999年に設置され、2002年にはギネス世界記録に「世界一深い郵便ポスト」として認定されました。

耐水はがきに書いた手紙をダイバーが潜って投函し、地元ダイバーが毎日回収。その後は日本郵便が全国に配達してくれます。年間約1,500通、累計38,000通以上の手紙がこの海底ポストから届けられてきました。

日本一高い「富士山頂ポスト」

標高3,776m、日本で最も高い場所にあるポストです。富士山頂郵便局は毎年7月10日〜8月20日の約42日間だけ営業する期間限定の郵便局で、ここでしか押せない富士山の風景印が登山者に大人気です。

南極昭和基地のポスト

日本最南端のポストは南極の昭和基地内にあります。正式名称は「日本郵便銀座郵便局昭和基地内分室」。なぜか東京の銀座郵便局の管轄です。

料金は国内と同じ(はがき63円)ですが、届くのは南極観測船「しらせ」が年1回往復するタイミングのみ。年末に出した年賀状が届くのは翌年4月頃になります。

海底ポストも富士山頂ポストも、ちゃんと日本郵便が回収・配達してくれるのがすごいですよね。どこにいても「届けたい」という想いを届けてくれる——それが郵便のロマンだと思います。

思わず写真を撮りたくなるご当地ポスト

全国にはその土地ならではのユニークなポストがたくさんあります。

  • パンダ型ポスト(東京・上野動物園):投函するとパンダの風景印が押される
  • 茶壺型ポスト(京都・JR宇治駅前):お茶のまちにちなんだデザイン
  • 瓦ポスト(愛知県高浜市):日本三大瓦の三州瓦を使用した珍しいデザイン
  • りんごポスト(青森県弘前市):りんごの産地ならではの形
  • 雪だるまポスト(北海道・早来雪だるま郵便局前):北海道らしいかわいいデザイン
  • 金色ポスト(各地):オリンピックメダリストの出身地に設置

旅先でご当地ポストを見つけたら、そこから手紙を出してみるのも素敵な思い出になりそうですね。

まとめ

日本の郵便ポストが赤い理由は、黒いポストの視認性の悪さを改善するためでした。明治4年(1871年)の「書状集め箱」に始まり、黒塗り→赤い丸型→角型と150年以上にわたって姿を変えながら、今も全国約17.5万本が私たちの暮らしを支えています。

世界に目を向ければ、ポストの色は赤・黄・青・緑・白と国ごとにさまざまで、その裏には歴史的背景や政治的事情が隠れています。日本の赤いポストも、イギリスの郵便制度から影響を受けた結果なのです。

身近なものに隠された意味をもっと知りたい方は、日本の硬貨デザインの意味|1円〜500円に描かれた植物・建物・模様の由来を徹底解説もあわせてどうぞ。

日常の何気ない風景の中にも、知れば知るほど面白い歴史とストーリーが詰まっています。次に街で赤いポストを見かけたとき、この記事の豆知識をぜひ思い出してみてください。

この記事を書いてから、街で郵便ポストを見るたびに「あ、14号型だな」「丸型ポストまだ残ってるんだ!」と気になるようになりました。身近なものの歴史を知ると、見える世界がちょっと変わりますよね。

参考文献